震災
シチュエーション


僕の仕事場は千葉県浦安市のとあるテーマパーク。
そろそろ仕事も終わる時間に近づいた。僕はその日に秋葉原でデートする予定だ。

「今日は彼女とデートするんだ」
「へー、何処に行くの?」
「秋葉原の美味しいお店に行ってご飯を食べてから、池袋のサンシャインに行くの」

という会話をしながら、仕事仲間と15分間の休憩を取り、仕事に戻った。

僕は入口と出口のところで働いている。
その時は出口で再入園スタンプをゲストに押していた。

「再入園をご希望の方はこちらでハンドスタンプを押しております!!」「またこちらにはお戻りになりますか?」「行ってらっしゃい」…

しかし、楽しい雰囲気がその後、一変する。

3月11日14時46分―

突然、大きな揺れが仕事場を襲った。
いつもは少しの揺れでも怖がる僕だが、その時はとっさの判断でゲストを出口から引き離し、しゃがむよう指示をする。

その時、僕は彼女は勿論、埼玉に住む家族や友人、周りで働いている専門学校時代の仲間などを心配しながらその場の対応にあたるが、
余震が立て続けに起き、なかなか思うようにいかなかった…

帰る時刻になったが、既に京葉線は勿論、東西線も、ましてや秋葉原行きのある葛西臨海公園駅発の都バスも運転見合わせになってしまい、八方塞がりとなってしまった。

仕方なく、しばらくは仕事場に待機しながらも、結局人出不足で戻る…

近くに住むキャラヲタの友達が偶々、遊びに来ていた。

「もし、電車がダメならしばらく避難させてほしい」「分かった。いつでもどうぞ」

終わりの無い旅の始まりだ…


一方の彼女も秋葉原で被災していた。

「キャッ」

紹介し忘れたが、彼女は若干腐が入った普通のオタ女で、毎回好きな男性声優さんの話をする。好きな男性声優は小野大輔さんだ。

会うたび話をすれば、毎回DGSのことばかり。

また僕の仕事場のジャンルはあまり興味が無いと普通の女性とは違った感じがする。

どうやら、そのジャンルに嫌悪感を持っているらしい…

僕自身、仕事に聞かれたときは「持ち込みたくない」と突っぱねていたが、迫られてついつい言ってしまった。

そこから関係がギクシャクし出した…

実は仲間に話したことはほとんど嘘である。

そのデートも実は自分から別れを告げようというバッドエンディング宣言をするつもりだった。

しかし、今となっては深刻な事態に頭が吹っ飛んだ

男というものは所詮、振っても振られても付き合っていた女のことをいつまでも忘れられない。
自分はそれを分かっていた。
その頃彼女は、携帯を開いている暇がない僕にメールをする。

「もう知らない」と…


僕は夜通しの仕事をしていた。

3月12日7時30分。
近場に住んでいる仕事仲間の方々がヘルプで駆けつけてきてくれた。

仕事が終わり、ボーッとした頭で着替えて通用口を出る、そして舞浜駅を向かう。
亀裂が入って悪路と化した道を疲れているにも関わらずしっかりした足で歩く。
ペデストリアンデッキを昇った瞬間、僕は我が目を疑った。

彼女がベンチで待っていた。履いていたブーツが長い距離を歩いていたのか、くたびれていた。

(寒いのに何故?どうやってここまで来たの?)と思った。

僕は彼女に声をかける。

「遅れてゴメン…」

すると彼女は泣きながらこう言った。

「なんで…、電話に出ないのよ…」
「どうしてって…、これが僕の仕事だから…」

「仕事と私、どっちが大事なのよ!!」

僕は返答に困る。
辺りは京葉線の運転見合わせで滞留現象が起きていて、みんな僕の方向を向いていた。

(悪かった。僕は君を守ることが出来なかった。未熟で済まない。)

僕は彼女をひしっと抱き締めた。
僕はこれしか出来なかった。

―しばらくして、落ち着いた二人は混雑したバスの中、友達の家に向かう。
そしてバスを降りたあと、僕はこう呟いた…

「しばらくは再開しなさそうだし、仕事探そうかな…」

すると彼女はこう言った。

「見てたよ。あなたや仲間が人々を守っていたところを…」
「えっ(////)」

確かに僕は、入口から園外の安全確認に回らされていた…

こうして、絆を取り戻した二人は友達の家に向かった。

Fin?いや、続く?






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