失われた女神
シチュエーション

「どうにかなりませんか」
「細かいことは村長たちと話し合ってからのことだ。しかしまあ、あまり期待
はするな」

レードルフの父、エオルはそう言ってため息をついた。

「領民にばかり犠牲を強いるわけにもいくまい」

一九三センチメートルの巨体を支える背中が窮屈そうに丸まっている。濃い
栗色だった髪は、まだ四十六歳なのにすっかり白くなっている。
眉は太く、顔立ちは厳めしい。うかんでいる表情はひどく陰鬱なものだ。
額にある傷跡は戦場でついたものではない。六年前、魔王の使者が生贄を七
人要求してきた時に、それを過大だとして使者の裾を引いて嘆願し、足蹴にさ
れて出来た傷だ。
レードルフはエオルの息子である。十八歳とまだ若い。栗色の髪は父親に似
ており、深い青色の瞳は死んだ母親に似ている。背は一七九センチメートルと
長身だが、父に比べると見劣りする。
顔立ちは母似にて柔らかいが、厳めしい表情の作り方のせいで父親に似た印
象の方が強い。
レードルフの家は男爵の家系であり、奥之村と河辺村の二つの村を百年前か
ら治めてきた。七年前、魔王軍に降伏してからは二つの村の代表として魔王の
代官になり、毎年貢ぎ物と生贄を使者に引き渡している。
魔王の要求には脈絡が無いことが多いが、年齢は七歳から十二歳のどれかで、
人数は二人から七人の事が多い。生まれた月を指定することもあれば、壮でな
いこともある。
次の生贄は十一歳の少女を三人、と魔王の使者が告げたのはついさっきのこ
とだ。エオルは魔王の使者を見送り、夜明けとともに鐘を鳴らした。

「それじゃあ行ってくる。留守はまかせたぞ。エルナには……まあ、お前に任
せる」

エオルはそう言うと、家臣を引きつれて村の寄り合い所へ向かった。どの家
が生贄を出すのか、村の有力者とを話し合いに行くのだ。家臣のうち何人かは、
生贄になり得る子供のいる家に向かい、逃げだしたりしないように見張ること
になる。

とたんに館が静まりかえった。空は重い雲がかかり、空気が湿っぽい。
レードルフはこのあたりの地理を思い浮かべた。土地の測量と地図の製作が
趣味のおかげで、このあたりの地理には通じている。

(この天気なら、川辺村の村長たちが岡道に着いたあたりで降り出すな。寄り
合い所に着くのは昼過ぎ。去年と同じぐらい揉めたら、話し合いが終わるのは
日が暮れた後だな)

レードルフは父親によく似たため息をつくと、義妹の部屋へ向かう。
義理の妹、エルナは十一歳の少女だった。

「エルナ、起きているか?入るぞ」
「どうぞ」

エルナが緊張した面持ちでレードルフを出迎えた。レードルフの表情を見て
察したのか、弱々しい微笑みが浮かぶ。魔王の使者が訪れ、館中が騒然として
いたことにエルナは気がついていた。
この時期は館も村でも雰囲気が張り詰めている。魔王の使者が訪れ、年の初
めに引き渡される生贄の内訳を告げるのがこの時期だからだ。

「生贄、決まったの?」
「いや、まだだ」

レードルフはとっさにそう言った。
エルナはまだ十一歳で、身長は一四四センチメートルにしかなっていない。
外見はまだ幼さの方が先に立ち、体つきから女らしさを見て取ることは出来
ない。黒々とした髪は短く切りそろえられ、薄茶色の瞳をした目は少し垂れ目
気味だ。
レードルフはなんといって良いのか分からず、だまって寝台に腰をかけた。
しばらくの間沈黙が流れる。

「今年は、どういう?」
「十一歳の女の子を、三人」
「十一歳っていうと、わたしの他は?」
「村はずれのエドの娘のアルが十一歳だ。あとは、揉めると思う。他に六人い
るけど、一人娘が二人、あとの四人は、家族から生贄を出してるから」

