御主人様×メイド
シチュエーション


「あ、あぁぁ、やあんッ!うんっ……ダメ、です、も……ぅ」
「くっ、お前の中は、心地いい、ソフィー」

この屋敷で一番いい部屋の寝室で、使用人がその主に組み伏せられていた。
地味なメイド服は肌蹴られ、むしろその野暮ったさが欲情をそそるかのごとく乱れている。

「はぁ…………あ、んっ!」

淫猥な水音と肌がぶつかる音がやけに耳に響く。
誰かに聞かれてしまうのではないかと、ソフィーは声を押し殺そうとするが。
中に打ち付けられている熱くて硬くて……愛おしいものに体全体を揺さぶられ、女としての快楽を引きずり出されている最中に、それは難しかった。

「ベイゼルさぁまぁんっ!!」
「ソフィー……ッ」

いつもベイゼル様にこうされると、頭が朦朧として何も考えられなくなる。目の前にいる愛しい人にソフィーは夢中ですがりついた。
正気ではできない大胆な行為。でもこの一時だけは、ソフィーは紛れもなく彼の恋人だった。

ここは数多くの別荘を持つフォルシウス家の別荘の一つ。
普段ろくに主人は寄り付かないカントリーハウスだったのだが、気まぐれにもこの社交のオフシーズンに次期当主のベイゼル様が立ち寄った。ベイゼル様は立派な馬を所有していて、その休養も兼ねてだったらしい。
ソフィーはこの屋敷のメイド頭の姪で、急に屋敷に来た主人をもてなすためには人手が足りないという事で臨時に手伝いを買って出た……だけのはずだった。

初対面で玄関にお出迎えしたときは、まるで絵本の金髪碧眼の王子様のような青年だけれど気難しい顔をして……寡黙な人だと思った。
それなのに、なぜこんなことになってしまっているのか……自分でも不思議だ。
初めは馬の鳴き声が気になって、厩舎に見に行ったことがきっかけだった。
そこで名馬のデュランダルに髪の毛をむしられそうになったところを、ベイゼル様に助けてもらったのである。
馬は愛情のあかしとして毛づくろいをしてくれる……つもりだったはずなのだが。
さすがにそんなことは知らないし、ご主人様の大事な馬ということでどうすることもできなかったソフィー。
それをからかうように助けてくれたのは、初対面とは別人のように打ち解けた表情をもったベイゼル様だった。
それから時折、散歩の最中や屋敷の中で会うとからかいながらも声を掛けてくれる主人。
そしてそれが恋に変わるのは……時間がかからなかった。
この恋は胸に秘めなくては……そう思っても、ベイゼル様は相変わらずこちらに声を掛けソフィーの心を知らずに揺さぶってくる。
一時期、ソフィーはもう限界で、ベイゼル様の視線から逃げ出した。視界に入らないように徹底的に彼を避けた。
気を抜いてばったりと顔を合わせた時、あからさまに逃げ出したソフィーを……ベイゼル様は追ってきた。
男と女のコンパスの差はいかんともしがたい。人気のない厩舎に差し掛かったあたりで、ソフィーはあっさりと彼の腕に捕まってしまった。
そこで、無理矢理キスされて……ダメだと思ってもその行動に抗えなかった。
ベイゼル様の方は肉体的にソフィーに引かれたのだろう。ひと時の気まぐれだろうけれど、でもその行動は紳士的で。
もとより身分違いの、恋。
愛人にもなれないであろう、圧倒的な身分の差に……自分がベイゼル様に与えられるのは体だけと、未婚の女性が犯していけないタブーをソフィーは差し出した。
初めはどんなに優しくされても痛くて仕方なかった行為が……今では乱暴にされても感じてしまうほど、ソフィーはみだらな女になってしまった。
そしていつ捨てられるか砂城のような脆い関係に……ソフィーは堕ちて行ったのである。






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