高遠の欲望 続編
明智健悟×七瀬美雪


前回:高遠の欲望(高遠遙一×七瀬美雪)

「どうぞ。気分を落ち着けてください。」
深煎の香ばしい薫りが美雪の鼻先をくすぐる。

その薫りにつられるようにコーヒーカップを手に取るが、口に持っていく気がしない。
どうしても、先程の出来事が脳裏に浮かんでくる。忘れよう、そう思っていても記憶が、感覚が、全てがその出来事を忘れさせてくれない。
体が小さく震えるのを明智は見逃さなかった。
針を落とすとレコードプレイヤーからはショパンの優しい音色が静かに部屋を駆け巡る。

「クラシックは傷ついた心を癒してくれます。今だけでも忘れてください。今夜は私が側にいますから・・・・」
「…明智さん…」

自分を見つめる美雪の涙で潤んだ瞳をまっすぐに見つめ返し、安心させようと軽く微笑むと美雪の横に腰を降ろした。

「お力になれるかどうかわかりませんが…」

さすがの明智もこういう心境の女性を扱うことに不慣れで、自分にできることを必死に捜し求める。
こういうときなんと言って慰めたらよいのか、いや、慰めるようなことを言うと思い出させてしまって逆効果ではないか、色んな考えが脳内を交錯する。

「ありがとうございます。」

美雪の言葉に思考は中断される。

「あの時、心の中で助けてって、何度も叫んでたんです。誰も来てくれるはずがないってわかっているはずなのに、もしかしたら、って…」
「七瀬さん…」

美雪の目に、再び涙が浮かび始める。

「明智さんが来てくれなかったら、わたし、どうなってたか…」
「申し訳ない。もっと早く行くべきだった。正直私も驚いているのです。こんなことは彼の…高遠の美学に反するはず。迂闊でした。

そのために、キミをこんな目にあわせてしまった。本当に申し訳ないと思っています。」
余裕たっぷりでイヤミのひとつも口にするいつものエリート警視ではなく、自分を責める彼の苦悩の表情は美雪の見たことのない顔だった。

「やめてください、明智さんのせいじゃありませんから。」
「しかし…」
「わたしなら大丈夫ですから。ほら、こう見えて丈夫なんですよ、わたし。」

見るからに空元気の美雪が自分を元気付けようとしている。どう考えても立場は逆ではないか、と苦笑し、そういうときにでも人に気が使える美雪に金田一が好意を寄せるのも当然だな、と納得する。
明智の中で自分も気づかない、金田一に対する嫉妬心が芽生え始めた。

「本当は金田一くんに助けて欲しかったのでは?」

いきなりの明智の言葉に面食らう。

「いや、逆か。金田一くんだけには見られたくないでしょうね…金田一くんだけには…」

その名前を繰り返す。美雪にとって、今一番聞きたくないであろう人物の名前を。
美雪の表情が曇る。明智は我に返り自分の言ったことを後悔した。

「すみません、明智さん…はじめちゃんのことは…今は…」
「失礼。キミの気持ちも考えずに…今日はもう、寝た方がいい。」

明智は自分の気持ちを胸の奥に封印し、寝室に美雪を案内した。

「ここで寝てください。私は居間のソファにいますから、何かあったら呼んで下さい。」
「はい」
「ではおやすみなさい。」

明智が寝室を出ると、美雪はベッドに横たわった。
しかし寝付けるはずもなく、頭の中に浮かんでくるのは冷ややかな高遠の表情。再び冷気が背筋を駆け抜ける。目を閉じると高遠の手が自分に伸びてくる。高遠に出会ったときから明智が現れるまでの出来事が、ビデオのように何度も何度も繰り返される。
いてもたってもいられなくなり、飛び起き、しゃくりあげる声を押し殺した。

一方、明智もソファに横たわり目を閉じるが、美雪のことばかり考えてしまう。
あの部屋に飛び込んだときに目に映った美雪の肌の白は、明智の欲望を刺激するには十分すぎた。
高校生とは思えないほど発達した体が写真のように頭に焼きついて離れない。
不謹慎だな、と苦笑するが、その体が隣の部屋で寝ていると思うと眠れるはずもなかった。
邪な考えを振り払うように深呼吸をする。
彼女は傷ついている、こんなときに何を考えているのだ、と自分に言い聞かせる。
ようやく平常心を取り戻すと、隣の部屋から啜り声が聞こえた。
もう、邪心はない。寝室のドアをノックする。