胸がつかえ、声がつまる。

三人の少女というのは、二つの村を治める代官にとって難しい要求ではない。
だが、魔王の支配を逃れようと縁戚を頼って移住する領民や、あるいは生贄
にされることを恐れた親が子供を魔王の支配していない街へ徒弟奉公に出す、
という事が横行しており、領内の子供の数は規模に比べてやや少ない。
その上、エルナが生まれたのはひどい悪疫の流行した年だった。
エルナが生まれたのは、魔王が女神アドガイズを封印した翌年にあたるので
ある。
それまでアードマークの地では、女神の祝福を受けた聖王家と聖王家に仕え
る聖騎士団が民を治めていた。領主は女神の力で領民を守り、傷や病を癒して
きたのである。
そこから突然女神の力が失われた。さらに魔王は支配下の土地から生贄を集
めだした。多くの人々が土地を捨て、難民となった。
アードマークの人々は、治療魔法以外の医療技術をほとんど持っていない。
その上に、多くの人々が難民となって放浪を始めたのである。
悪疫が猛威を奮い、その結果は酷たらしいものになった。
エルナと同じ歳に生まれた赤子は、五人に二人が一年持たずに死んだ。
エルナの両親も悪疫によって死んでいる。
レードルフの家族は特に運が悪く、姉二人、兄、妹、弟と、五人いた兄弟姉
妹が全てその年に死んだ。
エルナの父親がレードルフの従兄、エオルの甥にあたることと、傷心の母を
慰めるためがあって、エルナは養女として引き取られた。
レードルフは、母といっしょに新しい義妹の世話にはりきった。村が魔王軍
に降伏したとき、エルナは四歳、レードルフは十歳だった。
その年の暮れ、レードルフの従兄が生贄に反発して叛乱を起こしたときは、
二人で地下室に隠れ、抱き合って震えた。
母はその叛乱で従兄に殺され、従兄は父によって処刑された。従兄の母と妹、
つまりエオルの兄の妻とその娘は実家である伯爵家に送り返された。
翌年にはエルナの祖母が病死している。葬儀の時、エルナはぼろぼろと涙を
流し、レードルフはエルナの手をぎゅっと握って涙を堪えた。
それから七年、女手のほとんどない館で、エルナを育てるのはレードルフの

仕事だった。「魔王の代官の娘」と言われ、エルナが館から出たがらなくなっ
てからは勉強もレードルフの仕事になった。エオルが魔王の代官になったのは、
他に二つの村の代表になれる人間がいなかったからで、それぞれの村長の同意
もあってのことなのだが、子供にはそうした理屈は通じない。
半年ちょっと前にはエルナに月経が始まり、どうしていいのか分からなかっ
たレードルフが村から産婆を引っ張ってきてしまった、ということもあった。
だから、エルナが生贄になるのは避けられないだろう、とはレードルフには
言えなかった。

「それじゃ牢屋に入る支度、した方がいいね」
「いや、牢屋はいいだろう」
「いいよ。牢屋に入っていないと、逃げたくなっちゃうから。大丈夫だよ、牢
屋って言ったって館の中だもの。お兄ちゃん、会いに来てくれるでしょ?」
「当たり前だろ!」

そう言ったレードルフの背中を、エルナが慰めるようにぽんぽんと叩いた。
エルナがレードルフの側に座り直し、温かく華奢な身体が寄りかかる。
エルナの小さな手が、レードルフの手を握った。

「あのね、お兄ちゃん、お願いがあるんだけど」
「うん、なんだ。何でも言え。出来ることならな、なんだってしてやるぞ。な
んだって、だ」
「何でも?」
「ああ、女神の名と俺の名誉にかけて、嘘はつかん。俺に出来ることなら何だ
ってしてやるぞ。遠慮はするな」
「ありがとう、お兄ちゃん」

エルナは心を落ち着かせるように、少し黙った。レードルフの手を握るエル
ナの手に、力がこもる。

「……あのね、抱いて欲しいの」
「え?」

思わずレードルフはエルナを見た。エルナの薄茶色の瞳がレードルフを見つ
める。

「だ、抱くって……」

「本当はね、十五歳になったらお願いするつもりだったの」
「兄妹だぞ、一応仮にも」
「仮なんだからいいじゃない。おかしくないでしょ?世の中には叔父姪で結
婚する人だっているんだし」

