黒き娼婦と白き王子 五章
シチュエーション


「今日も風邪ため、一日静養なさるとのことです」

サウラの部屋の侍従から伝えられた三日連続の決まり文句に、
セドルは不承不承下がる。
シーフゥの首尾とこれからの打ち合わせをしたかったのだが、いたし方あるまい。
きびすを返し戻ろうとしたところ、アズメイラ王妃と会った。

「浮かない顔をしてどうしたかな」
「サウラさんが風邪を召したそうです。
まだ顔も見れない状態で、こじらせていないか心配です」
「ほう、なるほどな……」

アズメイラは暫し後ろに控える侍女と小声でやりとりする。

「そうか。まあ外の者には寒いだろうからな。
何か見舞いの品でも持っていったらどうだ」

この場で気兼ねもなくごく自然に薦めたが、
何故ここまで仲が良くなったのか本当に不思議だった。
いまだにセドルには謎だったが、別段問題ではないのでそれ以上深く考えない。
シーフゥとは違い、危機感がなければ意外と人は疑問に思わないものである。

「そうですね……そうしたいと思います」
「ふふ、まあ喜ばれる品を持っていくのだな」

そう言うと、セドルは少しはにかむ。
アズメイラも思わずつられそうになるほど、
人を魅了する天性が備わっている表情だった。
正直なところ、これにはかなわない。

「何が良いか、パザン殿にでもご相談にいきます」

セドルは話し始めた時とは正反対に、軽快な足取りで去っていった。

アズメイラは自室に戻って報告書を再読する。
これは以前にセドルがサウラとシーフゥを調査して書き上げた物だ。
パザンとグーリーの報告書もあるが、こちらはシェシングが書いた。
命令したのはアズメイラ自身だが、
内容は忌憚のない私文であり、公式文書ではないため公開されていない。
セドルのものを読めば、一読しただけで苦笑は免れない。
一言で表せば、正義感に満ちあふれた恋文だった。

********************

本来なら必要とあらば相手を招く身分のも関わらず、
自ら足を運ぶセドル王子にパザンは敬服してしまう。
故郷では、けっしてありえぬことだ。
恐縮しながらも歓待してシーフゥに茶を出させるが、
セドルは気にすることなく同じテーブルに座る。
やはりありえぬことだった。

「どうされましたか?」
「いや……サウラさんが風邪をひいたらしく、かれこれ三日ほど面会謝絶なんです。
大丈夫でしょうか心配です。見舞いの品でも持っていこうかと思うのですが」
「はあ? 風邪? サウラがそう言っていたのですか」

話の途中で随分驚いた声を上げたことに、セドルの方が驚いた。

「いや、部屋に控えている侍従の話しですけど」
「ふうむ、まあ何と言うか……」

パザンはどう言ったら良いのか悩む。

「彼女が……その、基本的に風邪をひくなど、病気になることはありえませんが」
「うん?」

とりあえず思ったことをそのまま伝えたが、案の定王子は首をかしげる。
理由も示さずこんなことを言えば、まあ当然の反応であると言えた。
パザンは再び、どう説明したら良いのか悩む。

「……あ〜、これほど寒い中でも、サウラは着るものを変えませんでしたでしょう」

極寒の地でも露出度の高い服を着たままのサウラは、
ある種の尊敬の念も込めて見られていた。
もしくは頭が暖かいか。

「その、まあ、寒さに強いというか」
「なるほど。ですが病気などすることもあるでしょう」
「あ〜、そうなのですが……まあサウラは特殊というか……異常というか」

えらく歯切れの悪い物言いにセドルは吹いてしまった。
サウラが聞いたら怒ることだろう。

「まあですから、その侍従が言うことは嘘ですな。これは間違いありません」
「ですがなぜそのようなことを?」
「確かに解せませんな……。
サウラがすぐ嘘とわかる嘘を言わせてるとは考えにくいですし」
「あ、あの〜」

