生徒会室の保守
シチュエーション


!!百合警報!!

この時期、あたしはいろいろと忙しい。何が忙しいといって、とにかく忙しい。来年度
の部活動予算の折衝資料は作らなきゃいけないし、それと並行して決算はまとめなきゃい
けないし、年度明けすぐの新入生研修会とリーダー研修会の資料を作らなきゃいけないし、
今年からは小等部の入学式典のプログラムをレイアウトするのも仕事だ。最後のは生徒会
室のmacをOS8時代の遺物からOSXマシンに切り替えるにあたっての交換条件だってのがま
た実に腹立たしい。どう考えてもそれって会計部の仕事じゃないだろ。
おまけに高等部3年のクソガキ……もとい先輩たちが受験が終わって春厨化しているの
で、そいつらの相手もしてやらないといけない。まあこっちは、せいぜい冷蔵庫の掃除で
もさせるとしよう。数年来の課題となっている冷凍庫の掃除は、おそらくこの冷蔵庫を買
い換えるまでは不可能であるにしても。

しかし!そんな多忙な日々に、強力な助っ人が現れた。例の水泳部の彼女の紹介で、
図書委員会から看板司書ちゃんが執行部入りしてくれたのだ。週2回の図書委員会勤め以
外は、放課後になるとずっと生徒会室であたしの仕事を手伝ってくれているのだけれど、
この子が実に使える。素晴らしい。惚れちゃいそうだ。電卓よりもソロバンのほうが早く
て正確な子なんて、三次元にも存在していたんだねぇ。もちろん仕事は全部open officeで
やらせてるけど、彼女が愛用の五珠ソロバンを取り出したのを初めて見たときは、もう萌
え死に寸前でしたよ。
ちなみに、彼女が来てからというもの、生徒会室のテーブルは天板が見える状態になっ
た。奇跡としか言いようがない。以前のような混沌は、あたしの周辺に残っているだけだ。
生徒会長が「すげえ、テーブルの上に弁当乗せられる!」とか叫んだときに見せた、執行
部員たちの共感の顔といったら。いいからお前らは食ってないで仕事しろよ。

で、そうやって押し寄せる仕事と戦い続けていたとある土曜日、いつものように元気よ
く水泳部の彼女が生徒会室に駆け込んできた。あたしはきゃつが何かを言う前に、昼ごは
んがわりに食べていたバナナを咀嚼してしまうことにする。新品のmacの上にバナナをふ
きだすわけにはいかない。

「あ、先輩、こんにちはーッ!お忙しそうですね!」

見りゃわかるだろ。
あたしの横で、司書ちゃん(あたしは人の名前を覚えるのが極端に苦手だ)がぴょこん
と頭を下げる。彼女はどんな相手にもすごく丁寧な接し方をする。無口すぎるのが玉に瑕
か。男子にとっては萌えツボなのかもしれないけど。

「あ、いたいたッ。ねえねえ、もうちゃんと先輩に相談したッ?で、で、ちゃんと解決
したでしょッ?」

相談?解決?あたしは急いでバナナを飲み込んでから、ゆっくりと司書ちゃんの方
を向き直った。司書ちゃんの表情はぴくりとも変わっていないように見えるが、あたしは
彼女の耳が少し赤くなったのを見逃さない。

「あなた……。ええい、こっちのほうが早そうね。彼女、あたしに何を相談したいわけ?
まだ特に何も聞いてないけど」
「えええええええッ。ダメじゃん!しっかりしなきゃ!もう、いつもそうやって黙っ
てるんだからッ!
えっとですね、先輩、実は彼女も、カレシとのエッチでイケなくて困ってるんですッ!
どうか、愛する後輩の頼みと思って、ひとつ助けてやってくれませんかッ!」

