シチュエーション
![]() 「早川美幸」(はやかわ・みゆき)と呼ばれる「少女」は困っていた。あるいはフリーズしていたと言ってもいいかもしれない。 「コレ……着ないといけないんだよね?」 *** 早川美幸が通う星河丘学園の高等部は基本的に全寮制で、彼女もまた寮暮らしだ。ただ、今年の一年の入寮生が奇数だったため、運良くひとりで寮の部屋を占有することができている。 例年にもまして暑かった8月も終わり、今日は二学期が始まったばかりの9月2日。「美幸」も一昨日の31日の午後に女子寮に「戻り」、学校に通う準備を整えてはいた。 「そのお陰で」、始業式のある昨日は、それほど大きな問題もなく過ごすことができた。 星河丘には中等部も併設されており、高等部における内部進学者と外部生の割合は、おおよそ半々といったところだ。 早川美幸は高校からの外部進学組ではあったが、それにしたってすでに一学期のおよそ3ヵ月半ほどをこの学園で過ごしている。 夏休みをはさんだとは言え、そろそろこの学校にも慣れそうなものなのだが、新学期からの「彼女」の挙動にはどこか新鮮な驚きと戸惑いが見られた。 まるで、「初めてこの学園に来た」かのように……。 ──思わせぶりな表現をしたが、もうおわかりであろう。 本物の美幸が小学6年生の男の子として暮らしている以上、ここにいる「美幸」は偽物なのだ。 無論、その正体は、美幸に自分の名前と立場を取られた従弟の浅倉要(あさくら・かなめ)にほかならない。 いや、「取られた」と言うのは少し異なるか。「(強制に近い)合意の上で、入れ替わりに同意した」というのが正確な表現だろう。例の「家宝」は使用者双方の同意がない限り発動しないのだから。 また、従姉の勢いに流された部分があるとは言え、要も多感なお年頃の男のコだ。「年上の少女の肉体」に(性的なものも含めた)好奇心や興味は大いにあった。 と言うか、あの小汚い絵に、まさか本当にそんな能力があると信じていなかった……というのが一番大きかったが。「やれるものならやってみろ」というヤツだ。 もっとも、そんな彼の心境をよそに、見事に鳥魚相換図はその効果を発揮し、本人同士以外の人の目には、要は「美幸」に、美幸は「要」にしか見えなくなったワケだが。 もっとも、当初ふたりは、仮に成功しても2、3日で元に戻るつもりだった。 美幸の方はあくまで「本命」の前の「実験」のつもりだったし、要だって、泊まりがけで遊びに来ている美幸の家から帰るときには、元の自分でいようと考えていたのだから。 ところが。 浅倉家の事情(父方の祖父が危篤?)で、要が予定を1日くり上げて帰らねばならなくなったことから、非常に困った事態になってしまったのだ。 要の両親が早川家に迎えに来た際、当の要は「美幸」として駅前のゲームセンターに遊びに出かけていた。 その代わりに、早川家には「要」にしか見えない美幸がいるワケで、巧い言い訳を考える前にあわただしく「美幸」は車に乗せられ、早川家から遠く離れた祖父の家へと連れて行かれてしまったのだ。 無論、ゲーセンから帰ってきた「美幸」な要は、極力平静を装ったものの、内心は焦りまくりだ。 幸いにして要の祖父の容体が深夜には小康状態を取り戻したため、翌朝美幸の方から電話がかかってきたのだが、ふたりとも、すぐに元に戻る方法は思いつかなかった。 やむなく、しばらくは無難に互いのフリをする……ということを不承不納得するしかなかったのだ。 結局、要を含めた浅倉家は、祖父の容体が完全に落ち着くまで祖父の家に留まることとなり、そうこうしているうちに8月も残すところあと少しになってしまう。 不思議なことに、小六男子に見られている美幸はともかく、女子高生のフリをしている要の方も、周囲から特に怪しまれるようなことはなかった。 無論、互いに家族の目を盗んで電話で連絡を取り合い、必要と思える知識を教えあうようにはしていたが、それだけではどうしても不備が出る。とくに年上の少女に扮する要の方は、なおさらだ。 しかし、知識が足らずに戸惑うような局面であっても、なんとなく思いつきで動いたら、うまくやり過ごすことができていた。あるいは、コレもあの鳥魚相換図の力なのかもしれない。 ともあれ、結局、「要」な美幸が浅倉家に「戻った」のは、30日の夜になってからだった。31日の午後には美幸は学園の寮に戻る予定だから、まさにギリギリのタイミングである。 しかし……。 「え!戻るのを延期する!?」 美幸から「自宅に戻った」という電話を受けて、ホッとしていた要だが、思いがけない相手の言葉に驚く。 「うん。そもそも、夏休みが終わる1日前にわざわざ「要」が「おじさんの家」に遊びに行く理由がないでしょ」 「じゃ、じゃあ、ボクの方がソッチに……」 「それこそ、説得力がないわよ!」 確かに、美幸が浅倉家に遊びに来たことは片手で数える程しかない。 「じゃあ、どーすんのさ!」 「まぁ、落ち着きなさい。