続・そこはとあるお屋敷 その4
シチュエーション


夏の太陽が眩しい。
照りつける日差しが暑い。
晴れ渡る空の下、お屋敷に戻る為に遥人と雛子は小道を歩いていた。
日傘をさして仲良く歩く姿は夏の散歩に見える。

何かを期待して浮かれている雛子に、少々恥ずかしげに歩く遥人。
その遥人の頬は赤い。

「(…雛子の匂い)」

遥人の顔が赤いのは夏の暑さのせいだけではない。
先程紗雪に言われた言葉がまだ後を引いているのだ。

いま遥人が着ている雛子のメイド服、意識しない訳が無いが、
ずっと着ていれば慣れてくると言うもの。
だが匂いだ。雛子の匂いがとても気になるのだ。

着替えた時に汗で湿っていても匂いなんてほとんどしなかったと言うのに、
時間がたつにつれ乾いてくると雛子の匂いが強く感じられる様になって来ていたのだ。
それをわざわざ指摘されて意識しだしたものだから、遥人は気が散って仕方が無い。

指摘した本人は既にいないが、その様はある意味で紗雪の思惑通りなのだろう。

「あの、遥人様」

このままでは落ち着かないと『雛子な遥人』は『遥人な雛子』に声を掛ける。

「なんだい雛子?」
「汗をかいたので着替えをしたいのですが」
「着替え?」

その言葉に雛子は少し考え、言葉を続ける。

「そうだな。俺も汗をかいたから屋敷に戻ったらお風呂にしよう」

そして悪戯な笑みで、こうつけ加える。

「もちろん雛子も一緒に入って、俺をきれいに洗ってくれるよな?」

メイドが入浴の手伝いをすると言うのは良くある事で、
遥人の母親など手伝いが無ければは自分で髪を洗えないほどだ。

遥人も小さい頃は入浴にメイドが付いていたものだが、流石に今はそれはしていない。
それを態々やらせるからには当然に何か企んでいるのだろう。

「かしこまりました」

承諾の返事をしたものの、その表情に一抹の不安を隠せていない遥人だった。

「お帰りなさいませ遥人様」

お屋敷に戻り遥人と雛子を迎えたのはメイドの少女、真由(まゆ)だ。
遥人の住んでいるエリアは雛子が担当しているとは言っても、
全てを雛子がこなしている訳ではない。
それなりにやる事は多いし、休みだってあるのだ。

真由は雛子の事を先輩と慕い仲も良い、
雛子の代理で遥人に付く事もあるが役職上は一般のメイドだ。
雛子と違い真由のメイド服は、パフスリーブは変わらないが半袖でスカート丈も短い夏仕様である。
色も雛子が紺色なのに対し明るいグリーンと夏の木々を想わせる鮮やかな色彩だ。

ちなみにこのメイド服が支給されるのは10代のメイドだけで、
それより上のメイドは落ち着いた緑色でスカートも膝下のものである。
更に年齢が上がるとスカートがタイトスカートに代わるのだが、これらは先々代が決めた事らしい。

「湯浴みの準備は整っております」

真由のその言葉に遥人は「何時の間に?」と言う顔になるが直ぐに雛子が答えてくれた。

「あ、メールでね」

遥人は気付いていなかったが、屋敷の連絡事項は携帯のメールでやり取りされている。
最初は雛子が始めた事なのだが、広い屋敷での呼び出しや伝達に便利な為全体に広まった経緯がある。
もちろん人前で堂々とする様な事はせず、あくまで密かにするのが最低限の品格だ。