そんなことを大声で言うな馬鹿。

「いつからここは、というかあたしは、もしもし性教育ダイヤルになったのよ……」
「ええッ、そんな電話があるんですかッ?命の電話みたいなッ?」
「アホか。んなものあるわけないでしょ。しかも何と比較してんのよ」
「じゃ、じゃあダイヤルQ2とかッ」
「いらんことばかり覚えるね、あなたは。あいつのせいか。いいかな、ダイヤルQ2ってい
うのは電話を利用したアダルトコンテンツの代名詞になっているけれど、本来……」
「先輩ッ、通信事業の講義は後でいいですッ!そんなことより彼女の悩みを、是非ッ!
そしてそのおこぼれにあたしもあずかりたくッ!」

……頭痛がしてきた。

「とにかく、悩みはわかったから、今日のぶんの仕事を片付けさせて。あたしも明日は予
定があるんだから、休日登校なんて絶対イヤ」
「はいッ、不肖あたくし、できることがあればお手伝いしますッ!」
「ん、じゃあほら、120円あげるからコーヒー買ってきて。無糖のやつ」
「……生茶を……お願いします……」
「それ手伝いじゃなくてパシリって言いますッ!」
「いいから!あなたに数字を扱わせると、仕事量が2倍になるんだから!」
「はははははいッ!大至急!」

つむじ風のように走り去っていく彼女の背中を見ながら、あたしは深くため息をついた。
改めてmacに向き直る。

「で、あなたのカレシって、誰だっけ」

えーと。ごにゅうがく、おめでとう、ございます、か。手堅くPOP系かな。それともじ
ゅん系を太くして使うか。作業しながら、隣の司書ちゃんに声をかける。

「……サッカー部の……」

校長の挨拶はどこにあったかな。確か今朝、メールで来てたんだけど……。

「ああ、思い出した。なんだ、美男美女カップルじゃない。性格的にも普通っぽいけどね
え。そりゃ年齢相応の性欲はあるだろうけど、それってあなたも同じでしょ?」

あったあった。って、こんなに大量に漢字使った文章書いてどうするんだよあのハゲ。
子供に向けて書けって言ったのに。

「初体験はいつごろ?初体験でエクスタシーとかいうのは、エロパロじゃあるまいし、
普通にファンタジーよそんなの」
「……彼とは……半年くらい……前です」

範囲指定して、何かショートカットひとつで漢字をひらがなに開けたんだよね。大昔は
NFERなんてキーもあったらしいけど。あー、もう忘れた。いいや。手で打とう。ん、彼と
は、とか言ったよね今。

「トラウマをつつくことになったら悪いんだけど、あなた、意外とやり手?」

純情シャイガールに見えて脱いだらすごいんですとかいうのは、意外とありがちだった
りする。もっとも、実は小学生のころから義理の父に毎晩とかいうエロ小説みたいな実話
を聞いてしまう危険性もある、両刃の剣。
隣でアナログ台帳とディスプレイのあいだをいったりきたりしてた頭が、かくんと頷い
た。あらまあ。

「それは困ったねえ。あの子はなんか勘違いしてるけど、あたしは年齢並の経験しかない
よ?知識は、そりゃ多少はあるけど、雑学の範囲を超えないし。
じゃあ、最初の最初はどんな感じだったの?」

画像素材はMOに入ってるって言ってたっけ。いまどきMOかよめでてえな。てかUSB接続
のMOとかどうなの。うわ、これ全部jpegだ。tiffで入稿しろってあれほど言ったのに。写真屋
を起動しなきゃ。

「……大学の……サークルの……読書会で……好きな人がいて……」

さて、画像素材の周囲にぼかしをかけるか、それともフォトフレーム風にするか、と。去年
がフォトフレーム風だったから、ぼかし加工にしましょかね。年子の兄弟が入学してくること
もあるだろうし。画像フォーマットの変更ついでにちゃきちゃきいきますか。

「で、いつよ、それ」

彼女の手がふと止まった。

「先輩……すみません……関数ヘルプって……」
「それはここ。で、いつよ」

彼女はディスプレイとにらめっこをしている。算術用途でのワークシートの使い方はま
だまだだ。あたしは作業マクロを組んで、画像素材を一気に加工する。新型はいいね。
以前はここでお茶を汲みに行くハメになってた。

