我らの生きる道-3
番外編


タテジワが棒を振るい一匹のダークアイを突いた。ダメージを受けたダークアイはへろへろと地に伏した。
2匹目のダークアイの反撃。一斉に一つ目からビームが発射される。

「ぎょっ!?」

タテジワは時々転びながらもうまい具合に避ける。

「お前は中々見込みのある戦力だと思ったが…残念だ」
「ふ、副隊、いくら何でもこれは…」
「当然の報いだ。素直に失敗を償えばよいものを」

話しかけられ気を緩めた隙にまたビームが放たれた。その光線はタテジワに命中した。

「ぐあっ!!」

幸い彼の腕は掠めた程度で済んだ。当たったところから煙が立ち獣毛が剥げ皮膚が焼け爛れている。
罪悪感、屈辱、苦痛、恐怖が混じりタテジワは震えながら棒を握り直す。

「どうした、観念したのか」

上司の声に負けじと、痛みに耐えつつ連射されるビームを必死にかわしながらまたもう一匹のダークアイに立ち向かう。
飛びついて棒とビームが一斉同時に出た。まさに相打ちである。
棒で突かれたダークアイは突き飛ばされ地面に舞い落ち、タテジワは腰辺りにビームを触れ、着地に失敗しながら転ぶ。

「うっ…!」

光線で焼かれた箇所押さえながら彼は棒に寄りかかり立ち上がった。
打たれた所からは服と獣毛が焼かれ抑えてる指の間から赤い液体のような物が付いてかすかに煙が立つ。

「ん? おい、もう一人はどこにいった?」

上官の言葉にん?そういえばと思いながら辺りを見渡すとクロコの姿がない。
まさか、この後ろの滝に落ちたのか…?と考えたくもない予想をしていた刹那。

ザシュザシュ…!! 

余所見をしたまま物を引っかく音が耳に入る。
タテジワは首を元に戻す。ふとみるとダークアイの数匹が着地して伸びていた。
その傍にクロコは膝まつき鉤爪を元の手の形に戻した。
空上高くジャンプしダークアイを引き裂いたのはクロコである。

「残ったのは貴方一人だけです…」
「くっ…」

もう目の前のダークアイは全て片付いた。その一部始終を見た上官は後ずさりをする。

「おのれ…、そこで待ってろ!すぐに応援を呼ぶからな!!」

そう言い残し上官は二人の前を去った。

「はぁはぁ…やった…?」

疲労と安堵感でクロコは腰をつく。

「否。このまま基地に帰って報告する気だ。この基地が近くでは逃げる時間も間に合うまいしもっと数が多いことだろう」

後ろにある崖を目にしながらタテジワが口を開いた。

「友よ。このままではいつかやられる。方法はただ一つ、この滝を飛ぶことだ」
「そんな!こんな激流じゃ助からないわよ!!」
「逃げ道はなく副隊は我らを見逃すつもりもない。汝はそんなに臆病な性質ではないはず」
「でも……」
「このままではいずれやられる。早く心を決せよ。過去の同志とともに運命を歩む気か?」

それもそうだ。運命を受け入れようとした彼は自ら救いを求めていないのに
こうした騒ぎが起こった原点はクロコが始めたことだ。
もっとも先ほど上官の手によって命を絶った後輩のアドバイスによるものだが。 
ここで死ねば全てが無駄になってしまう。クロコは決心してタテジワに従うことにした。

「…わかった。それしか方法はないかもね」
「…御意」

タテジワは暗闇の彼方の森に視線を向けた。

「もし我らが生き延び離ればなれになってしまったらあの大樹に戻り再会しよう」
「…うん。いつもの二人だけのあの丘…」
「さて行くぞ」
「ええ」

二人は呼吸を整え手を握りながら、崖へ飛び込んだ。急降下の末、滝の壷へと沈んでいく。
生き延びたらまたあの丘でたっぷりの時間でたっぷりの話ができることを祈りながら…。

