誇り高き若様の意外な性癖
シチュエーション


「ぁ…キラ様ぁ…もっと、下…」


お仕えしている若様の部屋の前で甘い声を聞いたリーナは、おもわず足を止めた。
そして、透けて見えもしないのにドアをじっと見つめてみる。

「どこがよろしいのか、具体的に申し上げてもらいたい」

「んもぅ、キラ様の意地悪…」

「フフフ、何をいまさら」

部屋から洩れるそれらの会話からは、妖艶な雰囲気がにじみ出ている。
リーナの味わったことのない世界。
中で繰り広げられている情事を想像して、彼女はため息を漏らした。

(また若様が女性を連れ込んでおられる…今日はどこの令嬢なのかな…)

その姿を想像し、嫉妬している自分がいることに、リーナはずっと前から気付いている。
決して認めたくはないけれど。

キラは、彼女が食事を部屋に運ぶと、イタズラなほほえみを浮かべながらリーナに意地悪を言う。

「今日もおまえの体は貧相だな。もう16なのに一向に成長する気配が無い」

そう言って胸を触られたこともある。完全なセクハラだ。
リーナはキラにされる行為を嫌がっている。主従関係にあるから反論できないだけで、本当は
すぐにでも怒鳴って平手打ちをくらわせたいくらいなのだ。

(…それなのに、なんで私はあの人のことが好きなのだろう?)

毎日女をとっかえひっかえして遊んで、俺様主義で、変態で、意地悪で、偉そうで、冷たくて。
命令に従っても、御苦労さまのひとつも言わない。そんなキラに、リーナはだんだんと
惹かれていった。日に日に、恋心は大きくなっていく。認めざるを得ないくらい。

「あふぅ…っ!」

あえぎ声が次第に色っぽさを増す。耐えきれなくなったリーナは逃げるようにその場を立ち去った。

(他の女を抱かないでなんて言わない…一度だけでいいから、若様に愛されてみたい)

その夜、リーナはいつものように若様に抱かれる自分を想像しながら、自慰をした。

「ん…っ」

大きな声が漏れないように気をつけながら、ゆっくりと下着の筋をなぞる。

「ぁ…若様…っ」

快感が押し寄せると同時に、むなしさもこみあげてくる。
一生かなうことのない夢。身分の違いという高い壁。

「ひ…くぅん」

涙があふれ出すと、興奮も次第に薄くなり、苦い感情だけが残った。
こんな気持ちになるなら自慰なんてしなければよかったと彼女は後悔する。

(疲れた…もう寝てしまおう)

リーナはそっと目を閉じ、毛布を頭までかぶった


深夜3時。
結局一睡もできなかったリーナは、重い体を起こして着替えを始めた。
メイドの朝は早い。特に彼女は、朝早くに起きて屋敷の掃除や庭の手入れをしなければならないのだ。
パジャマを脱ぎ、質素なメイド服に手をかける――その時、リーナの部屋の電話が鳴った。

こんな時間に鳴ることはめずらしいので、彼女は少し驚き、硬直した。
我に返り、あわてて受話器を取る。

「はい、こちらリーナ・ハイウィンドです」

「俺だ…」

低くて少しかすれたその声を聴いて、リーナはビクッとした。

「わ、若様ですか?どうされました?」

「今すぐ俺の部屋へ来い。一人でだ」

「えっ!?」

リーナは動揺した。

「若様…?私、なにか若様にご無礼を致しましたでしょうか…」

「いや、そんなことではない」

「では、なぜこんな時間に…」

「いいから来いと言っているんだ。これは命令だ。」

強い口調。これ以上何か言ったらひどい目に遭いそうだ。

「かしこまりました。すぐに向かいます」

ふぅ、と息をついて受話器を置こうとしたその時、受話器からまた声がした。

「30秒以内にこい。わかったな」

リーナはあわててメイド服を着込んだ。

豪華な装飾を施したドアの前で、リーナは今にも泣きそうな表情をしていた。
この中には、若様がいる。きっと怒っているに違いない。

(どうして?私は何もしていないのに、なんで呼び出されるの?)

