世界で一番エッチで最高な先生 エピローグ
シチュエーション


――四年後・冬

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アキトは赤道近くのリゾート地へ束の間のバカンスへと来ていた。
日本ではなかなかお目にかかれない澄んだマリンブルーが美しく、カラフルな色彩に溢れていた。
勿論ハルキも結衣も一緒だが、そこにもう一人増えている。

********************

アキト達が三年に昇級して梅雨のころ、結衣が妊娠してることがわかった。
ここで三人で話し合ったのだが、
ハルキに言わせると、知らされたアキトの慌てぶりが最高に笑えたとのことだった。

「やった、嬉しいよ。本当に何て言ったらいいのかわからないですけど、すごく嬉しい」
これがハルキの第一声。
「……ええっと……マジですか」
これがアキトの第一声。

「こんなところで冗談は言わないわよ、アキちゃん」
「そ、それは……まずくないですか……」
「はあ? 何がまずいんだ」

アキトは結衣とハルキを交互に見る。

「だ、だって俺たち結婚してないし」
「……日本は重婚はできないぞ……。ちなみに一妻多夫だな、この場合。
それだと世界で許されてるところは、確かほとんど無いぞ。
おっと肝心なことを忘れていたが、俺たち十八歳未満だから、そもそもあと数ヶ月は無理」

アキトは暢気に解説するハルキを別人のような目で見る。

「ま、まだ学生の身なのに……」
「……とりあえず、お前が覚悟無しで臨んでいたことがよーくわかった。
まっ、アキの心配してることはだいたいわかってるって。
それを話し合うために今ここに居るのだから、まず落ち着け。
そして喜べ、結衣に俺たちの子供ができたんだ。これほど嬉しいことはないぜ」

当事者である結衣は、さも可笑しいとばかりに笑っていた。
アキトは今までの自分の慌てぶりと発言に恥ずかしくなる。

「あ……。わかった。慌ててしまってごめん。……うん嬉しいです先生」

いまだに三人きりでもアキトは結衣を先生と呼ぶ。
ちなみに結衣は二人をアキちゃんにハル君と呼ぶ。
結衣の意向による強制だったため、兄弟間でも昔の愛称に戻ってしまった。

「ありがとうね、アキちゃん」
「よし、大丈夫。俺は卒業したら就職するよ」

アキトの発言を聞いて、結衣とハルキは苦笑する。
ここまで完全に予想通りの反応だったからだ。

「阿呆。アキは死ぬほど勉強して、一番いいところに進学すること。
そもそも即就職なんて、親父も教師連中も絶対反対するしな」
「そうよ。アキちゃんは絶対進学するべきね」
「ほら、幸いここに最高の家庭教師がいるしな。いいか、改めて言うぞ」

アキトは真剣なハルキの表情に身構える。

「その前に聞いておかないとダメよ」
「えっ、なにを?」

結衣はハルキが何かを言うのを止めた。
曲がりなりにも教師としての視点が結衣には存在する。
きっとハルキには、アキトが近すぎて見えていない。

「アキちゃんの将来の夢とか希望」
「あ、ああ。思いつかなかった。そうだよな……すまん、一方的に押し付けるところだった」
「俺の夢……?」
「そう、アキの将来何に成りたいとか希望だ。
そうだよ、これは尊重しおかないとな。悪い、思いつかなかった」

今ひとつ話の流れが掴めないまま、アキトは思案する。
いきなり言われた所為もあるかもしれないが、思いつかなかった。

「昔パイロットになりたいとか言ってなかったか?」
「ぶっ、よくそんな昔のこと覚えてるな。別に今はなりたいとか思わない」

正直なところ、特に思いつかないアキトだった。
強いて言うなら、こういう所でビシっと決められる男になりたい、
と愚にもつかないことを思ってしまった。

「あえて言うと恥ずかしいけど、特に思いつかない」
「本当にか? 別に遠慮しなくていいんだぞ」
「遠慮? いや遠慮なんかしてないが……。
あんまりあくせく働くのは嫌かな、くらいだぞ。
何日も家に帰れなかったりするのは御免こうむりたいからなぁ。
でもとにかく、俺は先生と……子供のために働ければ何でもいいくらいだ」

自分の夢がなにかと聞かれたとき、
それはまさに今この時、これまでの経緯、そしてこれからの未来を思い浮かべた。
夢のような、と陳腐な言葉で終わらせたくないくらい、今は幸福を実感できる。
だから夢は、と聞かれてもピンとこない。
希望は、と聞かれてもこの幸せが続くこと。

「よし、それじゃあもう一度言うが、
アキトは進学すること。必死こいて勉強しろよ。
それでお前が思うベストの所へ就職すること」
「わかった。がんばる」

アキトはハルキ、そして結衣の期待に応えられるよう胸に刻む。

「うむ、こういうのは目標があると張り合いがあるだろ。
で、次は結衣だけど……ちょっと心苦しいけど、出産と当面の育児の費用はなんとか……」
「ふふ、ハル君こそ遠慮しないで聞いて欲しいな」
「ああ、うん……ごめん。でもどうしても結衣には負担をかけてしまうから……」
「でもね、私もあんまりお金は持ってないの」
「えぇ、そうなの」

曰く、結衣は由緒ある実家の堅苦しさに耐え切れず、
進学より見合いを進められたのを機に、自分の勝手にすると宣言した後、出奔。
その時縁を切ったのだが、手切れ金としていくらかまとまったお金を貰った程度とのこと。
ハルキとアキトは、いかにも結衣らしいと関心と同時に呆れもした。

「ええっと、だから実家に挨拶とかは不要よ」
「ああ、そういうのは思いつかなかったな……」
「でも私は行ったほうが良いかしら?」

ハルキとアキトは思案するが、答えは一つだった。

「止めておこう。親父は倒れるかも」
「あはは……そうだね。俺もそう思う。ことが落ち着いたらでいいね」
「そうそう、俺は今からでもバイトでもするか」
「そういえば、ハルは将来どうするんだ」

ハルキは前もって考えていたが、誰にも言っていなかった。
決めかねていたのではなく、時が満ちてからの方がより良い決意になると思ってのことだった。

「俺は……専門学校に行って、調理師免許を取ってシェフになるよ。
専門学校ならバイトくらい余裕でできるだろうし、丁度いいな。
ま、二年程先に社会人になって頑張るから、アキも頑張れよ」
「ハル……、わかった。俺は俺で出来ることをするよ」

アキトはハルキの心配りに感謝し、決意を受け継ぐ。
兄がいなければ事態に対処できないダメな自分を思い知るも、嫌気をさす暇などないのだ。

「結衣も少しの間我慢して欲しい。
特に卒業するまはで色々寂しいし、つらい思いもするかと思うけど……」
「大丈夫よ。アキちゃんにはみっちりしごいてあげるしね」
「あははは……。お手柔らかにお願いします」

こうしてハルキは調理師になり、講師の太鼓判の下レストランでの勤めに収まる。
もともと人受けする容姿に要領の良さに加えて、実際の腕も即一流のもの、
現場で二年程もまれた今は、立派になくてはならないシェフ補佐役を務めるまでに至った。
ゆくゆくは店を任されるのも、やもすれば遠い話ではないかもしれない。
コミュニケーションの巧みさ、人脈形成と人や統べる才にも恵まれているからこそだ。
アキトは見事に押しも押されぬ名門へ合格、上京する。
人材確保を進める昨今の事情もあってか、
Uターンで地元の企業の面接を受ければ、もはや引く手あまただった。
結局地銀を選び就職内定をもらい、今はこうして春を前にひと時の余暇を楽しんでいた。

