我らの生きる道-2
番外編


「さぁアネさん、この続きをおれっちとする気にはなりましたかい?」
「付き合うってこういうことだったの…」
「だってアネさん、今まで彼氏なんて作ったことなかったでしょ。模範練習」
「そう…でも何か違う気が…」

そういいながらも彼に自分のマントは脱がされ黒い素肌が露になった。

「いやぁ、いい胸してますねアネさん。まずはここをやさしくねぇ」
「あ…」

後輩はクロコの胸元から腹にかけて愛撫する。思わずその感覚にクロコは声を漏らした。

「そんでこうしてあーして…」
「きゃっ、何するのよ…んぁぁ…」

後輩の手は休まず彼女の発達した乳房を揉みしたぎ、刺激を与えていく。
最初は困惑していたクロコも刺激されるにつれ、自分が自分でなくなってしまいそうな感覚に陥っていた。

「な、なんか…ヘン…」
「アネさん、こうゆうの始めてっすか?」

羞恥に体が火照りながらも彼女はこくこくと頷いた。

「そりゃちょうどいい。これはほんの序の口っす」
「…えぇ?」

後輩クロコは意地悪っぽくにやついて彼女の太股を開かせる。その真正面には彼女の陰割があった。

「きゃっ!?」
「メインディッシュはここっすよ」
「メイン…」
「ここを口でちゅうーって、ベロ突っ込ませたり、アネさんにとってこの世とは思えないくらいの心地っす。
もちろんここの形が違っても気持ちいいっすけどね」

彼はそっと顔近づけ、彼女のそこに舌を触れようとしたその時だった。
ドタドタと部屋の外で物音がした。その音はこの部屋のドアに近づいてくる。

「?!」
「やばっ、早く着て!」

彼はがばっと彼女のそこに触れる直前、上体を起こしそばにあった彼女のマントを投げ渡す。
彼女も気まずい雰囲気を悟りすぐにマントを着た。
着終わったと同時に、部屋のドアが開いた。他の雄クロコ達が入ってきたのだ。

「はぁはぁ…あ、そこにいたのか」
「や、やぁクロコにクロコ」
「すぐに着てくれって上司が言ってたんだ。お前達の手を借りたいんだよ」

さっきの行為が悟られていないかと、二人は顔を見合わせあった。

「あ、そうか…じゃあおれっち後で行くわ。お前達先に行ってて」

彼はそう言うと先ほどのクロコ達は部屋を後にして走り去っていった。
言ったことを確認すると、後輩は彼女に一枚の紙を渡した。

「じゃあ、そういうことっすから。方法と地図はここに書いてあるっす」
「え、ええありがとう…」
「それ見つからないように気をつけてチェックするっすよ?じゃ、お先っす」

そう言い残し後輩クロコは同僚を追うように部屋を飛び出した。
彼女も今渡された紙を広げ流すように読むと、静かに懐にしまい
誰もいなくなったクロコ専用の部屋を後にし3人の跡を走った。

同時刻、タテジワ隊はその頃、見知らぬ森で彷徨っていた。
上官の指示で少数人の班に分かれ、今は3人グループでフィールドを偵察することになっている。
その場、上官からの目が届かなければ行き先の自由を縛られないので逃げるなりすることは可能だが、
彼らの上空には常にダークアイという監視用モンスターが行為を見張っているため不穏な行為はできない。
期間以内で人間を見つけ倒さねば、亡き同志と同じ運命を辿ることとなることを
拒否しつつも彼らは歩き続け、獲物を探す。

「重々無謀なる任務をつけるとは不届き千万」
「いかにも御意」
「……」
「どの道我らとて残り僅かの命。資金を使い果たす煩悩あり」
「同志よ、この近くにメケメケの雄叫びを耳する去来せぬか?」
「……」
「否。上に我らは魔族。人間どもに相手せる資格なき者」
「笑止、もしかすると中に我ら魔族に心を開く人間がおるまい?」
「……」