「それにしても、今日の遥人様はいつもより素敵でらっしゃいます」

すでに屋敷全体で知れ渡っている立場交換は真由も当然知っている。
雛子もそれに合わせ雛子クオリティーを炸裂させる。

「はっはっはっ、夢見る少女は待っている、煌めく魅惑の美少年。パーフェクトプリンス遥人と俺の事さ」
ミュージカルばりの決めポーズと表情だ。

「またそれを」
遥人は既に諦めた。

「いや〜ん、遥人様素敵ですぅ」
真由の方はノリノリだ。
「今夜の夜伽にはぜひ真由をお呼び下さい、そして私の純潔貰って下さい」
続けてとんでもない事をのたまう。

「ちょ、ちょっと!」

諦めモードの遥人だったが流石にこの発言には反応してしまう。

「慌てなくても良いぞ雛子、俺が選ぶのはお前だけだ」
「そんな雛子先輩ばかりずるいです」

その言葉を聞き真由は乙女のポーズで言葉を続ける。
「だったらそこに私も入れて下さい。3人で契りを結びましょう」

その言葉に更に慌てる遥人。

「だから、なんでそうなるんだよ。もっと駄目に決まってるだろう!」

既に雛子の演技を忘れて本気で慌てている。

「あ〜ん、雛子先輩いじわるです。一人占め禁止ですよ」
「ふっ、これも魅惑の美少年たる俺のせいか」

雛子クオリティーは続いている。

「俺の寵愛を一人占めしたいとは、雛子可愛い奴…。分かった今夜は雛子お前だけを愛そう!」

それを見ていると遥人は、なんかまたどうでもよくなった気分だ。

「その話の流れは変えられない訳だ」

悟ってしまった様である。

「仕方が無いです。今回は雛子先輩に負けました。でもいつかは貰って下さいね。私の純潔」

真由のその台詞は少しだけ本気の様に聞えるのは気のせいだろう。
そんなやり取りを繰り広げた後、当初の目的の浴室へと二人は移動した。

お屋敷の浴室と言うと部屋の真ん中にジャグジーか豪華なバスタブがあって薔薇の花でも浮いていそうなものを想像するが、
遥人の使っている浴室はユニットバスとほとんど変わらないものだ。
一般家庭とは広さが違う位である。

「では雛子、服を脱がせてもらえるかな?」
「かしこまりました」

実際のところ着替えをメイドに手伝ってもらう等は遥人はしていない。
最後に整えてもらう位はしてもらう事はあるが、基本は自分でだ。
これも雛子の遊びのひとつなので付き合うが、正式な手順については良く解からないのが実情だ。
とりあえず前に回って襟首飾りのひらひら、クラヴァットを外そうとした。

「はい、雛子ちゃん減点」

さっそく指摘が入った。

「クラヴァットを外す時は、声を掛けてから後ろに回ってよ。
手順として脱ぐ時は上のものから順に、着る時は逆にするの。例外としてソックスだけは着後脱前ね」

説明され納得がいく。

「失礼しました。ではクラヴァットを外させて頂きます」

やり方さえ解ってしまえば、どうという事は無い。

難なく雛子の服を脱がし終える。
裸になる訳だが、お互いに今更裸を恥ずかしがる仲でも無い。
まあ、エチケットとしてタオルを巻くなどはするが、今の雛子は遥人なので胸は隠しておらず意外に徹底している。

「では遥人様、浴室の方へ」

「何を言ってるんだ雛子」

遥人が雛子を浴室へエスコートしようとした所、雛子からまったが掛かった。

「雛子も服を脱ぐんだ、一緒に入るぞ」

多少訝しむ遥人だが、先程に自分が言った着替えをしたいと言う申し出に答えてくれているのだと思い至り従う事にする。

「昼間から乙女が裸で男性と入浴と言うのもはしたないから、きちんとそこにある水着を身につけるんだぞ」

その言葉に嫌な予感がして見て見れば、そこにあったのは女性用の水着。

その水着には見覚えがあった。
この前海に遊びに行ったときに雛子が着ていたものだ。
今は自分が雛子なのだから、雛子の水着を着るのは当然の事なのだろうけど、どうしてもためらう事がある。
そのデザインが、愛らしすぎるからなのだ。

白いビキニの水着であるが、縁がピンク色のパイピングを施されており、
カップ中央のシフォンの様な大きなリボンがとても可愛い。
下にスカートもあるのだが、こちらもシフォンフリルの3段スカートでますます愛らしいのだ。
この水着を付けた雛子は確かに可愛く似合っていたが、それを自分が着るとなると話は別だ。

「ほら、ご主人様を待たせるな」

遥人がもたもたしていると雛子にエプロンの紐を解かれる。

「あ、ちょっと」
「雛子は脱がされるのが望みか、俺がしてやろう」

エプロンを外されると、赤いリボンタイも外されてあれよあれよと言う間にメイド服を脱がされてしまった。
スリップも脱がされると、そこにはフリルカチューシャを付けた下着姿にニーハイソックス姿の遥人が現れる。

「うむ、なかなかな色気だぞ雛子」

確実に裸より恥ずかしい状態である。

「色気とか言われても」

両手で肩を抑える仕種は乙女そのものだ。

「ずっと見て居たい所だが、それでは何時までも入れないからな」

雛子は遥人のその姿を堪能しつつ、ニーハイソックスを脱がせ、ブラのホックも外してショーツ一枚にする。

「あ、まって下は自分で脱ぐから」

雛子がショーツに手を掛けるが、流石にそこだけは遥人は自分で脱いだ。
このショーツは雛子のあそこの液で最初から汚れていたものだ。
すっかり乾いて染みになっており、かなり恥ずかしい。
そそくさと脱がされた衣類の一番下にしまう。