「七瀬さん?大丈夫ですか?」
「…明智さん…」

消え入りそうな声がドア越しに返ってきた。

「大丈夫ですか?入りますよ?」
「はい…」

美雪の返事を確認してからドアを開けると、美雪はベッドの隅で枕を抱え、震えていた。

「1人になるのが無理そうなら、私がこちらにいましょうか?」
「え…」
「大丈夫。私はそこの椅子で寝ますよ。」
「でも、それでは明智さんが…」
「私なら大丈夫ですよ。」

美雪は小さく頷いた。

「明智さん…」

ベッドの中から美雪の声が語りかける。

「はい。」
「やっぱり、わたしダメですね。」
「どうしたんですか、突然。」
「なんか、はじめちゃんの足を引っ張るばっかりで…今日だってこんなことに」

美雪の涙声はか細く、震えていた。ベッドの側に寄ると、背を向けた美雪のかろうじて布団から出ている頭を優しく撫でる。

「そんなことありませんよ。」

一息つき、続ける。

「彼だって、そんなことは思っていません。」

ゆっくりと体を返し、目のあたりまで布団を下げると、明智の視線と自分のそれがぶつかる。
その端麗な顔に見惚れ、頬が赤く染まる。恥ずかしくなり、目を背けようとするが彼の視線の金縛りにあったように目を逸らすことができない。
金縛りが解けると、美雪は上半身を起こした。明智の手が頭から頬へと下降すると、小刻みに震える美雪の振動が明智の腕に伝わった。

「まだ、震えているのですか?」

そっと美雪の体を引き寄せると、その力強い腕で優しく、脆いものを扱うように美雪の体を包んだ。
その感触は美雪にとって心地よく、彼女もまた、明智の胸に自分の体を預けると、美雪を包む腕に一層力がこもる。

「今日は本気で高遠を撃ってしまいそうでしたよ。」

明智の手は美雪の頬を優しく撫で、視線を合わせると美雪は照れ、明智の胸に顔を埋める。

「私としたことが完全に冷静さを失ってしまいました。」
「え…」
「柄にもありませんが、ね…」

高校生の少女を相手に自分は何を言っているのだろうと思いながらも、美雪を思う気持ちが自分の中で膨らんでいくのを感じる。
美雪もまた、同じ気持ちになってくれることを望むが、彼女の中で金田一という存在が余りに大きすぎるのか、と疑問を投げかけるが、美雪の口からそれを聞くのは怖かった。

「さぁ、今日はもう寝ましょう。」

美雪を包んでいた腕を離すと美雪の体は名残惜しそうに震えた。

「明智さんは…?」
「私はまたそこの椅子で寝ますよ。」
「でも…寒いし、やっぱり悪いですから…」

正直、美雪も明智の肌が離れたのが寂しかった。もう少し、ぬくもりを感じていたかったが自分からそんなことを言い出すのは抵抗があるが、明智がそんなことを言うはずもない、と思い、思い切って口を開いた。

「もし、明智さんがご迷惑でなかったら、その、一緒に…」

一瞬、明智は自分の耳を疑った。驚きで、固まる。

「七瀬さんこそ、いいのですか?」

こくり、と美雪が頷くのを確認すると明智は美雪の隣に滑り込んだ。

手が触れる。明智の手が美雪のそれを包み込むと、ピクッと跳ね、しかし、そのまま振り払いもしない。
美雪のぬくもりが伝わってくると、またあのシーンが頭の中に蘇る。
その体は、今度は自分の体と密着している。昂ぶる鼓動を押さえ込んでいると、美雪が明智の方へ体の向きを変えた。
視線がぶつかる。もう、明智には衝動を押さえることは不可能だった。