いつになく彼ららしい内容が単純で重苦しい口調だが、これでも彼ら独自の愚痴である。
しかし、その内の1人は沈黙の連続。あのクロコに心を解き放たれたタテジワだった。

「…同志よ、何故黙っている?」
「……」

その様子に彼の同僚であるタテジワが気付き問う。しかし、返事がない。

「同志よ」
「……」
「同志ってば!」
「……っ?」

急な言葉遣いの変化からか、やっと彼は返事に気付き振り向いた。

「同志よ、何やら最近奇怪な態度の疑惑あり。何があった?」
「…………しょ、笑止」

彼はそう言って事実を拒否した。しかし、同僚達にはそのおどついた様子がはっきりしている。

「我らはどの道逝く者。死す前に可能であれば協力せぬことはあるまい」
「いかにも御意。我の思考腺に『きっかけで伝説に残るかもしれない』という思考が去来せり」

ずいずいと二人そろって一人の同志に近づいてくる。

「実は…」

タテジワは同志達にいままでのことをさらけ出した。監視に聞かれぬように注意を払いながら。
事情を聞いた同志はしばらく黙って台詞の案を練る。

「承知せり。同志の気持ちしかと我らの手で叶わせよう」
「誠か同志よ? しかしそのような安易に…」
「笑止。我らはこれまで幾度なく苦労を分かち合ってきた者」
「我の脳裏に『困ったときはお互い様。死ぬなら最期ぐらいすごいことをかませ!』という天の声去来せり」
「……同志よ、かたじけない」

仲間の応援にタテジワは嬉しさを躊躇った。

「さぁさぁ、恋愛に満ちた同志をせめて死力をつくされよ」
「おー!!」
「ど、同志よ、我は別にそのような関係では…!!」

それとともに“恋愛”という言葉に今まで生きてて味わったことのない羞恥心を覚え、
常に気難しい性格の種族の一人である彼はついムキになり反論した。他の二人は道を先走っている。

その夜、一日の仕事を終えたクロコは部屋のベットで横になっていた。
今頃彼、タテジワはどうしているのだろうか…それと
昼間後輩の最後に仕掛けたことが気にかかっていて中々寝付けない。
ここを口で、舌で…そんな言葉が脳裏から出てきた。
隣周りにいる他のクロコ達が寝静まったところを狙い、布団の中で手探りで自分の股間に手が伸びる。

「…!!」

触ったからといって、特にどうと言うわけでもないが
指が敏感な所に触れると、思わず腰を引いてしまう。
クロコは戸惑いを覚えた、だがそれ以上に自分が何を考えているのか分からなかった
どうしていいのか分からない…何だか体が熱い…

「……」

どうしたんだろう…、こんな事は初めてだ…何だか…ヘンな気分…、頭の中がもやもやする…
なぜか触っても触り足りなく、いくら触っても気持ちがおさまらない…
色んな事が頭の中を駆け巡る人には言えないとてもはずかしい事を
クロコは布団にもぐったまま、自分のそこをいじり続けていた。

「ん…んん…」

何だか…触り方を変えると、違う感覚がやってくる…
何と言うんだろう…くすぐったいような…気持ちのいいような…

「んん…くっ……」

指でなぞるだけでなく、そこのくぼみに指を抜き差しをしてみると、味わったことのない感覚に酔いしれる。
だんだん手を動かす速さを大きくしていく
…すごくなんか気持ちいい、すごく……動かすたびに、腰足の痙攣が止まらない。そして…

「はぁっ…あっ…!」

足の間から生暖かくぬるぬるしたようなものが伝わるのが感じた。
あまりの感覚に、私は思わず体を仰け反らせてしまった。

「はあ…はあ…はあ…っ…。」

それと同時に体の力がどんどん抜けていく
一瞬の出来事だった、今の感覚は何だったのか…このぬるぬるは何なのか…
自分の頭の中がぼんやりしている間に、訳もなく急に睡魔が襲い、クロコはその晩眠った。

