カルメン
千秋真一×三木清良


一年前。
「あなたと一緒にオケをやりたい。」そう、言うために。
私は長い時間迷って考え続け、意を決し、勇気をふりしぼって、
そしてやっとの思いで彼に会いに行った。・・・きっと彼にはわからない。
本当は、ただ、彼に会いたかった。つながりを作りたかっただけだったのに。

いままでも、彼は私の演奏のたびに頬を紅潮させて、素敵な笑顔を私に向けてくれていた。
いつしか、その笑顔が見たいために練習にいっそう熱が入るようになった。

けれど、女性としての私には興味なさそうな彼の素振りに、がっかりして。いらいらして。
私のキャラのせいか、男勝りな さっぱり系に見られているみたいで。
でも、噂だと、彼には大事にしたい人がいるけど会ってないし上手くいってないみたい。

この公演を最後に、しばらく共演できなくなるから。とうとう私は賭けに出た。
念入りに選んだこの真紅のドレスの下には、赤いガーターベルトを締めて。
私は今日、情熱の女、カルメンになる。

演奏が始まる。舞台上で彼と対峙し、彼を煽る。
タクトを振り下ろす彼は、凛々しい青年衛兵のよう。ーーー私の「ホセ」・・・。

まるでカルメンが降りて来たみたいに、熱くてせつないヴァイオリンの音に乗せて、
私は口上手く彼を口説いた。音楽で、彼を誘惑した。

そして、最後の一音が終わって、彼と目が合った瞬間に、わかった。
彼はホセのように、感情的な恋に堕ちたのだ。
演奏後の握手が、いつもと違ってぎこちない。触れた手が、ひどく熱くて。
強い力で握られた。


・・・カレはいるけど、今だけ、許して。
指揮台の彼を初めて見たときからずっと、惹かれていたの。
私を夢中にする音楽を作り出せる唯一の人に、一度でいい、抱かれたい。
その欲望を抑えきれない。



2回、ドアをノックした。

ドアが開いて、目が合った瞬間、腕を引かれて、きつくきつく抱きしめられた。
一瞬だけ見た彼の瞳は、藍色に潤み、困ったような切ないような、降参した男の瞳だった。
深くて熱いキスを合図に、恋がはじまった。

言葉は要らない。今だけでいい。感情に流されるままに。・・・抱いて。
千秋くん・・・・・。

急くように 舌を絡め、唇を求め合って。
きつく抱かれた腕がゆるみ、唇を合わせたままでコートを脱がされた。

私を見る彼の瞳は、ぼぅっとして潤んで、熱病に冒された人の瞳を写す。
その彼の瞳に映る、私の瞳も、いま きっと同じ熱を持ってる。

キスは止まない。
誘惑したのは私だけれど、憧れていた人からくちづけされてて 頭が真っ白で、
信じられなくて現実感無くふわふわしてて、そして幸せでたまらない。
ーーーどうしよう・・・私、こんなに、彼が好きだったなんて・・・。

立ったまま、また抱きしめられて、うなじにキスを受けながら
背中のファスナーを下ろされた。肩からドレスがこぼれ落ちる。
真紅のドレスから脚を抜くと、彼は大切なものを扱う手つきで ハンガーにかけてくれた。

そして、振り返って私を見た。
私は、繊細なレース使いが美しい 真紅のブラとタンガ、ガーターベルトにストッキング。ハイヒール。
彼のせつなげな瞳。満足そうな笑みが、口元に浮かんでる。
私を魅力的だと思ってくれて、嬉しい。 あなたが好き・・・。

・・・ブラの上から胸をまるくつかんで、それからちょっとブラをずらして彼は
 私の胸の先端を口に含んだ。もう片方もつまんで、さするように愛撫を。
 触れられた位置から、全身に甘い痺れが走った。

・・・紅くて小さな布の上から、熱い息を送られた。くちびるが布越しに触れている感触。
 私は潤みすぎるほどで、恥ずかしいけれど...これが今の私の気持ちだから。
 短い声を上げて、彼に伝えた。

・・・彼は、私に任せてくれた。愛しいそれを喉奥までいっぱいに含み、舌で、口内で、愛撫する。
 いままで惚れ惚れと見上げていた彼の、音楽に酔っている時の官能的な表情が、
 こんなに間近で再現されて、そのうえ艶を増している。

それから_____。
布をちょっと分けられて、彼がゆっくりと深く、私を貫き、動き始めた。
きれいな、汗。彼の匂い。熱い息。はまりごこちの良い、広い肩から厚い胸へのライン・・・

私は何度も何度も、達した。
彼が私に送り込み続ける快感に、私は酔いつぶれて。

ホセ・・・。あなたを堕とすつもりが、堕ちたのは私。
良すぎて、くるしすぎて、身体中がバラバラになって裂けていきそう。
どうか、ひとおもいに、あなたの手で。・・・私を。

そして、愛する彼の手にかかり、ーーー 私の恋は、永遠に息絶えた。

松田さんに替わったR☆Sオケの練習の見学で、あれからはじめて彼に会った。

なんだか、以前とは雰囲気がちがっていて、しっかりと眼を見開いて
未来を切り開こうという気持ちが、見てとれた。

チクンと痛みを感じつつ、彼のとなりで、同じように壁にもたれて
練習を見ながら思った。

ーーー 私、思ってたよりも普通な感じで、彼と話せた・・・

彼はパリに行く。・・・彼女と。
私も、あの日の恋の亡骸を葬り去って、新しく歩もう、と 決めた。

カルメンの、熱い想いの記憶だけは、昇華して 私の音楽に溶かし込んで。

続編:カルメン 続編(峰龍太郎×三木清良)






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