姫君×騎士
シチュエーション


その肌にふれると冷たいだろうと、思っていた。
透き通るような銀色の長い髪が細い腰を包んでいる。
力を込めて、その身体を抱けばきっと壊れてしまうのではないかと、思った。
磨き込まれたガラス玉のような透き通った、アメジストの瞳。
その瞳は、今目の前の一人の騎士に注がれていた。
静寂は、本来の時間よりも、より時を二人に長く感じさせ…
アメジストの瞳が一度だけ瞬きをする。

「わたくしに、ふれて…」

騎士は、咽に溜まった唾を、思わず飲み込んだ。
そんな言葉を、まさか彼女の口から、聞くことになるとは想像もできなかった。
しかし、騎士は戸惑い、微動だにせず立ちつくしていた。

「我が、騎士…」

彼女は、騎士に近づき手を差し伸べる。
騎士は、それでようやく金縛りから解き放たれたように、動きだし
その小さな手の甲に接吻を落とす。
接吻を受けた手は、するりと引っ込められてしまった。
惜しくもあり、安堵もあった。
これ以上の一線は越えては、いけないことを重々承知しているのだから。
その気持ちが伝わってしまったのか、相手からは短いため息が一つ、彼の頭上に落とされた。
そのため息の意味は何なのだろう、騎士は、胸を苦しげに押さえつけた。
細く、華奢な腕が騎士の頬に、伸ばされる。
その輪郭を確かめるように、手が頬をなで、指が顎をなぞる。
汗ばんだ首筋を、指先が撫でてゆく。
やがて、甲冑に行き着き、それを指が悪戯のように留め具を外そうとする。

「いけません、姫」

騎士は姫君を制止する。しかし、彼女は騎士の制止を聞こえてなどいないかのように、それを止めようとはしなかった。
もどかしい手つきで、ようやく甲冑のひとつが、床に落とされた。
姫君は、以前手を休めず、次ぎのそれを剥がすことに夢中になっている。
騎士はその様子を、ただ黙って見ていた。
そんな彼女を見ていた騎士の胸の内に、切ないうずきのような物が生じる。
そしてついに、こらえきれず騎士は思わず、姫君の細い手首をつかんだ。
加減を忘れていたせいか、彼女は微かに顔を痛みに歪めた。
騎士は、はっとするように力を緩める。
そのまま、手を離そうとすると、逆にその手に押しとどめるように姫君の掌が重なってくる。
自分の堅く骨張ったそれとは、まったく違う華奢な手…。
やわらかで、それでいてしっとりとしている女性の手だ。
胸の鼓動が、早鐘を打つのを否定するように、騎士はその手を押しやった。
押し戻された手を姫君は、そっと胸の上に大切なもののように撫でた。

「…もう、あの頃のように、わたくしの手を引いてはくれないの?」

あれは、まだ彼らが幼い日だった。
騎士がまだ活発な少年だった頃、悪戯で城に忍びこみ一人の少女とであった。
固く無機質な表情の少女。冷たそうな銀髪。
精巧に作られた人形のように美しい姫君。
塔の中で、大切に守られてきた彼女は、国王の愛娘であった。
少年は、少女との出会いをまるで宝物を発見した時のように、嬉しさ、あるいは興奮のようなものを感じた。
幼い姫君は少年をみると表情を変えずに、だが不思議そうに首をかしげた。
彼は悪戯心も手伝い、彼女を城の外に連れだした。
なぜか彼女は、手を引く彼に、騒ぎもせずついてきた。


切なげな問いかけ。瞳は熱く潤んでいた。
白い頬は微かに朱をはいている。
口唇が微かに震える。

「…他の殿方の物になるぐらいなら、いまここで、貴方に奪われてしまいたい…だから
…一夜でいい…どうか、わたくしを欲して…」

衣擦れの音がして、姫君の薄い衣が床に落とされる。
姫君の清らかな裸身が、騎士の目に晒される。
呼吸のたびに、揺れる柔らかそうな乳房。
細い腰。すらりと伸びた脚。
甘い…香り――