唇を合わせると一旦、美雪の体が硬直したが、抵抗する様子はなかった。

「すまない。」

本当はすぐにでも美雪を抱きたい、そう思うがギリギリのところで理性を保つ。

「しかし、キミのことを愛しく思っている。」
「え…?冗談、ですよね?」
「本気です。」

突然の明智の告白に、美雪は驚きを隠せず、戸惑う。

「でも…そんな…」
「今日のことを含め、私はキミの全てを受け入れます。」
「え…」
「絶対にキミを幸せにする自信があります。だから…」

言うと、もう一度唇を美雪のそれに重ねる。美雪は瞼を閉じ、明智のなすがままに見を任せた。

「無理強いするつもりはありません。嫌だったら言ってもらってかまいません。今日の出来事を忘れさせる手伝いを私にさせて欲しい。」

明智の瞳に吸い込まれるように、美雪は彼の胸に体を委ねた。

「私は、嫌な男ですね。」

美雪を抱きしめたまま、呟く。

「え?そんなことないですよ!極問塾のみんなにも明智さん、すごい人気でしたし。

明智さん、カッコいいしエリートだし、ほら、なんというか、こんな…」

「こんな?」

顔を赤らめ、押し黙る美雪の顔を覗き込み、その先を言わせようと促す。

「こんな状況になるなんて、その…考えもしなかったから…
なんというか、明智さんはわたしにとって憧れというか、そういう存在だったんです。」

しどろもどろに答える美雪をかわいいと思う中で、明智の中に少々悪戯心が芽生えた。

「では、七瀬さん。キミも私のことを想ってくれている、と解釈しても構いませんか?」
「え!?いや、でも、想うとかそういう意味じゃないというか、ホラ、あるじゃないですか?」

慌てて否定する表情がおかしくて、明智の緊張感と共に表情も緩む。

「明智さん、酷いですよ。」
「いや、失礼。冗談ですから気にしないでください。」

膨れっ面の頬に手を添え、まっすぐに見つめると、美雪の胸はその鼓動を一気に高めた。

(やだ、明智さんに伝わっちゃう…)

これから起こることを心の奥底では認識するが大部分では否定し、心を落ち着かせる。
一方明智は欲望をなんとか理性で押さえ込むが、一発触発、何かひとつでも刺激になるようなことがあれば、自分は目の前の少女を壊してしまいそうで怖かった。
見つめあったまま時間が止まる。どれぐらいたったのだろう。実際はほとんど時間など経っていないが、2人にはとても長く感じられる。

「私は…」

明智が先に沈黙を破る。

「ずっと、キミのことを想っていました。だが、キミの側にはいつも金田一くんがいた。
キミ達の間に入り込めない自分に苛立ちを感じたこともあります。
最初はただのライバルだった金田一くんに、勝ちたいといつしか本気で思うようになったのは、キミの心を金田一くんから私に向けさせたかったからなのかもしれません。
本当は、ずっと2人きりになる機会を求めていた。今日、ここに呼んだのも、本当はキミを求めていたからかもしれません。それも、あの状況にこじつけて。まったく、最低な男ですよ、私は。」
「…」

戸惑う美雪をよそに、独り言のように呟く。

「しかし、もうこれ以上気持ちを押さえられそうにない。」
「明智…さん…?」

最後のセリフはよく聞き取れず思わず顔を近づけると、振り返った明智の顔は重なりそうなぐらい近くにあった。

「もう彼に遠慮はしません。私の全てをもって、キミを幸せにすると約束します。」

明智の唇が美雪のそれに重なる。しかし、今度は先程までの触れるだけのキスとは違っていた。
美雪の口内に明智の舌が進入すると、舌を絡めとり、何度も何度も、丹念に舐めあげる。
口を通して伝わってくる明智の熱い吐息を感じ、美雪の神経は鳥肌を立てる。
高遠に同じことをされたときは嫌悪感しかなく、早く離れて欲しいと感じたが、明智の舌が離れることを美雪のそれは無意識に拒んでいた。
それを切っ掛けに、明智の動きが激しくなると、自分でも信じられないぐらい、必死で自ら舌を絡める。
やがてどちらともなく顔を離すと、2人の間を名残惜しげに伝っていた1本の糸が切れた。
真っ赤な顔で俯く美雪とは反対に、明智は満足げな表情を浮かべていた。

「照れた顔も素敵ですよ。」

金田一の口からは絶対出ないような、彼の言うところの歯の浮くようなセリフをさらりと口にすると、今度は美雪の耳元に口を寄せる。

「嫌でしたら言ってくださいね。先程も言いましたが、無理強いはしたくないので。」

囁きと同時に美雪の首筋を湿った舌が伝うと、美雪は体の中で早くも何かがこみ上げるのを感じる。
正直嫌ではなかった。嫌というどころか、快感を感じ始めるのも分かる。だが、金田一の存在がどうしても頭の隅から離れない。
無抵抗でいると明智には拒否していないと思われるのだろう、それもわかっていた。このまま流されていいのかという疑問、そう考える頭とは裏腹に体は明智を求めているのがわかった。