結衣は教職を退職することにした。
未婚という所為もあるが、下手すればハルキたちに多大な迷惑がかかる。
このころハルキは学生の本分もそこそこにバイトに励む。
進学校的な校則によりバイトは禁止されていたが、
職場での出来事が話題としてもよくのぼり、結構楽しかったそうだった。
結衣のところへは、ハルキは手料理や身の回りの世話、金銭の工面の用事で、
アキトは勉強を教えてもらいに、気分転換に将棋の相手などでまめに通う。
いくら強い人だろうが、この大事な時期に寂しさを感じさせたくない一心だった。
この時結衣は結衣で、密かに深くほだされていた。
こうして無事結衣は出産、育児となり、ハルキは卒業進学と同時に結衣と同棲する。
上京したアキトも、盆や正月などは結衣とハルキへと会いに帰るのだった。
そうして時は過ぎて今に至る。

********************


「やっと……帰ってきてくれたな」
「ハルぅ、お前感動しすぎ。この一年は卒論やら就職活動で帰れなくてすまなかったな。
もうこれからは本当に家族一緒だぜ」
「くぅぅ……これで……結衣に……」
「ど、どうしたんだ?」

ハルキの不穏な雰囲気にたじろぐ。
結衣との間に何かあっては一大事である。

「その……夜は……結衣に……」
「わかった、もう言わなくていいぞ。全部心得た。
……色々……くくっ、つらかったん……だな。ぷっ、はははははは」

きっと毎晩責められっぱなしだったのだろう。
ハルキはどちらかと言えばM属性だが、それを開花させたのは間違いなく結衣のおかげだった。
常々不本意らしいことを口にもするが、結局のところ本人は楽しんでるのだ。
少なくともその場面になれば、であるが。
おそらく事後で自己嫌悪めいたものを感じるのが、不本意の原因と思っている。
つまり大したことではない。

「はあい。おまたせ」

少し間延びした独特のイントネーションに振り向く。
子供を連れての登場だったが、まず結衣に目がゆくのは避けられない。

「ぱぱ〜」
「水着、どう……かな」

頬を少し赤らめてしまうのは、なにも暑さの所為だけではない。
結衣は少し身を捩じらせて、反応をうかがうように屈む。
自然と見える胸の谷間の深さに、男なら視線が向いてしまうだろう。
女性である事を誇示するように、張りのある乳房をわずかに押さえつける布地に、
股間へと覆い隠す申し訳程度の逆三角形を吊り上げ、腰に食い込む紐と結び目。
そこからすらりと伸びる脚線美も、しぼられたウエストも見事としか言いようがなかった。
引き締まっていながら出るところは見事なもので、
むっちりと肉付きの良さが匂い立つような色香をかもす、
男の理想を具現化しつつも健全な健康美に溢れていた。

「いやぁ、これは……」
「……いい、すごくいい」

大胆な水着姿に男のほうが羞恥を感じ、お互いの顔と結衣を交互に見合う。
四年前を思い出すうぶな仕草に、結衣はくすりと笑顔を見せた。

「あらぁ〜、いつもはこれよりエッチな姿見てるくせに」

背が高いからこそ、裸に近い装いは素材を引き立たせ、珊瑚礁に囲まれた南海に映える。

「そうだけど……そうかもしれないけど……」
「グッドとしか言いようがないね!」
「ハル……なんか反応が親父っぽい……」

結衣はもう二十代後半で出産経験もあるが、見てくれはようやく成人式に出るほどの若さだった。
そもそもストレスを溜めないお得な性格もあるが、
泳ぐのが大好きでスポーツジムに通う適度な運動に、
夫ハルキは家事育児に非常に協力的で、
食生活にも気を遣いながらも時々本職による美味も味わえ、
更には夫婦仲は最高でその果てに夜の生活は絶好調とくれば、
もはやアンチエイジングの見本として一冊の本になりそうなくらいだった。

一通りの反応に満足してか、結衣は子供を抱きかかる。

「はい、アキお父さんですよ〜。あいさつ」
「ん、あい……おとーさ」
「はい、お久しぶり。ってホント一年ぶりだけど覚えてるかな、優希」

むしろ、髪型は多少違えど同じ顔の父が二人いて、混乱しないだろうか心配だった。
指を向けると、小さい手で握ってくる暖かさが心地よかった。
なんとなくだが、受け入れられたようで嬉しさを覚える。

「はい、抱いてみて」
「う、うん」

優希が泣いたりしないか不安だった。

「もっと堂々とね。親が安心しないと子供も不安がるものよ」
「わかったよ」

精神を落ち着かせ、優希を抱きかかえる。
思ったよりも重い。

「うんうん、成長したね」
「そりゃ一年も経てばな。まあアキが軟弱なだけかもしれないぞ」

確かに結衣は平気で持ち上げていた。
ずっと机に向かっていた所為か、少し運動不足の気があるのは確かだった。

「ぼくがアキお父さんだよ。これからよろしくね」
「ぁう、ぁあい」
「うん、ありがとう」

わが娘ながらなんて可愛いのだろうか。
自分は世界一幸せだと実感できる瞬間だった。

*************************

穏やかな潮風の中、日本と違って湿度が低く爽やかで、日光浴には適しているだろう。

「はい、お願い」
「うん、了解」

アキトの相槌は短いが、ためらいは長い。
ビーチパラソルの下、うつ伏せに寝転がる結衣から手渡されたのはサンオイル。
ハルキは優希と一緒に少しはなれたところで、波と戯れながら砂遊びに興じてる。
これはつまり、久しぶりだから二人きりになれと気を遣ってくれたのだろうか。
気持ちはありがたいが、素直に受け取れないのはサンオイルのため。
結衣がビキニの胸の部分の紐を解いたのはサンオイルのため。
視線を感じて振り返ると、にやにや笑っているハルキが見えたのはサンオイルのため。
胸の鼓動が高鳴るのは、サンオイルのため。
きゃっきゃとはしゃぐ優希の声に、そちらへ逃げたい気分だった。

「どうしたのアキちゃん」
「この年でちゃん付けは勘弁して……」
「ふふ、言われたくなかったら、堂々と塗りなさいよ」

ごもっともだが、ものすごく抵抗がある。
約一年ぶりに見る結衣の素肌は、きめ細やかで張りがあり白く美しい。
南半球の日差しにうっすらと汗ばむ姿は神々しいオーラが漂っていた。
アキトは忙しさに長いこと禁欲的な日々が続いていたため、
純朴な性格と相反する獣じみた欲望との葛藤に悩まされていた。

「もしもーし」
「……はっ、いかん。意識が……」
「今のは本当……なのね」

ようやく油に切れた機械のごとく、ぎこちない動きで結衣の肌に触れる。
修行僧のごとく無心にサンオイルを塗りつけるが、心中は穏やかではない。
TPOなどそっちのけな息子が、海水浴パンツの中で暴れていた。

「はあぁ……あぁ……はあ」
「アキちゃんは、なんで塗ってるだけなのに甘い声出してるのかな」

遠くでハルキの笑い声が聞こえるが、構っていられない。
脚から始め太腿が終わると、
今度は水着が食い込む白桃のようなお尻を両手でマッサージしながら塗りこむ。

「くぅぅ、ああぁ……」
「あん、もう、だ・い・た・ん!」

ハルキの笑い声が一段と大きくなった気がする。
前に笑ってしまった仕返しだろうが構っていられない。
哀れな息子が悲鳴を上げていたが、
TPOも空気も読めない奴は黙って涙を流してればいいのだ。

