冬に来た春
シチュエーション


学校が終わった帰り、クラスの誰よりも早く山手線に乗った僕は、
紅白歌合戦に出場した大人気の女性声優の新曲を買いに池袋へ向かう。

あの事件で、街並みが移り変わってしまい、秋葉原の「魔力」や「欲望」からすっかり覚めた僕は自ら乙女ロードに向かったのだった。
まずは、サンシャインの地下にあるディズニーストアでディズニーの雑誌とアクセサリーを買うと、すぐさまアニメイトに足を運ぶ。

そして、いつも使う狭く死角が多い階段を利用する。
この後、その「狭く死角の多い階段」でまさかの出来事が起こるとは…

僕は目的のモノの購入を済ませて、階段を降りる。
その時は昼間の4時くらい、ちょうど中高生が学校帰りの時間である。

もちろん、階段が混雑し始めた。

池袋は秋葉原とは違って女性が多い。
とにかく、相手に触れぬよう気を使いながら、階段を降りた。

3階へ降りようとした次の瞬間、相手とぶつかってしまう。
謝ろうとした次の瞬間、

「ごめんなさい。」

と向こうから声を掛けられた。

相手を見ると、ちょうど怯えた様子でメガネを掛けたぽっちゃりとした腐女子がいた…

その時、僕のカラダがむちゃくちゃ熱くなった。
中学の卒業式に好きだった女に振られて、高校時代は趣味の鉄道やディズニー、部活の和太鼓やボランティア活動に没頭して、恋愛から遠ざけようと必死になっていた。

しかし、その必死になっていたものがこのことで、吹っ飛んでしまった。
こちらも、すぐに返事を返そうとすると、その女性はどこかへ行ってしまった。

帰りの電車。
僕はあの時のことが頭の中によぎっていた。

(また、あの人に逢えるといいな…)

と思いながら、
幼い少年の心を持った青年を乗せた急行列車はスピードを上げて、家路を目指した。


あれから、僕は学校帰りに乙女ロードに立ち寄る日々が増えた。
学校が休みの日は、某夢と魔法の王国でバイトし、帰りにフラっと有楽町線の東池袋駅へ降りていく。

アニメイトでウィンドウショッピングをした後、ふとフィルム一眼に使う「2CR5形リチウム電池」と「35mmネガ」を買おうと思い、
ビックカメラへ向かおうとしたが、何かを買い忘れたことに気付き、
ゲーマーズに行ったが、あいにく無かった。

そして、とらのあなへ行く。
メロンブックス派の僕としては、とらのあなは秋葉原と大宮しか行ったことがない。
秋葉原のとらは一度、コミケのカタログを買いに行ったことがあり、大宮ではオープン当日に行ったことがある。
池袋のとらは初めてだ。
恐る恐る店内に入ると、秋葉原や大宮のとらとは何か違っていた。
そして、階段へ上る。
ここでまたあのことが蘇るとは知るよしも無かった。






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