忘れなければいけなかった小さな炎
シチュエーション


(まずったなぁ・・・)

手足を拘束され、天井から吊られ、まとっていた服は既にその役目を果たせぬ程に引き裂かれ、
体のあちこちには鞭による裂傷ができている。
私が今置かれているこの状況は、私のちょっとしたポカによってもたらされたものだった。
潜入先で私のような職業の人間が捕縛されれば、後はどうなるかは誰にでもわかる。
つい先ほどまで、私は鞭と塩による拷問を受けていた所だった。
鞭で肌を傷つけ、その傷に塩を刷り込む。単純だが効果的な拷問法だ。

(ま、もう少し耐えてれば、あいつらが来てくれるわよね)

既に仲間にはここで情報を掴んだ事を知らせている。
程なくして彼らはここにやってきて、情報の詰まった私という記憶媒体を運び出してくれるだろう。
それまで耐えていればいい。先の拷問にしても、訓練によって痛みを克服している私にとっては
どうという事の無い拷問だった。獄吏があまりにお定まりの台詞を吐くので、笑いをこらえるのに苦労した程だ。
おそらく奴らは拷問の方法を変えてくるだろう。痛みでは効果が無い事は、先の拷問で理解したはずだ。
となると、続いて行われるであろう拷問は――

「…まったく、ホントに定石通りなのね」

薄ら笑いを浮かべながらの呟きが耳に入ったか、牢に入ってきた獄吏は鷲のような目つきで私を睨みつける。
その手に握られているのは、ギャグボールと何らかの液体が入った小瓶、それに男性器を模した性玩具だ。
小瓶の中身は、催淫作用がある液体で、それを塗られた女は秘所に何かを入れておかなければ狂ってしまう程に
性に貪欲になり……そして焦らされた後、快楽と引き換えに情報を洗いざらい吐かされる――まさに定番だ。
だが、そういった拷問に対してすらも、私は訓練を受けていた。快楽に溺れない自信は十分にあったし、
少なくとも仲間たちが救出に来るまでの間、耐え続けるだけの忍耐力は磨いている。

(だから大丈夫……むしろ、楽しませてもらいたいわね)

そんな私の推測と余裕は、次の瞬間に大きく崩れる事になる。

「おい、入って来い」

獄吏の冷たい声が響くと、『ソレ』が牢の中へと入ってきたのだ。
『ソレ』は『ソレ』としか言いようが無い姿をしていた。人……なのだろうか?

余すところ無く体毛に覆われた巨躯。軽く二メートル半はありそうだ。
人というより……猿。ゴリラの類に近い姿をしているように見える。
そして、それは何かを引きずっていた。

「…………!」

こちらは、まごうことなき人。女だ。『ソレ』に引きずられている彼女の目には光は無く、
『ソレ』の為すがままにされている。……『ソレ』に犯され、壊されでもしたのだろうか。
そして、私も同じような目に遭わせるつもりなのだろうか。

(……フンッ!私は壊される事は無いわよ!)

『ソレ』のモノは、晒されるがままにされてあった為、私もそれを見る事ができた。
確かに、その体にあつらえたかのように、大きく太いモノだ。だが、この程度のモノ、
私は何度も味わってきている。そしてそれで壊された事は一度も無い。
『ソレ』の異様さに一瞬動揺した私だったが、それを確認する頃には、既に冷静さを取り戻していた。
『ソレ』のモノで前を犯し、ディルドーで後ろを犯す。なんだ、その程度か、と私は落胆すらした。
その程度でどうにかなる私では――

「はぅ…はふぅ…」

――喘ぎが聞こえた。源は、『ソレ』によって連れてこられた女。
彼女は、『ソレ』のモノに這うように近づき、ほお擦りをしながら喘いでいる。

(…………?)

さらに、モノを顎をいっぱいに広げて頬張り、喉まで使って扱き始めた。フェラチオである。

(……何をしているの、こいつらは?私を拷問するんじゃないの?)

そんな私の戸惑いを知ってか知らずか、獄吏は笑みを浮かべながら私の口にギャグボールを嵌めた。
私は呆然としたままそれを受け入れてしまった。

ピチャ……チュプ…

淫靡な音が響く。女の口から分泌される唾液と、『ソレ』のモノから出る先走りの汁がたてる音。
やがて、『ソレ』は彼女の頭を掴み、後頭部まで突き通さんばかりの勢いで腰を振り出した。

ビュクゥゥゥ…ドュルルルル

射精の音とはとても思えない異様な音とともに、モノから白濁が発射された。

「うげほぉぉっ!げは、げほぉ、げほっ!」

とても口に収まる量ではない。彼女はモノごと白濁を吐き出し、咳き込んだ。胃の内容物まで吐き出しかねない勢いで。

(……何なの?何がやりたいの?)