「はあ、はあ、はあ、ゆ、結衣ぃぃ!」
「はいはい、そこまでだ」
「あうち」

アキトは側頭部をどつかれ、横に倒れる。
器用に優希を抱きかかえての蹴りはハルキのもの。

「はっ、俺は何をしようとしてたんだ」
「自分を見失いすぎだ」
「えーん、これからが面白そうだったのに」

衆人観衆もなんのその、変態プレイの道に走られたら困る。
行為はエスカレートすると聞いたことがあるから、
芽は早めに摘み取るに越したことはない。警察のご厄介だけはやめて欲しい。

結衣は小指をおしゃぶりしながら、お預けを食らった子犬のようにしゅんとする。

「はいはい、それじゃあ優希に塗ってもらいましょう」

自然分解のサンオイルだから、子供の肌に触れても大丈夫だろう。
アキトが模範として行うと、優希も掌に付いた油を物珍しげに見た後、母の肌に撫で付ける

「きゃはぁ……優希の手、くすぐったいよぉ」

身悶える結衣はやっぱりエッチだったが、とても幸せそうだった。

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ホテルでのディナーの後、アキトはベランダから日の落ちた海辺を眺める。
昼とは違う漆黒の水が波とともに押し寄せ、潮騒の音が夜の静けさに一層深くする。
見るとぽつりぽつりカップルが出歩いてる。
薄暗い明かりの下でも愛を語らうには充分であり、好都合でもある。
悪さしてる奴が居ないか眺めていると、ドアからノックの音が聞こえた。

「開いているよ」
「あら、無用心ね」
「こんなところで物取りもないって」

治安の良い観光地ということもあるが、田舎感覚が残っていた。
結衣もベランダに出て、アキトと並んで夜風に当たる。
ほのかに香るシャンプーと甘い体臭に酩酊感がかもしだされていた。

「優希は?」
「大丈夫よ、隣ですやすやお休み」
「う、うん」

アキトは我知らず意気込むが、どうにも身体が硬直して動かない。
結衣は夜風に流れる髪をかき上げる姿が美しく、良い雰囲気を壊すようで気が引けていた。
くすりと笑う仕草は教職を勤めていた頃と変わりがない。
むしろ生気に満ち溢れ、より魅力的に見える。

「ねっ」
「うん?」

結衣はアキトの手を取って、自分の肩に回す。
逆に気を遣わせたようで、いつまでたってもお子様な自分に反省する。
せめてもの気持ちに引き寄せてくっつく。
結衣はベランダの柵に身体を預けて、自分より背が低く思えるが、
アキトは前より少しだけ身長が伸びただけで結衣ほぼと同じ高さだ。

「うん……」

アキトは結衣の頬に手を触れ、こちらに向かせてキスをする。

「ん……ハル君は?」
「お買い物、もうそろそろ来るよ。それまでちょっと……」

アキトは結衣の腰に手を回し、大胆に抱き寄せる。
直立すると同じ位置にある唇に引き寄せられていく。

「んん……」
「ただいま。遅くなって悪い。身振り手振りでも何とかなったけど、時間がかかった」

突如ハルキのご帰還である。
ノックもなしの闖入にアキトは慌てて離れようとするが、
結衣ががっちりと首と頭を押さえ、不可能であった。
女性ながらこの力強さは、アキトが単に非力という助けもある。

「ぶっ、んんん……ぅん」
「ちゅ……んん」

二人の様子を見ても特に気にしないハルキは、
頼まれていたミネラルウォーターを結衣に手渡す。

「ぷはぁ……ハ、ハルキ遅かったな!」
「ああ、間に合ってよかったよ」

何がと問いたいが、怖くて聞けなかった。
結衣はボトルを呷ってまたキスをする。

「んん……ちゅる……飲んでね」
「んん……んぐ……ぅん」

口に溜めた水を口移しで無理矢理飲ませる。
流れてくる液体は体温でぬるくなり独特の甘さがあった。

「部屋にもどろ。もう我慢できないよ……」

結衣の言葉に全面的に同意する。
いつまでも変わらない彼女に安心があった。

**************************

「ふっふ〜」

結衣は不敵な笑いを見せて、荷物カバンをあさる。
取り出すのはハンディタイプのビデオカメラだった。
これは優希の成長記録のためと購入した最新型だ。
瞬間的にハルキとアキト両人とも嫌な予感がした。

「ねっ、今度はしっかり作るところから撮ろうよ」
「「今のは冗談……」」
「ではないわよ」

ハモりの質問も、はっきりと結衣には否定されてしまった。

「ねっねっ、だって今日は二人目作るんだし、
そうすると自然一人は手持ち無沙汰になるでしょ」
「そういう問題ですか……」
「わかった……なら最初はアキトからだな……」

どの道、結衣の意向に逆らえないとふんでの生け贄だった。
された方は堪ったものじゃないが。

「兄たる俺がしっかり撮ってやる。安心して特攻してこい!」
「お、俺を売ったな」
「勿論だ……いやいや、そもそもアキトの祝いの意味も込めてだぞ」
「本音がさらりと出るあたりがハルらしね……」

さすがに失言と悟ってか、覆水盆の返す速技だ。
だが読みが甘いかった。二人がもめれば被害は必ず双方に向かう。

「はい、お願い」

結衣はハルキにカメラを手渡す。
気前よく受け取り、設定をあわせて操作する。

「おう、任せておけ」
「でもよく考えたら最初くらい、二人一緒でもいいよね」
「ぅえっ」

結衣はキャミソール姿に下はパンティ一枚になって、二人の目の前で屈む。
止める暇もなく、アキトのベルトを外してズボンを下ろす。
跳ね上がる男性器に、なんだかんだ言っても期待はあったのが窺える。

「すごぉい、昼間からこんなだったんだ」
「い、いや……」
「ほらぁ、ハル君もね」
「あわわ」

ハルキもあえなく脱がされ、アキトと並んで手でしごかれる。
文字通り弱みを握られ、逃げることもかなわない。
結衣は掌で増す硬さ、熱さに口づけする。
舌先でちろちろと愛撫すると、いちいち反応する可愛らしさに溢れていた。

「ふふ、二人ともおっきい。ん……ちゅる…じゅん、ん」
「はあ、はあ……気持ちいい……もっと咥えて……」

アキトは久しぶりの口腔性交にため息を漏らす。
舌と粘膜を絡め、亀頭から竿まで唇によってぬるりとした圧力が加わる。
ハルキはその様子を律儀に撮影するが、
自身も手でしごかれ、カメラ越しに見る淫猥さに昂ぶる。

「んっ、んっ、じゅるる、ちゅ、んっ」
「あぁ、すごくエッチだよ」

結衣は顔を前後させて喉奥まで咥えて愛撫する。
欲望が溜まりに溜まっていた分、達するのも時間の問題だった。
我慢の限界だったアキトは結衣の顔を押えて、自ら腰を動かす。
強制的なフェラに、今度は結衣が責められる。

「んん、うんん」
「はあはあ、もう出る。このまま口に出すよ!」

口をすぼめて吸い出されるように、アキトはあえなく果てる。
肉竿の中を走りぬける快感に放出する悦び。
久々に味わう射精の気持ち良さが延々と続く。
結衣の口の中に吐き出される精液は、量も濃度も最高のものだ。

「ん……ちゅる、りゅる」
「飲まないで最後まで溜めて……。まだまだイクよ。ほら全部、中に残ってるのも」
「じゅるる……ぅんん……」

結衣は尿道に残る残滓まで舐め取る。
ほぼ固形に凝固した精液が、鈴口から溢れ出して口腔を汚す。

「いいよ。抜くからこぼさないでね」
「んん……」
「ほら、いい顔」

結衣は唇の端から僅かに垂らすものの、全て口の中に収めたまま微笑む。
アキトが顎に手をかけ開けるよう催促すると、見せ付けるよう顔を上向きに唇を開いた。
そこは予想通り、白濁とした粘液が一面を満たし青臭い匂いが広がる。
綺麗なものを汚す背徳感に脳髄が甘く痺れた。もっと浅ましく汚れて欲しい。

