その日常は
シチュエーション


「うわ〜っ!なんだこれ!?」

部屋の中から弟の悲鳴が聞こえる。
ふふ、慌ててる慌ててる。上手くいったわ。

私はドアを開けて部屋に入った。

「でかい声出してどうしたの?」
「明菜(あきな)?何勝手に人の部屋に入って来てんだよ」
「姉を呼び捨てにするな」
「うっせー」

なんて態度。
このクソ弟、敬久(ゆきひさ)は姉たる私に微塵も敬意をはらわない不届き者だ。
いつも何かと扱き下ろし私を見下す態度がいちいち鼻につく。
確かにスポーツ万能で勉強も出来たわよ。私と違って。
だからって、私は姉なんだよ?
少しくらいは敬うのが常識じゃないの?
今だって完全に私の事を見下しているのがありありと感じる。
でもそこまでよ、いまからその辺をきっちり解からせてやるわ。

「あら?敬久、その赤いのは何かしら?」
「いや、分んねえよ」

わざとらしくズボンからにじむ血を指摘してやった。
ふふ、敬久の奴、動揺してるわ。

「あらま、シーツまで汚れてるわね」
「だから分んねえって」

まあ、理解出来ないでしょうね。
男のあんたが『生理』になってるなんてね。

「うふふふ」
「何がおかしいんだよ?こっちは困ってんだぞ」

おお、ムキになっちゃって。
分んないなら教えてあげるわよ。

「あんた、それは生理よ」
「生理!? んな訳あるかっ」
「それがあるのよね。だってあんたは今、私になってるんだから」
「は?何言ってんだ?頭おかしいだろ?」

ま、簡単には理解できないか。

「正確にはあんたと私の立場が交換されたのよ。この『移し替えの首飾り』によってね」

私はこれ見汚しに身につけているネックレスを見せてやる。

「うゎ、なんだよそれ、お前は何時から電波になったんだよ?」

まだ信じてないの?物的証拠もあるのに。

「ふっ、愚弟を持つと苦労するわね。
だったら敬久の股から出てるその経血はどう説明するの?」
「だから知らねえって」
「お腹が痛くて腰もだるいでしょ?それが生理の感覚なのよ。
だいいちお股を経血で汚しておいて知らないも何もないじゃない」

敬久の目が泳いでるわ。焦ってる時の表情ね。
ふふ、うろたえてるわ。

「いい?あんたが信じ無かろうがどうだろうが生理になってるのは事実なのよ?」
「俺が生理?」

今度は血の気の引いた顔をしているわ。
楽しいわ。私の完全優位ね。

「そうよ。敬久ちゃんは私の代わりに女の子の日を迎えたのよ」
「だからなんでだよ?」

ふふふ、もっとうろたえるといいわ。

「ああ、でも敬久じゃ何だからユキちゃんって呼んであげよっか?女の子なんだし」
「うるせえよ、いいから答えろよ」

うわ、可愛くない。
これはもっとお仕置きが必要ね。

「あら、女の子がそんな言葉使いはいけないわ。
教えて下さいお姉さまでしょ?『ユ・キ・ちゃ・ん』」
「ふざけんな!」

うわっ!つかみ掛ってきた!?
なに?私に手をあげるつもり?
いくら生意気だからって腕力に訴えようとする奴だったとは私も初めて知ったわ。

「ふん、私に暴力振るうつもり?あんた最低ね」
「お前が悪いんだろうが!」

凄んでくるけどお生憎さま。
怖くは無いのよ。なぜなら

「えいっ!」
「うぉぁっ!」

私は逆に敬久をベッドへ投げ飛ばしてやった。

「言ったでしょ?私とあんたの立場が入れ替わってるって。
腕力だって入れ替わってるのよ」

敬久の奴、驚いて声も出ないようね。
いい気味だわ。

「いい?あんたは今この『移し替えの首飾り』によって私と立場が入れ替わってるの。
だからあんたは今、私の代わりに生理になって体力も含め身体機能も全部私になってるのよ」
「ほんとなんなんだよ、それは!」