横から給仕をしていたシーフゥが控えめに口を挟んだ。
先ほど気付かなかったが、なぜか髪を三つ編みにしていた。

「どうした」
「遠慮なく、何でも言ってみてよ」

いきなり砕けた表情をセドルが見せる。
身分の違いにも関わらず、王子が言った友人という言葉に嘘偽りは無かった。

「アズメイラ王妃が一枚噛んでいる、というのは。
どこかに閉じ込めておいて、そのまま口裏を合わせた、とか」

それは両者とも真っ先に考えていたことだった。
シーフゥは別の意味でも一枚噛んでいる気がしたが、
約束どおりそれは伏せた。

「そうだね。サウラさんが微妙な存在なのは間違いないけど……。
晩餐の時の様子を省みても、あれが偽りの仲とは思いにくい。
実は先ほども会ったけど、その時に何か見舞いの品を持っていったらどうかと言ったのは王妃でしたし」
「我々は春には旅立つと暗に陛下へも通達してます。
王妃も知っているはずですし、宮中もサウラとの仲が良いともっぱらの噂です。
わざわざ拉致監禁など、危険なまねをするとは思えませんな」
「それならその〜、もっと単純に考えて……」

ものすごく言いにくそうにシーフゥは顔をゆがめる。
こんなことを言うのは恥ずかしい。
なぜなら常日頃、とまでいかなくても、ときどき思ってしまうことだったからだ。
自分の胸のうちを悟られるのは、それが邪まなだけにいたたまれない気分になる。

「……サウラさんを見て、我慢できなくなったとか」
「つまり?」
「え〜と……サウラさん普段からすごい色っぽいし、
一人や二人、無理矢理に、って思ってもおかしくないと思うんですよ。
特に僕たちに良い感情を持っていない人には、王妃を抜きにしてもやりかねないかと。
痛い目にあわせると言うか、監禁してそのついでと言うか……。
一番自然な理由の気もするんですが、
何でお二人がそう思わなかったのか不思議でしたけどぉ……」

できれば察して欲しかったとでも言う風に、語尾がフェードアウトした。

基本的にサウラを夜伽へ呼べるのは王だけである。
それ以外の人など何を言うのか、であった。
セドルは一応だが多少無理をすれば可能であるし、
当人はさすがに悪いと思って、劣情を意識の外に払うようにして、それは一応成功している。
パザンは幼少のころのサウラを育てた親代わりであったし、訳あって性的対象には見ていなかった。
もっとも嫌疑派の理由が穢れている、汚らわしい等々なのだから、
サウラに魅力を感じるのはおかしな話なのだが、そこは男が持つ業と言うべきか。
セドルもそこまで読めなかったし、極力自国の者を信用したい、
パザンにしてみれば嫌悪感を持たれている他国人の別腹まで推して量るのは土台無理であった。

二人とも完全に失念していた。
思い余って犯罪に走る可能性は充分に考えられた。

サウラは非常に目立つ。
もともと髪や肌の色からしても当然だが、
女性ながら成人男性と肩を並べる背丈に長い艶のある髪、
それに誰もが振り向く妖艶な美貌、魅惑のプロポーション。
隠そうと思っても隠せるものではない。
見つからぬようするには一箇所に監禁するか、
そうでなければ必ず多数での協力者が不可欠だ。
あまり考えたくないが、半永久的な搾取、さらには殺害する目的もあるかもしれない。
そうなれば一刻も早く助けなければならず、この前提も崩れてしまうのが気がかりだった。

「いや、それはありませんな」
「そうですか?」
「サウラは自分に害なす者を、
時として手のひらに転がして楽しむほど危険に慣れています。
失礼ながら、平和に慣れ親しんだこの国の人間に扱いきれる者でありません。
さしあたって、命に別状はないものと考えてよいです」

セドルが先の懸念を話したら、パザンはきっぱりと否定した。
その後、身を乗り出して、ここからが本題とでも言う風に両腕を卓の上に広げる。

「いいですか。サウラを監禁するには、サウラの協力が必要です」
「……どういう意味ですか」
「あっ。それ、わかる気がします」

セドルはわからなかったが、シーフゥは理解できたようだ。
後ろでグーリーもうなずいていた。

「簡単に言えば、彼女がその気になれば、捕らえたままでいるのは不可能です。
正直言って私は、サウラのことを殿下が気に病むことはなく、放っておけば良いとも思っています」