明智の手が美雪の胸を捕らえると美雪の体はピクリと小さく跳ねた。
服のボタンがひとつひとつ外されてゆく。全て外し終えたところで、目に飛び込んできた肌の白に明智の動きは遮られた。

「美しい。」

明智は手を美雪の下着に滑り込ませると、その感触を楽しむように撫で、親指で先端を弾いた。
美雪の背筋に電流が走る。

「ふふ。」
「え?」

明智の笑いに疑問を覚えたが、すぐに返ってきた答えは美雪の羞恥心を掻き立てた。

「私を感じてくれていたのですね。光栄です。」

恥らう美雪をさらに苛めたいという衝動にかられる。
すまない、と思いながらももっと自分を感じて欲しい、自分の愛撫で、言葉で感じる美雪をみてみたいという欲望は理性を容易く飲み込んだ。

「キミの綺麗な胸を見せてもらえますか?」

そのまま下着を外してしまってもきっと彼女は抵抗しないだろう、その確信はあったがもっと困らせたいという悪戯心に勝てない自分に少しサディスト的要素を感じ、苦笑する。
恥ずかしそうに視線を逸らす美雪の耳元で、もう一度ささやく。

「何も言わないのは肯定ととってもよろしいのですね。」

美雪の顔がさらに赤く染まる。彼女の口から肯定の言葉が出るとは思えない、そんなことはわかっているからわざと拒否されない言葉を選んだ。
フロントホックを外すと、それまで拘束されていた乳房は自由を求めるように弾けだした。
その先端を優しく舐めると美雪の体はビクリ、と大きく反応し、咄嗟のことに声が漏れる。

「あっ…」

美雪が感じていると確信すると明智は片方の乳首を舐めながら、もう片方は転がしたりつまんだりと遊ぶように指を動かす。
その度に美雪は反応し、声を押し殺す。

「いや…やめっ…あっ」

美雪の嘆願は明智の愛撫によってかき消される。
明智の口は乳首を離れると、白い肌に点々と赤い印をつけながら徐々に下へと降りてゆく。
下腹部のあたりまで降りてくるとスカートにぶつかり、邪魔だとばかりに脱がせるとパンティーからふくよかな太ももが伸びていた。

「みっ、見ないでください!わたし、足太いから…」

慌てる美雪を遮る。

「金田一くんに言われるんですか?大丈夫ですよ、とても綺麗です。気にすることはありません。むしろ私は細すぎるよりこちらの方が好きですよ。」
言って、内腿に口付け舌を這わせた。美雪の足が閉じようとするのを体でブロックする。

「キミは何も考えず、ただ感じてくれればいいのです。」

再び、明智の舌は美雪の内腿の上を伝った。

「んっ・・・・」

初めての感触に身も心も溺れそうになる。しかし、そんな声を聞かれるのは恥ずかしいと、声を喉の奥に飲み込んだ。

「遠慮しなくてもかまいませんよ。」

内腿を這わせる舌は徐々に上昇してゆく。

「でっ…でも…」
「声を聞かせてくれるほうが、こちらも気分が昂ぶりますしね。」

美雪の顔が真っ赤に染まる。

「おや?もうこんなに…」

下着の中心が湿り気を帯びているのを見つけると、そこを指でそっと辿る。
美雪の体が跳ねる。

「やっ…」
「大丈夫です。私にまかせてください。」

明智は下着の上から割れ目の感触に合わせて指を滑らせる。ピクリ、ピクリと反応する美雪の陰部に、なおも指を躍らせる。
割れ目の上から突起を優しく刺激する。

「ああんっ…」

ついに美雪が欲情の色を含んだ声をあげた。
下着を下ろす。露わになる美雪の秘所。己の欲望がこみ上げ、自身が固くなっていくのを感じる。
明智は美雪の足をM字に開かせたまま、しばらくその綺麗な色のそこに見入っていた。

「み…見ないでください。はずかしい…です…」

消え入りそうな声が嘆願するが、視線は依然としてそこに注がれている。

「お願い…やめてください…」

今度は泣きそうな声で嘆願する。

「失礼。あまりにも綺麗だったものでね。」

足の間から顔を覗かせると、美雪の潤んだ黒目勝ちな瞳と視線がぶつかる。

「嫌…ですか?」

美雪の瞳から目を逸らさずに問い掛ける。その端麗な顔立ちについと見惚れてしまう。
その目はとても優しくて、暖かい。
そんな目で見られては美雪とて断る術が見当たらなかった。

