セーフティ・フレンド
シチュエーション


その日、僕は掃除当番だった。
たまたま教室掃除、たまたま同じ当番のクラスメイトが欠席とサボリでいなかった。
僕はやれやれと思いながら、その日の夕暮れに一人掃除をしていた。
委員長という立場上、みんないないからと自分までサボるわけにもいかない。
真面目で成績優秀な委員長。それが僕のクラスでの立ち位置だ。

(人が嫌がることを進んでやりましょう、か……)

損な役回りだけど、まあいっか。
内心自嘲しながら一通り終えてしまう。
だが当然、本来三人でやることを一人でやったのだから、いつもより時間がかかった。
図書館で勉強して帰ろうと思っていたが、今日はもう止めておこう。
そう考えながら帰り支度をしていた時だった。

「あっれー? 君一人なの?」

もう自分以外誰もいない教室に、少女の声が響いた。
入り口を見ると、見覚えのない少女が立っている。
背は男にしては小柄な僕と同じくらいだから、少し高め。
ブレザーのワッペンの色を見るに、一個上の学年生だ。
ショートカットの髪はよく手入れされており、髪留めも色合いはカラフル、悪く言えばケバめな印象を受けるもの。
顔立ちはよく見ればかなり整っている。
しかし、校則ギリギリ、いや、おそらく違反しているであろう口紅やアイメイクの濃さが目についた。
着崩した制服の彼女は、無遠慮に教室内へ足を踏み入れると、僕を値踏みするようにつま先から頭のてっぺんまで見上げていく。

一瞬、息を飲んだ。
こんな風に女の子にじろじろと見つめられるのは初めてのことだった。
特に、彼女の猫を思わせる円らさの中にも一種の鋭さを持った瞳は、化粧のせいもあってか、どこか大人びて見える。
一個上とはいえ、とても十代の少女の色香ではないように思えた。
平静を装っていたが、慌てた僕は口早に答えた。

「あ、はい、僕一人ですけど……」
「ふうん、伊藤くんと小川くんは辞退しちゃったの?」

伊藤? 小川?
二人はうちのクラスのムードメーカーといっていいタイプの、サッカー部所属のスポーツマンだ。
成績はふるわないものの背が高くて明るい二人は、女子にも人気があった。
彼らに用事があるのだろうか。しかし今頃は部活にいそしんでいるはずだった。

「二人とも今は部活だと思いますけど」
「ふぅーん。もう他にはいないわけ? 全部で五人だって書いてたけど」

書いてたって、何の話だ?
僕は目の前の上級生が口にしていることがまるで分からなかった。

「あ、あのー……いったいさっきから何の話を」
「じゃあ君でいいや」

にっこりと彼女が笑う。
華が咲いたように綺麗な笑顔だった。

「背も高くないし、それほどイケメンってわけじゃなさそーだけど」

彼女が腰に手をあててまじまじと僕の周りを観察しながら歩く。
何が何だか分からない僕を意に介さず、彼女は突然背後から両手で肩を掴んだ。

「わっ!?」
「カワイイ眼鏡で合格点あげちゃう」

耳元に吹きかけられる彼女の吐息に、思わず僕は飛び上がっていた。

「んふふ……じゃあ、ついてきて」

彼女はクスクスと意味深な笑みをたたえながら、踵を返して教室の外へと歩いていく。
まったく筋の見えない状況に、本来の僕なら異を唱えていただろう。
しかし、その時僕はなぜかふらふらと彼女の背中を追いかけていたのだった。

彼女は階段へ向かい、四階まで上がる。
僕は鞄をもじもじと抱えたまま無言でその後を追った。
彼女は『視聴覚準備室』とプレートのあるドアを開けた。

「さ、入って」
「は、はい」

彼女は僕が室内へ入るのを確認すると、ドアを締めてカギをかけた。
その行為に一抹の不安を覚えたものの、僕は鞄を適当な場所に置くと、彼女の次の言葉を待った。
視聴覚準備室は包装機材が並んでいるものの、そこそこの広さがある。
彼女は自分のバッグを部屋の中で不釣り合いに目立つ大きなソファの横に置いた。

くるりと振り向くと、悪戯っぽく笑って僕に言った。

「じゃあ、今から試験開始ね」
「試験?」
「そ。ま、採点基準はアタシ基準だから気まぐれだけどね」

試験、とますます意味のわからない単語が出てきたが、それを疑問に思う余裕は次の瞬間吹き飛んでいた。
彼女が突然スカートを脱ぎ始めたのだ。

「わっ!? ちょ、ちょっと何してんですかっ!?」
「え? 何って、服脱がなきゃセックスできないじゃん」
「せ、セックスっ!?」

何がなんだか分からない。
とにかく、彼女は今からここでセックス……英語で『SEX』……日本語で『性交渉』を始めようとしているらしい。
誰と?
僕と!?