「……小等部の……5年生……でした」

思わずキーボードに突っ伏す。ああああああもう、マクロ止めちゃったよ。

「あのねえ。あたしなんかじゃ話にならない猛者じゃない」

改めてマクロを再実行。「上書きしますか?」のポップアップがうざい。先にファイル
捨ててからやるんだった。マクロの意味ないじゃない。
でもそのとき、あたしの頭にちょっとしたひらめきがよぎった。

「もしかしてなんだけど、その読書会って、仏文系?」

初めて、彼女が驚いたような表情を浮かべる。ぽかんと開いた口が可愛らしい。しかし
……こんな読みが正解しなくたっていいのに。

「あーあーあーあー、わかった。多分わかった。だから、仕事かたづけちゃいましょ」

彼女はこくりと頷く。遠くから、パタパタと廊下を走ってくる音が聞こえた。とりあえず、
コーヒーでも飲んで、マキをいれるとしよう。


「ふへー……ここが……先輩の家……ですか……ッ」

週明け締めの作業が一段落ついたころには、街はすっかり夕暮れだった。作業お疲れ様
ということで、後輩二人をあたしの家に招くことにする。家といっても一人暮らしのマン
ションだが。虹彩認証でオートロックを解除して、管理人さんに来客用の当日パスを発見
してもらう。いちいちめんどくさいことこの上ない。

「それよりあなた、寮の門限は大丈夫なの?」
「大丈夫ですッ!会計長のお仕事を手伝いに行くって言ったら、寮母さんは二つ返事で
オーケーしてくれましたッ!外泊許可込み込みですッ!」
「ふーん。で、あなたは?」
「……うちは……母子家庭で……母は水商売です……」
「そう。でもちゃんとお母様に連絡はしておいてね?」
「……はい。メールを……」
「よろしい。時間の余裕はあるってことね」

コンプレックスの中にあるコンビニで適当にお弁当を買う。本当は馴染みのイタリアン
・レストランに行きたかったんだけど、制服の二人をつれてちゃお酒も飲めない。
部屋に行って、リビングで適当なおしゃべりをしながら晩御飯にする。どうやら最近学
校の近所にできたお好み焼き屋が美味しいらしい。その手の店には行ったことがないとい
うと、彼女ら(主に単数)は是非今度一緒にと力説した。まあ、たまにはいいだろう。暇
になったらだけど。

「……さて、おなかもおちついたところで、始めましょうか」

あたしは全員のゴミをキッチンのゴミ箱に片付けてから、おもむろに宣言する。

「へ?はッ!おおおおッ!すっかり忘れてましたッ!」
「今回の主役はあなたじゃないから」
「そそそそれは分かってますッ!」
「とりあえず、あなたは黙ってよく見てて。いい?絶対に見てるだけよ?」
「はいッ!」

「よし、じゃあそのテーブルの上に乗って。よつんばいになる。お尻をこっちに向けて」
「……?」
「いいからとっとと登る!急げ!」

司書ちゃんがおどおどしながら低いリビングテーブルの上に乗った。あたしの指示通り、
よつんばいになる。

「ショーツを脱いで」

のろのろと、司書ちゃんは上体を起こしてショーツを脱ごうとした。

「誰が起きていいって言った!よつんばいのまま!」

彼女はびくりとしたが、従順に指示に従った。なんという予想通り。若干手間取りなが
らショーツを脱いだ彼女のスカートをたくしあげる。綺麗なお尻があらわになった。

「さ、じゃあオナニーしてみよう」。

躊躇いがちに、片手が秘所に伸びる。ゆっくりと、肉芽をさすり、つまみ、陰唇を愛撫
する。あっというまに秘密の口が潤いを持ち始めた。

「なんて淫乱な子。もう濡れてるんじゃない。見られてると興奮するんでしょ」

あたしの言葉につられるように、彼女は熱い吐息を漏らした。くちゅ、くちゅと卑猥な
水音が響き始める。あっというまに彼女は一匹のメスになっていた。なんともはや。
あたしはキッチンから持ってきたタオルを片手に、彼女の背後にまわり、鉢巻をする要
領で目隠しをした。突然のことに彼女の動きがとまるが、「誰がやめていいと言った!」
と叱咤すると、嬉々として行為を続ける。