「ずるいですよ、明智さん…」
「なにがですか?」

美雪の言葉に意地悪く返す。本当は彼女がどういう気持ちでその言葉を言ったかよく分かっているのに。

「どう、ずるいのですか?」

自分でも意地が悪いな、と思うが、そんな心とは裏腹に口が動く。

「もう、知らない!」

膨れ面をしてぷいと横を向く美雪に愛しさを感じた。
頬に手を添え、自分の方を向かせる。唇を重ねると、明智の舌は美雪の口内を這う。美雪もそれに応えるように舌を絡めた。
口付けたまま、明智は服を一枚ずつ脱いでゆく。適度に鍛えられた筋肉が外されたボタンの合間から覗く。
思わず、その美しい体に見惚れていると、いつの間にか、下着姿になっていた。
舌を絡ませながら、右手は陰部の中心を刺激する。そこからは次々に美雪の愛液が溢れ出してくる。

「すごいですね。」

美雪の羞恥心を刺激する明智の言葉に、美雪は照れながら目を逸らす。

「恥ずかしがることはありません。」

明智の吐息が耳元に注がれる。

「私だって、こんなになっているんですから。」

愛液が溢れ出す秘所を、下着越しの硬くなった自身でなぞる。
指とは違う感触は、美雪の背筋をゾクゾクと襲う。
表情から、彼女が感じているのを伺い、何度も擦りあげる。

「ああっ…あんっ…」

戸惑いを快感が支配してゆく。もう、声を押し殺す余裕はなかった。

明智は再び美雪の足の間に移動すると、花弁をゆっくり広げ、クリトリスを刺激した。

「ひゃっ…」

美雪の体が大きく動く。
それを気にしないかのように、明智の指はそこを刺激し続ける。
やがて、明智の指が美雪の中へと侵入する。
いやらしい水音をたてて、美雪は明智の指を飲み込んだ。

「あんっ…」

ある部分への刺激は、美雪の口から艶を帯びた声を誘う。
この部分が弱いのだろう、そう確信すると、弱点を何度も刺激する。
そうしながら、明智の舌がクリトリスを舐め上げた。

「いやっ…そんなとこ…汚いからっ…」

あまりのことに美雪は嬌声を上げる。

「いえ、汚くなんてありません。それより、どうです?気持ちいいですか?」
「…」

美雪は押し黙ってしまったが、彼女の態度で、表情で、肯定の意を表している。
2本に増えた指で、さらに激しく掻き回される。舌の動きも止まらない。
快感はやがて、全身を包み込んでゆく。

(気持ちいい…)

外へ漏れないように心の中で叫び声をあげる。
その叫びが伝わったのか、指が引き抜かれ、今度はぬるりとした感触のものが美雪の中に進入してきた。
それは美雪の中でいやらしく蠢きながら、しかし確実に、弱点を刺激してくる。
舌だ。
気づき、やめてもらおうとも思ったが、それの動きは美雪の快感を引きずり出す。
その感触に酔っている自分、もう、このまま明智とひとつになりたいと思う自分に、美雪は気づいていなかった。

一方明智は、美雪の反応を楽しみながら愛撫を続けていたが自分にも限界が近づいているのを感じていた。
確実に美雪は自分に感じている。自分を受け入れてくれるだろう。
自信はあったが確信はなかった。

土壇場で拒否されたら−
その考えが頭をもたげ、一線を踏み出せないでいた。
しかし、このままではもう自分も限界だと、行動に出る決意を固めた。
秘所から顔を離し、美雪の体に覆い被さる。
ぶつかる視線。
何を思っているのだろう。
視線を合わせたまま沈黙が続く。

「あの…」

重なった2人の声が静寂を破る。
口をつぐむ美雪を見て、明智が切り出した。

「キミを抱きたい。」

返事がない。明智の頭に嫌な予感が過ぎる。
それを振り払うように美雪の首に唇をおとし、今度は耳元で囁く。

「やっぱり、私では嫌…ですか?」

耳元に感じる吐息。火照った体は確実に明智を求めている。
だが、ここにきて美雪の脳裏には金田一の顔が浮かんでいた。

(はじめちゃん…)