サウラをある程度知っていても、その言葉はあまりに薄情に聞こえた。
だからこそシーフゥは可笑しく、おもわず笑ってしまった。
確固たるものはなにもないが、サウラの無事でない姿など想像できなかったからだ。
つまり根拠もなくパザンの意見に諸手を挙げて賛成だった自分に、
まったく違和感がなかったのが可笑しかった。

パザンにしてみれば、飽きたら向こうから出てくるのはわかりきっていた。
むしろここで助けなど入ったら、何で邪魔をしたのかとねちねちと問い詰められることだろう。
そしてその聞き役は己、身体的被害が甥っ子にも及ぶともなれば、このまま好きにさせたらいい。

「は、はあ? それは私の立場からは、
もし監禁してるものだとすれば、とても許せる行為ではありません。
したがって看過などできようはずがないでしょう」

さて、問題はこの目の前に居る、正義感と義務に縛られている若者だが。
パザンはどう説得するべきか悩んだ。
さっきからずっと似たような悩みを抱えて、次第に厭世的な気分になってきた。
説明が難しい今、どう言っても無理な気がするし、
それにここまで良くしてくれる王子を無碍にするわけにもいかない。
ならば協力して、そして『王子が』発見してくれればいいのだ。
その後のことを考えると少々気が引けるが、きっと良い勉強になってくれるはず。
彼女の恐ろしさを身をもって知る必要がある。

「確かにそうですな。万一のことも考えれば当然の判断です。失礼を」
「いえ、わかってもらえて嬉しいです」

セドルは言いにくそうに両手を組んだ。

「……おそらく王妃は無関係です。
どこから手をつけてよいのやら、見当もつかないのが正直なところ。
とりあえず、協力者と思われる部屋の侍従を問い詰めてみたいですが、
サウラさんの安全の確保を第一に考えると下手に接触はできません。
当面は監視するぐらいしか手がないのかと……」
「シーフゥは?」

パザンは別方からも意見を求めた。
多少罪悪感があったが、セドルの真面目な意見は話半分にしか聞いていなかった。
王宮内はセドルやシーフゥの方が詳しい。
そしてシーフゥの方がサウラに対して圧倒的に理解があるように思えた。
ならばどちらの意見がより正確か。

「う〜ん……サウラさん風呂好きですから、絶対に日に一度は入ると思うんですよ。
そこで待ち伏せていたら良いのではないかと」
「監禁されてる可能性が高いのに?」
「監禁されていてもです。サウラさんは常識が通用しませんから」

セドルは少し頭が痛くなりそうだった。
どこかピントがずれて、話がかみ合っていないように思えた。
仲間意識がないのだろうかと、本気で疑いたくなる。
セドルはセドルで、サウラの良い理解者は自分だけなのだと考え始めていた。
ここでちょっとしたアピールなればと、密かに期待していた。

*****************

前にこの場に来たとき、風邪でもひいたのだろうかと考えたことを思い出す。
だが彼らの習慣では、風呂など入らずに静養するのが普通だそうだった。


サウラは風呂場に来て、ふんだんにあるお湯で背中を流す。
落すのは今日一日の疲れや垢だけではない。
唾液の跡や精液の乾いた膜、もろもろを洗い流していた。
男と触れ合うたびに組織の一つ一つが活性化するよう。
もともと生気に満ちた身体の持ち主だけに、
ひとたび磨きをかければ、以前にも増して輝いていくようだった。