うちの系列大学の、仏文系読書サークルは、サドとマゾの集団としてもその筋では有名
だ。おそらく彼女の初めての相手は、念の入ったSだったのだろう。彼女は、責められな
いと感じないのだ。

あたしは内心でため息をつきながら、さてここからどうしたものかと考えていた。
困ったな。あたしもぶっちゃけMだしなあ。

対処に悩んでいるあたしの前で、彼女の呼吸が荒くなっていく。秘所から滴った水滴が、
太ももを伝い始めた。まあいいや。普段やられてることをやってみよう。

「そこの痴女、オナニーをやめなさい」

彼女はもう自分の世界に没入しているようで、あたしの声が聞こえていない。あるいは
わざと逆らうことで、お仕置きを期待しているのだ。あるある。あたしは彼女の耳元に顔
をよせて、そっと囁く。

「あばずれ、オナニーをやめろと言っている」

彼女は無心に自分を慰め続けている。あたしは背後にまわると、平手を振り上げて、彼
女のおしりを強く打った。彼女の背中が震える。

「や・め・ろ、と言っている!」

言いながら、もう一発。さらに一発。すこしずつ、彼女の白い綺麗なお尻が赤く染まっ
ていく。彼女は打たれることに興奮して、一層激しく自分の秘所に指を這わせた。中指と
人差し指が膣の中に入り込んでいる。
あたしはソファでことのなりゆきを呆然と見守っている水泳部の子のほうを向いて、近
くにくるように手招きする。おっかなびっくりという様子で彼女はあたしのところにやっ
てきた。今からお前はあたしの助手だ、まずはお風呂場からタオルを数本もってこいと言
ってみる。助手という言葉が気に入ったのか、彼女はバスルームにすっ飛んでいった。

その間に、あたしは司書ちゃんの身体を起こして、テーブルの上に座らせた。薄い胸が
激しく波打っている。両手が自由になったので、彼女は左手も動員して快楽を貪り始めた。
よっぽど溜まってたんだろう。
風呂場から助手が戻ってきたところで、あたしは司書ちゃんを机の上に押し倒す。ごつ
ん、と後頭部が机にぶつかった。謝る必要はない。この痛みも、彼女にとっては快楽の一
部分なのだ。
タオルを一本もらって、司書ちゃんの両足首を縛り上げる。縄で縛られるときみたいに
酔うような効果はないが、この手のM女にとっては、まずは縛られているという事実が大
事なのだ。案の定、司書ちゃんの顔が一気に高潮する。そんなに感じなくたっていいのに。
こっちのほうが恥ずかしいじゃない。
司書ちゃんの身体が僅かに痙攣し始めた。ころあいだ。あたしは彼女の両手を取って、
助手に押し付ける。淫らな液体で柔らかくなった細い指先をどうしたものか悩んだようだ
が、彼女はあたしの指示通り、司書ちゃんの両手をしっかりと押さえ込んだ。司書ちゃん
が意味をなさない声をあげて、机の上でのたうつ。

両手を押さえつけさせたまま、あたしは制服の下に手をすべりこませ、司書ちゃんのブ
ラジャーを剥ぎ取った。つんと立った乳首を、やわやわと揉む。司書ちゃんは新しい刺激
にもだえたが、今まさに達しようとしていた体はその程度では満足できない。あたしは司
書ちゃんの耳元で囁く。