「どうせならハルのと一緒に飲んでよ」
「うわぉ、お前というやつは……」

アキトの相変わらずのサドっぷりにハルキは少々引く。
だがここは習うべきと割り切り、自ら口元に男根を突きつける。
結衣は手で握りながら前後に擦り、舌先で鈴口から裏筋を丹念に刺激する。

「あぁぁ、くぅ……いいよ、もっと強くして……」

長い指に囚われながら急所を的確に責められ、思わずうめく。
しまいにハルキも持たず、白い放物線を描きびしゃりと顔から鼻筋、口にかけて放出する。
まぶたや鼻先から、匂い立つようなどろりとしたザーメンによって汚され、
口腔内は真珠を溶かしたようなパールホワイトの海だった。
丹念に舐め取り出る物がなくなったのを見て、結衣は口を閉じて両者の混ざり合う精液を嚥下する。
ごくりと音と共に、いく度も喉が動くのが見えた。

「ん……すごい量だよ……。上手くごっくんできなくて」
「美味しかった?」
「うん、とっても。濃くて……こんなのが今度は」

言い終わる間も無く、ベッドに押し倒される。
上半身担当がアキトなら、下半身担当はハルキといった具合に、
蜜に誘われるまま一つの花に群がる。

「あん、汚いよ……うんん」

アキトは静止も聞かずキスをする。
自分たちが出したものなど気にせず、口中まで侵入して歯茎をくすぐる。
生臭い匂いも気になるどころか、返って興奮する材料だった。
その下では下着の上から秘所をなぞり、太腿の付け根に舌を這わす。
二人に組み敷かれながら身動きもままならない結衣は、僅かながらに身を捩じらせて喘ぐ。
薄布の下に手を入れられた時には、最後の一枚もなくなり後は全てをさらけだす。
これからの先の期待と止むことを知らない快楽に身を震わせる。

「はむ……ん、んん、またここから母乳が出るんだね」

アキトは乳房をすくい上げて揉みながら、頂点の突起をほお張る。
朱鷺色の蕾みは膨らみ、硬くしこっている。
今かと今かと赤子みたく吸いつき、猫のように舌で跳ね上げて舐める。

「ふぅんん、そんなこと……まだ出ないよ」
「遠い未来の話でもないってこと」
「そう、俺たちが……今から仕込んであげる」
「うん……お願い」

じゅくじゅくと愛液に溢れる秘裂を指で割り開き、その量を確かめる。
寂しげに濡れて光る陰核も口に含み、膣口は二本の指で抜き差して一緒に愛でる。
しかしされる方は愛でるなどと生ぬるいものではない。
指を鉤に曲げGスポットを擦ってはクリトリスも舌の洗礼を受け、
結衣は刺激にのたうち、更にはアキトから執拗な乳責めにもあっている。

「はあぁぅ! やっ、それ、すごい」
「もうエッチで濡れ濡れ、ここにもうすぐお望みのものが来るって期待だね」
「ダメぇ……いきなりそんなの……ああぁ、んぁあ!!」

軽く絶頂に果てる結衣は、長い四肢を使って二人を抱きしめる。
大柄ではちきれんばかりの女体にしがみ付かれるのは、それだけで気持ちよい。

「はうぅ、はあっ、はあぁ……」
「イっちゃった?」

結衣はだらしなく呆けたまま、恥ずかしげに首を縦にふる。
下はシーツに染みを作るほど蜜液を垂らし、それだけで股間の一物は奮い立ってしまう。

「ふぅ、俺が先でいいんだよね」
「勿論、立派に撮ってやるよ」
「……意外に乗り気だね……。まあ毒を喰らわば、ってね」

白い尻の下にタオルを敷き詰めて股間を高めに掲げさせた後、
アキトは結衣の太腿を抱え、男根を割れ目に擦りつけた。
結衣は背が高いが、こうして寝転んで折りたたむようにすると小さく見える。
脚が長いためだろうが、この入り口へと誘われる姿に目も眩みそうだった。
これ以上ないほど勃起した男根を膣口へとあてがい腰を前に進める。

「はああぁ、あん……入ってくる」

女性器はみちみちと開かれ、男性器との結合を深める。
根元まで埋め込まれると、そこはもう子宮への突き当たりに阻まれる。

「あっ、あふぅ。はあぁ……おっきいの……」
「どんな感じか、しっかり言わないとね」

カメラを意識して感想を催促する。
どうせ皿まで食べるなら、とことん利用して辱めたい。
実は結構乗り気であった。

「はらぁ、アキお父さんのオチンチンが結衣のオマンコの奥まで入ってるよ。
この後たくさん気持ちよくなって……膣内射精して赤ちゃんの素をもらうの。
それをハルお父さんと交互に、何度もたくさんね……」

結衣は羞恥で赤面しながら、カメラに向かって未来の子供に語りかける。
アキトはその間もゆっくりと腰をグラインドさせて、感触を馴染ませていった。

「ふふ、二人分必要だなんて、結衣はエッチだなぁ」
「やぁん、そんな。私、背が高いしその分いっぱい必要なの」

至極ごもっとものようで、そうでもないような理屈だ。

「じゃあもっとおねだりして」

相変わらず弟のベッドヤクザっぷりに兄は心配になる。
そんな思いをよそに、結衣は顔を伏せて小声で呟いた。

「ん? ほらぁ、もっと大きな声でさ」

言いながら促すように膣奥まで擦り上げる。
潤いを増す粘膜に相手の興奮がわかった。

「はうん! オマンコいっぱいごしごしして!
ハル君とアキちゃんの二人のチンポでぇ結衣をめちゃめちゃにして!
はあはあ、そうよそこ! そこに、白くてねばねばした精液が欲しいの。
子宮の奥までいっぱい愛して欲しいよ。そうしてくれたら、結衣はきっと孕むの。
だからお願いなの、いっぱい注いで二人の子供を結衣にください」
「よくできました。それじゃあ……」

腰を上げてぎりぎりまで引き抜き、体重をこめて勢いよく挿入した。
剛直が子宮を揺さぶり、膣壁が喰らいついて摩擦による快楽を堪能する。
肉を打ち合わさる音は、牡の純粋な欲求によってどんどん早くなっていく。

「はぁああぁ、これ、これが欲しかったの」
「結衣のエッチなお肉が、アキのチンポを美味しそうに食べてるよ」
「美味しいくて、ぎゅってしちゃうよぉ。
もっともっと奥まで犯して! 一番深いところまで味わいたいの」

胎内から湧き上がる切ない疼きに支配され、結衣は恥ずかしげもなく答える。
結合部から撮影され意識が向かう中、限界まで張ったエラが容赦なく抉っていく。
一突き毎に感じるポイントを満遍なく刺激され、最奥の性感帯と衝突する。
子宮口との接吻は子種を求める女体にとって劇薬のように全身を侵す。
最後のとどめを、慈悲を欲しいあまり、生殖行為を牡に求め、高まっていた。

「ダメぇ、もう来て。奥ぅ、切なくて、欲しいよぉ」

切れ切れに叫ぶ結衣に、
アキトは時折緩急をつけて、一際良い声で啼く部分を突き、擦る。
同時に乳房へと手を伸ばし、快感で肉体に従属を強いる。

「んぁ。やあぁ……イク。はあはあっ、もうイっちゃう!!」
「いいよ、このまま何度も……イかせるから」

許しを得たのを境に意識を保つ糸を手放して、
ひたすらに膣を行き来する怒張が高みへ押し上げる。
肉体は敏感に震えながら、すでに結衣は焦点を結ばぬ目で陶酔の表情を晒して喘ぐ。
焦らされた分、身体は敏感になり容易く昇りつめる。