そうして一番おいしいところをいただくのが自分だと、従者は思っていた。
サウラの肩を引き寄せ、顎に手をかける。

「……そこまでだ。罪状は監禁、それに強姦も加えてやろう。
協力者がいるはずだが、首謀者はお前かな」

聞いただけで氷点下に落ちるような声と共に、
ぬらりと刀剣の保護に用いられる油の感触が従者の頬を滑らす。
不思議と生暖かい鋼が、まるで血の通った存在に思えた。

「あら、セドルさまですか」
「そうです。助けに参りました。とりあえず話は後で……」

セドルは激情のあまり声が震えていた。
従者はひっっと怯える。
手も震えて、ぴたぴたと刃が当たっていた。
振り返ることすら儘ならない。怖い。

片や刃を向ける方は怒りのあまり、ここでこの男を切り捨てたい衝動と戦っていた。
自分の中に湧き上がるドス黒い激情、
抑えることができたのは、ひとえに生来の我慢強さと英才教育のおかげだった。

「セドルさま、剣をしまっては。この場では無粋です。
ここは温まるところ、冷えた感情をぶつける場ではありませんわ」
「……私は許せないのです。この男が、貴女を……」

色々な悔しさがあった。
客人を迎える王族の義務を守れなかった、
排他的な差別から解放したかった、
そして慕う人を守れなかった。
サウラは優しげな目でそんな憤りをあらわにするセドルを見た。

「良い方法を一つ教えましょうか。
思う存分仕返しすれば良いのですよ。そうすればどうでもよくなります」
「は、はあ?」

非常に理に適っている気もするが、なにか間違っていることを言った。
サウラは濡れた身体にもかかわらず、セドルに寄り添う。

「えっ? あっ、いや、サウラさ……」

振り払おうとする手をかいくぐり、相手の衣服を脱がしていくのは巧みな技にも思えた。
もっとも剣を持ったままなので、セドル自身が迂闊に手出しできない。

「さあ、今度は」
「だ、だから……あっ、まて!」

従者が逃げたが、出口で待ち構えていたグーリーによって簡単につかまった。

「グーリー、そこで押えていて。顔をこちらに向けてね」

グーリーは無言でうなずく。
命令に忠実かつ丁寧に羽交い絞めにして、絡み合う二人へと顔を固定させた。
これまた巧みな技に見えた。
満足げにサウラはサウラで事を進める。

「んん……ちゅ」
「ふぁあ、でんかぁ……私嬉しいですわ」

サウラは鼻にかかった甘ったるい声でセドルに頬ずりする。

「私を心配して、助けてくれて、あんなに怒ってくれるなんて、女冥利につきますわ」
「も、勿論ですよ!」

まさに我が意を得たりの気分に浸るセドルだったが、
そこから先が一足飛びしすぎてはいまいかと思う。

「私、色々な人に汚されたんです」
「くっ、やはり!」
「ですから殿下の愛を今」
「えっと……いや、その」

そっと下半身、当然勃起している箇所へと手を伸ばす。
湯上りの色気とも言うべき、女の武器が最大限発揮される場面。
だがセドルは意味もなく我慢強かった。

「わ、かりましたから、離れましょう」
「……殿下は汚れた私に興味など持つわけありませんのね」
「まさか! とんでもありません!!
サウラさんはとても美しく清らかですよ!!!」

これまでの所業を知っても同じ台詞がはけるか大いに疑問だが、
非常に力強い断固たる口調だった。

「でしたら……この場で抱いてくださいませ……。
あの者がいる前で、私を奪い取って欲しいです」
「う……んく」

思わず息を飲み込む。
双方とも膝が崩れ落ちるが、どちらからなったのかわからない。
お互いの同意の上でなったかもしれない。
セドルが上になり、サウラを組み敷いていた。

サウラは自ら手を添えて、そっと膣口を広げる。
お湯とは違う熱い分泌液で潤ませながら、ひくひくと蠢くのは男を待ち受ける悦び。
そんな誘惑に抗えるはずもなく、
セドルはいきり立つ肉棒を取り出し、徐々に挿入していった。
あるべきところに、あるべきものが納まる。
奥までぶつかり、そこをこつんと狙撃をする。

「ア、ああァ……殿下の逞しくてステキ。うん……」

蕩けた表情に可愛らしさに顔を近づけてキスをした。
手のひらで膨らむ乳首を転がして愛撫しながら、舌を吸い上げて唾液の甘さを味わう。
結合部は膣奥まで入れたまま、小刻みに子宮口との睦み合いを繰り返した。
蠕動をいざなう女性器の愛撫だけでうっかり射精しかねなかった。
一番弱い先端が溶けそうなまま、根元までその感覚が広がっていく。
セドルは久しぶりに見るサウラの裸体へと視線を落とす。