情けない顔。
ようやく事態が解かってきたようね。

「これは、おまじないのアイテム。あんたの首にもかかってるわよ」
「なに? くそっ 外れねえ」

外そうとしたって無駄。
強制的におまじないを解除するには、対応する解呪の鍵か倍の呪力が必要なんだから。
焦ってネックレスを外そうと慌てふためく姿が間抜けだわ。

「あははは、カッコわるー、無様ね」
「ちくしょう!何だか知らねえけど戻しやがれ!」

叫んだってどうにもならないわよ。
それに、そろそろ限界が来るはず。

「うっ、なんだ、気持ち悪い…」
「それは、あんなに急に動いたり叫んだりしたりすればねぇ」
「頭が、痛い、めまいも…。…これも生理の…せい、…ハァ、…だってか?…ハァ…」

ふふふ、それは生理のせいだけじゃないわよ。
きっともう、立ち上がって歩くのも辛いはずだわ。

「吐き気もするでしょ?」
「…う、あ、…ハァ、ハァ……」
「なぁに?返事も出来ない?」

実は入れ替わる前の夜に思いっきりキツイお酒で深酒したのよね。
確実に二日酔いになる勢いでね。
それもまとめて敬久に代わらさっているはずだから、今頃はかなりよ。
教えてあげないけど。

「ほんと情けないわね、普段人の事馬鹿にするくせに、私は生理でもいつも普通に生活してるのよ」

ああ、優越感。
今日1日、苦しむと良いわ。

「まあ、所詮あんたは根性無しのヘタレってことね。
いいわよ寝込んでなさいな。あんたの会社には連絡入れていてあげるから、
『ユキちゃんは生理が重たくて仕事に出れません』ってね、あははは」

敬久の奴、悔しそうに顔を歪めてるけど、全然動けないみたいね。
それとも苦しいのかしら?
ま、どっちでも良いけど。

「さて、あんた何時までもその経血で汚れたの着てるのもあれでしょ?
ここは優しいお姉さまが着替えさせてあげるわ」
「…う、ゃぅ……」

私がズボンに手を掛けると弱々しく敬久が抵抗しようとする。
全く抵抗になんてなって無いけどね。

「うわ、経血で真っ赤ね。これちゃんとしないと後でもっと臭うわよ」

ズボンとトランクスを脱がしてやると敬久の情けなく縮こまったペニスが出てきた。
まあ、女の立場になってる今は絶対そそり立つなんて事無いんだけど。
良く見ると嚢の下あたりが経血まみれになってる。

「今でも充分あんたのココ、女の子の日の臭いが凄いのにね」
「…ぁぅ……」

返事は出来なくても、ちゃんと聞えているようね。

「一回洗った方が良いけど面倒だから、着替えだけさせてあげるわ。
ほら、生理の時に使うサニタリショーツよ。あんたトランクスしか持ってないでしょ?
それじゃナプキン使えないからね。
まあ、使い古しで汚れとれないから捨てるやつだったんだけど、あんたには充分よね」
「やぁ、ぁ、めぇ、ぇ…」

私がナプキンを取り付けたサニタリショーツを穿かせようとしたら、
敬久の奴頑張ってさっきよりも抵抗しようとした。
でも、今のあんたんなんて抑え込むのは簡単よ。

両足をつかんでやると暫らくして苦しくなったのか、動かなくなった。

「ほら、穿けた」

そのタイミングを見てサニタリショーツを穿かせてしまう。
うわぁ、変にもり上がっててなんか変態よね。

「さて、次はパジャマも取り替えてあげるわね」

そこで私が取り出したのは、私が高校の頃に着ていたリボンが可愛い白ネコのキャラクターパジャマだ。
敬久が散々ガキっぽいだの何だのって馬鹿にしてくれたけど、私のお気に入りのだったもの。
お気にいり過ぎて洗濯も繰り返したからすっかり色あせちゃって毛玉も出来て、
これも捨てるはずだったんだけど奥にしまったままだったのよね。

「ほら、お姉さまのお下がりよ」

もう抵抗する力も使い果たしたみたいで、私のされるがままだ。
下をはかせると上のシャツもはぎ取る様に脱がせてやり、サービスでキャミも着せてやる。
このキャミは使い古しも良いところで肩ひもが取れそうになっていて、ごみ箱行きの代物だ。
カップ付きの奴だからブラ男見たいになってるのがまた笑える。

後はパジャマの上を着させボタンをあえて上まできっちり留めてやる。
完全女装男の完成ね。

「ユキちゃんにとっても良く似合ってるわ」

鏡で自分の姿を見せてやれないのが残念だわ。
色あせてクタクタになったピンクのパジャマ姿な敬久って笑えるもの。
自分が馬鹿にしていたパジャマを着てるなんて、なんて間抜けなのかしら。

「さてさて、後はユキちゃんは良くなるまで寝てなさいな。
替えナプキンと生理痛薬を置いてってあげるから、後は自分で何とかしなさいね」

「はっ、あっ、…ハァハァ……」

なんか言いたいみたいだけど、全然しゃべれないみたいね。
苦悶の顔で文句ありげにこっち見てるわ。
でも、後は本当に知らない。
まだ、私にはすることあるからね。
私はニヤリと我ながら悪い笑い顔をして敬久の部屋を後にした。

上手く事が行けば明日が楽しみね。
敬久の奴どうなっちゃうのかしら?