それから2日後の夕方、クロコが厨房の皿洗いをしているところ、覗き窓から怒鳴り声が響き、
前後に付く上司の間に傷だらけで手錠をかけられたタテジワの数人が歩いているのが見えた。

「こらっ!しっかり歩け!!」

一瞬、その内の一人が横目で彼女を見つめていたようにも見えた。彼はそこにいたのだ。
これから彼らは勇者を含む人間に敗れたことを報いにして、その身の命の炎を消される運命に佇んでいる。
しかし、クロコはその時を待っていた。今夜彼を助けるため考えを練っていたのだ。
死んじゃだめよ、待ってて、今助けにいくからね…!!心の中で自分に誓った。

その日の深夜、クロコは寝静まった廊下を静かに駆けていた。
以前、後輩がくれたメモに書いてあることを頼りにマップを記憶し、タテジワの元へ進んでいく。
彼は処刑されるまでに頃合まで牢屋に入れられるため、しばらく時間ができるはず。
メモの通りあらかじめ基地の近くの草原に生えていたネムリソウを採取し、
彼が捕まっているはずの牢屋を前に壁に張り付き除いてみた。
上司が牢の外で数名の死刑囚を見張っていた。
タイミングを見計らってネムリソウを嗅がせて眠らせ、その隙に彼を抜け出させるという寸法だ。
見張り番もボスに長年こき使われ、疲れているのかこくりこくりと首を縦にゆらしていた。

「よし、今だ!」

クロコは小さく叫びネムリソウにマッチの火を点け、牢の部屋へ放り投げた。
草は緑色の煙を立ちながら、ちりちりと燃える。

「うわっ!!なっ、なんだっ!?」
「こ、この匂いは…げほっげほっ……」

すると見張りや牢の中の囚人は煙にむせながら、次々ばたばたと倒れた。
しばらくして部屋からの寝息が聞こえるとクロコは見張りの腰についている鍵をくすね
牢屋の鍵を開け、タテジワネズミ達の部屋へと侵入した。しかし…

「えっと…あ、ど、どうしよう。全員じゃバレちゃうしなあ…」

一つ問題が。今のクロコの観察力では自分の知っているタテジワの顔が
他のタテジワネズミと見分けが付かないのだ。自分はクロコであり他のクロコ達なら見分けが付くのだが…。
ふと一人のタテジワに目移りすると、一瞬光るものが目に映った。
気のせいかと思い視線を少し動かすとやはり同じ場所に小さな輝きが再び映った。
まさかと胸で呟きつつその場を近づき顔に穴が開くように見つめる。
そのタテジワは右耳にピアスを着けていた。そのピアスは小さな黒真珠でできている。
その周りにがびついた体毛に赤黒い塊もこびりついていた。
おそらく彼は耳たぶに穴を開けたことがなく、強引に空け装着したのだろう。
最後に彼と踊り場で話した時に手渡したピアスがまさしく自分のものであると確信すると、
クロコはすぐにネムリソウで熟睡している目当てである一人のタテジワを背負い牢屋を後にする。
もちろん、檻の扉は空けたままにした。見張りが目が覚めるまで後から
少しでも多くの死刑囚が早いものからいつでも抜け出せるようにするためだ。

次にクロコは裏出口に向かった。マップに書いてあったことの記憶を掻き出して
通ったこともないルートを進み出口へ近づく。と、出口直前で人影が見えた。
クロコは心臓が飛び出しそうになり足を止め、物陰へ隠れた。
まずい…バレた?ここで一緒に捕まるの…ごめん、失敗しちゃった…
その時彼女に声が小さく降りかかった。

「アネさん」

クロコはおそるおそる音源にふりむく。もう一人のクロコの顔があった。
さっきの人影はあの後輩クロコが彼女らを見迎えるために待ち潜んでいたのである。

「え?」
「へへー、ちょっと物音がしたんでまさかと思ってやしてなー。ほう、これが例の彼っすか」
「べ、別にそんなんじゃ…」
「隠さんでもだいじょうぶって」
「ほんとにもう!」