明智の澄んだ瞳がじっと見つめてくる。

「私ではダメなのですか?」

美青年の憂いを帯びた瞳は、美雪の心を大きく揺れ動かす。

「はい…」

かろうじて聞き取れるぐらいの大きさの声が明智の耳をかすめた。

「私を選んでいただいたこと、決して後悔はさせません。」

再び明智の暖かい唇が重なった。

明智を受け入れると示した今、もう美雪に迷いはなくなっていた。
後悔はない、自分に言い聞かせ、明智の濃厚なキスを受け入れる。
ふと、美雪は下半身に感触を感じる。
明智のすでに硬くなったものが美雪の入り口に宛がわれたのだ。
それはゆっくりと美雪の入り口を小さく掻き回す。

「あっ…」

息を呑む。
しかし、それは侵入してこない。焦らすように、同じ所を徘徊する。
美雪の入り口がピクピクと反応するのが伝わると、それはさらに硬さを増す。
そして、ついにそれはゆっくりと美雪の中に侵入してきた。
圧迫を感じる。声を出しそうになるが、口は明智のそれに塞がれていて声は出せない。
明智の方も、美雪の中が想像以上にキツいので慎重に腰を進める。
一瞬、何かが侵入を阻んだ。美雪の顔が強張る。

(高遠に破られたのではなかったのか?)

疑問が頭を過ぎる。
そのままゆっくりと根元まで挿れると、美雪の唇を開放した。

「明智さん…」

明智を見つめる目には涙が浮かんでいる。
このとき、全てを悟った。

「もしかして、高遠には最後まで…その…」

はっきりと言葉に出来ず、どもっている明智の言葉の意味を理解し、美雪は頷いた。

「ああ…」

安心とも驚きともつかない、大きな溜息をつく。

「不幸中の幸い、ですか。」

ゆっくりと腰を回す。

「しかし…私は嬉しいですよ。キミの本当に初めての相手になれて。」

軽く、優しい口づけをし、耳元でささやく。
その言葉、吐息は美雪を感じさせるには十分すぎる。
腰を少し引き、ゆっくりと挿れると、またも美雪の表情が強張る。
その痛みを逸らすように、舌が首筋を這い回る。
溢れ出す愛液が2人の性器の潤滑油となり、動きがスムーズになってきた。
美雪の痛みは徐々に違うものへと変わる。
それは今まで感じたことのない感覚。
その感覚が研ぎ澄まされるほどに、明智のことがいとおしく思えてくる。

「あっ…あんっ…」

自分でも信じられないほどに、声は艶を帯びる。
リズミカルな腰の動きにいつしか痛みは完全になくなった。
明智自身を締めつける。今までとは違う感触。美雪は感じている、その確信が明智を大胆にした。
幸い、まだ余裕は十分にある。少し遊んでみよう、と悪戯心が良心を支配する。
自分を受け入れると彼女は言った。だったらもう、抵抗はしないだろう。
邪な考えが先行する。明智は自身を引き抜いた。
快感を感じ始めていた美雪は、引き抜かれたことに拍子抜けし、それ失った秘所は、名残惜しそうに閉じてゆく。
無意識に、潤んだ瞳で明智を見つめていた。その瞳は訴えかけているかのようにも見えた。

「安心してください。まだ終わりにするつもりはありませんから。」

言うと、今度は美雪を自分の前に座らせる。おあつらえ向きに、美雪の前には全身鏡が立てかけられていた。
足を開かせ、固定する。
鏡の中で、明智の愛撫で愛液が溢れ出している秘所がいやらしく光る。
そこに、剛直が迫ってくる。美雪にとってはじめてみるそれは、2人の愛液で装飾されていた。
美雪の中に入ってくる。見ていられなくなり、目を逸らすと耳元に熱い吐息を感じた。

「ちゃんと見てください。キミと私がひとつになっている姿を。」

どうしようもないぐらい恥ずかしいが、なぜか嫌ではなかった。

明智が腰を動かし始めると、違う角度からの刺激が体を突き抜ける。
思わず、身をよじらせる。
熱い吐息が首筋に注がれる。

「最高ですよ、キミの中は。」

明智の言葉がとてもいやらしく感じ、身を震わせる。
両足を明智の腕に持ち上げられ、足を大きく開かされている。
その中心に明智の剛直が深く突き刺さり、美雪を犯してゆく。
そんな光景を鏡は有態に映し出す。
鏡越しの、恥らう美雪の表情はなんとも言えず扇情的だ。
正面を直視できない美雪の視線は宙を舞う。
明智が体を動かすと、その動きに合わせて美雪の体も上下する。

