約束(非エロ)
シチュエーション


「いやです!」

組み敷いた少女から強く拒絶され、男は深々と嘆息する。

「夜伽というのは添い寝のことじゃないぞ」

少女から返事はなく、男はまたしても息をついた。

「十日も我慢させて、少しくらい申し訳なさそうな顔でもしたらどうだ」

男が体を起こすと、少女はすぐさまベッドの端に寄り、毛布を体に巻き付けた。

「こ、心に決めた人がいます」
「俺だってお前がいいんだ。手に入れると心に決めてる」

男の手が少女の髪を撫でる。

「だいたい約束だ何だというなら絶対俺の方が先に目を付けていたのに」

ぶつぶつ独り言ちる男の声は少女の耳には入らない。
男の手からも逃れるように少女は毛布の中に頭まで潜り込んだ。

「せっかく迎えにきたのに忘れているんだから」

男はまたため息をこぼす。


約束を交わしたあの日の相手が彼であることを少女は知らず、彼女の待ち人が自分であることを彼は知らない。
二人が事実に気づくのはまだずっと先の話。






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