マッチ売りの
シチュエーション


「まっち、まっちはいりませんか、まっちはいりませんか」

年の瀬の凍える様な辻にか細い声が聞こえる。
声の主を見るとまだ十を越えたかくらいの少女である。
こんなのが街の辻々の路地口に結構いるのは見てきたが、こんなに幼いのも珍しい。
捨て猫みたいなのがこんな寒い晩に哀れなもんだと思って見ていると、友人のKが
「なんだ君、真逆買おうってんじゃないだろうね」
と、やや軽蔑を含んだ声で言う。

「うん?いやあんまり哀れなんで、遺憾かな?」
「よせよせあんな下らんもの」
「下らん?燐寸に下らんも無いだろう?」

Kの物言いが気になったのでそう訪ねると、彼は驚いた顔で

「なんだ君、知らないのかい?」

などと言う。

この男は根は良い男なのだがすぐにこう人を見下した様な物言いをする。
それが癪に触ったので

「燐寸くらい知ってるさ、まぁ露天で売る様な物だから出来も良く無いのだろうけど」

と言い返すとKは鳩が豆鉄砲をくらった顔からにやにやとした軽薄な笑みを浮かべ
「いやぁそうか」と言うとくすくすと笑い出し、

「流石は君だね、いやいやそんなムっとしなさんな、つまり君はあの少女が何故
燐寸なぞを売ってるか、いや何を売ってるか知らない訳だ…」

などと言いながら先生片手を顎にの思案顔だ。

今度はこっちが豆鉄砲だ、自分が何か間違ったことを言った気分になる。
いや間違ってたのか?などと思ってると、Kなにか得心したかの様に何度か頷くや

「うむ、知らないのは仕方無いし君の責任じゃ無い。やはりここは実地と行こうじゃないか」

と件の少女の方にすたすたと歩きだすと

「おい、お前、こちらの紳士がお前の燐寸を御所望だ」

そう言って少女にコインを握らせた。

「あ、はいありがとうございます!…ありがとうございます、だんなさま」

と健気にぺこりとお辞儀を一つ、こちらにも一つ。
こうして近付いて顔を見ると形は汚いが中々可愛い、抱き人形の様な小娘だ。

「じゃぁ…あの、えと、だんなさま、こちらにどうぞ」

と燐寸を渡すでも無くトコトコとその人形が路地の奥に行く。
道理も様子も分からないで立ち尽くして居ると、Kにポンと肩を叩かれた。

「あの小娘に付いて行きたまえ、5本分ほど握らせたから。
そのつもりならもっと足してもいいし、嫌ならすぐに戻ってくればいい。
僕は済むまでここで待ってるよ」
「あの…だんなさま?」

路地の奥から声がする、Kはと見れば気取った態度で片手を路地の奥にと指し示す。
まぁ取って食われるわけでも無さそうだしで半ばヤケ気味で声の方に進んだ。
暗い路地を5.6歩も進むと少女がなにか空瓶の入っていた木箱を積み上げていたが
こちらに気付くと振り向き、ここでやっと燐寸を渡された。
そして自分はその木箱の上に腰掛けた。

「あの…あたし小さいから…すいませんだんなさま…じゃぁどうぞ。
燐寸が燃え尽きるまでの間、好きなだけ御覧下さい…」

そうして少女はわたしの前でスカートをたくしあげ…






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