流されてどんなに時間が経ったのだろうか。
全身に締め付けられるような冷気、ひりひりと疼く火傷、息が詰まるような圧迫感、
そして前面顔面に凸凹して押さえつけられる感触…
段々呼吸が苦しくなり思わず背を反り曲げる。

「っはぁっ…!! うっげほっがほ…」

水面から起き上がったのはタテジワだった。
喉奥に入った冷水に咽る。顔から滴る水を拭い目をこすった。
自分では全く検討のつかない河原に這いていた。

「ここは一体…」

水を吸い重くなった衣類を見につけながら河原の上を立つ。

「友よ!! いずこだ!!?」

濃い水しぶきの霧の中、彼女の名を叫ぶ。
ふと見ると霧の向うから橙色の布のような物が水面に浮いていた。
ひりつくケガを堪えながらそこに駆寄る。仰向けに倒れていたクロコだった。
彼女は上半身は陸地に置いており、着水しているのは下半身のみである。

「しっかりしろっ、おい!」

びしょ濡れの彼女を揺すりながら呼びかける。
我を忘れて小難しい言葉遣いを気にすることも間もならない。

「ん…う…かはぁっ…っ!」

口から水を溢れ吐き出しながらクロコは意識を取り戻した。

「はぁっはぁっはぁ…こ、ここは…」
「分からん…されど共に無事で何よりである」

タテジワは彼女の生存が確かと思うと胸を撫で下ろした。

「どっか休めるところないかな…」

クロコは呟いた。この激流から生き延びる確立は低かったとしても
追っ手がつけられていないるとも言いきれない。そうなればこのままじっとしているのは危険だ。
二人は方を貸し合って岸へ渡った。しかし体重を支えているのはクロコの方である。
タテジワはさっきの戦いで傷を負い、まともに歩けないのである。
時間をかけ足を引きずるように歩き続けた末に、祠のようなものを見つけそこへ入りしばらく休むことにした。

「はぁはぁ…大丈夫?」
「御意…」

彼も額に汗が浮き出ている。無事に到着したと思いクロコが彼をそっと手放すとタテジワはどっと尻餅をつく。

「ほ、ほんとに大丈夫!!?」

彼女は駆け寄り顔色の様子を覗く。

「わ、我の身にかくも擽りの如く冷気と怠惰感が駆け巡れたり……」

あまりにもタテジワの顔色が悪く辛そうなのでクロコは彼の額に触れてみる。
熱い。微熱がある。傷口から細菌が侵入したのか、それとも冷水で体が冷えたのか、
どちらにしろ彼を少しでも楽にしなくてはと、クロコはマントの内側の小物入れを探り保温が出来そうなものを手探りした。

その間に隣から金属音がした。ちらりと横目でみると、タテジワはアーマーを外しだし、下に着ているシャツも脱ぎ水気を絞っていた。
石床に水滴がポタポタと落ちる。その雫は少しクロコの膝にもかかる。

「あ…、脱いじゃって寒くない?」
「笑止。濡れたまま寝入るば余計に体力を消耗せり」
「…そう」
「御意。兵士の知恵なり」

そう言い壁に手をかけ足をふら付かせながら手頃な突起にシャツを引っ掛ける。アーマーはその場に置いたままだ。

「あ、あった…けどちょっと湿ってるけど…」

クロコが小物入れから取り出したのは包帯、火種、塗り薬などの簡単な救急用具だった。

「ほう、用意がよいな」
「えへへ、軍医とかやってるから…」

そういいながらクロコもマントを脱ぎだした。

「お、おい同志よそんなところで!」

予想もつかない展開にタテジワはギョッとした。
こんなところで直々に女性の脱衣が至近距離で目にしてしまうのは生まれて初めてだ。

「だって、濡れたまま休んだら余計疲れるって今言ったじゃない。それに誰もいないし」

恥らうように自分の湿ったマントで胸を隠しながら答える。
顔をそらしつつちらちらと彼女の姿を横目で見、よい体をしているなと思いつつ
タテジワは微熱で頭がぼんやりしながらも彼女の持ち合わせと度胸に驚き感心する。
しばらく落ち着いて、上半身裸の彼の腕が気になるクロコ。

