探偵×助手
シチュエーション


「や、せんせ……だめっ」

思い切りよくがばりと体を起こし、千鶴(ちづ)は腕に絡みついたシャツを腕ごと体に寄せた。

「だめ?」

千鶴の足下に座り込み、彼女の膝に手を置いた状態で縫(ぬい)は首を傾げる。
順調に愛撫を続け、仕上げとばかりに潤った秘所に口づけかけた矢先に唐突に拒絶された。
縫は真っ赤になった千鶴の顔をのぞきこむ。

「千鶴くん?」

先ほどまでの情事の名残で彼女の息は僅かに乱れ、瞳は潤んでいた。
まず間違いなく彼女も欲情している。縫は小さく安堵の息を吐く。

「千鶴さん?ちーちゃん?千鶴?」

答えない彼女に何度となく呼びかけ、それに飽きた縫はぱくりと左耳たぶをくわえた。

「ぁ、んっ」

可愛い。震える彼女を見ていると素直にそう思える。
どうして駄目なんていうんだろう。口だけなら無視するが、体ごと拒絶されたとなると話は別だ。
軽い愛撫を続けながらぼんやりと考え、縫はようやく一つの結論に達した。
欲望という名のフィルターがかかった思考は普段の半分も働かない。

「昔の彼はああいうことしてくれなかったの?」

途端に虚ろだった彼女の瞳に色が戻り、耳まで赤く染めてうつむいた。

(ん?あれ?)

どうにもうぶな反応に縫は首を傾げる。
誘いをかけたのは千鶴の方。処女ではないと躍起になるから信じたが、見栄を張っただけなのか。

「千鶴くん、もしかし」
「違いますっ!は、初めてじゃないです」

(そうムキになられると逆にねえ)

「違うったら違います!だから、こんなこともしちゃうんですからっ」

自棄になったか、千鶴は無理矢理縫をベッドに押し倒す。

「こんなこと?」

ごくりと千鶴の喉が動き、縫のズボンへ手をかける。
おそるおそる布越しに陰茎へ触れてみると堅く張りつめたとまではいわないが、僅かにズボンを押し上げはじめているのがわかった。

「ぁ……おっきくなってる」

ぽつりと呟き、千鶴は何度もそこを撫でる。
そのもどかしい動きに焦れながらも、縫は黙って千鶴の愛撫を受け入れる。

「先生……」

意を決したように千鶴はチャックを開き、ズボンを少しだけ下げた。
そして、下着も同じように下げる。

「すごい間抜けじゃない、僕の格好?」

縫の苦笑混じりの呟きは千鶴の耳には入らない。彼女の意識は現れた陰茎だけに集中していた。

「うそ、おっきい……こんな、なの」

呆然とした千鶴の声。

「まだ大きくなるよ、それ。半勃ちだし」

淡々とした縫の声。

「それと、僕のはたぶんそんなに大きくない」

千鶴の手が陰茎に触れる。僅かな温度差に驚いたのか、陰茎は千鶴の手の中でぴくりと動いた。

「きゃっ……動いた」

まったく聞いていない千鶴に話しかけるのを諦め、縫は深々と息を吐いて体から力を抜いた。

(うーん、なるようになれってか。……辛抱きくかな、俺)

力加減がわからないのだろう。千鶴の触れ方は羽根が触れるように軽やかで焦れったい。それでも、数度上下に扱くだけで縫のそれは見る間に堅く勃ち上がる。

「先生、気持ちいいですか?」

不安げな目で見つめられては頷くしかあるまい。

「もっと気持ちよくしてあげます」

安堵の息を吐き、千鶴が姿勢を低くする。
縫が期待半分不安半分で目を閉じて待っていると、千鶴は肩より少し長いストレートの黒髪を耳にかけて陰茎の先端に啄む口づけを落とした。

「こういうの好きなんですよね、男の人」

千鶴の頭では雑誌に載っていたセックス特集でも展開されているのだろうかと縫は思う。今日日のティーン雑誌ならフェラチオの仕方くらい事細かく載っていそうだ、末恐ろしいが。

「口で出したら飲んであげます」

むんっとめいっぱい自分を奮い立たせて千鶴は言う。

「あのね、千鶴くん」

精液ってすごく不味いんだぞ──言いかけた台詞は陰茎を包む生温さで消えた。

(う、わあ……これはマズい。あんまりもたないかも)

先端をくわえ、舌先で鈴口をつつく。その間にやはり焦れったい動作で幹部分を扱く。
どう贔屓目にみても不慣れな動作ながら、それが惚れた女となると得られる快感は格別というもので。
鼻にかかった吐息と稚拙な愛撫。ちろちろと舌を動かし、時折思いついたように吸いつく。