「はあ、はあぁ」

やつらが犯罪に手を染めるのもわかる気がする。
これだと自分もかわらない。
ごくりと唾を飲む。

「憲兵の見地から聞きたい、あの侍従以外に誰がいたんだ」
「はうん、こんな状況でずるいですわ……。そんなの言わせないでください」

いけないとわかりつつも、口にするのを止められなかった。
組み敷いて結合し、お互い逃れられないからこそ聞きたい。
危険な香りがする、その期間に起きた秘められた出来事。
その釜の蓋を開けたい衝動。
単に怖いもの見たさだけではない。
サウラが言った、思う存分仕返しすれば良い、という台詞が頭にこびり付いていた。

「ん……あぁ、殿下。これではサウラは生殺しですわ。もっと激しく……」

そしてその対象を、目の前の女性にぶつけたい。
これは誰よりも優位に立ってる彼女への仕返しだろうか。
嫌がることをしたい子供じみた、だが大人ならではの愉悦が全身を包む。

「だから、ちゃんと言ってくれないと話が先に進まないよね」
「やっ……あ……」

乳首をくにりと摘んで曲げたり伸ばしたりした。
サウラはぴくぴくと震え、
口を開け、声にならないままぱくぱくと金魚のように息継ぎをする。
どうしてこうも嗜虐心をかき立てるのだろうか。
肉襞がもの欲しそうに蜜を絡めてくるのにも、切ない涙を連想させた。

「どうしても言わない気? それならさ」

セドルは抜けそうなぎりぎりまで腰を引いていくのに、
サウラは離すまいと抱き寄せる。

「ああん、言います。言いますから……抜いちゃダメぇ」
「ふうん。誰だったの、サウラを犯したのは」
「はあはあ……ヤハオ公爵に、カートージュ審判官、それに――」

あがるはあがる名前の羅列、
貴族、行政官、小間使いから神官まで多種多様。
たった三日間ほどで、よくもまあこの数かと。
実質休息など無かったであろうに。

「はは……それにこんなに気持ちよかったら、きっと一回だけじゃ終わらないんだろ!」
「やっ、そ、れ激しい!」

突然激しい律動を始めた刺激で、焦らされた分サウラは身悶えた。
男のそれが女の急所を責める、繰り返された動きであってもやはり格別であった。
単に相手の位や貴意ではない、特別な理由。
それが自分を求めて止まない感情と重なるとき、誰よりも格別だった。

「質問に答えないつもり? なら」
「止めちゃダメ……」

悲しそうにかぶり振るサウラの仕草にどきりとする。
健気で可愛らしく、そしていじめたい。

「はうん……そうですわ。皆3回も4回も出さないと……んぁあ、気が、すまないです。
オマンコの中にたっぷりと出した後も、入れたまま抜かないで硬いまままた犯すんです、はあ、はあ」

喋りながら徐々に強くなる突き上げに、サウラは途切れ途切れに喘いだ。
片膝を抱えられ、より深い結合のもと、鼠けい部を打ち付けあう。
穏やかな充足感と駆けぬける刺激が、膣奥に亀頭を押し込まれる度に震えた。
疼きの根源を貫かれる牝の嬌声が一層肉柱を逞しくする。
動きが小刻みに早くなると、血流がわかるほど脈動した。

「はあはあ、もう……来て。一番奥まで熱いのください!!」
「うくぅぅ! はあっ、はあっ、ふん!!」

女の聖域を今度は粘液が貫き、
侵攻と占領とともに欲情の炎を燃え上がらせる。
何ものにも縛られず膣内射精をする解放感と自分のものとする支配欲、
この時のために精巣で熟成された遺伝子が架け橋を走りぬけて直接胎内へと注ぐ。
サウラは強烈な牡の迸りにぷるぷると仰け反った。
甘んじて受ける容赦のない生殖の契りは、激流となって脳天まで突き抜ける。