「傷、ちょっとみせて…?」
「こ、これしきの傷など…」

タテジワはそっぽを向き腕の傷を余った手で隠した。

「だめ。傷からバイキンが入ってる可能性があるのよ。その発熱だってその原因かもしれないわ」

彼女の説得力にしぶしぶ火傷して剥げている腕を伸ばす。

「組織にウミができちゃうじゃない。ちょっと待って、今薬を…」
「う…ぐっ」

彼女に薬を塗られ触れる都度に痛みだす傷に耐えるタテジワ。
まずは先に目に入った腕の傷に薬を塗り包帯で巻くクロコ。

「他にはない?」
「そ、その…足が」
「足?」

彼が訴えた足に視線を移す。ズボンは腰から内側まで焼け破れており下着まで貫通していることに違いない。

「ちょっと下ろちゃっていいかな?」

彼女が尋ねるとタテジワはぎょっとした。こんなところで秘所を含む下半身を露にするとは流石にしたことがない。
それがだんだん恥ずかしくなってきたが…

「……許可す」

タテジワは顔をそらしながらおずおず承諾し終えないうちにクロコはゆっくり彼のベルトを外し下着と一緒に下ろしていく。
下半身が腰から露になっていき、ビームで受けた傷は腰から内太ももまでラインを描くように負っていた。
そのライン端の下腹部には他の毛皮より少し長い毛皮とその真下に鼠色の獣毛に覆われた弛緩している雄のモノがあった。
一つダメージを受ける箇所を間違えれば、女性には理解できない激痛にタテジワは悶絶していたことだろう。

「えっ」
「む、ど、どうした?」
「い、いえ、何でもない…」

クロコはふといつぞや自分の後輩のことを思い出した。そう、以前快楽というものを教えられること…
そしてここが一番メインな所だと…後輩の手でやる前に自分の手でしたところ…
そこがそことない快感を味わうところ… しかし自分のモノとは何か形が違うような気がする…
自分は穴… 彼は突起…… もしかして… …はっ、いけない、私なに考えてたんだろ。
気にはかかるが今はそんな変なことを考えてる場合じゃないと言い聞かせ
とりあえず塗っとけとクロコは彼の足の傷に薬を塗りたくる。

「がっ…ぐっ……っ、さるば、もうちと軽めに…してくれるば有難い……」
「あ、ごめん」

塗られてまたタテジワも痛みに反応し体を痙攣させる。
共に股関節にまで指が近づく都度、腰の奥から甘い電流のようなものが流れてくるのを感じた。
続いて包帯を巻く作業にうつり、塗ったところを覆うようにぐるぐると太ももから足の付け根にかけて巻きつける。

「……っ」

タテジワがまた反応し体をぴくりと動かす。

「あ、ごめん、痛む?」
「否。痛感ではない…」

毛が焼かれ地肌がむき出しになっているためか包帯の肌触りが妙に心地よく
巻かれる都度に引いている包帯が知らず知らずにタテジワのそこに当たってしまうのだ。
故にそこはさっきよりも大きく膨れ充血し脈を打ち先端に突起のような赤い肉色が顔を出している。

「……」

その様子をクロコは足腰に巻き終えピンで止めながら先ほどから彼のそこが気にかかり横目で観察している。
どうしてだろう… あの時と同じように… 感じてるの… すごく… 何かひくひくして… 気持ち悪いような可愛いような…
気になる気持ちを抑えきれずピンを止めるふりをして余った手で彼のそこに手を伸ばす。
触ったからといって、特にどうと言うわけでもないはずと軽い気持ちで。
指が敏感な所に触れると、タテジワは思わず腰を引いてしまう。

