女忍者
シチュエーション


忍法に流派は数あれど、共通するのは女の技のすさまじさだ。

「さて……と」 

俺は、痛む体を起こして鉄格子を握ったが当然びくともしない。
全身が痛む。特に、石を抱かされた膝は砕けんばかりだ。

(しかし)

伊賀の隠里で、死の一歩手前まで追い込まれるほどの過酷な修行を受けていた俺だ。
これしきの尋問で屈することはありえない。

(何とか脱出せねばな)

俺は、喉の奥に手を突っ込んだ。
空の胃袋からは胃液の一滴も出てこないが、代わりに胃の中に隠してあったヤスリが
あらわれた。小指ほどの大きさで、金剛石の破片がちりばめられている。

(あと三日も頑張れば開けられそうだな)

作業に取りかかろうとした矢先のことだった。

「そんなところに隠していたんですね」

俺は驚きのあまりにヤスリを取り落とした。

(上か!)

不覚だった。いくら同業者とはいえ、俺ともあろう者が人の気配に気づかないなん
て。
逆さまにぶら下がっていた黒衣の女が、音もなく地面に降りる。かなりの手練れだと
分かる。
細身の体で、胸にかなりのふくらみがある。
顔は狐の面に隠されていて分からないが、体どおりの顔ならばかなりの美人そうだ。

「さすがですね、あれだけ痛めつけられてまだ逃げようとするなんて。さすがは伊賀
の乱丸さん」
「……なぜ俺の名を知っている」
「有名ですから、貴方の名前は」

忍者が有名であれば終わりだ。存在が知られぬからこそ一流の忍者といえる。俺は苦
笑した。
狐面の女は、鉄格子を開けて、俺の元に近づいた。

「かわいそうに、こんなに傷ついて」
「ふん。大方雇い主を聞き出しにきたんだろうが、俺にはどんな拷問も通用せんぞ」
「……本当にそうですか?」

そう言いながら、狐面の女は俺の胸をなぞる。

「色仕掛けも通用しない。仮面で顔を隠すような女ならなおさらな」
「ふふっ、試してみますか」

狐面の女が、俺にまたがった。

(……俺を甘く見ているな)

首の骨を折るのも、心臓を貫くのもこの状態では思うままだ。この女を殺せば、脱出
するのは簡単だ。

「イケナイひと……いったい何をこの城から盗もうとしたの?」

俺は、返事をしないで女の首に手を伸ばそうとした。
その時だった。俺の股間に電撃が走ったのは。






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