「どうして欲しいの?」

司書ちゃんが、酸素を欲しがっている魚のようにパクパクと口を動かした。声になって
いない。

「どうして欲しいの、淫売子猫ちゃん?」。

言いながら、乳首を強くつねる。司書ちゃん
の身体が跳ねた。

「……せ……ほし……です……」
「聞こえない」。

あたしは乳房からそっと手を引こうとする。慌てたかのように、司書ち
ゃんが身もだえした。

「……い……いか……せ……て……ほし……いです……」
「きこえなーい」。

乳房から手を離し、彼女の秘所に顔をよせる。体液でテラテラと光る
そこは、清楚でおとなしい彼女の外見からは想像もできないくらい淫らだ。あたしは、ふ
っと息を吹きかけた。司書ちゃんの両膝がぎゅっと締まって、あたしの上体を挟み込む。

「……いかせ、て……ほしいです……っ!」
「まあまあ、なんてエッチな子なんでしょ。はしたない。あなた、もう将来は身体を売っ
て生きていくしかないんじゃない?」

一瞬、ちょっとヤバイところに踏み込んだかなと後悔したが、彼女の秘所からは透明な
液体が流れ続けている。あたしごときの稚拙な言葉責めでここまで興奮する子も珍しい。

「ふふ、じゃああたしの言うとおりにしたら、イカせてあげてもいいわ」

ガクガクと司書ちゃんが頷く。

「いまからあなたの水泳部のお友達をひん剥くから、彼女をお口でイカせてあげなさい。
そうしたら、あたしがそのあとたっぷりと楽しませてあげる」

司書ちゃんの両手を押さえていた助手は、ハッっとしたような顔をする。あたしは間髪
入れずに、「あら、だってあなた、おこぼれに預かりたいんじゃなかった?」と追い撃っ
てみる。彼女は複雑な表情を浮かべたが、「あとでご褒美をあげるから」の一言の前に屈
した。いそいそとショーツとスカートを脱ぎ棄て、机の上に乗ると、女性自身を司書ちゃ
んの顔に押し当てる。着衣顔面騎乗ですか。あんた彼氏に何を教わってるんだ。
司書ちゃんは突然の重さに驚いたようだが、そこはさすが真性のM女、すぐに重みと苦
しさが快感に変わったようだ。びっくりするくらい上手に舌を動かしている。二人の呼吸
はすぐさま甘さを増し、上に乗った彼女も目がとろんとし始めた。

ふむ。ああ、なんであたしはこんなことを思いつくかな。

だいぶいい感じに仕上がって、嬌声が漏れ始めたところで、あたしは助手の身体を背後
からひょいと抱き上げ、司書ちゃんの舌から秘所を奪い取る。二人の不満げな悲鳴が上が
った。上はともかく、下もですか。別にいいけど。
机から下ろした彼女の耳元で、囁く。「あなたも愛されてるだけじゃダメでしょ。どれ
くらい上手になったのか、見せてもらわないと。先に司書ちゃんをお口でイカせたら、ご
褒美よ。ハンディがあるのに司書ちゃんに先にイカされるような無様なことになったら、
そうね、台所にはバナナが一杯あるから、あとは一人で頑張りなさい」。
一瞬、何を言われているか分からないようだった彼女だったが、バナナの一言で事態を
飲み込んだらしい。妙なトラウマを植えつけちゃったかな。いやまあ、あれはトラウマっ
ても不思議じゃないけど。
彼女は司書ちゃんの上にもう一度跨ると、今度は司書ちゃんの両足の間に顔を埋めた。
突然の快感に、狂ったようにもがいている司書ちゃんの両手を取ると、頭の上で拘束する。