目を白黒させている僕を見て、彼女は不意に何かに気づいた様子でジト目をこちらに向けた。

「あ! ……もー、マニアックだなぁ、キミ、制服のままが良いってタイプ?」
「う、い、いえそういうわけでは……ないんですけど……」
「そう? じゃあ、君も脱いで」
「……は、はぁ」

不承不承、僕はワイシャツを脱ぎ、続いて下のシャツも脱いでしまう。
上半身裸になったところで、ちらりと横の彼女を見ると、ブラジャーに手をかけているところだった。
ふわぁ……おっぱいおっきいし、綺麗だなぁ……
彼女はいわゆる着やせするタイプと言うのだろうか。制服を着ていたときよりも身体は締まった印象を受けた。
その締まった身体の中で、綺麗に整った形を崩さない二つの膨らみが視線を奪ってしまう。

「よっと……」

ぷるん、と音が聞こえそうな動きで乳房がまろび出た。
本物の女性の裸を、それもこんな美乳を生で見るのなんて初めてのことだった。
いつの間にか、僕の股間は熱く膨らんでいる。

「バキバキになっちゃう前に脱がないと脱ぎにくいんじゃない?」

そんな僕の状態を見透かすように彼女がこちらに視線も向けずに言った。
慌てて僕はズボンのベルトを外してパンツまで下げる。

「うう……」

全裸になったものの、恥ずかしくて手で自分のものを隠してしまう。
異性の前で裸になるなんてこと自体初めてだし、しかもここは学校内だ。
しかし、彼女はそんなことまるで気にしていないのか、堂々と腰に手を当ててこちらを見ている。

「ほーら、ダメじゃない、前隠してちゃ」

僕はおずおずと前から手を放した。

「へえ、思ったよりも立派だね」

彼女は素直に感心したらしく僕の勃起しきったペニスをそう評した。
一方僕は恥ずかしさで耳まで真っ赤になっていた。
こういうのは、友達から借りたゲームとか漫画では女の子のほうがするリアクションじゃないんだろうか?
彼女はソファに腰を降ろすと、ちょいちょいとこちらへ来るようジャスチャーした。

「じゃあ手始めに……舐めてもらおっかな」

彼女は心なしか上気しか顔で、とろけるような口調で言った。
中指を自身の股間へ指さし、僕に無言の圧力をかけてくる。
僕は意を決してソファの前に跪き、彼女の股間に顔を近づけた。
女性器をこんな間近で見るのは初めてだ。
しかし、幸い幻滅はしなかった。
彼女の股間はよく手入れされているのか、アンダーヘアは逆三角に綺麗に揃えられており、臭いも特にない。
僕は自分がおかしいことをしているという自覚を抱きつつも、彼女のヒクつく花弁へと舌を伸ばした。

「ん……」

彼女がそっと目を閉じて押し殺した声を発した。
舌先が彼女の膣の温もりを感じている。
より深くまで差し込むと、ヒクヒクと律動する彼女の膣内の味と熱さを感じることができた。

「ん……あ……ああ……あん……」

僕は次第にその行為に没頭するようになった。
より深く、より激しく彼女の膣内を蹂躙していく。

「あっ……あっ……いい……もっと……」

彼女は内股をきゅっと閉じて僕の顔を包み込む。
すべすべの肌が頬を撫で、香水とは違った、女性特有の甘い香りが鼻孔をくすぐる。
同時に、膣奥からはしっとりと何かぬめった液体が分泌され始めていた。

「あん……クリも舐めて……」

僕は言われた通り、いったん膣内から舌を抜く。
そして、綺麗に揃えられたアンダーヘアの中を探すように這わせた。
探し当てた突起を、舌先で転がすように刺激すると、面白いように彼女の身体が反応した。

