保守投与(非エロ)
シチュエーション


ぱたん、と軽い音を立てて扉が閉まる。
看護婦が去り、独り残された診察室、数時間ぶりに静寂に包まれたその中で漸く溜息が洩れた。

…確かに、このまま保守投与を続けても根本的には何も変わらない。
結局、病院という檻に囲われ、数ヶ月毎に起こる発作に怯えながら投薬治療を続ける毎日…

移植手術が行えれば―恐らく大手術になるだろうが―完治の可能性もあるのだが……

…ただ、ドナーが見つからない。彼女の抗体が拒絶反応を示さないSS提供者がいないのだ。
現に、ようやく認識されてきたとはいえ、希望者に対する提供者の割合は極めて少なく、
その少ない中から彼女に適合するものを探すだけでも天文学的確率と戦わなければならないのに……


適合ドナーが現れるまで投薬治療で経過を見る。
…先程、看護婦に伝えた無難な結論しか出せない自分に、思わず自己嫌悪に陥る。

一時間遅れで始まったこの日の回診、一番最後に訪れた彼女の病室の扉が、普段より重く感じられた。






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