成り上がりの男
シチュエーション


「そうだ、だいぶ上手くなってきたなぁ、見込みがあったのか。わしの目は確かだった」

下卑た笑いを浮かべながら大きな石を嵌め込んだ指輪を幾つも付けた手で、
艶やかな彼女の長い髪を梳きあげる。

「ちゅば、んむ、……はぁ、むちゅ、…ちゅぱっ……」

嫌なのに、……こんな成り上がりの男に体を奪われ毎晩弄ばれる。
口の奥まで差し込まれ息苦しさで涙目になりながら、離してはもらえない。
右手で男の肉棒を撫でながら左手で袋から裏筋をそっとさすり上げつつ、
舌で鈴口を何度もつつき、しゃぶった。
既に一度精を放たれて、その端正な顔や黒髪、雪のように白いはだけた胸元にまで
点々と欲望の痕がどろりと垂れている。
彼女の細く美しい指先は、精液と肉棒にまみれた男の先走りや自らの唾液で、ねっとりと糸を引くほどに汚されている。

「気持ちいいぞう、お前も気持ちいいだろう、わかるぞ」

……嫌、違う……っ。この体の熱さは、違う……、声に出せない抗議を繰り返す。

「ふっ、…むちゅう、ちゅ、くぷ…、ぬちゅ……っ」

少しでも早く解放されるために、匂いや感触の気持ち悪さにむせそうになりながら、指と舌を動かした。

「俺が確かめましょうか、そら、」

椅子に掛けた男の前に座り込んで股間をしゃぶる彼女を、黙って後ろで見ていた青年は
スカートをまくりあげると柔らかい尻を持ち上げて、乱暴に下着をずり下げた。
無遠慮に秘所を探るとあられもない水音がぐちゃぐちゃと響き、青年の無骨な指には瞬く間に愛液が滴った。

「感じまくりですよ、触られてもいないのに、しゃぶるだけでドロドロにイきそうですよ」
「そうか、やはりなんて淫乱な娘さんだろうな」
「んっ、……ん、……んぁ、ぁっ!」

違います!私は、淫乱な女じゃありません。ただ、そうなるようにされてしまっただけで……
聞き届けられない抵抗は下から襲ってくる快楽の波に流される。
青年は彼女の感じる場所や手順を熟知していて、みるみる彼女を追いつめていく。

「家庭教師としても優秀だし、給金だけの礼では申し訳ない。これは、せめてもの心尽くしなのだよ。
床上手な女なら欲しがる男は多い。行き遅れて、家族共々路頭に迷うこともない」

尚もハハハと野蛮な笑みを繰り返して彼女の髪を撫でる。
何も知らない無垢な瞳でお姉さま、と慕ってくれる可愛いお嬢様、父を亡くし病弱な母と弟妹は自分の働きだけが頼りだ。
お父さまが生きていれば……、それだけは封じていた言葉がもやのかかる頭をよぎる。

「ほら、上のクチがおろそかになっておる、まだまだわしは元気だ」

頭を抱えて奥までねじ込まれる。吐き気にこらえながら赤黒く硬い脈動をくわえ込み、舐め上げる。

「ぬぷぅ…っ、く、ちゅう…、にゅぷ、ん、……ちゅば、ぁ……」
「そうだ、やれば出来る。いいぞう」
「では、俺も失礼しますよ」

指を引き抜かれて混濁しかけた意識が戻り、びくっと体を震わせた。
安堵と中途半端に高められた快感でたまらなく奥が疼いて、がくがくと腰を揺らした。

「下も欲しいですか、欲張りですね」

ガーターベルトを残したままの彼女の腰は、指より硬く熱いモノで突き上げられ、
背筋を駆け上がる電流に一瞬意識を失った。

「んんんっ、はぁん、んちゅ、ちゅば、ぁんっ、あふっ、じゅぶ、」

突かれる動きに合わせて両手で握った肉棒を擦り上げながら先を吸う。

「おお、これは、いい、イクぞ、なんてはしたない娘だ!」
「毎日受け入れながら未だに処女のようにきゅうきゅうに締め付けてきますよ、なんていやらしい!」

……いやいやいや、誰か、助け、て、いや、あああぁぁ、ああああっっ!!……

声にならない願いは悦楽の嵐の中へあえなく消えて、上と下からの激しいほとばしりと共に彼女は絶頂を迎えた。
そして、今夜も諦めと悔しさと快感の涙を流しながら意識を失っていった。


「先生、顔色悪いよ?まるで具合の悪いときの私みたいよ?」

目の前で生徒にくすくす笑われてしまい、つい、私は顔を赤らめてしまっていた。
昨晩は散々激しく犯され、いつものようにごわごわしたベットの上で目を覚ました
私は今こみ上げてきている気持ちをこらえ、ほほえんでみせる

「ちょっとね、調べ物してたら夜更かししてしまったのよ」
「ええ?先生でも分からないことがあるの?」
「当たり前よ。たとえば…」

そういって彼女に、天文学のことについて、出来るだけかみ砕いて説明した。

彼女が熱心に話を聞くその顔を見たら、少し元気が出たと想う。
逆に、彼女と「彼」の顔が見れなくなったら、窓から飛び降りているかもしれない。

みるみるうちに時は過ぎていき、私の昼の講義は終わった。

「ありがとうございました。又明日、よろしくおねがいしますね」
「ええ。…ああ、先週教えたフェルドレイジアム文型の課題、明日までだけど」
「大丈夫です!昨日徹夜して完成しましたから」

ほがらかに笑ってる彼女を前に、私の顔が真っ青になる

「ダメじゃない!夜更かしは厳禁だってあれほどクレデス様に言われていたでしょう?」
「だって〜。授業とっても面白いんですもの」
「あなたが勉強熱心なのは分かるけど……今度からは無理そうだったら先生に言ってね。約束よ」
「はい。分かりました。気をつけます」

そういって少し落ち込んだ彼女の目を見ながら、私は精一杯の笑顔を見せる
そして、静かに彼女の部屋を出た。

そんなこんなで、やっと自由な時間を得た私は
昨晩に消耗した体力を少しでも回復させようと、自室のベットで横になる
幼少時代と比べたらとても質素であるが、それでも目覚めたあの場所よりはずっとマシだ。
明かりだけがある真っ白な天井を見つめ、私はため息をついた。

「あぁ……クレデス……」

決して呼び捨てでは呼べない「彼」の名を私はぽそりとつぶやいた。
この貴族家の長男で、医師の卵の中ではもっとも優秀な存在であるという彼は
妹の病を治すために地下の研究室に籠もっている。
昼は学院、夜は研究室。彼を目にするのは、妹の様子を見るときと薬を持ってきた時ぐらい。
やや中性的なその顔を見ると、私の胸は焼けそうだった。
あんな主人でなければ、あの子だって。もう少し……良い方向に……。

そんなこと考えても、何もかわらないのに。

「……クレデス……」

彼の姿と昨晩の記憶を混ぜ合わせて、私は淡々と自墜を始めた。






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