言い逃れは許さない、というようにエルナが身を乗り出す。その瞳からは頑
ななまでの決意を見て取れた。

「いや、しかし……」

おまえまだ十一歳だろう、と言いかけて、エルナが十二歳になれる見込みは
薄いということを思いだした。

「本当にそれでいいのか?それ以外のお願いでもいいんだぞ」
「うん、いいよ。バートの時の事、憶えてるでしょ?」

バートは二年前に生贄に選ばれた少年だ。
その頃は生贄となる子供が逃げないように村中で見張りながらも、新年まで
の間は家族で過ごさせていたのだが、バートは村人の目を盗んで逃げだしてし
まったのである。
悪いことにその年に要求されたのは十月生まれの十二歳の少年で、村で当て
はまるのはバートだけだった。
魔王の使者が代わりに要求したのは、一二歳の子供を十人というものだった。
生贄となる子供を牢屋に閉じ込めておくことになったのは、それからだ。
それでもまだ運がよい方ではあった。魔王に生贄を捧げられず、焼き払われ
た村もある、という話は村を失って難民となった人々から伝わってきていた。

「だからそれでいいし、それがいいの。いいでしょ?」
「……ああ!」

少しぎこちなく微笑むエルナを、ードルフは強く抱きしめた。エルナの唇に
食いつくような勢いで唇を押しつける。

「ん、んんっ……んぅ……」

短い息継ぎを挟みながら、二人は長々と唇を合わせた。
レードルフはエルナを寝台に横たわらせ、ゆっくりと衣服をはぎ取っていっ
た。エルナは息を整えながら力を抜き、レードルフにされるがままになる。
年の暮れの、弱々しい陽の光がエルナを照らした。

むき出しになった胸はわずかに膨らんでいる。盛り上がりを確かめるように、
レードルフは指でなぞった。
くすぐったそうにエルナが笑う。

「ちゃんと大人になってるんだな……」

エルナの胸を何度もなぞりながら、色々なことを思い出していた。
母に笑われながら、エルナのおむつを替えた事があった。
従兄が叛乱を起こして母を殺したのを初め、立て続けに家族を失って余裕が
ない頃、エルナのおねしょを怒鳴りつけてしまったこともあった。
エルナが村に行きたがらなかった時、「魔王の代官の娘」ということで疎外
されている、と言うのを聞き出すのは苦労した。
エルナに勉強を教えることにしてからは、自分の知識不足を痛感することが
多かった。
二、三年前までは、風呂に入れたり身体を拭いてやったりして裸も見慣れて
いたが、エルナの華奢な身体に女らしさを感じたのは初めてだ。

「当たり前だよ。もう赤ちゃんだって産めるんだから。エルナの歳で結婚する
子だって、たくさんいるんだよ」

得意げにエルナは言うが、女らしい体つきとはとても言えない。狭い肩幅や
細い腕は子供っぽく、うっすらと肉ののりはじめた胸が女になろうとしている、
というのを主張している程度だ。

「気がつかなかったよ」
「胸だけじゃないんだよ」

催促するようにエルナは腰を浮かせる。レードルフは少しためらってから、
スカートを脱がせた。エルナが緊張した面持ちで軽く足を開く。

「ね、ちゃんと大人になってるでしょ?」

レードルフはあらわになったエルナの下肢を見つめ、成長のしるしを探した。
少し骨張った腰つきは、やはり女らしさよりも幼さの方が印象に残る。

「ほらあ、ちゃんと生えてるんだから」

エルナが腰を浮かせるようにして秘部をさらす。レードルフは身をかがめて
エルナの幼い秘裂を覗き込んだ。
小さな窓から差し込み光は、かげりを見せ始めている。最初は白く滑らかな

肌しか見えなかった。しばらく探し、産毛を少し太くしたようなものが生えて
いるのを見つけた。とても茂みと言えるような代物ではない。

「ああ、生えてるな」
「ね?だからもう、大丈夫なんだから」

指を伸ばし、裂け目をなぞる。エルナが驚いたような声を上げ、すぐに照れ
たような顔になる。指はさらに裂け目を前後する。

「ん、んんぅ……」

くすぐったさにエルナは身をよじった。レードルフの指が行き来するたびに、
くすぐったさにむずがゆいような感覚がまじり、やがて秘裂の奥がねっとりと
熱を帯びる。

(あ、あれ……?)

レードルフの指の動きに合わせて腰が前後し始める。

「んくっ……」

心臓の動きが早くなる。エルナは初めての感覚に戸惑っていた。
女性の親族を幼いうちに失ったエルナは、性の知識が乏しい。月経ですら教
えてくれる人がおらず、義兄に頼ってしまったほどだ。

(落ち着いて、大丈夫、きっと、大丈夫だから……)

ここで慌てたりしたら、もう二度と義兄に抱かれる機会はやってこない。
エルナは自分にそう言い聞かせ、声を殺した。落ち着いた振りをして、身体
を義兄にゆだねる。
不意に秘部がじくっと湿り気を帯びた。

(や、やだ、なんで!?)