「こんなの……もう…はっ、ああぁ、あああぁん!!」
「ん、ん……」

結衣が達すると筋肉がひきつり、執拗に膣壁が沈んだ男根に絡みつく。
気を抜くと今にも出てしまうが、アキトは我慢してこらえた。
四肢を張り詰めながら仰け反り、徐々に弛緩して女体の柔らかさを戻していく。

「はあっ、はあぁぁ……まだ……。ハル!」
「え?」

突然呼ばれて驚く声を出す。
だがアキトの目だけで意図を察っすることができる兄だった。

「あはは……。それじゃあ」
「おう」

結衣は意図がわからず、そのまま息を整えてるとアキトは抜いてしまった。

「まだ、終わってないよぉ」
「わかってるよ。ねっ……うん……ちゅ」

アキトは結衣の髪を指に絡めながらキスをする。
結衣も首に腕をまわし舌の感触を楽しんでいると、突如訪れる下半身から充足感にわななく。

「んん! ちゅるる……ん、んあぁ!!」
「もっとエッチな顔を見せてよ」

アキトはハルキからカメラを受け取った。
熱い剛直によって、噴き上げるような快感に襲われてる表情を余すところなく撮る。
事実結衣はすでに絶頂へといかされた肉体を、再び高みに昇っていく。
硬さや形状、長さが違うわけではないが、それでも違う新たな快楽が掘り起こされる。
膣肉の急所に突かれながらも、柔らかに揉み解される感触。

「あっ、んあぁ! 何か違う、違うよぉ……はあっ、やあぁ!
すごく、あん! くるの。はあぁ……」

頬や首筋、太腿から尻とソフトに手を這わせ、蜜壷ではこれまで培った要所要所を捉えていく。
結衣は身体が溶けてなくなりそうな浮遊感に、神経だけが鋭敏に肉の悦びを拾い上げた。
アキトとの時とはまた違った愉悦に蕩ける表情を両手で隠すが、
ハルキは結衣の両手首を取り、顔の横に磔刑のごとく押さえつける。
すると今度は腰の動きを制限しようと、両脚をハルキの胴に絡めた。
ハルキにはやっとわかったのだが、結衣は本当に撮られるのが恥ずかしいらしい。
自分から言い出したことだから、プレイの一種かと思ったが微妙に違う。
だけどこんないい表情をされて隠すのはもったいない。

「結衣、ダメダメ。もっと気持ちよくなってもらわないと」
「はあっ、はあっ、ねぇ、もうダメだから……にお願い……」
「うん」

ハルキは尻を抱え、これで最後とばかりに腰を叩きつけると、
豊満で形のよい美乳がふるふると揺れ動きながら牡を誘惑する。
今度は逃すまいと締め付ける膣にも増して、勢いよく怒張を子宮口まで挿入した。
少しでも受精する可能性を高めようと、何度も肉の隘路をならすように往復する
悦楽を糧に精巣の内で子種を溜め、着々と準備を進める。

「どう? もうすぐイクよ!」

嬉しい言葉に結衣は夢中で抱きしめる。
自然とハルキの顔が乳房にうずくまり、甘い体臭を吸い込みながら何度も突き入れた。
汗に濡れた肢体が一層艶かしく光っていた。

「きて! 結衣の一番大事なところに出して!
中で出してえ! 受精するの、赤ちゃんつくるよぉ!!」
「くぅ、ふぁっ、出る! ぅくうぅ、ああぁぁ!!」

結衣はハルキの腰に長い脚を巻きつけて離さない。
急速に増す射精感に密着する肌が最後の抵抗を崩した。
陰嚢で生成された精子が前立腺液と合わさり出口を求めて噴き上げ、
結衣は胎内に塊のごとき精液を一身に受け止めた。
ようやく待ち望んだ熱き子種に、一気に限界を超え絶頂へと導かれる。
射精中にも膣を貪るように犯され、全身を揺さぶられながら牡の洗礼を受ける。

「ああぁ、今ハルお父さんが射精してるよぉ……。すごいたくさん、中に出てる。
はぅっ、止まらないで、頑張ってる。孕ませようってとっても」
「はあっ、はあっ、吸い上げてくるよ」

ぴんと背筋を駆け抜ける快感が結合部からもたらされる。
精液をより多く貰わんとする肉襞の蠢きが、止む事のない射精へとつながる。
押し出そうとしたり引き込もうとする、女の内側の気まぐれに弄ばれてもいたが、
ハルキは腰を押さえて寄せ、がしがしと打ちつけながら生殖行為を重ねる。
一滴も無駄にしない、有無を言わせぬ強烈な衝動だった。

「ふっ、はあはあぁぁ……どう?」
「はあぁぁ……最高だったよ。ちゅっ」

ハルキは結衣と掌を合わせ、キスをして頬擦りする。

「やっともらえたの……たくさん」
「でも、もっと必要だろうからね」

名残惜しい気もあったが、これ以上お膳立てしてくれたまま待たせるのは忍びない。
結衣は結合部を虚ろに眺め、再び迎い入れる一物をじっと見つめる。

「もっとください……」

同じ姿勢のまま、再度の挿入だった。
違うのは最初から射精へ向けての律動であり、
勢いのまま腰を前後させ粘液の泡立つ音を鳴らしていく。

「すごくいいよ。待ってる間も興奮してたから、もうイキそうだよ」
「はあん! は、激しいよぉ。すごく……あっ……んんぁああ!」
「はあはあ、あんなの見せられたら……」

始めとは違うぬめりと締まりに陶酔しながら、抽挿を繰り返す。
アキトは結衣と兄との生殖を目の前にして、激しい獣性の襲われていた。

「ん、ん、はあはあ……あっ! 奥までぇ……ぶつかってる。
オチンチンが奥まで、きゃ、んあ! 赤ちゃんの入り口に当たってる!」

結衣は息も絶え絶えに忘我の域で叫ぶ。
突かれる毎に身体は反応し、女性器は収縮をしながら男根を慰撫する。
一連から続く絶え間ない性行為と、膣内に出された多量の精によって完全に発情していた。
全身を桜色に染め、時折痙攣するオーガズム手前の状態だ。

「最高だよ。この奥の……ぐちゃぐちゃになってるところに……出したい!」

ぬちゅぬちょと奥にある精液溜まりを押し込み、もっとここに注ぎたい欲望に支配される。
神聖な箇所だからこそ何度も注ぎ、塗りこみ、溢れさせ征服したい。
この器を満たせばきっと新たな生命が宿るのだ。
結衣は脚を大きくひろげられ、割れ目が左右に引っ張られる。
ぐいぐいともぐり込む肉棒が反り返り、普段とは違う部位に擦れながら蹂躙する。
膣や子宮から届く合図に、下腹部が熱く灼けそうだった。
きっと身体が受精を待ち望み、準備を進めているのだと。

「ふぁ、ああぁ、いくよ!」
「はあんっ! すごっ……いい。このまま一番深いところに!
もっともっとぉ……いっぱい赤ちゃんのもと注いで!!」
「ふふ、中出しをおねだりだなんて、本当にいやらしいんだから。
はあはあぁ、ハルにもされたのに、もっと欲しいの?」
「欲しいの……アキちゃんの精液もぉ……結衣にください。
子宮にハル君のとぉ、アキちゃんの精子を仲良く一緒にね」
「いいよいいよ。ほらぁ、カメラ向かってエッチで淫乱でごめんなさいって言って」
「はあっ、はあっ……二人のオチンチンでイクよぉ。
今度はアキお父さんに中出しされて孕む、妊娠するエッチで淫乱な結衣でごめんなさい。
でも、二人じゃないと満足できない身体にされちゃったから。
私、二人のこと大好きだから、愛してるから二人の子供が欲しいの」