その時、一度誤って姫君の裸体を見てしまったことを思い出した。
初めて城の外にでた彼女は、森の緑の美しさに目を奪われていた。
そして、その光景に少年は心を奪われていた。
森の泉で彼女と遊びのつもりで水浴びをしたとき、初めて身体の違いに気がついた。
華奢な身体つき。なだらかな曲線。
胸は、その頃はまだ大きくなかったが、それでも明らかに少年のそれとは違い
柔らかく膨らんでいた。
なんだか、とてつもなく恥ずかしいような気がし、彼は服を着たのだが
頭の中で、焼き付いて忘れることも出来ずにいた。
時を経て、より美しく成長した姫君。
より女性的になるにつれて、そして立場を自覚するにつれて距離をとってきた。
そして、その彼女が今にいたり彼を悩ましていた。

「お許しを…」

騎士は呻くように声を発し、視線を姫君の裸身から外した。
このままでは、己を制す術を失ってしまいそうだ。
誘惑と自制心がせめぎ合う。

「…目を逸らさないで、貴方の欲望を私に下さい」

その言葉に騎士は、吸い寄せられるように姫君の瞳の中に捕らわれた。
熱に潤んだような瞳の中に、自分自身が映っていた。
懇願するような表情は、騎士が初めて目にするようなものだった。
記憶の中にある彼女は、常に聡明で冷静な、弱みなどみせないような非の打ち所のない姫君だった。
このように、今にも儚く壊れてしまいそうな表情など想像もしたことはなかった。

「……ああ」

観念したように騎士は息を吐く。
姫君の腰が騎士の腕の中にさらわれる。
顔を寄せ吐息が混じり合い、言葉もなく唇が重なりあう。
逞しい騎士の背中に姫君のほっそりとした腕が廻される。
口の中で、舌が、絡み合う。長らく会っていなかった恋人と再会するように――

「…ん……」

咽が動き唾液を飲み干す。

姫君は騎士の前にかがみ込んだ。

「姫…!そこは…っ」

姫君の手が再び騎士の腰を、股間部を守る装具を外しにかかる。

「…っ、…それ以上は…いけません!」
「…これほどになっていても?」

騎士の男性器が空気にさらされる。
それは、既に硬くなり、そそり立ちその存在を主張していた。
柔らかな口唇がそれを含む。

「…ちゅむ…」

拙い仕草でそれを、舌先で舐める。
舌の動きが、艶めかしく騎士の雄を刺激する。

「……っ」

歯が軽く尖端をかすめ、思わず騎士は呻く。

「ぁ…くっ…!」

一旦はなんとかやり過ごした絶頂を、姫君の口が強く吸い上げたことにより、
ついに、騎士は姫君の口の中に白濁を吐き出してしまった。
ぽた、と閉じた唇から白濁がこぼれ落ちた。
騎士の見ているそばで、姫君は口の中の白濁を飲み込んでしまった。

「…姫…」

姫君は騎士に、くすりと微笑する。
達してしまったばかりのそれが、またすぐに硬さを取り戻していく。

「わたくしはとうに覚悟は出来ているのです…だから――」

姫君の言葉が途中で、途切れる。
姫君の裸身が騎士の腕によって浮きあがり、寝台の上に沈む。

熱に駆られたように騎士は、姫君の肌を吸った。
手で身体の曲線を、撫でていく。
乱れた呼吸を整え、もう一度深く口づけあう。
騎士は、己の身につけていた服も何もかも脱ぎ捨て、姫君の身体に覆い被さっていった。
乳房の頂を摘み、唇に含むと姫君の口から、「あっ…」と短い声が漏れた。
もう、片方の乳房をこねるように揉む。

