サンタクロースは準備中
シチュエーション


火がはぜる音をたてている暖炉の前に、まだ少年にも見える若い男が
あぐらをかいて座っていた。傍らには山積みのカードが置かれている。
それらに書かれている宛先はみな同じで、一様にこう書かれていた。

『サンタクロースさんへ』

男は少しくせのある金髪をかきむしると、一番上に置かれたカードを
手に取って音読した。

「ええと、次は二丁目三番地、ヘンリー・アボット……なになに、
『いもうとか、おとうとがほしい』。そんなもんは親に直接言え! くそっ」

叫ぶなり、ルーカスはばしっと床にカードを叩きつけた。
すると、彼の背後からその行動をたしなめるように声がかかった。

「ちょっとルーカス、子どものカードに八つ当たりしないで。
そんな暇ないはずでしょ。もうクリスマスまで一週間もないんだから、早くしないと」

艶やかな声の主は、背の高い赤毛の女だった。
ペールグレーのセーターにモノトーンのスカートが良く似合っている。
眉を寄せて言い聞かせるような口調は姉のような響きを持っていた。
実際、彼女はルーカスよりも三つ程は年上のようであった。
もっとも張り出た胸は年齢以上といった感じではあったが。

「アニエス……」

ルーカスはちっと舌打ちをして名前を呟くと、そのままじろりと女を睨んだ。

「そんな顔したってダメ。明日までにはこのカード分は処理してもらいますから」
「わかってる! いちいちうるさく繰り返すな! やればいいんだろう、やれば」

ルーカスはばっと無作為にカードの一つを掴み上げるとそれを読み、
祈るように目をつむった。すると彼の手元に光が浮かび上がったかと思うと、
玉のように丸くなっていき淡く輝きを放っていた。光は段々収縮していき
一つの形を表し始めていく。
それは、一つのくまの縫いぐるみだった。
それが形をもった瞬間ルーカスが読んだカードの、『テディベアが欲しい』という
部分に『Finished』の印が書き込まれた。

「おみごと」

アニエスはくすっと笑って唇を持ち上げた。

「なんだよ。」
「やればできるじゃないってこと。その調子で頑張って。
全部終わったらイイコトしてあげるから」

瞬間ぴくりとルーカスの耳が動いた。そして黙々と欲しいものが書かれたカードを
めくってはクリスマスプレゼントとして次々と出していく。
あまりにも判りやすいその行動にアニエスは笑いを噛み殺した。

魔法の力で世界中の子供達のプレゼントを具現化するのは、サンタクロース一族の力であった。
今年からプレゼントを配るサンタの一人として選ばれたルーカスは、まだ若さゆえか
大役のためか不安が大きいのか、最初のうちはプレゼントの具現化が上手くいかない事も多々あった。
そんな彼を補佐するためにつけられたのが、サンタクロースのしもべでもあるトナカイ一族の娘、
アニエスであった。彼女はルーカスの祖父にも仕えていた優秀なトナカイだ。

良きサンタクロースとして初仕事をこなせるように、ルーカスを上手く導いていくだろう
というのが一族の考えであり、そのためにアニエスがルーカスの元にやってきたのだが、
トナカイとはいえアニエスは、人型をとれば美しい若い女だ。
そのアニエスと夜に昼にと生活を共にして、ルーカスがどういった感情を彼女に
抱くかという事を、サンタクロース一族の長老たちはそっちの方面に枯れた老人ばかり
だったために、考えもしていなかった。

*******

ハーブティーの入ったカップに唇を当てていたアニエスは背後から名前を呼ばれ振り向いた。
そこにはルーカスがふんとばかりに息巻いて腰に手を当てて立っている。

「全部終わったぞ。これでいいんだろ」

その言葉にアニエスは思わず「あらまぁ」と目を見開いた。

「え、もう終わったの? ずい分早いじゃない。
私は別に明日までに終われば良いと思ってたんだけど……」
「明日はクリスマス準備もお休みだ。明日の朝は遅く起きるかもしれないし……」

そう言いながらアニエスに近づくと、ルーカスは彼女の赤い髪をかきあげて耳朶に口付けた。

「ちょっと、ルーカス!」
「終わったら、って言っただろう?」

心外といったような表情でルーカスはアニエスの顔を見た。

「それはまさか終わるとは思ってなかった……」

思わず本音を漏らしそうになったアニエスは、ぱっと慌てたように口を手のひらでふさいだ。
ルーカスは一瞬眉を上げたが、すぐに思いなおしたようにアニエスの服に手をかける。

「だ、だめだめだめっ、プレゼント用意するだけが準備じゃないんだから!