「あっ! そう、そこ! んぁあ! 感じちゃう!」

僕の唾液ではない粘液が彼女の股間を伝っていた。
それは愛液だということに気づくのにそう時間はかからない。
すると、彼女が自分の股間に顔をうずめている僕の頭をぐいと引き離した。

「あん、もういいよ……もう我慢できない」

彼女はとろんとした目で僕の股間の勃起したペニスを見つめる。

「……入れて」

ここまでくるとある程度予想できていたが、流石に心臓が高鳴った。
……僕、実はというか、童貞。

「い、いいんですか?」

生唾を飲み込んで尋ねる。

「ん、いーよ……ちょうだい」

彼女はそう呟いて頷く。
僕のペニスは今にも精液を吹き出しそうなほどに勃起し、先端からは先走りの汁が滲み出ている。

「あ……」

僕はそこでふと理性が咎めた。

「どうしたの? 早くぅ……」

彼女が不満の声を漏らすので焦るが、とにかく今のままでは彼女の中へと入れられない。

「あ、あの、コンドーム着けないと」

もしかしたら空気の読めない言葉なのかもしれなかった。

しかし、こういった先走り液の中にも精子は含まれているので、彼女がピルでも飲んでなければ妊娠の危険がある。
AVやエロゲーと現実は違うのだと博識ぶって色々ネットで調べたことがある。
日本の若者の間違った性事情がどうとか、そんなサイトで知識だけは豊富な自分……

「えー? 要らないよそんなの、生の方が気持ちいいじゃん」

案の定、彼女は表情を曇らせる。
でも、ここまできたらちゃんとしておいた方がいいような気がした。
彼女は気にしていなくとも、僕の最後の理性が許さない。

「だ、ダメだよ……せ、先輩のこと妊娠させちゃったら悪いし……」

ああ、僕はこういうところで真面目ぶってしまうから女の子にモテないのかも。
言ってしまってから後悔するが、仕方がない。

「ふ〜ん……」

彼女は僕の言葉を聞いてしばし無表情になった。
お、怒らせちゃったかな……?

「じっとしてて」
「え?」

彼女は身を起こすとソファの隣に置いていた自分のバッグをまさぐった。
ごそごそと何かを漁る音。
一体どうしたんだろうと、言われるがままにじっとしていると、
彼女が振り返り、さっと素早い動作で僕の股間に顔を寄せた。

「わっ!?」
「ひっとひへてって」

じっとしててって、と言おうとしたのだろうか。
彼女は僕のペニスを口にくわえてしまった。

「うああ!?」

生暖かい口内の感触に、僕はビクンと大きく背中を反らしてしまう。
彼女はもごもごと何度かフェラのピストンのような動作を行い、思ったよりもあっさりと口からペニスを開放した。

「な、何なんです……? あっ!」

いつの間にか、ペニスには薄水色のコンドームが被さっていた。
口で着けちゃったのか!
なんて器用な……、と思っていると、彼女が挑発的に笑った。

「ほら、お望み通り準備万端なんだから早く入れてよ」
「あ、は、はい!」

M字に股を開いた彼女の間に身体を収めると、すぐそこに彼女の顔があった。
間近で見ると、やはりカワイイ。この学校でもトップクラスまでいかずとも、上の中には確実にランクインできそうな印象だ。
思わずまじまじと見つめてしまう。

「ふふ、どーしたの?」
「い、いや……先輩、カワイイなって」
「あら、ありがと」

にっこりと笑うと、そっと彼女が口を差し出してくる。

「ん……」

あまりに唐突なファーストキスだった。
僕がカチコチに硬直していると、彼女の柔らかな舌がそっとこちらの唇を開いて侵入してくる。

「んちゅ……ん……ちゅ……」

まるで粘着性の食虫植物に絡め取られる哀れな虫のように、僕は次第に彼女の身体の方へと埋没していく。
彼女のむっちりと、それでいてすらりと長い脚が僕の腰に絡みついた。
長い口づけを終えると、僕は意識がぼうっとしてくるのが分かった。
まるで、彼女の唾液には催眠作用があるんじゃないのかと思えるような、巧みなキスだった。