「っ……ちょっ……ちづく、ん」

最後に出したのいつだっけなどと暢気に考える余裕などないくせに脳裏に浮かぶのは十日前の自慰行為。

(そうか。十日も出してないのか、俺は……って、違う!そうじゃなくて)

思わず上体を起こしたのがまずかった。

「っ、あ……」

一心不乱に奉仕する千鶴を脳が認識した瞬間に欲望は最高潮に達し、呆気なく果てた。

「きゃっ!!」

何の前触れもなく吐き出された精は千鶴の顔と髪と素肌を容赦なく汚す。

「ごめん。大丈夫?」

頬を伝う白濁を指で拭い、千鶴はそれをじっと見つめる。

「待って、いまティッシュ……って、千鶴くん!」

そして、ぺろりと、それこそ指についた生クリームでも舐めるように舌ですくいとった。

「ま、不味いでしょ」

枕元のティッシュを二三枚取り出して、千鶴の髪についた精液を拭う。

「ん。変な味」

眉根を寄せて、千鶴は舌を出す。

「ほら、拭いたげるから目つぶって」

素直に従う彼女の顔から精液を取り去る。

「でも、嬉しい」

ティッシュをゴミ箱に放って太股で止まったズボンを脱いでいた縫はその言葉につられて千鶴の表情をうかがう。

「嬉しい?」

こくんと千鶴は頷く。
縫はシャツのボタンを外しながら、不思議そうな顔をした。

「変わってるね、千鶴くん」

(ぶっかけられて喜ぶなんて。AV女優じゃあるまいし)

裸になると縫は千鶴を引き寄せて、軽い口づけを落とす。

「我慢できないんだけど、していい?」

頬を染め、千鶴は小さく頷いた。
枕元に視線を向け、交わる為に必要なものを確認する。

「先生、もっと……もっと、ください」

そっと横たえ、彼女の準備を確かめるように全身に触れていく。そうしながら、手早く自身の準備も完了させる。

「可愛いよ、千鶴くん」

秘所が十分に潤っていることを確認し、縫は彼女の両足を掴んで開かせる。

「力、抜いて」

体を割り込ませ、陰茎を掴んで秘所に押し当てる。数回擦りつけて濡らし、遠慮なく先端を入り込ませた。

「……っ、あっ!」

膝裏に手を添えて腰を進める。

(ああ、やっぱりキツいな)

初めてか、それでなくても経験が浅いのだろう。千鶴の中は陰茎を強く圧迫する。
狭くきつい襞に覆われた内部に、浅い抜き差しを繰り返しながら進んでいく。

「ふ…ぁ、んっ」

息が詰まったように、千鶴は苦しげに表情を歪める。

「痛い?」

問いかければ瞑っていた目を開いて首を振る。

「痛く、ない……思ってたより、まし…………けど、息、しづらい、です」
「ちょっと休憩する?」

頷かれると困るほどに張りつめてはいるのだが、挿入前に一度出しているのだから我慢できないこともない。

「大丈夫、です。平気だ、から……続けて」

手を伸ばして、千鶴は縫の腕に触れる。
千鶴の健気さに甘え、縫は挿入を再開する。
ともすれば欲望のままに腰を振ってしまいかねない自身を制御し、縫はできうる限り優しく腰を揺する。深く緩やかな律動はそれだけでも十分すぎるほどの快感を縫に与えてくれた。

唇に手の甲を押し当て、千鶴は喘ぎが漏れないよう必死になっている。

「あっ……ふ、ぁ…………ッ、んぅ」

それでも、堪えきれずに時折甘い声がこぼれだす。それがたまらなく可愛かった。

「千鶴、くん……千鶴」

手を伸ばし、揺れる乳房を包み込むようにして揉む。

「せんせ……やぁっ」

潤んだ目。我慢できないと胸を押し返す力のこもらない腕。弱々しく振られる首。滲む汗。甘くかすれた声。時折絡める舌と交わしあう唾液。結合部から響く淫靡な音。
五感で得られる情報のすべてが快感に直結する。

「千鶴く……も、ヤバい」

ぐいっと腰を引きつけ、逃れられないように抱え込む。そうして頂点へ向けて思い切り駆け抜ける。
一気に頂点へ辿り着き、一瞬の間、そして後は転がり落ちていく。
頂点に辿り着くより少し前、千鶴の体がほんの僅かに強ばったのを確認したようなしないような。

「すき……だいすき……」

余韻が背筋を落ちていく感覚の中、虚ろな呟きを聞いた気がしていた。

(あー、やっちゃった。ヤバいかなあ、マズいよなあ。でも、やっぱり千鶴くんは可愛い)

千鶴の上に倒れ込んで荒い呼吸を整えながら、縫は現実逃避するかのごとく睡魔の甘い誘惑と戦うのだった。






SS一覧に戻る
メインページに戻る

各作品の著作権は執筆者に属します。
エロパロ&文章創作板まとめモバイル
花よりエロパロ