宿なし汚ギャルは電波系・2
シチュエーション


「それで君の名前は?どうしてあんな所に居たんだね?」

同僚の尾崎先生が俺に向って詰問してくる。
ここは職員室隣にある面会室、実質は生徒指導室とされる所だ。
俺は結局あのまま平日昼間から鉄橋下を徘徊する不審な少女として学校に連行された。

「すいません」

俺はこう言うしかない。
尾崎先生に散々俺は根本だと説明したが取り合ってもらえず、
他の先生方にも俺はあのギャル電波に見えるらしく、おかしな女子扱いだ。
どう言う訳か解からんが俺はギャル電波と立場を交換されてしまったのだ。
当のギャル電波は俺のスーツを着込んで尾崎先生の後ろで腕組をしてやがる。

「そればかりだな君は」

尾崎先生はため息をつく。実際答えようがないのだ。
俺はギャル電波の事を何も知らないし、名前すら知っていないからだ。
こんな部屋で詰問され続ければ萎縮するしかない。

尾崎先生は大分イライラしている様だ。

「尾崎先生、ここは私に任せてもらえませんか?尾崎先生はお昼でも摂って来て下さい」

ギャル電波が間に入ってきた。何を考えてる?

「そうですね、このままではどうにも。ここは根本先生にお任せしますよ」
「任せて下さい」

得意気に答えるギャル電波。

「私はお言葉に甘えてお昼にさせてもらいますので、では」

言って尾崎先生は退室して行く。

部屋にはギャル電波と俺の二人だけ。
しめた、これでようやくこの事態についてギャル電波を問い詰める事が出来る。

「あのぉ、先生いいですかぁ?」

いいですかじゃないだろこいつ。

「いったいどうなってる?」
「言ったじゃないですかぁ、わたしと立場を交換してもらったって」
「だから、それはどうやったらこうなるんだ?」
「知らないですよぉ、ギャルなら出来るものなんですぅ。それより先生はわたしの記憶とか思い出せないんですかぁ?」

答えになってねえ、やっぱり電波だ。

「おかしいですねぇ、交換したら私の記憶も解かる様になるんですよぉ。わたしなんてもう先生の記憶解りますよぉ」

なに?

「んんっ、俺の名前は根本靖浩(ねもと やすひろ)、7月20日生まれの34歳AB型。好きな食べ物はあんかけ焼きそば、
現在交際8年目になる彼女の新見歩美とはそろそろ結婚を考えている。歩美とのセックスの頻度は…」
「ストーップ!それ以上言うな!」

何を言いやがるんだこのギャル電波は。
しかし、そこまで解るとなると俺の記憶が解かると言うのは嘘ではないのか?

「解かってもらえましたぁ?やろうと思えばまんま先生のしゃべり方とか、行動出来ますよぉ。
さあ、先生もやってみて下さい」
「だから、どうやって?  っと?」

ん?わたしの名前は高階香穂(たかしな かほ)16歳てんびん座。
でもそれは仮初のもので、本当の名前はソフィアローズ・アーデルハイト、ギャラクシーな姫なのです。
ってなんだこのとんでも設定は?

「あ、なんか思い出しましたぁ?」
「まあ、名前が高階香穂って事と16歳って事とか」
「違いますよぉ、ソフィアローズですぅ」
「なんなんだその設定」
「なにってソフィアローズはギャラクシーな姫で、ある使命の為にこの地に降り立ったハッピーギャルなのですぅ」

ああ、そんな気がするよ。
ちなみにそのある使命って言うのが何なのか本人も解かっていない、なんか天啓を受けた様で家を飛び出し放浪していた様だ。

「思い出しました?先生は私の代わりに使命を果たして下さいよぉ」

そうしないと俺は戻れないらしい。
くそ、なんなんだこれは。

「わかった、それで俺はどうすればいいんだ?」
「それは先生が考えないとですよぉ、今は先生がソフィアローズなんですからぁ」

ぐぁ、それって問題まる投げじゃねえか。

「それよりも、お腹空きませんかぁ?学食でなんか食べましょう、あ、ここってあんかけ焼きそばあるんですねぇ」

うるせえ、こっちは食欲なんて無えよ。
ギャル電波と入れ替わった時に着させられたこの服が臭うから、吐きそうな位だ。
ギャル電波の奴は勝手知ったるなんとやらで、部屋を出て行こうとしてやがる。

ドアを開けるとそこにうちの生徒の馬鹿どもが集ってやがった。
そう言えばもう昼休みか、うちの生徒は馬鹿なのが多い、
噂の鉄橋下少女が連れて来られた事を嗅ぎつけ、こうしてドアの外でうかがっていたんだろう。