「ね、キミってさ」
「はい……」
「初めてでしょ?」
「う……」
「アタシでいい?」

僕は大きく頷く。
既に彼女の手は僕のペニスに添えられていた。
その先端を、自身の入り口を向けている。

「じゃ、きて……」
「あ……」

彼女がきゅっと絡めた脚をせばめた。
互いの距離がより密着していく、そのまま、先端が彼女の膣内へ入っていく。
クチュチュ、と卑猥な音を立て、彼女の中へと全てが入りきる。

「うぁぁ……」

僕は思わず彼女の身体を抱きしめていた。
柔らかく、温かな女の子の身体。
たまらない密着感。
僕の薄い胸板には、彼女の豊かな乳房が押しつぶされ、互いの心臓の音まで聞こえそうなほどだ。

「どう……ドーテー喪失の感想は?」
「あったかくって、柔らかいです……」
「あは、じゃあ、動いていいよ」

彼女がここまでリードしてくれたのだから、今度は自分の番だ。
僕はぎこちないものの腰を上下に振り始めた。

「最初はゆっくり、んっ! そう、その調子で、あんっ! 突いて!」
「はぁっ! はぁっ! こうですか!?」
「ああんっ! そうよ、慣れたらもっと小刻みにしてみて」

ギシギシとソファのスプリングが軋む音が部屋に響く。
ここを彼女が選んだ理由が、視聴覚室は防音がしっかりしているからだと気づく。
彼女の中を突く度に、溢れ出た愛液と粘膜が僕のペニスを覆い、締め上げていく。
ゆさゆさと弾力を持って揺れる美乳を、僕は本能的に揉みし抱いていた。

「やぁん! 乳首もいじってぇ!」

薄桃色の乳首をつまむと、ツンと固くしこっていた。
それを指先で転がすと、キュッキュッと膣内が締まる。

「うぁあああ! 先輩、ぼ、僕もう射精しちゃいそうです!」

ここまで保ったのが奇跡なのだ。童貞の僕はあっという間に登り詰めてしまった。
もしかして僕の方を愛撫しなかったのは、入れてからあっという間に果ててしまわないようにしたかったからなのかもしれない。

「んぁあっ! まだダメぇ、もうちょっとでイケそうなんだからがんばって!」
「は、はいぃ!」

僕はもう何も考えられずに壊れたように腰を振った。
彼女と僕の腰が打ち付け合わされる音がパンパンと耳を刺激する。
僕はもう我慢を通り越してこみ上げてくる精液を下半身に感じながら、腕の中の彼女を目に焼き付けた。
少し派手だけど、こんなにカワイイ女性が初めての相手であることに感動すら覚える。

「あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁーっ!!」

彼女がビクンと上半身を仰け反らせ、痙攣のように身を震わせた。
ツンと立った乳首が、彼女の性的な高まりを教えてくれる。
僕は、同時に激しい律動を起こした彼女の膣内で、堰を切ったように射精を開始した。

ビュクッ! ビュクッ!

「うああぁっ!」

僕は悲鳴のような声を上げていた。
今までの人生で一番凄まじいフィニッシュだったのだ。
ストックしてある精子は全て吐き出そうとするかのような、濁流じみた精液が撃ち出されていく。
彼女をぎゅっと抱きしめ、膣奥に向かって本能のままに射精を続ける。

果たしてどれくらいの時間そうしていただろうか。
少量の精液をピュクピュクと出すようになるまで、一分近くかかったような気がする。

「はぁー……はぁー……」

二人とも脱力して動けない。
余韻を楽しむのも兼ねて、僕らはそのまま折り重なったまましばらくの時間を過ごした。

ややあって、先に僕が退かないことには彼女が動けないので、身を起こすことにする。

「抜きますね……」
「あっ! 待って」

萎えたペニスを抜こうとすると、彼女がはっとして僕を制した。

「ど、どうしたんですか?」
「抜く時は気をつけて」
「え?」
「萎えた後に腰引くとさ、ゴム、中で外れやすいんだから」

そこまで気が回らなかった。
でも、最初は生でいいとか言ってた割には細かいんだな……?