「ふふふ、あははは」

あ〜想像すると笑いが止まらないわ。

そうそう、生理痛薬は二日酔いの時は飲まない方が良いわよ。
余計に症状酷くなるから。
教えてあげないけど。

△ ▼ △ ▼ △ ▼


「うっ、朝か」

俺は目を覚ました。
良く解からないが夢で明菜の奴に酷い目にあわされた様な気がする。
生理にされて一日中苦しめられた。
もう何ともないが、変な夢だ。

「いや、違う!夢じゃねえ」

あそこまではっきりとして鮮烈な夢があるか。
生理にさせられて、女物のパンツ穿かされたりした上に一番ひどいのは、
生理痛薬だとか言って置いてったあの薬だ。
服用して暫らくしたら頭痛が悪化して、しかも心臓まで苦しくなったぞ。
あのくそ女、騙しやがって。

「一発ヤキ入れてやる」

俺はベッドから起き上がったんだが、なんか変だ。
この部屋って明菜の部屋じゃねえか?
そう言えば今着てるパジャマもどう見ても女物だ。
あいつに着させられたパジャマは何とか着替えたんだが、どうしてまたこんなものを?

「あいつ、またなんかしやがったな!」

俺は急いで起き上がると、明菜を探す。
この部屋にはいない。
居間や和室探したが見当たらない。
もしやと思い俺の部屋へ行くと俺のベッドに寝てやがった。

「おい、何人のベッドで寝てんだ」
「何よ〜?」

明菜の奴はのそのそと起き出した。
俺のベッドで寝てただけじゃなく、パジャマまで俺のを着てやがる。

「何やってんだよ、お前は」
「はえ?あ〜、入れ替わり戻ったのね〜」

完全に寝ぼけてやがる。
いま文句を言った所でまともに聞きやしねえだろうな。

「ちっ、いいからとっとと出てけ」
「何よ、反省してないの〜」

反省するのはお前の方だろうが、まったく明菜の分際で。
俺は明菜の手をつかむと強引にベッドから立ち上がらせドアの外に押しやる。

「ちょっと、痛いってば」
「うるせえ、後で文句言ってやるからおぼえてろ」

明菜を部屋から追いやる時、なんか最後にやたら企んだ様な陰険な顔してやがったが気にしてられるか。
昨日会社休んじまったから、今日は取り合えず早めに出社しておかないと。
俺は着替える為に乱暴にパジャマを脱ぐ。

「なんだ?下着まで女物かよ!あのくそ女め」

本当にどこまでコケにすれば気が済むんだ。
イラつきながらも、俺はスーツに着替え朝飯もそこそこに通勤に出た。

「おはようございます部長、昨日はすいませんでした」

会社につくなり俺はまず部長に昨日の欠勤の事を謝る。
部長は誰よりも出社が早い。

「まあ、なんだその。いろいろ大変かとは思うが頑張りたまえ」
「はい、有難う御座います」

何か部長の歯切れが悪いが、どうしたんだろうか?

「ところで今日は普通に背広で来たんだな。無理せずとも好きな格好で来て良いんだぞ?
急な事で戸惑ったがお前の事は会社で認める事になったんだからな」
「はあ?」

部長は何を言ってるんだ?

「おはよう。篠崎君…、じゃなくて篠崎さんね」
「あ、おはようございます袖原さん」

訝しむ俺に声を掛けてきたのは、袖原樹理(そではら じゅり)だった。
そこそこの大学を出ていて仕事もできる様だが、所詮は大きな出世に縁のない一般職。
まあ、それでも一応先輩ではあるがな。
そう言えば今日は事務服じゃなくて、スーツでびしっと決めてキャリアウーマンのようだ。
何処かへ出向でもあるのか?