「なんだお前ら、散れ散れ」

ギャル電波は俺がする様に生徒どもを追い払う。
あっという間に蜘蛛の子を散らす如く生徒どもはその場を去って行った。

「俺はここで待ってるからな」

好奇な目に晒されるのはご免だ。

「そうなんですかぁ?じゃあわたしだけで行ってきますぅ」

ギャル電の奴はあっさり俺を置いていきやがった。

しかしどうしたもんだか。
このままここに居ても尾崎先生が戻ってきたらまた詰問に晒されるだろうし、
あのギャル電とはこれ以上話をしても無駄な様な気がする。

この事態の解決方法は良く解からない使命とか言うのを果たす事。
だが肝心の使命とか言うのが何なのか不明と来た。
あのギャル電の記憶が思い出せるおかげで、この事の経緯は解かる。
鉄橋下に居たのは、電波を受信しての事だ。
そこで待っていれば自分の気持ちになって助けてくれる人間が来るから、その人間に助けて貰えと。

他にも、黒猫3匹と白い犬の頭を撫でろとか廃屋の壁にギリシャ字の様なものをペイントしたりなど訳のわからん事を延々とやって来たらしい。
そんな感じでこいつは電波を受信しつつ放浪を2ヶ月近く続けている。
まあ、受信と言っているが勝手に思いついてるだけなんだろうけどな。
はっきりと記憶が出て来る訳じゃないが、大体の事は分った。

考えてるとまたドアの外が騒がしくなってきた。
また馬鹿な生徒が集まってこちらの様子を伺ってるんだろう。
そんなこぞって集まる様な事じゃねえだろうが。
面倒だ、ここに居てもどうにもならねえし、ばっくれるか。

俺は勢いよくドアを開ける。

「うわっ!」

ドアに耳を付けていた馬鹿が吹き飛ばされた。

「おら、どきな!クソガキども!」
「こえっ、ヤンギャルじゃねえか」
「逃げんぞ」

またもや蜘蛛の子を散らすように生徒どもは居なくなる。
手前ら根性ねえんだよ。

俺はそのままの勢いで、職員玄関に向うと外に出た。

さて、これからどうするか。
取りあえずアパートにでも戻るのもありだが鍵が無い。
車が使えないのも面倒だ。うちの高校は山の上とまで行かないが、かなり奥まった所にある。
主要道路までは歩けば20分は余裕にかかる距離だ。
駅までは更に遠く登下校に学校からバスが出るぐらいだ。

使命とやらも全然電波を受信しないし、取りあえず歩くか。
ああ、そう言えば荷物鉄橋下に置いたままだったな。
取りに行くのめんどくせ、だけど携帯とかあるしな。

「ねえ、ちょっと」

考え事をしていると声を掛けられた。
振り返ってみれば自転車に乗ったうちの女生徒が5人。

「もしかしてあんた、噂のホームレスのギャル?」

声を掛けてきたのはそのうちの一人、2年の大広彩華(おおひろ さえか)だ。
何処かのキャバ嬢かと思えるようなアップしたブロンドにやたらシャイニーなメイク、おおよそ高校生には見えない。
言う所のアゲ嬢ファッションって奴だ。
うちの制服は地味な紺のブレザーの上下にリボンタイなんだが、こいつは勝手に制服をアレンジしてる。
まず上はウエスト部分を搾ってあり、胸に勝手には何かのエンブレムの刺繍を入れている。
リボンタイも指定の細いものではなく、リボンがやけに大きなものだ。
そしてスカートは赤いチェックの短いもので指定のものと全くの別物だ。
下にフリルのペチコートを穿いているのか裾からフリルが覗いている。
校則違反のなにものでも無く、生活指導を受ける事幾数回。
まったく懲りない奴だ。
教師に対する態度もなって無く学内でも有数の問題児の一人だ。
いまだって、昼休みに校外に出てはいけないと言う決まりを破ってコンビニでも行ってたんだろう。

「そのカッコってさココルルの?」

妙に興味をもたれた様だ。

「だからなんだ?」

構ってやる義理も無い。

「何あんた、態度わるー」

普段のお前ほどじゃねえよ。
俺はさっさと行こうとしたのだが、他の奴らに行く手を阻まれた。

「いまどきその手のサーフ系って無いよね」
「ココルル言ってもコーデが古すぎ」
「激ダサぁ」
「今時ココンバなんて化石ってるし」
「つーか、まじ汚ギャルじゃん」
「くっさいのよね」

なんでこう言う手合いはこんな時だけ抜群の連携が出来るんだ?