「だから、根本をしっかり固定して、ゆっくり引き抜いて……」
「は、はい」

僕は指示通りにゆっくりと彼女の中から男性器を引き抜いた。
確かに、先端に精液の溜まったゴムは膣内で抵抗を受けて、そのまま腰を引いたら外れる危険がありそうだった。

にゅろん

たっぷりと黄ばんだ精液が溜まったコンドームが彼女の膣内から出てくる。

「あんっ」

最後に微かに彼女が喘ぐ。
その声が可愛いと思い、できればキスの一つでもしてみたかったが、
今自分のものにぶら下がっているものを早く処理しなければ無様なことこの上ない。
慌てて彼女に背を向け、愛液にぬめったコンドームをはずしにかかる。
……うまく外れない。AV男優とかあっという間に外してるのに。

「うわぁ〜マジそんな出したの?」

彼女は僕が恥ずかしくてこそこそと処理しようとしていたゴムを奪うとケラケラと笑った。

「どんだけ溜めてたのよぉ〜?」
「め、面目ないです……」
「あはは、ま、いいけどさ」
「あ、あの!」
「ん、なあに?」
「さっきの試験って……」

彼女はキュッとゴムの口を慣れた手つきで縛ってティッシュでくるみながら、思い出したように言った。

「ああ、アレね。結果、知りたい?」

彼女は宙を睨んで『ん〜どうしよっかなぁ〜』と裸のまま思案顔になった。
いや、そうじゃなくて、いったい何の試験で、何でセックスなんてしたんだろうか、ということが聞きたかったのだけど。
でも、今更それを聞くのはどこか無粋な気がしてしまった。

「まあ、いいわ、じゃあ……合格!」
「合格、なんですか?」

えらいカンタンに合格してしまった。
どうして、という感情は表情に出ていたのだろう、彼女はふふーんと笑って説明した。

「キミさ、ゴムしようって言ってくれたじゃん」
「ええ、まあそうですけど……」
「あれ、結構ポイント高かったよ。だって、アタシが今回セフレ募集したのだってそれが原因なんだし」
「せ、ふれ?」

セフレってあれですか、セックスフレンドの略称ですか?
それを募集って……

「なんでかなぁ〜イケメンって大抵アタシみたいな女相手だと生で入れたがるのよねぇ」

彼女はしみじみとそう言った。

「前の彼氏だって危ない日なのに生で入れたがるし……
だから今回はテクとか顔とかじゃなくてさ、とにかく安全≠ネセフレが欲しかったんだー」

僕を見てにっこりと笑う。
安全な、セフレ、ね……
『セーフティ・フレンド』、か。

「じゃあ、最初に生でしようって言ったのって……」
「ふふーん、引っかけ問題!
あそこで大喜びで生入れする男なんて怖くってしょうがないから、キミがそうだったなら叩き出してたわね」
「あ、はは……」

引きつった笑いしか出てこない。

しかし、ここまできて大体の全容が見えてきた。
つまり、彼女はセフレの募集をして今日がその試験日だったのだ。
そして、その待ち合わせ場所が人気のない放課後のうちの教室だった。
でも、結局何かの理由で伊藤や小川たちは現れず、たまたま僕がその教室に残っていたから、
彼女は僕がセフレ希望者だと勘違いして……

童貞まで捨てさせてもらっといて何だけど、この人むちゃくちゃだ……

彼女は鼻歌交じりに下着を身につけ始めていた。
すると、ふと思い出したようにバッグの中から携帯を取り出す。

「ま、そんなこんなでお互い同意ってことで、メルアド交換しよっか」
「え、い、いいんですか?」
「キミだってわざわざ童貞なのにセフレ試験受けにきたんでしょ? そのチャレンジャー精神に乾杯!ってとこ?」
「なんですかそれ」
「あははっ! ホント、なんなんだろね。あ、キミのケータイ、赤外線通信できる?」
「は、はい」
「アタシから送るから、受け取って」

僕は慌てて自分の携帯を脱ぎ去った制服のポケットから取り出す。

「そーしん、っと」

小気味良い電子音が鳴り、彼女のメルアドや電話番号が僕の携帯にやってくる。

「あ……」
「どうしたの? 受信失敗しちゃった?」
「いえ、先輩の名前、知らなかったなって……」

童貞をもらってくれた彼女の名前が、今になってようやく知ることができた。

「そういえば、アタシも君の名前、知らないね」
「じゃあ、どうぞ」
「ん、ちょうだい……」

僕はにっこりと笑うと、自分のパーソナルデータを彼女の携帯に送ったのだった。






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