「はぁん…」

腰を大きくグラインドさせると美雪の口から声が漏れる。

「私を感じてくれていますか?」

囁きかける。返事のかわりに美雪の中はさらにきつく明智を締め付けた。

今度は美雪を自分の上に跨がせ、横たわる。
美雪はどうすればいいかわからず困惑の表情を浮かべている。

「好きなように動いてみてください。」

明智の言葉に戸惑う。

「早くしないとやめますよ。」
「そんな…」

自分で言って驚いく。今自分はそんな言葉が無意識に出るほど明智を欲していたのか、と。
明智を見ると満足そうな笑みを浮かべている。
とんだ痴態だ、と後悔するが時既に遅し、明智の腰が突き上げてきた。
快感が体の奥から湧き上がってくる。と、思うと明智の動きは止まる。
美雪はその快感の続き欲しさに自分の腰を動かした。

「ああ」

明智の口からため息が漏れる。美雪の動きにちょっとしたアクセントをつけると、美雪の動きは激しくなってくる。

「なかなか、お上手ですよ。とてもいい。」
「そ、そんな…」
「恥ずかしがることはありません。褒めているのですから。」

上半身を起こし、美雪を抱きかかえる体制をとる。
美雪の胸に、突起に舌を這わせてゆく。

「あんっ…」

美雪から艶かしい声があがると、自身がキュッと締め付けられる。
明智にも限界が近づいてきていた。

美雪の体をベッドに横たえ、覆いかぶさる。
片足を腕で抱え上げ、大きくピストン運動をする。

「キミの感じている顔を見せて欲しい。」

見つめつつ、恥ずかしいセリフをさらりと口にする。
他の誰かが言えばギャグになってしましそうだが、明智が言うと何故か扇情的だ。
突かれる度に声が漏れる。恥ずかしがっている余裕はもうない。
明智も余裕がなくなり、無意識に腰を打つスピードが速まってゆく。

「あああっ…明智さん!!」

名前を呼ばれたことで確かに、自分が美雪を抱いているのだ、と再認識する。
もう我慢できない。
体が激しく動く。

「あんっ…なにコレ…?」

美雪の体にも変化が起こっていた。

「なんか…ヘンです…」

美雪の言葉は、イきそうなのだ、と、明智を確信させた。

「ヘンではありません。それが、私を感じてくれているということなのです。」

自分の下で乱れる美雪を見た。その上気して赤く染まる顔は明智の欲望をさらに上へと押し上げる。
この顔を知っている男は自分だけだ、という思いが明智の支配欲を満たしてゆく。
壊れそうなほど、再奥を突き上げると美雪の中が噛み付くように明智を締め上げた。
それと同時に美雪の中へ流れ込んでゆく明智の欲望。
繋がったまま、明智は美雪の体を優しく抱きしめた。

「七瀬さん…」

腕枕をしたまま語りかける。

「最高でしたよ。」

意表を突く言葉に美雪は言葉を失う。

「気を悪くされたのなら謝ります。が、私にとっては最高のひとときでした。」
「そんなことはないんですけど…その…」

言葉に詰まる美雪の言いたいことをすばやく読み取ると、先手を打つように言った。

「大丈夫ですよ。妊娠を心配しているのでしょう?」

どういう意味の大丈夫だろうか。
あまりにもあっさり大丈夫と言われたので美雪が考え込んでいると、

「もし、できていたら、私が責任を取って差し上げますよ。」
「えっ!?」

素っ頓狂な声を無意識に発する。

「私ではご不満ですか?」

冗談なのか本気なのか真意を測りかねていると、それを見透かしたように、

「大丈夫です。私はキミと子供を養っていくぐらいの余裕は十分ありますから。」

と笑った。

「それに、私としてはまたこういう機会があることを望んでいるのですが。キミもとても気持ちよさそうでしたしね。」

美雪の頬が膨れる。

「もう、明智さんったら!知らない!!」

ぷい、とそっぽを向く。

金田一にはいつもこういう表情を見せているのだろう。しかし、彼に見せたことのない表情も自分は知っている。
彼女のことで、明智は初めて金田一に優越感を覚えた。

「私の側にいていただけませんか?」

美雪の長い黒髪を撫でながら、呟くと美雪の頭が縦に揺れた気がした。






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