獄吏はニヤニヤしている。嫌がらせか?

これを見せて、一体何をどうしようというのだ?まったく私にはわからなかった。

「はぁ……あはぅ……」

女はひとしきり咳き込んだ後、再び『ソレ』に寄り添っていった。全身を白濁に汚されている
というのに、嫌な顔一つしていない。……むしろ、喜色すら、その表情にはある。
元々整った容貌なのだろう。やつれてはいるが、彼女のそんな姿はとても淫靡で、美しい――そう私は思った。
『ソレ』はそんな彼女の腰を掴み上げ、

「あはぁああああああああ!!」

一気に自分のモノへと落としこんだ。

「はぁ…はぁ…あは…ふあ……ひぃ…あはぁ」

一突きの度に、彼女の口からは喘ぎが溢れ、涎が飛ぶ。
『ソレ』の巨根をパックリとくわえ込んでいる秘所は、愛液とモノの先走りで
既にグショグショになっている。

「ひゃうん…はぁ…うふぅぁ……ああ、あああぁぁあ、ぁあぁああ!!」

『ソレ』の巨腕が彼女の胸をこね回す。彼女の体は桜色に染まり、その緊張が頂の接近を知らせる。
『ソレ』のピストン運動が速度を上げ、彼女を突き上げていく――

「ッ――――――――――――!!!!!」

声にならない声をあげ、弓なりに体を反らし、彼女は絶頂に達した。同時に『ソレ』も彼女の中に注ぎ込む

デュルルルッル…ビュル…ジュブリリュリュルル

一度出した後にも関わらず、先に倍する量の白濁が、彼女の中から溢れ出た。

(………………………………………………)

私の視線は、一連の行為に釘付けになっていた。
理解不能な――狂った女と、獣の交合。

「……気に入ったか?」

獄吏が何か言ったような気がした。だが、私の全神経はその狂宴に注がれていて、
その声は頭の中に入ってこない。

「これから、お前にはずっとこれを見続けてもらう。どんな意味があるのかは、その内わかるさ」

獄吏の声をどこか遠くに聞きながら――私は――私は――私は――
消し去ったはずの
消え去っていたはずの
忘れたいと思っていた
忘れなければいけなかった小さな炎が――
――再び体の中に灯るのを、感じていた。

最早声すら挙げられない程に疲弊しきった女。
声にならない声すらも、その喉からは漏れない。
だが、体だけは、絶頂に至った証を残さんばかりに震え、跳ねていた。
あれから、彼女は一体何度絶頂を極めたのだろうか。
少なくとも、十よりは多いはずだ。十までは数えていたから。
もとより数えてどうなるというものでもない事に気づき、
そこからは数えていない。
『ソレ』はその体躯に見合った体力と、逸物に見合った精力とを兼ね合わせているようだった。
数え切れぬ――数えていなかったのだから、この表現は正確にはあてはまらないが――程の
吐精にも、その逸物は萎える事はなく、腰の動きは衰える事がない。

女の瞳は既に何も映していない。
対面するように『ソレ』に抱きかかえられ、まるで自慰の補助具のように上下に揺さぶられる姿は、
頂へと至った痙攣がなければ、性玩人形と見間違えてもおかしくない程に生気を失くしていた。
興奮に赤く染まっていた肌は、今はもう青すら思わせる程に白く、揺れる体に合わせて首は張子の虎のように振れる。

「…………っ………………」

――汗が、頬を滑り落ちる。私の頬を。

「…………はぁ……っ……」

――吐息が漏れ出る。私の口から。

「どうだ?そろそろ仲間の事を吐いたらどうだ?」
「……な、なんで吐かなきゃいけないの?全然、平気、なのに、さ…………」

嘘だ。
平気ではない、最早平静を装うのが精一杯であるのは、誰よりも私自身がよくわかっている。

――正直な話、舐めていた。
性的な拷問の訓練を受けている自分だからこそ、この拷問は……いや、この"焦らし"は、効果を示していた。
純真無垢な乙女や、大して経験のない少女であれば、ここまでこの"焦らし"が効果を示す事はなかっただろう。
性を知り、知り尽くし、それに耐える為に行為を重ねたが故にこそ、私は――