「今日からよろしくね。はい、制服。私のだけどクリーニングはしてあるからね」
「はい??」

何で俺が女子の事務服を渡されるんだ?

「ゴメンね、いま丁度予備が無くて、発注はしているから篠崎さんのが届くまで我慢してね」
「俺の制服?」
「そうよ、嬉しい?」

何がどうなってる?
俺がこの事務服を着るって事か?
なんでだ?

「あ、いや、一体どうして?」
「なあに?嬉しくて茫然自失って奴なのかしら?」

いや、おかしい。おかしいだろ。
これは完全に俺がこの事務服を着る流れだ。
しかも喜んで。

「でも、私も篠崎さんにはすっごい感謝しているの。
おかげで総合職に付く事が出来たんだから」

ああ、それでスーツな訳だ。
で?何で俺のおかげだって言うんだ?
あと俺が事務服を着なきゃならない理由は?

「そうだな。なんだかんだで丁度良かったかもしれん。
袖原君は総合職への転向を前々か望んでいたが、規定で新卒を入れた分空きが無くてな。
一般職に関してもこれ以上増やす訳にもいかない状態だったから、入れ替えで済むのは僥倖だったな」

そこへ、部長が口を挟んできた。
なんだそれって、あれか?袖原樹理が総合職になるから俺が代わりに一般職にされるって事なのか??

「ちょっと待って下さい!なんで俺が一般職にならないといけないんですか?」

俺の抗議に、部長と袖原樹理が顔を見合わせる。

「何を言ってるのかね君は?希望したのは君だぞ?昨日あれだけ大騒ぎになったと言うのに」
「はい〜?」

そんな馬鹿な。昨日は明菜のせいで欠勤しんだぞ。

「そうよ。お姉さんのレディースのスーツで出勤して着たと思ったら、
実は自分は女性になりたかったってカミングアウトして大騒ぎになったじゃない。
その後、女性への身体の工事もおおかた終ってるって言って、
私が確認したんだけど、胸もあったしアソコも恥丘が出来てたわ」

一体なんでそんな事に?

「それで、君が女性として働きたいのだと主張した為に緊急人事会議になったんじゃないかね。
我が社は理解があって良かったな。
君の女性として一般職で働きたいと言う要望は人事異動と言う形で直ぐに認可されたよ」

そんな、馬鹿な事が。

「ちょっと待って下さい。俺はそんな事望んでないですよ。今すぐその人事は取り消して下さい」
「そんな訳に行くか、会長も含め重役全員で決定された人事だぞ?
そう言う稀なケースに取り組むことで新たなアピールになると、かなり乗り気なのだ。
現に篠崎君用に更衣室の用意やトイレなど準備が進んでおる。
女性社員が君を受け入れてくれるまでの処置だが、尽力しとるんだぞ?」

なんてこった。一体どうすれば。

「それに袖原君の人事にも強い後押しがあってな。最早後には引けんよ」

上からして決定事項なのか?
抜擢人事ともなれば取締役以上の権限が発動しているのは明白。
そうなったら、もうダメだ。
もう辞めるしかないのか会社を。
でも、いま辞めてこの就職難の時世だ、次がある訳が無い。
一般職と言えど、ボーナスがちゃんと出て手当てもしっかりしている企業なんてそうそうない。

「しかし君は何を狼狽しとるのかね。先程からおかしな奴だな」
「部長、女性になろうとする人は女性ホルモンの投与で情緒不安定になる見たいですよ」
「そうなのかね」
「私たちがフォローしてあげませんと」
「うむ、会社ぐるみですると決まった事だしな」

勝手な事言いやがって。
俺はこれから会社ではこう言う扱いなのか?

「さあ、篠崎さん。人が来ないうちに着替えてしまいましょ?
まだあなた用の更衣室は出来てないから一緒に女子更衣室へね。
それとお化粧もしなくちゃね。女の子なんだしね」

袖原樹理が良い笑顔で俺を促す。
ちくしょう、もうやるしかねえ。

……
………

その30分後、袖原樹理から譲り受けた事務服を着て新人OLとして朝礼であいさつする俺の姿があった。
もう、何も考えたくねえよ…。

△ ▼ △ ▼ △ ▼ 

ふっふっふ♪
敬久の奴、会社でどうなってるかな?
細工は流々、後は仕上げをごろうじろって奴ね。
あ〜あ、次は弟を素直で可愛い妹にするおまじないアイテムとか手に入らないかな。






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