何をされるかはわからないが、リーナにとって嬉しいことではないことは確かだ。
入りたくない…プレッシャーを感じる彼女の脳裏を、30秒以内に来いと言ったキラの声がよぎる。

(…えいっ!)

深呼吸して、ぐっと目をつぶると、彼女は勢いよくドアを開けた。

「たたた、ただいま参りましたっ!」

部屋の中は真っ暗だった。デスクの上の小さな明かりがついているだけだ。
キラは、ベッドの脇に置いてある椅子の上に座って待っていた。

「入れ」

鋭い口調に、リーナは内心震え上がるが、そんな態度を表に出すことはしなかった。
彼女は努めて微笑を浮かべ(無理しているのでひきつった顔になってはいるが)、明るい声を出した。

「はいっ!失礼します!」

「近くにこい」

「はひっ!」

緊張で声が裏返り、あわてて両手で口元を隠しながら近寄るリーナ。

「もっと近くにこい」

「えっ…」

リーナとキラの距離は今、1mほどだ。これ以上近寄って何をしようというのか。

「早くしろ」

言われるがまま、リーナは歩を進めた。こんなに間近でキラを見たのは初めてだ。
なんだか恥ずかしくなり、思わずうつむいてしまう。
キラは立ち上がり、リーナの肩をつかんだ。小さな体がビクンと震える。

「お前に頼みがある」

「な、何でございますか?」

「俺を苛めてくれ」

「……は…」

リーナがあっけにとられる前に、キラは彼女をベッドに押し倒した。

「わ、わわわわわかさまぁぁぁっ!?」

突然のことにリーナは激しく動揺し、手足をバタバタさせる。

「リーナ、静かにしろ…!」

「いいいいくら女好きでもわわわ私のようなものにまで…」

彼女の言葉はそこで遮られた。唇を塞がれたからである。

「……!?」

思わず口をあけると、容赦なく舌が入り込み、リーナの口内をねっとりと探る。

「んっ…んんっ…」

少し口を離したかと思うと、またすぐに付け、舌で彼女の歯列をなぞったり、舌を舐めまわしたりする。

「ふ…んぁぁ…っ」

初めての感覚に、リーナは頭がおかしくなりそうだった。
やっと唇が離されると、彼女は息苦しさに耐えきれずむせてしまった。

「ケホッ、ゴホッ」

「おい、大丈夫か?キスのときは鼻で呼吸するんだぞ」

気を使って背中をさするキラ。リーナは真っ赤になった。

「はぁ…はぁ…」

「やっと落ち着いたか」

「はい…すみません…」

見上げると、すぐ近くにキラの漆黒の瞳があった。
リーナの心臓が激しく波打つ。

「とにかく、やっと大人しくなったな。これで俺の望みをきくことができるだろう。
もう一度言う。俺を苛めろ。」

「い、苛めろって…」

「具体的に言うと、性的に俺を責めろということだ」

「せ、性的…」

リーナが困惑していると、キラが言う。

「これは初めて人に教えることなのだが、俺はマゾヒストの一面を持っている。」

「若様がマゾ…」

リーナはショックを受けた。今までの言動や行動からしてキラはどう見てもサドだ。
苛められたい願望があるなんて、誰が想像できるだろう。

「そんなことできません。私は若様に仕える身なのですよ?」

「だから頼んでいるんだ。これは命令だ」

(命令して苛められるなんて…サドなのかマゾなのかわからないじゃない。)