「その割には余裕が無さそうだが?」

余裕たっぷりと言った様子で、獄吏が私の言葉を嘲笑う。

――知は未知に対する想像を喚起する。
人間が暗闇を恐れるのは、想像するが故だ。人が他者への奉仕を是とできるのは、想像するが故だ。
元の知識が深ければ深い程、その知に無い未知に対して、人は想像する。
そして、その想像が、情動を招く。
恐怖。喜び。そして――期待。

「吐かなければ、いつまでもこのままだ――永遠にな。『ソレ』はそういう風に作ってある。女の予備もまだある」

期待。そうだ。想像して、期待している。

(――私は、期待している――)

もう、それを認めざるをえない。
『ソレ』の、常人ではありえない、長大な逸物に。
『ソレ』の、常人ではありえない、絶大な精力に。
私は――期待してしまっているのだ。

「…………はぁ…………はぁ…………」

『ソレ』に突かれているのが私だったら。
声すら挙げられぬまでに突き続けられているのが私だったら。
性玩人形の如く揺れ、時折思い出したかのように震えるあの姿が、私のものだったら――
今まで感じた事の無い快楽が、快感が、至った事の無い絶頂が、そこには、ある――
想像が……想像という名の火種が、私の中に炎を付け――最早その炎は燃え盛っている。

「快感を制する事を学んだ結果、溺れる事がなくなった……それが、隙だ」

……獄吏が言う、その通りだ……。
私は今、ずっとずっと昔、生娘でなくなってから僅かな間しか許されなかった、快楽の海への身投げを望んでいる。
溺れる事ができると、そう思ってしまったのだ。
『ソレ』の、人では有り得ない、人ではないが故に有り得る、性の暴力の前に。

「――――――――――――あがっげふぉがふぅぉぉっ!!??」

その時、突如として声を挙げられなかったはずの女の口から、声が漏れた。
いや、声というには程遠い。
それは――断末魔、だ。
ひときわ大きく跳ね、震え――そして、女は動かなくなった。
呼吸の度に僅かに動いていた胸も、絶頂の度に震えていた体も、まったく動かなくなった。
本当の性玩人形に、成り果てた。