「…ん…」

二人は戸惑いを覚えた、だがそれ以上にお互いが何を考えているのか分からなかった。
どうしていいのか分からない…何だか互い体が熱い…互いに妙に可憐に見えて…クロコの脳裏にまたあの時のことが甦った。
皆が寝静まった夜、後輩が最後にやり過ごしたこと、気にかかって自分で自分のそこを弄っていたこと。
そこを弄り続けると妙な感覚に溺れてしまうこと……性別による形が違っても感覚は同じなのを悟る。
クロコは無性にタテジワのそこをしつこく弄り続ける。

「うっ… 同志よ、何を…あぁっ…!!」

指で筋をなぞり握り擦り、口にくわえ吸い付き舌を動かすと、どんどん硬さを増していく。
タテジワは腰をびくびく痙攣させながら、この世とない快感に蝕まれていた。
男女二人のみの状況でどぎまぎしていた様子から、おそらく彼もこんなことは経験したことがないようだ。
その様子を見ながらクロコも知らず知らずに余った手で自ら自分の秘所にも愛撫、抜き差ししている。
とても人には伝えがたい感覚、恐怖、廉恥が二人の脳に交じり合う。

「はぁ…はぁ…っ ん…ぐぅ…」
「あっ…はぅっ…!!ど、同志…」

祠の中でピチャピチャと淫らな音が響き二人とも顔が羞恥に赤くなり呼吸も荒くなる。
といっても、クロコは肌黒のためあまり目立たず、タテジワの方は獣毛で覆われて地肌が隠れてるため
見ただけでは分からないが、自分自身らの熱る全身から互いにそうなのだろうと気付いた。
クロコはタテジワの全身を自分の鏡位置に覆いかぶさるように乗っかる。
タテジワには彼女の水滴の摩擦でべとついた肌の感触、クロコには彼の少し湿った毛皮の感触、互いの体温、鼓動が伝わり感じあう。

「んっぅ…」
「ぎょっ…ぃ」

そして互いのものを接触し、クロコは自分のそこをタテジワの完全に硬直したものを入れてみようと試みる。

「くっ…よ、よせ同志っ… そのようなもの入るわけが…」
「い、いや…」

タテジワの制止を押し切り彼女は首を横に降り、尖った先から少しずつ入れていく。

「…んっ」
「あぁ…あ…」
「ご、ごめん…ね… あまりにも…よくて…」
「………致し方ない……」

これではキリがないと思ったタテジワはクロコのすることに答えてやろうかと思い勢いよく腰を前に突き出す。

「ああっ!!」
「うっ!!」
「……はぁっはぁ…」
「す、すまない… 痛むか?」

力加減を間違ってしまったのか、突然悲鳴をあげたクロコに伺う。

「ご、ごめん…だいじょうぶ…。 大きいからびっくりした…だけ…」

これしきのもので大と言うば我の仲間のは……
彼女の言葉にタテジワはふと昔の同志達と入浴していたことを思い出したがタテジワは言わないことにした。
それにしても何故自分達はいつの間にこんなことをやっているのだろうと
疑問を浮かべつつも知らず知らずに腰を動かし飢えを体温と快感で施す。

「あ… う……」

タテジワは体の奥から何かが熱を持ちこみ上げてくるのが感じた。
腰骨が砕けそうになるというのに、腰の振りが止まらない。快感が二人の理性を狂わせていく。

「うっ…はぁっはぁ…」
「んぁぁっ…っ!!」

やがて二人の快楽は頂点に達しタテジワは硬く背を反らした刹那、彼女の中で彼の生温かい粘液がどくどくと脈を打ちながら入ってくる。
クロコも彼に乗っかったまま上体を伏せ果てた。
敷かれているタテジワの内太股からは練乳のような体液が股を伝い石床に垂れ落ちる。

「はぁっはぁ…っ…」

興奮が冷めた倦怠感。 襲い掛かってくる睡魔。 二人の意識は暗い場所へと沈んでいった。







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