「さあ、頑張りなさい。先にイカされちゃったほうが、一晩寂しい思いをすることになる
わ」

二人は、テーブルの上で愛のダンスを踊った。なんとなくなめくじの交尾や、蛇の交尾
を思い出す。同じ動物なんだから、類似点があったとしても不思議ではないだろう。

あたしはキッチンに行って、冷蔵庫にしまっておいた抜栓済みの赤をグラスにとり、一
息であおった。その足でバスルームに行き、たっぷりと時間をかけてシャワーを浴びる。
どっちが先に絶頂を迎えるかなんて、どうでもいいことだ。どうせ二人とも、お互いを楽
しませ続けるんだから。
シャワーを終え、ワインのボトルとグラスを片手にリビングに戻ってみると、二人は息
も絶え絶えになっていた。が、お互いにまだまだ頑張るようだ。あたしはソファに腰掛け
て、若さっていいなあとか思いつつ、二人の情事を肴にワインを楽しんだ。

「先輩ッ!おはようございますッ!コーヒー買ってきましたッ!」

あいかわらず彼女は元気がいい。月曜は司書ちゃんは図書委員会の業務でお休みなので、
あたしは普段の倍の仕事をこなさなくてはならない。眠い目をこすってアサイチで登校し
たのも、それが理由だ。もっとも、この子は朝練でもっと早くから動いてるんだけど。

「おはよう。ありがと、気が効くね。はい、お金」
「あの……それで、あの子、大丈夫なんでしょうかッ!あんなことで、ちゃんとイケる
ようになるんですかッ?」

朝からシモの話題か。若者は元気だね。

「彼女はね、自分がMっていう自覚がなかったから、その自覚をさせてあげれば大丈夫。
もっとも、彼氏のほうが引いちゃって破局ってこともあり得るけど。でもそうなったらな
ったで、趣味のあう相手を探せばいいだけのこと。あの子ならいくらでも相手はいるでし
ょうし」
「えむ……?」
「縛られたり叩かれたりすると興奮するタイプってこと」
「あ、ああッ、納得です!理解です!さすが先輩ッ!」
「さすがでもなんでもないから、もうこういう話を持ってこないで」
「えーッ。だって、ほら、人助けじゃないですかッ!共存共栄は我が校のモットーでッ!」

言葉の意味を広く捉えすぎだ。

「そ、それはそうと、あの、ふつつかな質問なんですがッ」
「何?」
「あの、ああああたしで、良かったんでしょうかッ。その、もっと、経験豊富で、百戦錬
磨な感じの、っていうか、男子とかのほうが良かったんじゃッ」
「それじゃ浮気じゃない」
「いいいいいやッ、その、女子同士だから浮気じゃないっていうのは、なんだか違う気が
しますッ!」
「まったく。わかった、説明してあげる。
いい?女の子同士のエッチは、俗に『百合』って呼ばれるの。やってることはノーマ
ルなセックスと基本的に一緒で、棹があるかないか程度ね。結果が残るか残らないかって
いう違いもあるけど。
ところが、ノーマルなセックスを描いた作品に比べて、百合はなぜか受けが悪いの。即
エロの連作を書いてたときに気づいたんだけど、百合にしたとたんに何をどうやってもア
クセスが伸びないのよ。もちろん書き手がヘタクソだっていう前提はあるけど、でも同じ
下手さで書いてるのに、テーマによってアクセスの差が出るのよね。
そこで考えたのは、百合はある一定の興奮を読者に与えることはできても、実用性に到
達するには微妙に足りないんじゃないかってこと。もちろんなかには百合のほうが興奮す
るっていう人もいるんだろうけど。
ということは、『イキたいのにイケない』を読者にも体験させるためには、もしかした
ら百合っていうのは一つの手法なのかもしれない、そう考えたの。描写にも、徹底して棹
を思わせるものを持ち込まない。バナナなんかは典型。棹の隠喩ではあるけど、フィニッ
シュ感覚がゼロ。
ちなみにね、SM調教で道具責めの作品も、やっぱり微妙にヒットが少なくなってたわ。
男が達するシーンがないのが原因だと思う。だからきっと、これもうまくやれば『イキた
いのにイケない』を共有させる装置に使えそうね。
……分かった?」

「全 然 わ か り ま せ ん」

「仕方ないじゃない。だって保守だもん」






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