だが――

その顔は喜色に満ちていた。

「おやおや、終わってしまったか」

獄吏の声が響く。
しばし性玩人形を弄んでいた『ソレ』は、やがて人間だったものが人形となった事を知ったのか、無造作に放り捨てた。

「代わりを用意しないとな……それとも……」

獄吏が、戒められた私を見た。

「代わりを、やるか?」

喜びを顔に出しそうになったのを、僅かに残った理性の力で抑え込む。

「だ、誰が……こんな、けだものの相手なん、か……」
「そうか」

獄吏はさほど残念がるでもなく、こちらに歩み寄ろうとしていた『ソレ』の前に手をかざした。

「待て。しばらくおあずけだ」

獄吏の命令は絶対なのか、『ソレ』は止まり、微動だにしなくなった。

「……じゃあ、しばらく普通の拷問でもしようか」

獄吏は、笑って擬似根を手に取り――

「い……はっ!?」

無造作に、私のソコに突き入れた。

擬似根というくらいだから、それは男性のそれを模している。
――普通の男性の、それを。

「んっ……くっ……」

………………。
………………………………。
…………………………………………………………。
……駄目だ。

「あっ、はぅ……」

ぐりぐりとかき回されても、最奥まで突き込まれても、私の体に悦びは生じない。

「性的な拷問の基本は、苦痛ではなく快楽を与える事にある」
「ん……も……」

……もっと、太いのを。
その言葉が口をついて出ようとするのを、意志力を最大限に動員して防ぐ。

「苦痛に耐える事は訓練できても、快楽に耐える事は訓練がしにくい故に、だ」

だが、意志が口に回った分、他の部分は疎かになる。
何とかそらそうとしていた視線が、知らず『ソレ』へと向かう。
当然『ソレ』の有り得ない逸物が、視界の中に入る。

「んっ……!」

想像が、私の体を貫く擬似根を、より太く、より固いものへと変える。
それまで突き入れられながらも微動だにしていなかった私の体は、大きく跳ねた。

「んはっ!いっ……いやぁ……!」
「だが、しにくいだけで、快楽に対する備えも不可能というわけではない。危険ではあるがな」

獄吏の解説の、その通りだ。快楽に耐える訓練とは、一歩間違えばそれに溺れてしまう事に繋がる。

「だから、それに備える者は少ない。だが、少ないながら、存在しない事は無い」

苦痛は痛みであり、忌避されるものである故に、それに溺れる者は少ない。
だが、快楽は違う。快楽とは、誰もが進んで享受したがる――いわば、麻薬。

「や……やめて……」

体を捻りながら、私は頭を振った。耳を塞ぎたい。
だが、拘束された腕では、それは叶わない。

「だが、痛みと違い、快楽に果ては無い」

想像の中で太くなった擬似根は、だが、それでも足りない。

「やっ、あは……っ……んっ……くぁう!」

じわじわとした快楽だけが与えられる。頂へと突き上げられるような強さが無い。

「快楽に果てが無いとすれば、備えた快楽と比べるべくもない、途方も無く強大な快楽を与えられれば――」

そうだ。与えられれば――そうされてしまえば――
獄吏の言葉が、しみこむように私の中へと広がっていく。
火種は、最早炎となって燃え盛っていた。それを抑える理性という名の清流も、最早枯れた。
そして、獄吏は私に訊いた。

「――さて、どうするんだ?」

私は、頷いた。否応も無く。

「――どうするんだ?」
「してっ!」

私は言った。叫ぶように。

「――何を?」
「もう、駄目なのっ!イキたいのっ!溺れたいのっ!真っ白になりたいのっ!」

私は吠えた。涙すら、流しながら。

決壊。

私を守っていた、形作っていた、私という名の殻は、私の中から生まれ出た炎に燃やし尽くされ、
溢れ出る欲望という名の汚濁した水をせき止めきれず――破れた。

「ふっ」

獄吏が、嘲りの笑みと共に指を鳴らす。
私を捕らえていた拘束が外れ、私は尻から大地に落ちた。

「やれ」

体勢を整える間もなく、『ソレ』が――私が待ち望んだ『ソレ』がやってきて――

「いぎぃぃぃゃあぁあああああああ!!!!????」

無造作に、逸物を私の密壷へと突き入れた。

期待していた、待ち望んでいた、有り得ない“モノ”。
だが、それが先ず私の体に与えたのは、想像していたような快感ではなかった。
『ソレ』は、私の痴態を前にお預けを喰らった事で興奮していたのか、“モノ”を先の女の中にあった時と比して、
より以上に大きくしていたのだ。
有り得ないはずの“モノ”が、さらに有り得ない大きさとなり、私の中にやってきた。

「いぎっ……ぐ……かはっ……」
「おやおや……少々小さかったか?」

メリメリと、耳にすら届く音。
あまりに大きな“モノ”に、私の密壷は耐え切れず――

「ぐがっぁああ!!!??」

――裂けた。

いたい。いたい、いたい、いたい、痛いいたいたいたいたいたいたいたぁああああ!!!!

満足に声を挙げる事すらできず、外に吐き出せない叫びが脳内を駆け巡る。

「まるで初めてのような、赤だな」

鮮血が、獄吏の嘲りの声が告げるように、初めての、破瓜の血の如き鮮血が、秘所からしたたる。
言うまでも無い。密壷に出来た裂傷からの出血だ。

「がっ……く……あっ……」

ここに来て与えられた、痛み。まったくの無防備だった。心も。体も。

「っぁ……あがはっ……んぐ……ぁっ……」
「止まれ」
「はっ……かっ……はぁ……はぁ……はぁ……」

獄吏の命令に応じ、『ソレ』は腰を突き入れる動作を止める。
無防備だった体の……心の中に、“モノ”が刺さったまま。

「……まだ痛むか?」

獄吏が問う。言葉通りにとれば、それは気遣いだ。
だが違う。それが……その言葉が気遣いなどであろうはずが無い。
獄吏は知っているのだ。
ここに来ての痛みが、一体私の体に何をもたらすのかを。
散々に焦らされた。その中で想像していた、計算していた、来るものとばかり思っていた快楽。
それに対する裏切りが、痛みという予想外の攻撃が、私をどうしてしまうのかを。

――痛みは、本能をより一層強く呼び起こした。呼び起こしてしまった。

「……あっ」

痛みを訴える声にならない声ではない。
僅か、ほんの僅かだが、艶を含んだ喘ぎ声。

「……ふっ」

獄吏の唇が、歪む。

「……いやっ……な、に……」

痛みはある。密壷からは、変わらず鮮血がしたたり落ち、『ソレ』の鼓動にあわせるかのように、
ズキズキとした痛みを感じる。――感じている、はずなのに?