「はああぁ……熱い子種がいっぱい……。勢い良く飛び跳ねてますわ。
こんな、こんなに……もうサウラは殿下なしでは耐えられなくなりそうです」

猛り狂う波動が最奥を求める腰の動きと重なる。
つま先まで身体をこわばらせ、最後の一滴まで搾り取ろうと淫肉も締め付けを増していた。
生々しい音をたてて熱く潤む粘膜へと精液を受け入れ、牝の本能が悦びにわななく。
それでも両者は衰えることを知らない。

「そうだよ……。耐えられなくしてあげる。
だから安心して言ってごらん。どんなことされたのか」
「お尻の穴でも犯されました。
何人も、何人もいますから……
それだけでは足りませんから……口や手、おっぱいでも出しましたわ。
皆、濃厚で熱い精液を注ぎますのよ」
「もしかして嬉しかったんじゃないの?
色んな人から犯されて……輪姦されて」

自ら胸を抱いて、赤面しながら頷いた。
奥底に潜む淫らな性をカミングアウトする恥じらい。
可愛らしくもある仕草に、汚らわしいその肯定。
外見からうかがい知れぬほど、底知れぬ漆黒の感情が噴き上げて心を染める。

「でももうそんなことは許さないよ……。
だってサウラはもう私意外では耐えられない身体にしてあげるから……」

いまだ彼女の中にある肉柱がうなりを上げて奮い立つ。
一番悪いのは彼女なのだ。だから彼女へと報復する。
何か間違っているが、非常に理に適っている気もした。

「あっ、あっ、はあぁぁ」
「ほら、淫乱なサウラのここを満足させてあげるよ」

セドルは首筋に舌を這わせながら、結合部に秘める肉芽へと指を添えて愛撫した。

「んふぅ、ああぁ……そうです、そこ、そこ! らっぁぁめ!!
んひぃ、はああ! お、狂ってしまいそうです」」

感度の良いクリトリスへの責めと合わせて、乳房に吸い付く。
口いっぱいに含んで舌で蕾を愛でれば、膣壁の淫らな蠕動へつながる。
それだけでもはや隆々と勃起して、先端が先に出した精液溜まりへと届いた。
もっとここの小部屋へ注ぐ、その決意は金剛石より硬い。

「気を確かにして。サウラが誰のものかって、はっきり知ってもらわないとね」

サウラの足首を掴んで、床まで押さえつける。
自然と浮き上がる腰に合わせて、勢いよく怒張を打ち付けた。
生殖器を伝い脳髄まで響く快感に、サウラの身体が震え、口角を飛ばしながら咆哮する。
官能的かつ支配欲を満たす眺めは加虐心をそそる。

「さ、今サウラのアソコはどんな状態?」
「は、はいぃぃ、殿下の硬いチンポが、サウラのオマンコに出たり入ったりしてますの。
お、奥ぅ〜、そこに当たっちゃって、そのたびにお腹もおっぱいも頭までキュンキュンしちゃいますぅ
殿下がサウラを自分のものにしようって、あんあんああぁ〜! オチンチンで支配してきます。
ああぁん、肉奴隷へと調教されちゃってますですぅ!」
「でもこれだけじゃ満足しないだろ」

サウラは抱きついて、豊満な胸をこれでもかと押し付けてくる。
擦れる乳首の感触がこそばゆい。

「そ・う・で・す・わ。殿下、んふ。オチンチン奥まで入れたまま、グリグリってしてください」

言うまでもなく望みをかなえる。
亀頭を膣奥まで押し付け、恥骨を擦り合わせてグラインドした。
奥底に潜む性感帯を刺激され、押さえつけた女体がビクンビクンと跳ねる。
締め付けだってすごい。このままでもいけそうだった。

