我らの生きる道-4
番外編


気付くと洞窟の出口から小鳥の鳴き声と朝焼けの光が差し込んでいる。
無意識に閉じていた目を開く。瞼は重くやや視覚がぼやけているようだ。
味わったことのない快感と水温による体力消耗により昨夜の営みが終わった後
すぐに気絶しながら寝入ってしまったようだ。

「友よ、おい」

最初に目覚めたタテジワは自分の上に乗っかっているクロコを揺すり起こそうとした。
その際、昨夜から刺さったままの自分のそこが音との振動で微動する。
それに反応したのか、夢心地でクロコも微小に眉間を歪めたが、夢から覚める気配がない。
しばらくしたらどうせ起きるだろうとタテジワは彼女のそこから引き抜き自分の隣に移させた。
自分のそこは水飴の如く糸を引き、体液で日光がぎらぎらと反射していた。
敵襲はいないか確認しながらタテジワは祠の外へ出た。
そことない快晴の空の太陽の光が彼の視界を眩ませる。
安全を確信するとタテジワは生まれたときのままの姿で自分達の流れ着いた河原に入り
クロコが施してくれた体に巻きついている包帯を外し始めた。
包帯で隠された戦いの跡の体毛は禿げていたままだったが傷口はすっかり塞がり腫れも引っ込んでいた。
薬と血液で汚れた包帯を水に浸し、自らの体を擦り汚れを落とす。
初春の冷水が体中を伝い、冷たさが足に痺れと傷が痛みを襲うが基地で日夜こき使われる苦しみに比べれば大したことはない。
「うう、ちめたっさむっ…」

水濡れた全裸全身が北のそよ風を受け、思わず自分らしくない口を滑らす。
さりげなく横目をすると人影が立っていた。眠っているはずのクロコだった。
彼女は自分のマントで前の胸からしたを隠しながら立っていた。
クロコは何時から自分の一部始終を見ていたのかタテジワは驚いて思わず包帯を持った両手で股間を隠す。
両手はそのまま、彼女のもとへ近づき岸に上がった。

「友よ、いつ目覚めた?」
「い、今だけど…」

クロコは顔を背けながら目線を彼をちらちらと目移りしている。
昨夜の営みにより異性との付き合いに羞恥心が芽生えたのだろうか。
そうなれば誰もいない二人だけの空間とはいえ表でこの格好では流石にまずい。
タテジワの頬が羞恥に赤くなる。獣毛に素肌を覆われているもののクロコには分かった。
クロコはやや自分より身長の高い彼に抱きついてささやく。持っていたマントははらりと地に落ちた。

「タテジワ…」
「う…」

タテジワの肋骨辺りに柔らかなものが当たるのが感じた。クロコの小さく膨らんだ胸である。

「お、おい…友よ」
「ううん、何でもない」

二人はそのままじっと抱きついたままだった。

しばらくして二人は祠に戻り各々着替え、これからどうするか二人きり話し合う。

「さて、どうしたものかな」
「えっと…どうしよう…基地だって私達の家だしね…」
「基地か…」
「…あ、ごめん。私のわがままでここまで…」

タテジワは基地にいたときに一緒にいた同志達の顔が思い浮かぶ。

「否。汝は我のために…」
「……」
「我が同志も言っていた。何があろうとも我々は味方だと」

彼のフォローでクロコは反省と後悔とともに黙ったままだった。

「友よ」

タテジワが口を開く。

「戻っても斬り捨てられ我らは行く宛なし。かくなる上は宛てもなき放浪せざるおえぬ」
「……」
「友よ。元はといえば汝が起したことだ。それなりの覚悟はできてあるまい?」

クロコは静かにうなずいて承諾した。確かにタテジワの運命を変えたのは自分だからだ。
この先昨夜の危険な戦闘によりも危険なことが起きることが
二人一緒なら何でも乗り越えられるとクロコは信じていた。

「分かってる。あんな奴からやっと逃げ出せたんだもん。それに…」
「それに…何だ?」
「あの子の犠牲は無駄にしない。二人一緒にどこかで幸せを探すの!」
「…御意」

タテジワはふっと微笑み、クロコは浮かれ気味で静かにはしゃいでいる。
祠の石床に残った温もりを後にして、二人は大快晴の日の下新たな旅道を彷徨いながら歩みだした。






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