憂鬱サナトリウム(非エロ)
シチュエーション


消灯時間の過ぎた夜の廊下を女性看護師が足早に南棟へ向かっていった。
また、誰か死ぬのだろう───。
亜弥は柱の影で遠ざかる足音を聞きながら、ぼんやりとそんな事を思っていた。
やがて周囲に静寂が戻ると、彼女は高鳴る胸元をパジャマ越しに押さえて呼吸を整え、
見慣れた広い廊下を歩きだした。夜間照明と非常出口の緑色、消化灯の赤色だけの世界
に薄っぺらなスリッパの音だけが響いていく。

新米医師の深谷知司は自分の控え室で勉強に没頭していた。
難病奇病の患者が集まるこの白昼塚病院のサナトリウムで長く医師を続けていくため
には、最初からすべて諦めて受け入れるか、無慈悲な現実に抗い続ける努力をしなくて
はいけない。どちらにも属せず、あるいは途中で心が折れた者は遅かれ早かれ病院を出
て行くのが通例だった。若く熱意のある知司は目標の遠大さに苛まされつつも後者を選
んだ側の人間だ。
電気スタンドに照らされた大きな机に何冊も本を広げて見比べては、まだ僅かな経験
を少しでも知識で補うべく、自分なりの考えを交えては熱心にまとめてノートに書き写
していった。

「センセ、忙しい……?」

黙々と集中していた知司は不意に背後からかけられた声に驚いた。
振り向けば、戸口には寄りかかるようにして亜弥が立って静かに室内を眺めている。
17才の深く澄んだ大きな黒い瞳は、その焦点を自分に向けているようでもあり部屋全体
を一つの景色のように漠然と眺めているようでもあって、どこか虚ろにも感じられた。

「いや」

知司は思わず視線を外して短く答えると、慌ただしく本を閉じて脇に置いてあった小
さな診察椅子を自分の前に引き寄せ、亜弥に腰を下ろすように促した。
小さな笑みを浮かべた亜弥が椅子に座ると細い肩に黒髪が流れ落ちていき、何気ない
仕草から、色白で小さな身体にも年相応に女性らしい丸みが帯びているのが感じられる。
薄い布地越しに柔らかな膨らみが浮かんでいて、知司は一瞬、無意識に視線を奪われて
いた。自分でそれに気付いて慌てて目を泳がせると、亜弥はかすかに笑っているようだっ
た。

「消灯時間は過ぎてるよ、こんな時間にどうかしたの」
「少し熱っぽくて」

その言葉に冷静さを取り戻した知司は自分の椅子を近づけて膝を突き合わせ、彼女の
額に軽く手のひらを当てた。小顔のわりにやや広めのおでこは滑らかで、その感触を診
るかぎりでは特別に熱が高いこともなく、すぐに大事というわけでもなさそうで少し安
心する。

「胸も少し───」

続けられた言葉に頷き、知司は引き出しから聴診器を用意してチェストピースを少女
に向けた。
亜弥が伏せ目がちな表情でパジャマの釦をひとつひとつ外して前を開くと、膨らみ始
めの張りのある胸があらわになる。下着はつけていなかった。
パジャマにくっきりと浮かび上がっていた胸の形を思い出せば薄々分かってはいたが、
いざ目の前に少女の裸体が晒されれば、知司の動きは止まって目を釘付けにされてしま
う。不謹慎に震える指先を隠しきれないまま、冷たさのある聴診面を亜弥の真っ白な胸
の下に宛てると、お互いの吐息が漏れた。

「緊張、してるね。でも変わったところはないようだけど……」
「深谷先生……」

知司ができるだけ意識してしまわないように気をつけながら何カ所かを調べて注意深
く体内音を探っていると、その手を亜弥が掴んで止めた。
小さな両手に細い指先で知司の手から聴診器をそっと奪うと、そのまま男の手のひら
を自分の胸に直接当てさせた。
知司は息を飲んで亜弥の顔と、自分の触れている彼女の胸を見た。
恥ずかしそうに視線を落としながら緊張している彼女の鼓動が、手の下から直に伝わっ
てくる。しかしそれよりも、まだ芯の方に少し硬さのあるような少女の胸の柔らかさと、
ぴったりと吸い付くような肌の感触、そして手のひらの中央に当たる乳首の印象の方が
遥かに強烈だった。あの無垢なピンク色の乳首を押しつぶし、純白の乳房を手の中に収
めている事実に、あまりに多くの感覚と感情が去来して知司の思考回路を麻痺させてい
た。






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