「あふん、うぅん、はあぁあああ!
そ、そこにもっとくださらなければ、満足できませんの」
「もっと……言って」
「いやん、いやいや……。殿下の白くて熱くて濃いザーメンですわ。
我慢できなくてぱくぱく開いちゃってる子宮に、殿下の高貴な子種でお仕置きしてください」
「お仕置きだなんてそんな。可愛がってあげるだけだよ」
「ああぁ! はあっはあ……ん、ひゃあ!
そんな、嬉しいです。はあはあ、か、可愛がって……可愛がってください!!
熱い子種で、あん、サウラの奥まで全部! 全部、愛を刻んでください!!」

ぐちゅんぐちゅんと粘液質な淫らな音をたてて、腰を動かす。
あまりの激しさにザーメンと愛液が飛び散って、下にいるサウラの顔にも掛かった。
肉襞が射精させようと、ひたすらに怒張をしごきあげる。
そんな中でもセドルは精神まで犯し、心まで刻み込むがごとく肉の楔を打ち込む。

「すごいのぉ……サウラがセドルさまのものだって身体で教えてますぅ……
はあああぁ! んひぃ、あ、ああ、イい!
そんなに激しく愛されては……サウラはもうセドルさまの虜です!!」
「もうすぐ、はあっはああ! イクよ……サウラの中に出す!!」

高い密度の精液が肉竿を走る快楽、それがサウラの中へ隅々まで行き渡る満足感。
男根によって子作りの用意をされた器、そこへ直通に注ぎ込む。
サウラは熱い迸りを感じ、絶頂の高みへと昇る。
仰け反りながら身体を密着させて抱きしめ、子種をせがめば、
射ぬかんとばかりに勢いよく飛び出し、欲望に煮えたぎる肉炉へと満たしていく。

「うん……ああぁああん!! で、出てますわ。感じる!
セドルさまの愛が子宮の中に広がって、はあっはああぁ!!
だ、ダメれすよぉ、そんな射精しながら、あんっ!」
「もっと……もっと!」
「んあアっ! 激しい……もっとくるぅ。やっんん、イ、いく!!」

脈動のタイミングに合わせ脊髄反射で腰が動く。
卵子まで直撃するような容赦ない種付け。
貫かれた下腹部に潜む疼きが、別の高みへと昇華していく。
性器と同調する脳裡に潜む本能から快楽物質があふれ出し、
精神から肉体まで全てを一色に染めた。

「あっ……んぁ……すごい、熱い……。
激しくて、中にどくんどくんて脈打ってますわ」

鮮烈なのはセックスの肉体的快楽だけではない。
普段からは考えられない苛烈な欲求が、全て自分に向けられていること。
サウラにはこれが堪らなく愛しく、嬉しく、心地よい。
牡の凝縮された命の源が胎内を駆け巡る中、
高揚する心が止むことのない絶頂へと漂う。

「はあっはあっはあぁぁ……」
「うふふ、セドルさま。サウラは幸せいっぱいです。
次はベッドの上でも……」

ぎゅっとセドルを抱きしめるが、求愛行動より捕食行為に近い気がした。
ここでようやく本能が警報を鳴らす。
とても良い、良すぎて身が持たない。
経験の浅さがあだとなり、少々及び腰になるのも無理はなかった。

「えっ、えっと〜。そうだ、グーリーさん」
「グーリー、王子の書状もって北区へそいつを連れて行きなさい。
書状なら上着の裏側に入っているわ」
「えっ!?」

何で言わんとするところがわかったのか。
本当は少し違って、一緒に連行しようと思ったのだが、
グーリーは外見に似合わずすばやい行動で出て行った。

「我々も行きましょう。王子の部屋? それとも私の部屋かしら。
うふふ、でも宮殿内といえば、それ専用の部屋があってもおかしくありませんわ。
きっと色々怪しげな道具がそろってたりして……。
私、覚悟はできてますの。セドルさまなら何をされても、喜んで受け入れますわ」
「あは……あはは」

覚悟を決めたのはセドルの方だった。

********************

グーリーは浴室から男を連行しながら、同情はまったくしなかったが不思議に思う。
どうして凡庸を絵に描いたような男なのに、サウラのような業の持ち主に接近しようとするのか。
彼女をものにしようと身の程を知らぬその願い、結果など火を見るより明らかだというのに。