「じゃあ、次は水着を着ないとな」

雛子にビキニを渡される。

「あ、カチューシャは取ってはいけないぞ」

何故かカチューシャだけは外されなかったので、外そうとした所それは雛子に止められた。

メイドとしてアイデンティティの重要な所を占めるものらしい。
ただの頭飾りだと遥人は思うのだが、そこは何かしらのこだわりなのだろう。

水着の着用は難しいものではなかったが、ビキニのトップだけは雛子がホックを止めてくれた。

「う〜ん、エクセレントだ。とても可愛いよ」

鏡を見れば白いビキニを着た自分の姿。

確かに水着は可愛い水着は。
フルカップのトップはカップが硬いものでパッドも入っているものだから、
胸の無い遥人にもBカップ位のふくらみがある様に見える。

遥人はその事がとても恥ずかしいのだが、
第三者がその姿を見ると、どう見ても少女にしか見えなかったりするほどその水着が似合っていた。
雛子の見事な目論見通りとしか言いようがないだろう。

「あう、まさか水着女装までする事になるなんて」
「大丈夫とっても似合ってる。イッツ・ア・プリティ さ」

雛子的に他の人にも見せたい所だが、このまま連れ出すのは流石にやり過ぎだろう。

「さあ、お風呂に入ろうか?」
「かしこまりました。こちらへ」

何時までも脱衣所に居ても仕方が無いので、促され雛子をエスコートし浴室へ移動する。

「じゃあまずは身体を洗ってもらおうかな」

遥人は雛子の言う通りにしようとスポンジを用意していたのだが、雛子が何か思いつく。

「そうだ雛子どうせなら、雛子の身体に石鹸を付けてその胸で洗ってくれないか?」
「・・・昼間から何をおっしゃるのです?」

一瞬かたまる遥人だが、流石にその言葉に従う事はしない。
どこの風俗の話と言うのか。

「そうか、昼間はダメか。ではそれは夜のお楽しみだな」
「だから、しないよ!」

否定が伝わらなかったので遥人は想わず素で否定してしまった。

「良いじゃない。けち」

雛子も素に戻っている。

「けちじゃないよ。なんでそんな事をさせたがるんだよ」
「男のロマン?」
「あのなぁ」

聞いた遥人が悪かった。
聞かなくても解っている。楽しいからの答え以外に何があろうか。
「いや、聞くだけ無駄だよな」
諦めのため息はいつもの事だ。

そこに何かを感じた雛子は抗議の声を上げる。

「もしかして、楽しいからだけだと思ってる?」
「思ってる」
即答だ。

「ちょっと心外ね。もっと重要な理由があるわよ。むしろこっちが根源的かつ全ての心理ね」

何だか大仰な言い回しに、遥人も気になる。

「それって?」

「良いこと?良く聞いて心に刻むのよ。それは全ての真理…」

雛子が勿体ぶってためるので、遥人もつい引き込まれてしまう。

「遥人が可愛いからに決まってるじゃない!!」

ババーンと効果音が聞こえそうな見得を切っての力説に、全身の力が抜けてうな垂れてしまう遥人。

「可愛いは正義よ」

その言葉はこの場合に使うものではないはずなのだが…。
どこぞのファッションの煽り文句だったはず。
これも別な意味での雛子クオリティーだ。
そんなやり取りをしていると、浴室に新たな人影が現れる。