ソリも用意しなくちゃいけないし、こんな事してる場合じゃないのよ」

「こんな事って?」
「ちょっ……あ―――っ」

ルーカスの手がアニエスの下着をずらしてその内部を指で探り始めていた。
彼を押し返そうとする手の力が抜けていく。そのままゆっくりと口付けを交し合い
二人はすぐ傍のソファにもたれ掛かるようにして倒れこんだ。

「もう、しょうがないんだから……っ」

唇を尖らせて言うアニエスに、ルーカスは満面の笑みを向けた。

「サンタクロースとトナカイは一心同体。だからクリスマスの前に
俺たちも気持ちと、それから体を一緒にしておかないと」

*******

「あっ、あああっ……ルーカスっ、そんなに強くしないで……!」

豊満な乳房を揺さぶりながらルーカスが腰を動かしていく。
快楽がルーカスの理性を揺るがし、彼は本能のままにアニエスを求めていた。
腰を高々と掲げさせ、入りやすくしたアニエスの後ろからルーカスは自らの肉棒で
彼女の入り口へと押し入った。既に愛液とルーカスの精液でぬめぬめと濡れたそこは
容易に彼自身を受け入れた。

「アニエス、アニエス……!!」

名を呼びながら先端を彼女の敏感な部分にこすりつけるようにすると、声なき声で
震えながらアニエスが達するのが震動となってルーカスにも伝わってきた。
そのたわみが、ぎゅっと柔らかく、しかし逃がさない強さでルーカスを掴みあげる。
彼もまた白い白濁を、解放するようにその場所へと勢いよく放った。

*******

ルーカスの裸の胸にそっと触れながら、アニエスはそっと彼に問うた。

「……何を考えてるの?」
「別に」
「やっぱり不安? 初仕事は」

慈母のような微笑を浮かべて聞いたアニエスの言葉にルーカスは何かを言いかけるように
していたが、言うべき言葉が見つからなかったのか困ったようにそのまま唇を引き結んだ

「大丈夫よ、あなたは偉大なサンタクロース一族の一人なんだから。自信をもって!」
「いてっ」

べちっと胸をはたかれてルーカスは思わず声をあげた。アニエスの顔を見返せば
彼女は先ほどと同じように柔らかく微笑んでいた。その笑顔をルーカスは眩しそうに見つめた。
そしてしばらく口ごもっていたが、意を決したように口を開いた。

「……やっぱ……不安がないって言ったら嘘になる。だけど……」

するとルーカスはがばっと身を起こし突然アニエスの体を強く抱きしめた。
当のアニエスは、突然の彼の行動に目を白黒させている。

「俺、お前がいれば何でもできる気がする。俺にとってお前はこの世で最高のトナカイなんだ。
だから、絶対大丈夫だって思ってる。アニエス、信じててくれ。
きっと今年のクリスマスは素晴らしいものにしてみせる!」

抱きしめる手に力がかかり、その力強さをアニエスは体で感じていた。
そして楽しげに唇を上げた。

「……ばかねぇ。あなたは子供のためのサンタクロースなのよ。
自分のトナカイに、一番素敵なプレゼントを贈ってどうするのよ」

アニエスは自分からもぎゅっとルーカスを抱きしめると、彼の頬に
手を当ててそっと彼の唇に自分の唇を重ねた。アニエスは、光を宿した
ルーカスの瞳が瞬きするのを聖夜に星が瞬くようだと、そう思った。






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