案内のとおり、番の役人にセドル王子の書状を渡した。
書状のサインと印を確認し、一応男の話を聞いて牢に入れられる。
ちなみに役人は皆、馬鹿だなあという顔をしていた。
グーリーも同感だった。
外見はとかく人を惑わすが、少々賢ければ惑わす時点で一考する。
しかもサウラはその妖しさを隠すことなく発散している。

さて、セドル王子はどうなるか。
サウラに関わって身持ちを崩した人間を幾度となく見てきたが、
意外に悪くないような気がした。
財産を投げ出すタイプ、身体を壊すタイプ、精神が危うくなるタイプ、
どこか不幸になるタイプ、そもそもサウラに嫌われるタイプ、
色々あるがどれも当てはまらない。
まともなわりにサウラを盲信しすぎてか、惑わされても笑って受け入れる。
前に感じた大物さ、これが大器の片鱗ならば面白いことになるかもしれない。

********************

会議室に王と王妃、審判査問官、書記等々の責任者が並ぶ。
セドル王子によって呼び集められたが、
いくつかの席が空白だったり代理補佐だったりした。

空けて一週間後、セドルはサウラに手を出した者を懲戒に処し、
今その事後報告を王に伝えていた。
冷静に淡々と、誰をどのように処断するべきか逐一述べるさまは圧巻である。

シェシングの協力があってこそ、ここまでスムーズに事は運べた。
親方気質で慕われ、影響力の強さでは随一。
軍部としての組織は形骸化しても、
併せ持っている警察機構は必要不可欠であり切磋琢磨されたもの。
パザンたちの対する親近感や義憤、それがセドル王子の肝いりも重なり奮迅せざるをえない。

「と言う訳でして、不届き者は全て逮捕しておきました」
「そ、そうか。大儀であった」
「後の審議は審判院の手にまかせます。
総括しますと、今回の一件は滅多にない賓客来訪者への対応のまずさもあったと思います。
今後このようなことがないよう、制度対策を考えていく必要があるでしょう。
つきましては当分の間、サウラ・ガリィを私の管理下に置きたいと思いますが」
「うっ! そ、それは……」

チュルハン王は息を飲む。
口調こそ淡々としたものだが、これは完全にサウラの身元委譲を迫っていた。
いつも見知った息子でありながら、今日は一回りも大きく見える。
有無を言わさぬ威圧感があったが、そう簡単に手放せるものではない。
あの身体を知った者は例外などない反応だ。
この世の快楽をしゃぶりつくしても、まだ見えぬ先がすぐそこにあるようなもの。

だが簡単に突っぱねることはできない。理がどちらにあるか明白だった。
もしサウラが公式に王の愛妾の地位にあれば、
仮にも絶対権力者から奪い取ることになりこの理が正しく働かない。
処分を行うのも王の名の下で行うことになり、
今回のように王子の独断で進めるのは不可能だった。
賓客という等しく中立で、人格を持たない国が身元を預かるという状況だからこそ、
公的には、奪い取る、というのは成立せず、
国の名誉のために、という王に頼らない大義名分が振るえた。

「ふふ、セドルの意見はもっともだと思いますわ」

実に晴れ晴れしい笑顔でアズメイラ王妃はそう進言した。
調査の一環でセドルにサウラの部屋を探らせてから、ようやくここまで辿り着いた達成感。
まさかここまで上手く行くとは思っても見なかった。

「客人への安全を考えましたらとても良い措置かと。
今回の王子の果敢な処断を見れば、おいそれと手を出す輩も失せましょう」

利害の一致があるのは当然だが、
意外と理解があっただけに共闘は実に簡単だった。
ここでサウラを王から引き離すことは、願ったりである。

「サ、サウラは……」

そこでチュルハン王は息を飲んだ。
セドルとアズメイラが同時ににっこり微笑む姿は、黙らすには充分だった。
そのまま口をぱくぱくさせていると出てくる言葉は
「そちの……ヨイヨウニ」であった。

こうして円満? に解決されたこの事件は、世間に出ることはなかった。
そして、これでもって神罰嫌疑派は壊滅した。
身から出た錆である。






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