「あんたさ、やばちな浮浪者のくせしてなに調子くれてるの?」

いきなり髪をつかんで睨んで来やがった。
結構なメンチの切り方だ。
見慣れない奴が居たら取りあえず締めるとか、女子のくせしてかなりのヤンキー思考だな。

「離せよ」

睨みかえしてやるが、彩華も怯まない。

「お前こそ、まるでキャバ嬢がコスプレしてるみてぇじゃねえか」

俺の挑発に彩華の描かれた細眉がピクリと動く。

「あ?鬼チョズッテんじゃないよ!アンタ潰すよ?」

まだ手は飛んで来ない。

「人の事言う前に自分何とかしろっての、激ダサるんぺんの癖して。マジパなく臭いんですけどぉ〜」
「さええー、手汚くなるよ」
「臭いの移るし」
「生ゴミ的スメルってやつ?」

くっそ、俺だって好きでこんな臭う服着てる訳じゃねえ。

「あんたみたいな激おいにーサックーな奴なんて拾ってもらえないでしょうが、そんなカッコでうろつかないでくれる?まじ大気汚染で環境破壊だから」

ムカつく、妙に癇に障る。何だか抑えが効かない感じだ。

「死ね!ばーかー」

彩華にそう言われた瞬間何かが弾けた。

バリバリバリッ

「ぎゃっ!」

気が付けば俺は、ダウンベストに隠し持っていたスタンガンを彩華の首に押しつけていた。

「うわぁ〜」
「たすけて〜」

周りに居た女子共は一斉に逃げだす。
彩華は白目をむいて気絶している。

いったい俺は何を?
つい頭に血が上ったのは解かるが、スタンガンなんて何で使った?
そもそも、こんなものを持っているなんて知らなかったはずなんだが。
これもギャル電波の影響か?
幸い彩華は息があるので死んではいない様だ。
しかし、こいつの顔を見る度に異常なほど腹立たしさがこみ上げて来る。

臭い臭い言いやがって、着替え入浴禁止は天啓なんだから仕方がねえんだよ。ったく。
あと死ね死ね言うんじゃねえ、わたしはそう言われるのが一番嫌い。
嫌な事思い出すから。

「ん?」

その時だ。

「あ、なんかきた感じ」

新たな天啓が俺の脳裏に告げられたのだ。


『倒した敵より新たな衣を得よ。そして新たな地に旅立て、そこに使命が待っている』


そう言葉が浮かぶ。
おおっ、事態を解決する糸口が見えたかも。
倒した敵って言うとこの娘ですよねぇ。

俺は気絶している彩華を見る。

つまりこの娘の服を頂いてしまえと言う事だよねぇ?

俺は早速服を脱がせに掛かる。

お、良い下着付けてるぅ、ラヴィジュールかぁ。良い値段するんだよねぇ、わたしのお小遣いじゃとても手が出せないしぃ。

俺は手際よく彩華の服を脱がせると、下着も含めて全部頂いた。

流石はラヴィジュール、可愛いうえに胸の形もばっちり整っちゃいますぅ、やっぱきれいな服は気持ちいいかも。
それにこの制服って可愛くアレンジしてあって良いよねぇ、鏡無いから確認できないけど、このカッコ絶対イケてますよねぇ。
気分もギャラクシーハッピー♪
こんなカッコが似あうソフィアローズはやっぱりギャラクシーな姫なのですぅ☆

さて、服貰っちゃった彩華だけど裸って言うのも可哀そうですよねぇ。
だから彩華がくっさいって言ってたわたしの服着せてあげますよぉ。
目が覚めたらどう思うかなぁ、楽しみ。
わたしは汚れマックスなショーツにぐちゃびちょなスニーカーも全部着せてあげた。
人に服着せるのって案外大変で苦労したけどねぇ。
でもぉ、結構似あってますよぉ臭いますけどぉ。
さてさて、わたしは行きますか、自転車も貰って行きますねぇ。

「じゃあ、服ありがとうです」

わたしはさっそーとその場をあとにしたのでしたぁ。


……

「は!? 何をいったい?」

鉄橋下でステッカーでデコられまくっているキャリーバッグを手に取った所で、俺は我に返った。
なんかすっかり行動がおかしい。
彩華との対峙の際に我を忘れてしまった後から、すっかりギャル電の様な思考に流されていた。
女生徒の服を奪って着込むなんて事をして、しかもその自分の姿にテンションを上げるとか何考えてたんだか。

このまま行くと俺は本気で不味いかも知れん。
ギャル電そのものになっちまうなんて事はご免だ。
さっさと事態を収集させないとな、糸口はさっき受信した電波だ。
この格好で新たな地に行けばいいんだよな。

新たな地って言う位だから、取りあえずはこの町を離れる事だろう。
とにかく今は流されない事だな。
俺は気を引き締めて駅に向う事にした。


…そう言えば金ってあったけ?






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