エルナは一瞬、十日ほど前に終わったばかりの月経が、予定よりもずっと早
くに訪れたのだと思った。とっさに閉じようとする脚をレードルフの手が抑え
る。

「ちゃんと、濡れるんだな」
「え?う、うん……」

安心したような声を聞き、エルナはとっさにそう言った。

(ぬ、濡れる……?)

エルナの知識では、レードルフの言葉を理解できなかった。

レードルフが安心したように言ったのだから、悪いことではないはずだ。
そう思うようにして軽く上体を起こし、秘部に目をやる。血は見えなかった
し、匂いもしなかった。
義兄の顔が秘部を覗き込み、さらに顔を近づける。

(え?)

舌が秘部に触れた。粘膜同士の密着が、指よりも遙かに強い触覚となる。エ
ルナはぞわわっとした反応が背筋を駆け抜けたのを感じた。

「ひゃぁっ!?」

身体の奥から熱っぽい物がどろりとあふれた。さらにレードルフが唾液を秘
れつに塗り込んでいく。
皮膚の裏がむずがゆくなるようなもどかしさに、エルナの腰が寝台の上でう
ごめきだす。

(もう、大丈夫、か?)

エルナの反応をうかがいながら、レードルフは服を脱いだ。エルナの幼い身
体や緊張した面持ちは不安だが、秘裂は一応濡れてきているし、さらに唾液を
塗り込んでいる。

(大丈夫だな)

レードルフはそう思うことにした。父や家臣はいつ戻ってくるか分からない
し、戻ってきたらエルナを抱く機会は二度と来ない。

(逃げたいって言ってくれれば……俺が、逃げろと言えば……)

レードルフは一瞬そう思い、すぐにその考えを振り払った。それは、これま
でにいくつもの苦渋の決断を下してきた父親への、皆のためと言われて家族を
生贄に差し出してきた領民への、女神の力を失ったにも関わらず、レードルフ
たちを領主として扱ってきた領民への裏切りだった。

「入れるぞ」
「う、うん……大丈夫、大丈夫、だから……」

自分に言い聞かせるようにエルナは言った。気を緩めれば震えてしまいそう
だ。小さな裂け目にレードルフの先端が押し付けられた。
熱く堅い感触と柔らかく小さな感触に、二人はそれぞれに不安を感じ、そし
て不安から目をそらした。

レードルフがエルナを寝台に押し付け、腰をぐっと押し進めた。

「んぐぅうっ!」

身体が裂けるような痛みに、叫び声があがる。エルナの手がレードルフの腕
をぎゅっとつかんだ。押し寄せる激痛に、エルナの身体がレードルフから逃げ
ようとする。

「大丈夫か?」
「大丈夫。ちょっと驚いただけだよ。ちゃんと大人になれるんだから。お兄ち
ゃん、ちゃんと、大人にしてね」

怯えを押し殺しながら、エルナはぎこちない笑みを浮かべた。

「ああ」

レードルフは強く頷き、エルナの腰をつかんだ。エルナをしっかりつかまえ
た上で、ひたすらに身体をねじ込む。身体を押し進めるたびに、大槌で叩かれ
るような衝撃がエルナを襲った。
悲鳴を堪えようとするが、意志とは関わりなしにのどから苦痛の声が漏れる。
ぎゅっとつむった目が熱くなる。
不意にレードルフが動きを止めた。うっすらと目を開くと、涙で景色が歪ん
でいる。

(終わった……)

安心して、惚けたような微笑みが顔に浮かぶ。

「ごめん、エルナ……凄く気持ちよくて、もうちょっとこうしてて、いいか?」

(そっか、まだ終わって無いんだ……)

一瞬、がっかりした表情が顔に浮かんだ。

「そんなに、気持ちいい?」
「ああ、ものすごく気持ちいい」

エルナの幼い身体は狭苦しく、感触も堅い。締めつけられるというよりも挟
み込まれるような感覚だ。

「いいよ。私は大丈夫、だから、ゆっくり、味わって」

声がかすれる。
どくっどくっと秘裂が脈動する感覚と、ずきずきとした痛みがひっきりなし
に身体に流れ込んでくる。エルナは息を整え、痛みから意識をそらした。

(はやく終わらせた方がいいのか?)