クロコ同士のやり取りをしているうちに、背中から低いうなり声が聞こえた。
タテジワが目覚ましたのだ。

「あ」
「んー…今日は我が命日、さらばだクロコよ……ってあれ!?」
「ネムリソウの効果が切れたようっすね」

気づけばタテジワは二人のクロコと共に見知らぬエントランスにいた。

「く、クロコか?しかし何ゆえ…」
「しっ、話は後っすよ。さ、アネさん」

音量をおさえるべくタテジワの口を塞ぐ後輩。

「ええ、色々ありがとう。元気でね」
「ああ、アネさんも達者で幸せになってくだせぇ……」

言い終わる刹那、後輩クロコの視線ががくりと外れたような気がした。

「そうはいかんな」

視線の上から声がしたと同時に上に視線を振り向くと、後輩の背後に上官モンスターの姿があった。

「警報が鳴って駆けつけたんだが、お前達か」

上官の右手の前の後輩クロコ、腹部からは剣の先がマントを裂いて腹を貫通していた。

「クロコ!!?」
「…!?」
「さぁ、こいつの用になりたくなければ大人しく捕まってもらおうか」

クロコとタテジワは拒絶なる光景を目のあたりにし、足が竦みあがる。
もちろん事情を詳しく知らないタテジワにとってはなおさらのことである。
後輩クロコは息を絶え絶えにしながらも口を開く。

「あ、アネ…さん……おれっちのことは……いいから…は、早く…にげ……」
「黙れ!!」

上官は右手の剣を横振り、串刺しになっているクロコを一気に引き裂いた。

「がはぁっ!!」

倒れ伏した彼の黒い体はしゅうしゅうと煙を立て消え、オレンジ色のマントのみとなった。

「さぁ、こっちに来い!!…っておろ?」

たった今命の炎が消えたクロコを構っていた内に二人は忽然と姿を消していた。

その頃クロコはタテジワと共に基地を極力離れるために平原を全力で駆け抜けていた。

「はぁっはぁっ…友よ、一体どういう風の吹き回し…」

タテジワは息を切らし走りながら彼女に問う。

「今の見て分かったでしょう?貴方を助けに来たの!」
「他の同志はどうするのだ?」
「大丈夫。チャンスを伺わせて逃げられるようにしてあるから」
「……御意」

彼女にはまだ何か策があるのだろうと今は黙って信じた。

しばらく走りぬけ、二人はとある坂上の崖っぷちまで足を休めた。
走った後を振り返ってみると夜で光がないのか、何も見えない。
耳に入るのは滝の落ちる音だけだ。安堵を悟ると、二人は腰を下ろし息を整える。

「はぁはぁ…… だいじょうぶタテジワ…?」
「ぎょ、御意……」
「ここまでくればもう大丈夫かな…」
「…されど、我が思うにそう簡易に諦める兵士ではないという思考あり」

その休息のつかの間だった。暗闇の中から物陰が近づいてくる。
基地で後輩クロコを切り捨てたあの上官の一味だ。タテジワの勘は当たっていた。

「当たりだ。よく経験をつんでいるな」

上官の周りには数匹のダークアイが構えている。

「ボスへの忠誠はここへ来るときから誓っているはずだ。地から去る者は反逆者とみなす」

その言葉にクロコは反論する。

「副隊!おかしいと思わないんですか?」
「何?」
「ボスであろうとものが、落第者を殺したり、こき使ったり差別したりして…私達足軽はペットじゃありません!」
「うるさい、上官に逆らうか!!その口引き裂いてやる!ゆけダークアイ!!」

上司の指令にダークアイは隊列を換えタテジワ達を睨む。

「構えてタテジワ!」
「ぎょ、御意」

クロコは左手の指先を鋭い鉤爪に変化させ、タテジワはその辺に落ちている手頃な木の枝を拾い戦闘で槍を振るう時と同様に構える。

「ふん、無駄な抵抗を…」
「笑止!」







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