牡の支配欲と生殖本能を刺激するやりとりが、愛欲の火に油を注ぐ。

「結衣、愛してるよ。綺麗で可愛くて、エッチで淫乱なところも……」
「あぅ! はあぁん、嬉しいよ。
ねっ、エッチで淫乱だけど、二人でたくさんしつけて欲しいの」
「はあっ、はあぅ!! で、出る!」

腰と尻がぶつかり悶え狂う女体への最後の一撃に、胎内へ白濁とした粘液が打ち抜いた。
脈動に合わせ、締め付ける媚肉に誘われるまま、膣奥へ何度も挿入する。

「んっ、あぁ!! 奥ぅ、はあん!!
熱いの……どくんどくんって入ってくる」
「うあぁ……本当に吸い取ってくる」

女性器と深い結合のまま射精する快感に酔いしれる。
子宮口に亀頭を押し込み、鈴口から無数の精子を含む体液を放つ。
肉竿の内から底知れぬ量が走りぬけ、迸っていき、
最愛の女性へと遺伝子情報を存分に書きつける。
きっと胎内ではハルキとの協同で事にあたってるだろう。
全てを出し切った後もしばらく抱き合い、ようやく結衣から離れる

「んん、ふぁぅ……溢れちゃう……」
「自分でも、ちょっと恥ずかしいくらい出たね……」

愛液と精液の混ざった粘液が秘洞から漏れて垂れ落ちる。
二人の男性から間をおかず中出しされた痕跡とも言うべきか、
子宮に入りきらなかった分が膣の収縮によって溢れてしまった。
まるで己の分身がやんちゃをしてるようで、いささか恥ずかしい気分にさせられる。

「気分はどう。あっ、隠さないで脚開いて」

おずおずと結衣は秘部を隠していた脚をずらす。
あまりのいやらしい光景に眩暈がしそうだった。

「あん……ほら見て……。ハルお父さんと、アキお父さんの精液……。
二人でたくさん結衣の中に出したから、外にこぼれたの。
ねっ、これであなたのお父さんは二人いるって証拠になるかな」

今も意外なほど恥ずかしがりながらも秘部を隠さずにいる。
だいたい快楽の追求に貪欲な結衣が、脚で動きを制限したあたりから何か引っかかる。
ハルキはここで、もしかしてカメラで撮る行為が結衣による配慮によるもののような気がした。
アキトと目を合わすと、同じことを思っているのがわかった。

生まれてくる子供が、父親が二人いる特異な状況の証拠だろうか。
確かに多感な年頃になれば色々あるだろうが、このビデオを見せるわけにもいくまい。
もしかしたら三人で集まるのが一年ぶりだったため、不安だったのかもしれない。
結衣は結衣なりに、自分に対して自信を持っているが、
それが翻ればアキトが一年間帰省しなかった不安にもなりうるだろう。
揉め事にならないよう交通整理の意味合いでビデオカメラでも持たせたのか。
考えれば考えるほど謎だが、単に羞恥プレイを楽しみたかったのが真実のような気もする。

まあこんな風にぐたぐた推測するのも、結衣に言わせれば無粋の極みだろう。
もしかしたら子供が成長した時、万が一、億が一にこのビデオが役に立つのかもしれない。
一年ぶりだから、一人一人愛を確かめたかったのかもしれない。
羞恥プレイをして、より深い趣向を求めたのかもしれない。
ただ一緒に暮らしてみての実感だが、結衣が考えることは信用してよい。
視点、着想、行動が奇抜なものもあり、真意がわからないことが多いが。

色々考えたすえ、ハルキはカメラの電源を切る。

「もう止めるの?」
「まさか、たださ」

ハルキはアキトとアイコンタクトをする。
この先はお前が言え、ということだった。
推測が少しでも当たっていれば、次の台詞はアキトが言ったほうが良い。

「次は一緒にしたほうが、結衣も嬉しいだろうからね」

結衣ははにかみながら頷いた。

アキトは結衣を抱きしめ横に転がる。
うなじから鎖骨を舌でくすぐり、手は秘裂へとのばす。
くりくりと陰核を擦ると陰唇からはときどき液を飛ばす。

「何か結衣が射精してるみたい」
「あん……やっ……はあはあ」

ハルキは片足を抱え、アキトの愛撫をやり易くしながら足を舐める。
尻から始まって大腿、足へと至るラインは芸術的で、妄執を抱かずにはおれない妖しさがある。
足首から裏まで執拗に奉仕すると、思いがけない箇所からの責めに弱いのか身を震わせて喘ぐ。

「ハル、もう入れちゃいなよ。ほら……」

アキトは二本の指で陰唇を開いてみせる。
言うまでもなく、とろとろと愛液にまみれて男を待ちわびていた。

「結衣からもおねだりして」
「はい、ん……ここ、いやらしく開いてる所お口に入れてください。まだ……まだ足りないの」

横臥のまま片足を担ぎ、息づく秘所へ再び硬く屹立したものを挿入する。
尻を撫でながら前進して、亀頭から肉襞を割り込んでいった。
狂おしいほどの快楽に、より肉棒はいきりたち女を責める役目を果たさんとする。
即座に腰を打ちつけ、引き戻しては挿入を始める。
おっぱいこそ至上と思っているハルキにとって、
二つ重なるたわわな乳房が己の動き一つによって揺れ動く姿は実に最高だった。
豊満な胸は妊娠適齢の表れ、だからこそ惹かれる、孕ませたい。

「やぁっ、あっ、ん! はあはあ、二人に抱かれてる。
アキちゃんにぎゅってされながら、ハル君とセックス気持ちいいよ!」

アキトの舌は下がっていき、胸へと到達する。
揺れるのをあえて邪魔するよう、乳首に吸い付いて離れない。
乳房全体は縦横に揺れながらも、頂点だけは引っ張られ位置を変えなかった。

「はあん!! おっぱい、乳首が……やぁ、ん!」
「ん……ちゅるる」

下半身はセックスに興じながら、上半身も動揺の激しさでの快楽。
容赦など無用なことは二人ともわかっている。
このまま何度でも犯し、交わり、嬲りつくさなければならない。

「はあっはあ、締まる、気持ちいいよ結衣、結衣!
また奥にいっぱい出してあげる。二人目、妊娠して!!」

ハルキは自然と前のめりに体重を掛けた。
高々と掲げられる片足はときどき張りつめ、
可愛らしさに腰を律動させながら足の指の股に舌を這わせる。
思いがけない愛撫に背筋を反らせて喘ぐ結衣の喉を、今度はアキトがぬらぬらと唾液の跡を付ける。

「はああぁ、んん、もう、もうダメ! そこっ、そこぉ!
いいよ、そのまま全部中に出して! 奥で!!」

密着して身体を押さえつけられながら、もう一方で怒張は膣奥までねじ込み、掻き回す。
結衣は総掛かりでくらう快楽による折檻に、恍惚のまま嬌声をあげる。
アキトがそっと結合部の上、肉芽にも手を加えると、
もはや意味をなす言葉も吐けなかった。
ひたすらに喘ぎ悶え狂い、色欲に彩られた肢体はますます艶めく。

「あふ、ああっ! ん、んん!! ら、めぇ、そこ……あっ……。
ひゃっ!! イキっぱなしで……変になっちゃうよ」
「はあっ、すごすぎるよ。くぁ、あっ! 出る!!」
「あああぁぁ!! はあぁ! 結衣も、イっちゃう!!」