エルナが苦しむのを無視してでもはやく終わらせた方がいいのか、長引くこ
とになっても少し休ませた方がいいのか。
レードルフは少し迷ってから、エルナを抱き上げ、寝台に座るような姿勢に
なった。エルナに入り込んでいたレードルフの身体が、いっそう深々とエルナ
を貫く。
身体を走る痛みに、思わずエルナは悲鳴を上げた。

「大丈夫か?」
「う、うん……」

レードルフの腕がエルナを抱きしめる。三十五センチメートルの身長差は、
膝の上に抱き抱えるような格好になってもまだ埋めきれない。レードルフはエ
ルナを上向かせ、食らいつくように唇を押し当てた。
二人は抱き合う格好になり、寝台に横になっているときよりもぴったりと肌
を触れ合わせる。
エルナが恐怖と痛みを紛らせるようにしっかりとレードルフに抱きつき、レー
ドルフの腕はエルナを落ち着かせるように背中を撫でた。
唇が離れ、涙にうるんだエルナの眼がレードルフを見上げる。

「お兄ちゃん……」
「こんなことしてて、お兄ちゃんはないだろ。ラディって呼べよ」
「うん……ラディ。ラディ、ラディ……」

言い慣れない名前を舌の上で転がすようにエルナは何度もそう言って、不意
にくすくすと笑った。

「ねえ、これって何だか夫婦みたいだよね?ラディ」
「そうだな、夫婦みたいだな」

軽く、額に口づけをする。

「ね、愛してる?」
「愛してる」

十一歳の少女と十八歳の青年とのやりとりは子供っぽいおままごとのようだ
ったが、本人たちは真剣だった。互いに唇を押しつけあい、やがて舌を絡ませ
合う。

ほぅ……

静かな息が漏れる。
レードルフを包む媚肉は、まだきついながらもほぐれ、動く余裕をもたらし
ていた。

「少し、慣れたか?」
「んん……まだ痛いけど、さっきより平気」

エルナは強がることなくそう言った。

「じゃ、動くぞ」

こくん、とエルナがうなずく。レードルフはエルナの身体を抱え、ゆっくり
を動いた。ぬちっ、ぬちっという小さな音が立つ。
レードルフが動くたびに強張る身体が、エルナの痛みを伝えてきた。

「んっ、んんっ……!」

ずきん、ずきん、という痛みを堪えながら、エルナはしっかりとレードルフ
にしがみつき、両脚でレードルフの腰を抱え込んだ。秘部がレードルフを締め
つけるが、レードルフは逆にエルナをこじ開けるように強引に動きつづける。
小刻みな動きが延々と続き、不意にレードルフが震えた。
エルナを抱きしめていた身体から力が抜け、エルナにしがみつく。
どくっ、どくっ、とエルナの中に体液が注がれていく。

「……終わった?」
「ああ」

レードルフの返事を聞いたとたん、エルナの意識がすっと遠のいた。
安心したのか、腕の中で脱力したエルナを、レードルフは寝台に横たわらせ、
汗をぬぐった。
窓の外から見える空は暗く、雨が降り始めていた。
部屋の中は肌寒いのにエルナの肌は粘ついた汗で覆われている。細い身体は
寝台に沈み込み、大きな息で胸を上下させていた。
改めて見ても、肉付きの薄い胸も腰回りも、女らしさよりも幼さの方が印象
が強い。
風邪を引かないようにエルナに布団をかぶせると、レードルフは衣服を着た。

「お兄ちゃん、どうだった?」

ぼんやりとした口調でエルナがそう言った。

「すごく気持ちよかったよ」
「そっかぁ」

えへへ、と嬉しそうにエルナが笑う。
生贄の引き渡しである新年まで半月しかない。村での話し合いが終わり、誰
が生贄になるか決まれば、エルナは他の生贄と一緒に牢屋に入ることになるだ
ろう。
窓の外の雨は、強くなっていた。

(思ったよりも持ったな。河辺村の村長でも、寄り合い所に着いているか)

レードルフはエルナを撫でながら、そう思った。

(話し合いが、長引けばいいけど)

暗い空を見ながら、重いため息が漏れた。






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