リーナは心の中でツッコミを入れた。

「リーナ、頼む。屋敷の息子がこんな性癖を持っていると知られたら馬鹿にされるのが落ちだ。
こんなことを頼めるのは、お前くらいしかいないんだ…」

すがるように自分を見つめるキラに、リーナは戸惑った。
それと同時に、小さな特別感を感じた。
若様がこんなことを頼めるのは、私しかいない…私しか……

「若様、わかりました。ご命令とあらば致し方ありません。」

「その気になってくれたか。」
キラが嬉々とした声をあげた。

「はい…私はこういった知識が乏しいので、ご満足させられるかどうかは分かりかねますが。
私なりに努力させていただきます。」

「リーナ、期待しているぞ。」

リーナは不思議な高揚感を肌で感じていた。

「ああ…、いいぞ、リーナ…」

「光栄です」

リーナは、キラの耳をじっくりと舐めた。
さっきされたキスの感じを意識しながら、耳穴に舌を入れてしゃぶる。

「……ッ」

キラの逞しい体がピクリと震える。

「若様は耳の感度が非常によろしいのですね?」

「ああ…だからそこばかり責められると…あぁっ」

普段は決して出さないような、色っぽい声を出すキラに、リーナは愛しさを感じた。

(若様にこんな一面があったなんて…私…)

たまらず耳たぶを甘噛みすると、キラが小さな悲鳴をあげた。
リーナはさらに体を火照らせながら、責めの位置を首筋に移動させ、再びゆっくりと舐めはじめた。

「リ、リーナ…」

「どうされました?」

「耳と首だけでイってしまいそうだ…」

「えっ!?」

リーナは驚いてキラの股間部分を見た。ズボンが大きく盛り上がり、いまにもはちきれそうだ。

「こんな感覚は初めてなんだ…今まで、女に責められることは想像の中でしかなかった…
まさかこんなに興奮するとは…」

(若様がこんなに変態だったなんて!)

リーナは軽い衝撃を覚えたが、なぜかそんなキラも愛しいと思ってしまった。

「しかしこれだけでイくのはあまりにも情けなさすぎる。頼む、乳首を弄ってくれ」

「乳首、ですか。わかりました。」

リーナはキラが身に付けている高級なシャツの裾をそっと捲りあげた。
すると、ほどよく筋肉のついた立派な肉体が露わになった。
興奮で、うっすらと汗ばんでいる。リーナはぞくぞくと興奮した。

「若様、失礼します」

リーナはお辞儀をして、キラの乳首に口付けた。
軽く先端を舐めた後、突起部の周りをぐるりと舐めた。

「はぁっ…!」

キラはあまりの快感に身もだえる。

「気持ちいいですか…?」
「さ、最高だ…」
「光栄です」

リーナはニッコリ微笑むと、キラにそっと口づけする。

「んっ…」

先ほどとは逆で、今度はリーナの舌が積極的にキラの口内に入り込んだ。
ざらざらとした舌を念入りに舐めながらも、しなやかな指先でキラの乳首を愛撫するのを怠らない。
そのテクニックは、とても初めてとは思えないほど秀逸で、キラは驚きを隠せない。

「はぁ…」

唇を離し、キラの口から垂れた唾液を舐め取りながら、乳首の先端を指で強めにつまむ。

「あぁっ!リーナ…!」

キラはどんどん快感におぼれていく。
恥じらうのも忘れ、女のように嬌声をあげる。リーナの主人としての威厳はもはや皆無だ。
リーナはそんなキラを見て、心臓がキュッと縮まるような不思議な気持になった。

(若様が、私の指でこんなに感じてる…!)

リーナはキラの乳首に吸いつきながら、自分のふくらみかけの胸を揉み始めた。
快感と興奮で、彼女のメイド服の下は汗ばみ、ほんのりとピンク色に染まっていた。

「若様…あん…」
「う…ああっ!こ、このままではもう…!」

キラのペニスは、痛いくらいに勃起していた。その先端からはガマン汁が漏れだしている。
そんなキラの乳首に、リーナはとどめとばかりに甘噛みをした。片方の乳首は爪で引っ掻いた。