「あっ……んっ……」

痛みと同時に、私はもどかしさを感じていた。

「……いやっ!」

違う。そんなはずは無い。そんなはずは……そんなはずはない!

もっと、痛くして欲しい、なんて!

痛みの快楽へのすり替え。
それは痛みから逃れる為の、人が備えている本能的な機能だ。
SMに快楽を感じる人間の多くは、この機能を利用する事で、痛みを快楽へと変換している。
今の私の体に起こってしまっているのは、つまりはそれだった。

「……動け」
「ひぁっ!?」

獄吏の命に、『ソレ』は腰を無造作に引き、

「ふぁっぁっ!!」

突き入れる。
引き出され、突き入れられ、その度に体が感じているのは苦痛。股の間に走る鮮烈な痛みは相変わらずだ。
だが、私の口から漏れ出たのは、まごう事無き――喘ぎだった。

「あっ、はっ、ふぁっ、んっ、んっ、いぁあっ!」

唇をゆがめた獄吏の顔が、視界の隅で揺れた。

痛みに耐える訓練はした。
快楽に耐える訓練はした。

だが――痛みが快楽に感じられるなんて――

「私の座右の銘は……念には念を入れる、でね」

獄吏が拷問具を手に取る。ありふれた鞭。
本来の私にとっては鼻で笑って終わりの、ありきたりな責め具。

「快楽の限界を突破した上で、強い痛みをそれに加える」

『ソレ』のピストン運動は続く。

「あっ、あっ、うんっ……ふぁっ」
「すると、痛みが快楽へと脳内で変換されるようになる……今の君のように」

股間に感じる鈍痛は、最早快楽以外の何物でもない。

「痛みと快楽――どちらに対する備えも、最早無効、というわけだ」

鞭が振り上げられ――振り下ろされる。

「んぁああっ!」

乾いた音と共に、私の背に赤い痕が生じ、私の体が跳ねる。

「んっ……くぁっ、ふっ、ああっ!?」

股間の律動は止まらない。突き上げられる度に、私の口からは甘い声が漏れ、そしてそれは
どんどん高く、淫靡な音へと変質していく。
そこに加えて、またしても鞭が

「あくぁあっ!あっあっああっ、あんうぁああ!?」

股間の鈍痛と背中の疝痛。
一足飛びに、私は駆け上がって行った。
待ち望んだ――待ち望まされてしまった、快感の頂への道を。

「……そろそろか?じゃあ、トドメだな」

獄吏の呟きが意味する所が、一体何なのか。
白くなりつつある頭では理解できなかった。理解できた所で、どうしようもなかった。

「ほらよ」
「いぎぃぃいひはぁああああぐっぅうう!!????」

普通なら。

普通ならなんて事はなかったのだろう。
そちらの方も私は開発され尽くしているのだから。

だが。

だが――前に『ソレ』の剛直を飲み込んでいる状態だ。
……後ろの穴に……余裕などなかった。
そして、その痛みが――痛みが変換された快楽が――トドメになった。

「ぐあっ……あっあぁあああああっぁ」

一気に駆け上り、『ソレ』の剛直を飲み込んだ膣が、ただでさえ狭いそこが、剛直をさらに絞め付ける。

「いやぁああいやぁいやいやいやぁああああ!!!!!」

最早叫ぶ事しかできない。
『ソレ』も私の頂への到達が迫っている事を察知したのか、ピストンのスピードを加速させる。
さらに後ろの穴も、獄吏が片手で持った極太の擬似根でえぐられ、あいた手は鞭を背中に乱打する。
その痛みが、快楽が、何もかもが――真っ白に融けて、消えていく。

「いっ……くぅぅぅぅぅうううううううううううううううううううううううううう!!!!!!」

プシャァァアアアと音を立てながら、私の股間は塩を吹いた。
白目を剥きながら、私の口はとめどなく涎と絶叫を垂れ流した。
全身を、余すところなく快楽の中に浸しながら――私は溺れた。
絶頂という名の、痙攣によって彩られた、性の洪水に。

もう……戻れない、波の中に。




「ふっ……はは……ははははははっ!」

獄吏は、笑った。
彼は一月と持たずにボロ雑巾のように使い潰されるであろう女の運命を知っている。
だから、笑った。
彼女の"幸せ"を、祝福するように。
あるいは、皮肉るように。






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