行為そのものを込めてケダモノのように咆哮を放つ。
肉の割れ目を貫き、緋色の空間へと白い濁流が押し寄せた。
直に喰らう濃厚な汁は格別である。

「はあ、んあぁ!! ……出てる……。わかるくらい……たくさん来る。
ぐちょぐちょのオマンコ……もっとどろどろに精液がいっぱい」

子種がそのまま煮えたぎる肉炉へと十重二十重にも注がれる。
深く深く膣内射精をして確実に子宮内へ種を植え付ける。
逃すまいときゅうきゅうに接する肉路は、
入りきらない分を結合部の隙間から溢れ出させた。

「はあはあっ。ん……はあ……漏れちゃう……」
「ふうぅ……。すごく良かったよ」

結衣は絶頂に意識を彷徨わせ、目が霞む中、
歓喜をあげる生殖器の饗宴だけははっきりと感じとっていた。
官能の嵐が全身を駆け巡る交わりの最果て、
下腹部が熱く満たされ、子孫を残そうとする本能が安息に包まれる心地よさ。
まだ本格的に始まってから三度目だと言うのに、これほどの域に到達するのが信じられなかった。
そして双子の方はいくらか余裕すら漂っていた。

いくらか体力に自信があっても、相手は四年前とは違い完全に成人している。
そして一年前とも、ひと月前とも違う。環境の変化が彼らを真に成人たらしめている。
それこそアキトが学生の頃は、自分の快楽の追及で精一杯だったが今は違う。
一子目とは違い、結衣が自分の、自分たちの子供を身籠り、
そしてなによりも養う心構えでセックスする。
その愛情と喜びは恩返しに代えて、お互いの快楽への果てしない原動力となった。

ハルキにしても、金銭面でいくらか苦労をした前回とは事情がまったく違う。
家族としてアキトが加わった以上、憂慮すべきことなど何一つない。
愛しさと嬉しさ、そこに性欲、最高の相手をして混じりけのない欲求が昇華される。
そこに世俗の事情など、わずらわしい要素を排除することが可能だった。
束縛など無用、不安もなく、ひたすら純粋に子作りを求めるハルキは強い。


息を切らしながら、結衣はうつ伏せに転がされる。
抵抗など無意味。
腰を掴まれて結衣は思う、また来るのだと。

妖艶に微笑み、自ら尻を高く掲げ左右に振る。
脚を肩幅程度に開けば、膣口からは一筋粘性のある白い液体が落ちた。
恥知らずな牝犬の振る舞いに、アキトは我慢できず挿入する。

「くぅ……好きだ、こんないやらしい所も大好き!!」
「はあぁん! 私も!! あっ、オマンコに……こんなにいっぱい逞しいの!」

始めから全開のピッチに結衣は目を潤ませて悦ぶ。
自分の限界がどこにあるのかわからない。どこまでも行ける、行きたい。
格好からして獣のごとき交わりだったが、前からは優しくあやすように髪を撫でられる。

「あっ、くぅん、ハル君もぉ……。ん、ちゅ」

結衣はそのままハルキの股間に顔をうずめ、舌と口で持って男根を慈しむ。
見ようによっては、犬がご飯を食べる仕草みたいでひどく倒錯的だった。
ハルキの手は耳たぶを擦り、長い髪が邪魔にならないようかき上げる。
全身が性感帯と化してる今、そんな優しさも堪らなく沁みる。

「ああぁ! ん、ん、ちゅ、むちゅ、じゅるる、はふ、れろ……ん、はあはあ」
「はぁ、はあ。お、おい……大丈夫?」

ハルキが何を心配してるのか、結衣にはわからなかった。
後背位で貫かれなが、涙を流しながら舌を突き出し、
在らぬ所を見る双眸のまま盛んに嬌声をあげる。
傍目から見れば壊れてしまったのではないかと思っても不思議ではない。

「まだよ、まだ……もう少しなの。はああ!!」
「俺も……はあ、はあ、もう少しで……」
「ふふ、ハル君もこんなにしてさ……。はっ、あん! あはぁ!」

強がりの台詞だっただろうが、アキトの動きによってかき消される。
当然口技の奉仕も断たれる。
ハルキにしてみれば別に構わないが、結衣の方が不満だった。
だがラストへ向けての激しい律動が邪魔をする、
子宮口まで打ちつけられる剛直が全身をも貫いていた。
尻に食い込む指が熱い。膣から子宮、皮膚や内臓や脳も繁殖へのエネルギーを生み出す。
溢れ出るものが内股をとめどなく伝って落ちる。

「あああん! あぁ、はあ……ね、ハル君も、来て。お口で」

結衣は喜びのあまり神様にでも感謝したいくらいだが、まずは二人への返礼が先だった。

「あ、あぁ……ん……」
「ふうう……あっ、それいい」

内心心配になるも、開けっ放しなままの蠱惑的な唇へと差し込む。
桃色に上気した表情は壮絶なほど淫らで猥褻、男を獰猛な生き物へと変えずにはいられない。
アキトは結衣の両腕を引っ張る。
弓なりに上半身を持ち上げて、肉棒で甘美な源泉を掘り、抉りつける。
結衣も奥深い結合を求めて腰を突き出し、尻からの衝撃に合わせてねっとりと舌を絡めた。
根元まで侵入した二人の一物を、熱く濡れた媚肉が丹念に奉仕する。
滑らかな肌に一層汗が浮かぶ。

「結衣……はあはあ、口も気持ちいい……」
「はあっ、はあっ、ハルも……自分から動けさ」
「あぁ……はあぅ!」

すぼまる頬を眺めながら、ハルキも腰を前後させる。
ちょっと罪悪感があるが、結衣もこの方が楽なはずだ。

「ん! じゅる、はぁん……ん、ん! ちゅ」

奉仕しているのは結衣だったが、実際は奉仕されているのかもしれない。
女神のごとき造形美を極めた肉体に強い精神、
そして内に秘める果てしない性欲が二人の男によって解放されていた。
上下の口を塞ぐ怒張がそこかしこに刺激する。
肉体は勿論、精神から本能に至るまで。

「くぁ! ふあぁ、きゅうきゅうに締めつけてくる。もう……」
「俺はもうちょっと」
「な、ならさ……」

アキトはペースを落として、ハルキはペースを上げる。
もう意図はわかっていた。

結衣は片手を自由にされ、肉棒をしごくのに用いる。
美味しそうに頬張る中、その頬をそっと濡らすのは快楽によって流す感涙だった。
情熱的な口腔性交によってハルキも熱い吐息を漏らす。
睾丸もころころとくすぐられると、否応無しに屹立し先走りが滲み出る。

「ん、ちゅ、ちゅる、はふぅ、んん、ちゅぱ……じゅるる。ん、ここも……」
「はあ、はあ、もういいよ。ありがとう」

限界の一歩手前で止める。ここからが本番だ。
アキトはぐりぐりと膣の腹側は擦りつける。
突如襲う甘く刺激的な責めに、結衣は感じすぎて崩れ落ちた。
もう一度両腕を引っ張り、ハルキが口を犯しやすいよう上半身を持ち上げる。

「ふんぅ、ん、ちゅ、あふ! ひゃ……んん!」

口を肉棒によって塞がれ、声を出すことも許されないまま愉悦の時を迎えていた。
逆に下は粘液質に肉の打ち合う音を奏で、
時折結合部から液を飛ばして自由に快楽を表し謳歌していた。

「いくよ。ここから……最後まで一緒に」

アキトは腰の括れを掴み、激しい抽挿を繰り返す。
結衣は前のハルキにすがり付き、掲げた尻から貫かれる衝撃を余すところなく味わう。
性器への刺激は官能的で苛烈を極めた。