「…っぁ…、…あぁん…」

悩ましい声が騎士の耳を打つ。
騎士は姫君の乳房に吸いついたまま、手を下腹部に移動させる。
へそをかすめた指は、そのまま淡い茂みに潜り、敏感な在処を探し探索する。

「…姫…?」

掠れた声で尋ねる。具合を確かめるように、指で反応の強い部分を探していく。

「…ぅ…ぁ…っ…」

小さな突起を見つけると、騎士の指はそれを弄びはじめる。
秘部をなぶる指が、蜜の溢れるそこに気づいた。
指に付着した粘膜を、小さな突起にまぶし、弄りまわす。
やがて、「…あぁっ」という甲高い声と共に姫君の身体がビクッと痙攣する。

荒く姫君の胸が呼吸に上下している。
それを見た騎士は、姫君の身体から手を離した。

「…もう、…よろしいですか?」

恍惚としていた姫君は、騎士の言葉に驚き身を起こす。

「え…?」

驚いた瞳は、見る間に悲しげに潤み始める。

「だめっ…!いやです!」
「姫!駄々を捏ねないで下さい!大事な御身を想えばこそです」
「わたくしを想うのなら、今すぐわたくしを抱きなさい!」

姫君の強い眼差しが騎士を射抜く。

「…姫」

既に、彼女の言葉を予想していた部分があったが、それ以上に
きっぱりと口にした姫君に、彼女の覚悟をみたような気がした。

「私達は、きっと許されないでしょう。それでも…?」
「ええ…。たった一夜でも構わない…。わたくしを愛して…」

観念したように騎士は息を吐く。
姫君と騎士の身体が重なり、一つの影になる。
姫君の身体は思っていたより、ずっと柔らかかった。

騎士は息を吐き出した。
森の泉で、彼女に見とれていた時…
あの日から、こうなることをどこかで夢想していたのだ。

「…あっ…、あぁん…、はぁっ…あんっ」
「姫…っ」

絡み合いながら、激しく身体がぶつかりあう。
姫君は普段の落ち着いた雰囲気とは想像もつかぬほど、淫らに乱れた。

「ひゃぅん…もっと、…ぁぁあん、もっと、…ぁ…激しく…」

彼女はいつしか自ら、腰を揺らし、騎士に快感を与えていた。
騎士は己の腰をぶつけながら、ふと姫君の身を案じて眉を寄せた。

「…その身体が壊れてしまっても…?」
「…そうよ…、壊れるくらいに、…っ…、忘れられないくらいに…」

姫君は、嬌声を上げて、とぎれとぎれに言葉をつくる。
汗が、突き上げるたびに弾ける。

「…ぁあんっ」

姫君はひときわ、高く嬌声を上げた。
根本まで埋められた騎士を、強く締め上げる。

「…もうっ、…もうっ…、ぁあっ…」

騎士も、それに応えるように、姫を掻き抱く。

「あっ、あっ、ああっ、…ぁああああーー!!!」

強い締め付けに、姫君の内部で騎士の肉棒が激しく脈打つ。
限界まで膨れ上がった肉棒が、姫君の最奥部に向かって勢いよく精液を吐く。
それにあわせ、ビクンビクンと姫君の身体が痙攣していた。





「この子は貴方の子です…」

眠る幼子をその母親は、優しく撫でる。
幼子は、母親ゆずりの銀の髪をしていた。

「色は違うけど、猫っ毛な所はやはり貴方に似ているわ」

くす、と彼女は笑みを浮かべる。
アメジストの瞳に呆然としている男が映り込む。

「相変わらず、往生際が悪いのね…」

衣擦れの音がして、男に近寄っていく。
布が、静かに床に落とされる。
それは今まで彼女が纏っていた衣であった。

「姫…まさか」

白い肌、艶めかしい肢体。
彼の、姫君―

「我が騎士…」

騎士の咽が上下する。
耳元に姫君の吐息が吹きかけられる。

「…貴方の欲望を、私に埋めて…」






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