「で、出る…!リーナ、踏みつけてくれ…!」

「えっ…」

リーナが驚いてを見つめる。

「頼む!!思いっきり踏みつけてくれ…!」

リーナは、少し戸惑いながらも、ズボンの上から膨らみを踏みつけた。

「あぁぁぁっ…!!」

その瞬間、大量の精液がズボン越しにリーナの素足を濡らした。
独特の香りがリーナの鼻をくすぐる。

「だめだ、どんどん溢れて…!」

困惑と恍惚の入り混じった表情を浮かべるキラを見たリーナは、激しく興奮した。
――次の瞬間、自分でも意識しないうちに、リーナはキラの股間をぐりぐりと強く押していた。

「うぁぁっ!!」

軽く絶叫しながら悶えるキラ。
どくどくと出る精液は彼の腹部にまで流れた。

「若様…とっても、素敵だわ…」

キラを見下ろすリーナの表情は妖艶で、少女のあどけなさと混じったそれはとても美しかった。

リーナは、自分の足に着いた精液をキラの顔に擦りつけようと足を動かした。
と、その時、部屋の外でバタバタと誰かが駆け抜ける足音が聞こえた。

「リーナ――!?どこにいるの!?仕事があるのよ――!」

その声でハッと我に帰ったリーナは、足を離してベッドから降りた。

「リーナ?どうしたんだ…?」

ベッドの上を見ると、乱れたキラの目が甘えるようにリーナを見つめていた。

(わ、私…いったい何をしているの!?これじゃあまるで、私は…)

「ししし失礼しましたっ!!!」

彼女は素早く、深く深く頭を下げ、バタバタと駆けだし、部屋を飛び出した。

「リーナ!?どこへ…」

部屋の中からはキラの慌てた声が聞こえるが、リーナはかまわずに走り続けた。
そして、自分の部屋の前で足を止めた。
さっきの自分の行動を思い出し、頭をかかえて座り込む。

(どうしよう…!?私…変…!)

彼女のパンツはしっとりと湿っていた。

ある夜、何人もの令嬢がキラの屋敷へ訪ねてきていた。
紳士的な老執事が困ったように受け応えしている。

「私は、キラ様に会いたいの!はやく会わせて!」
「あいにく、若様は体調が優れないようなので…
まことに申し訳ありませんが、今日のところはお引き取りください…」
「なによ!もう何日もそればっかりじゃない!そんなウソにはだまされないわよ!」
「そ、そう申されましても…」

執事は冷や汗をかいている。

「キラ様は会いたくないと仰っています…本当に申し訳ございません」

「なんでよ!?私はね、もう一か月もキラ様に抱かれていないのよ!」
「私のどこがお気にめさらないの!?言ってくださったら治すのに――!」


―――
外ではちょっとした騒ぎが起こっているのに対して、屋敷の廊下は驚くほど静まり返っていた。
その廊下を渡り、一番奥の広い部屋の中では、キラを想う令嬢たちには想像もつかないような
光景が広がっていた。
そこには目隠しされて手足を拘束されたキラと、その上に跨る一人のメイドの姿があった。

「リーナ…頼むから目隠しを外してくれ…不安でかなわん」

「駄目ですよ、若様。どうしてもはずすと言うのなら部屋へ戻ります」

「そ、それは困る」

「ならじっとしていてください」

笑みを浮かべ、キラの脇をそっと舐めるリーナ。

「ひゃッ!」

「フフ、女の子みたいな声ですね」

「た、頼む…もう脇ばかりを責めるのはやめてくれ…!このままじゃ壊れ…ッ」

キラが言い終わる前に、リーナは彼の肉棒を掴んだ。

「うぁっ!」

「そんなこと言っても、すごく興奮してるじゃないですか?
 こんなに勃起しちゃって…いまにも張り裂けそうですよ」

「う…」


「若様は本当に淫乱ですね」

そう言って、握っている手の力をグッと強くするリーナ。

「ああああっ!!」

痛みと快感で、気絶しそうになるキラ。

「若様…愛しています」

その行動とは裏腹に、優しく響く少女の声。
キラはその時、もうこの娘なしでは生きてゆけないと思った。






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