「ああん!! あっ、ふぁ、んあぁ!!」」

湧き上がる強烈な快感に、堪らず結衣は男根から口を離し叫ぶ。

「あふん! ああん! はあはあ……もう、ホントに、らっ、はあ、らめぇ……」
「結衣。いいから、たっぷりアキを感じなよ」
「やあん、ハル君のザーメンも、はあはあ、一緒にもらうのぉ……」
「それなら……」

ハルキは結衣の目の前で自らしごく。
結衣はその様子を嬉しそうに眺めた後、目を閉じて舌をだらしなく垂らし、
背後から挑みかかる濃厚なセックスに集中する。

「あああ! はふぁ! もう……こんなの……あん!
……こ、壊れちゃう。気持ち良すぎておかしくなるよ!
オチンチン、奥までごつんごつんって当たって、あん! ほら、はああぁ!!」

嗜虐心をそそる悲鳴、男心をくすぐる甘い囀りを奏でる
まるで行き止まるのが不本意とばかりに最奥をぐりぐりと抉られる快感がすさまじかった。
牝を妊娠させようと意気盛んに入り口をこじ開ける。
抵抗など無意味だ。むしろとっくに最初から白旗を振っているが、降伏を許してくれない。
丁寧に手入れされた身体をなすがままに蹂躙される。

「イク……。はああ、くぅぁ! 出すよ、結衣の中にね!!」
「俺も、綺麗なお顔に出してあげる」
「あん、はあっ!! んん、出して! 結衣の中も、外も精液でどろどろにして!!」

ハルキは結衣の眉間から鼻先へと射精する。
セックスに蕩ける淫らな美貌へと、天罰を下すべくどろりと浴びせかけた。
結衣は舌を伸ばして、滴り落ちる粘液まで受け取る。
汚された被虐の快楽に、次は膣内で膨れ上がる怒張を感じた。

「あっ、ああぁ! はあん!! 入ってくる」

熱いものが下腹部を駆け上がるのを感じ、絶頂に達する。。
溢れかえろうがお構いなしに、新たに遺伝子の塊をぶつける。
何事にも代えがたい膣内射精の快楽に、
アキトも腰を奮い立たせ脈動と共に連続して精を放つ。
子宮へと直撃する太い一閃に肉襞がわななき、より牡から貪ろうと蠢いた。

「ん! んん! くぅぅ、これは……最高だよ」
「こんなにいっぱい……嬉し……んん……赤ちゃんできるの……」

最高のエクスタシーの中、小刻みに震えながら中出しをする。
余韻を味わいながらも、まだ漏れるのを許さないと依然屹立する男根で出口を塞いでいた。
僅かに結合部から滲み出るものの、きっと下腹部は精液をいっぱいに詰め込まれている。

「ふぅ……ん……」

性器から子宮まで、いまだ充足感に沸き立つ。
暫く受精の感触を楽しむように目を細めた後、結衣は糸が切れたように崩れ落ちた。

「お、おい……結衣、結衣」
「……ん? あれ? 寝てるみたい……だね」

微かに規則正しい呼吸音が聞こえる。
二人の愛を感じながら夢に落ちていた。

「それにしても、すごく満足そうな顔」
「ふう、これなら当分安心だろう」

せめてもの報いに、顔と身体を拭う。
結衣はこれ以上ないほど幸せそうな表情を浮かべ、安らかに眠っていた。



とはいえ、翌日からさっそく浜辺でも誘惑され、
当分どころか束の間の安心だったそうである。
ハルキは本当にアキトが帰ってきて良かったと思い知らされた。
一人で身が持つわけがなかった。

**************************

春を迎え、そろそろ桜も散りはじめる頃。

ハルキは朝起きて周りを見る。
時計の針は、いささか寝坊したことを示していた。
そもそも職業柄夜遅くに帰ることが多い。
顔を洗ってテーブルに出ると、エプロン姿で結衣が振り返る。

「おはよう。今日はお寝坊さんね」
「ふぁ、おはよう、優希も」
「ぱぱ〜」

今日も優希は愛らしく、思わず頬にキスの一つをする。
優希はハルキをパパと呼び、アキトをお父さんと呼ぶ。
間違えず呼ぶところを見ると、意外にもすでに区別がついているようだった。

ふとアキトはもう居ないことに気付く。

「あれ、アキはもう出かけたの?」
「そうよ、月末だからって早出していったわ」
「ふーん、まあ大変なんだろうな」

バイトをしていた頃からの実感だが、何事もお金に関わることは難しいことが多い。
その大本たる銀行にいたっては、何をいわんやであろう。

「ふふ」
「ん?」
「アキちゃんが心配?」
「それは勿論。今日午前は用事ないから見に行きたいけど、さすがに迷惑だろうからな〜」

これには結衣が大笑いした。
アキトが社会人になっても、万事がこの調子であった。
スーツや靴を選ぶときも同行しては色々見立ても行った。
それくらいなら充分仲が良いですませられるが、
今度は結衣とハルキの行きつけの美容院にも紹介がてら一緒に付いていこうとしたくらいだ。
しかもアキトは特に気にしないため実際付いていき、
美容師にあれこれ自慢話をして弟煩悩ぶりを知らしめてきた。

「まあでも大丈夫だろう」
「そうね。私はもう少しアキちゃんを信頼してあげてもいいと思うな〜」
「いやぁ、つい癖でなあ……。頭ではわかっているけどね」

結衣が鍋に火をかけて味噌汁を温めなおす中、ハルキは後ろからそっと寄り添う。
軽く接吻しながら、エプロンの下に手を入れてお腹を撫でる。
調理場での水仕事もあってか、手は少し硬く荒れてるがその分暖かい。

先月は残念ながら普通に生理が来てしまったが、今回は順調に遅れているそうだった。

「う……ん、くすぐったいよ」
「もうそろそろ産婦人科に行ってみる」
「ふふ、もう少し待ってから。ぬか喜びしたくないしね」
「うん、そうだな」

軽く抱きしめた後、もう一度接吻をする。
テーブルに戻り、優希を膝の上に乗せながらハルキは思いをはせる。

苦節と言うには幸福が多く楽しさに満ちていたが、
これまでの道のりはけして平坦ではなかった。
もし自分一人だけなら、こう安々と家族計画を立てることも難しかったであろう。
仮に子供が欲しいとなっても経済的理由いかんでは無理なのだ。
奇しくもまったく両親と同じ理由が、実感を伴って降りかかってくる。
当時はたがだかそんな理由と切って捨てたが、
――認めたくないが、やはりそれは誤りだったのだろう。

バイトをしていた頃からの実感だが、何事もお金に関わることは難儀である。
前に行った、優希も含めて四人での記念旅行も金銭面では心もとなく、
結衣に家庭教師でのアルバイトを足しにしないと時期をずらすかしなければならなかった。
時期的にも休暇予定においても、それは何としても避けたかったのだ。
バイト自体は当人にとって昔とった杵柄であり、楽しいそうであったのが不幸中の幸いだったが。

今は経済的制約は、無論際限はあれど、ほとんどないと言っても過言ではなかった。
充分な収入と言うにはどちらもまだまだ半人前ではあるが、
それでも二人居るという状況は、つい先月までとは大きく違う。
この制約からの解放こそが、ハルキにとって長年の呪縛、トラウマからの解放であった。

「優希、きっともう少しで弟か妹がくるよ」

優希の髪を手櫛で優しく梳る。
言葉の意味がわからないと思われ、バナナを食べながらきょとんとする。
もしもあの夜、両親の会話がこんな内容だったら、きっと今と違う人生を歩んでいたはず。
どちらが幸せだったか知る由もないが、今となっては比較する必要もない。
ハルキはこれ以上考えられないほど幸せだった。






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