「遥人様、真由もお背中お流しいたします」

現れたのは濃紺のスクール水着を着た真由だ。

「え?真由?(って言うかスクール水着って)」
「おお、丁度良い所に来たな。胸を使っての洗身は真由にしてもらおうか」

「はい、お任せ下さい遥人様」

言われて真由は直ぐに取りかかろうとした。
慌てるのは遥人だ。

「だから、そう言うのダメだってば」

「なんだ雛子、やきもちか?可愛い奴め」
「ぶーぶー、遥人様の一人占めは良くないですよ雛子先輩」

雛子一人でも手を焼くのに真由までこのノリで来られては対処に窮する。

「分かりました。雛子先輩の身体も同じように真由が胸で洗ってあげますから」
「おお、それは良いな。雛子やってもらいなさい」

「遠慮します」

もう流されるしかないが、それでも背を向け抵抗を試みる遥人だ。

「雛子先輩照れなくても良いじゃないですか、こっち向いて下さい」

真由は遥人の前に回り込んで覗き込む。

「あ、雛子先輩のその水着、超可愛いです。いいなぁ」

そしてその水着姿に思わず素直な感想がもれた。
水着の事を言われると恥ずかしさがぶり返して来る遥人。

「本当に可愛いです。真由も着て見たいです。雛子先輩、今度私にも貸して下さい」

もう自分でも使用した後なので水着を貸す事に異論は無い雛子だったが、そこで何かを思いつく。

「そんなに気にいったのなら今度と言わず、今借りると良い。雛子、今すぐ真由にその水着を貸してあげなさい」
またあの悪戯な笑みを浮かべてだ。

「分かりました」

その笑顔が気になるが、水着女装しているよりは、お風呂場で裸の方がまだましだと思い遥人は承諾する。

「わあ、ありがとうございます」

真由もその事に喜んでいる様だ。
男性の脱いだ水着を着るのは嫌じゃないのだろうかと思いつつも、
そんな様子も見えないので遥人は水着を脱ぎにかかる。

「でもそれだと雛子先輩裸になっちゃいますよ?」

意図した訳ではなく、何気に思った事を真由が口にした途端、雛子がそこに飛びついた。

「なに?それはいけないな、メイドがそれでは貞淑さに欠けてしまう。雛子は真由の水着を着なさい」

これを雛子はしたかった様だ。
あの悪戯な笑みはますます顔に出ている。

「水着の取り換えっこですねぇ、楽しいです」

対する真由も直ぐにのる。
つまりは今着ている愛され系な可愛いビキニから、
今度は真由が着ている濃紺スクール水着を遥人は着なければいけない事態になったのだ。

「え?いや、取り替えっこはしなくても」

意図を察して拒否しようとしても多分駄目だろう。
案の定すぐに真由に却下される。

「ダメですよぉ、遥人様もおっしゃっています。裸は禁止です」

そう言う真由は既に水着を脱いで裸なのだが。


「いや、本当に止めて」
普段ならいざ知らず、雛子と言う事になっている遥人の拒否など聞き入れてもらえる訳もない。

「仕方が無い。雛子の着替えを手伝ってあげよう」
「遥人様がするとセクハラですよ」
「愛があるから大丈夫だ」
「ラブラブです」

「だから止めてってば」
「ほら、愛を受け入れたまえ」

複雑なメイド服ならいざ知らず、ワンピースの水着なんて多少無理矢理に着させる事などそう難しくは無い。
結局二人掛かりで遥人はスクール水着に着替えさせられてしまった。

「きゃ〜、雛子先輩可愛いです」
「おお、メイドカチューシャにスク水がこれほどまでに合うとは。眼福眼福」
「遥人様、オヤジ入ってますぅ」

「うう、やっぱりこうなるのか」

かくしてスクール水着姿となった遥人だが、恥じらう姿が萌えを増長させているのは言うまでもない。

「じゃあ、取り替えっこも済んだ事ですし、遥人様のお身体洗わせて頂きますね」

楽しい悪戯を堪能する真由はしっかりと遥人から脱がせた愛され系のビキニを着ていた。

「そうだな、だがせっかくだから今日は俺もお前たちを洗ってあげよう」
「きゃぁ、やっぱり遥人様セクハラですぅ」
のりはあくまで崩さない。

「ほら、雛子も遠慮せずに洗ってあげよう」
「いえ、だから遥人様それはいけませんって」

無駄な抵抗と解かっていても、しておかなければ大事な何かが失われそうな気がする。

「私も雛子先輩の事洗ってあげます。洗いっこです」
「ああ、ちょっと」

スポンジで身体をこすられ泡だらけだ。


結局そのまま入浴は格式や貞淑なんてどこへやらの大騒ぎ。
遥人は雛子と真由に隅々まで洗われるは、逆に二人を洗うやら、
終いには本当に真由が胸での洗身をやってのけるなど賑やか過ぎる事この上ないものとなった。
お屋敷の淫らな情事と言えなくもないが、その雰囲気はあくまで明るい。
幼馴染のメイドはとても楽しそうだ、もちろんその後輩も。
楽しいであふれた時間が過ぎて行く。
ただ翻弄される少年だけはその限りではないかもしれない。

遥人の受難はまだまだ続くのだ。






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