再来週の日曜の翌日が敬老の日で休みになるから3連休でしょ。その時、寮からウチに戻って来るのよ。あたしの方も、適当な理由つけて「遊びに行く」から、その時一緒に昼寝でもして戻ればいいわ」 「えぇ〜、それじゃあ、ボク、これから3週間もお姉ちゃんのフリをするのー?」 「そういうコトになるわね。でも、これはアンタにとっても悪い話じゃないはずよ。男子の憧れの秘密の花園である女子寮に堂々と入れるなんて、ラッキーじゃない」 確かに、そう言われるとそんな気もしてきて、要の抗議の矛先も鈍る。 「それに、アンタ、いつも「早く大人になりたい」とか言ってたじゃん。女子とは言え、高校生の立場を経験できるんだから、一時的にその夢がかなうわよ。 ウチの学校、何気に設備は整ってるし、体験留学でもするつもりで気楽にドーンと構えてなさいな」 「ええっと、お姉ちゃんがソコまで言うならいいけど……でも、さすがにボクじゃあ勉強とか全然わかんないよ?」 外で遊ぶのが好きな元気少年にしては要の成績は悪くないが、しょせんは公立小学校の6年生。名門高の授業についていけるとは思えない。 「アハハ、だいじょーぶ!あたしだってたいした威張れた成績じゃないから。そうね、授業中にノート取るのだけキッチリやってくれればいいわ」 こうして、理論的な退路を断たれ、また少なからず好奇心も刺激された要少年は、「早川美幸」として、しばらくのあいだ学園の女子寮で暮らすことになったのである。 そこは、(たぶん母親の手が入っているだろう)早川家の美幸の部屋とはうって変って、何と言うか「女の子らしくない」部屋だった。 「女の子の部屋」と聞いてミユキが連想するぬいぐるみも、レースのヒラヒラも、パステルカラーの家具類もまるで皆無。代わりに、何か(実は萌えアニメ)のキャラクターらしいフィギュアが数点、本棚に飾ってある。 壁に男子向けアニメのポスターが数枚貼られている点は、ミユキとしても親近感が湧くが、カーペットやベッドの上に雑誌類が散乱しているのにはゲンナリする。こう見えてもミユキは綺麗好きなのだ。 家から持ってきたボストンバッグを、ひとまず洗面所に置き、ミユキは着替えもせずに部屋の整頓にとりかかった。 さすがに他人のものを勝手に捨てるワケにはいかないので、雑誌は紐でくくって部屋の隅へ。本は本棚に戻せるものは戻し、入りきらなかった何冊かは、机の端に大きさを揃えて積む。 よく見ると埃がたまっているようなので、窓を開けたうえで、洗面所の隅にあった掃除機のスイッチを入れる。 「ふぅ……こんなトコロかな」 途中、ベッドの下から見つけた「男の人(?)がエッチなコトをしてる本」(BL同人誌)には流石に焦った。 健全な男子小学生としてのメンタリティを持つミユキとしては気持悪かったが、おそらく男子にとっての「お宝本」と同じような代物だと推察されたので、黙って元に戻しておいた。 武士の情けというヤツだ。よくデキた小学六年生である。 ──実は、この時点でソレを目にしたコトが、あとあと「彼女」が送る学園生活に大きな影響をもたらすのだが……まぁ、それは別の話である。 汗をかいたので軽くシャワーを浴びて、そのまま部屋着──長めのTシャツとショートパンツといった格好に着替える。 「ふぅ、やっとひと心地ついたよ〜」 コロンとベッドの上に転がるミユキ。 服自体がマニッシュだが女物なのと、成長途中の中性的な容貌があいまって、仮に例の入れ替わりが発生していなくても、今の彼は素で「ボーイッシュな女の子」に見えた。 むしろ、ある意味ヲタクと腐女子に半分足突っ込んでる美幸本人より、よっぽど清楚可憐に……。 「──このベッド、お姉ちゃんの匂いがするな」 ……訂正。匂いフェチとは、コチラも相当なモノのようだ。 「そう言えば、ベッドだけじゃなくて、服もそのはずだよね。この数日であまり意識しなくなってたけど」 クンクンと(決してクンカクンカではない)、小鼻をひくつかせるミユキ。 どうやら特殊な趣味ではなく、単にバカ素直に感じたことを口に出してるだけらしい。 「ふわぁ〜、これから一ヵ月近くも、無事に過ごせるのかなぁ……」 当面やるべきことをやって、気が抜けたらしい少年は、どうやらおねむのようだ。 ベッドカバーの上に突っ伏したまま、ゆっくりと眠りの世界へと引きずり込まれていく。 ──ターラッタ、タッタッター、ラーラー♪ しかし、ミユキの意識が完全に睡魔の手に墜ちる直前、部屋のスピーカーから、彼にも聞き覚えのあるメロディーが流れて来たため、寝ぼけ眼を擦りながら、起き上がった。 「これって……シューベルトの『マス』?」 一学期の音楽の時間に習った曲のことを思い出す。 「でも、いったい何だろ?」 『──夕食の用意ができました。現在寮にいる生徒の皆さんは、ただいまから1時間以内に1階の食堂に降りて、夕食をとってください』 スピーカーから流れるアナウンスがミユキの疑問に応えてくれた。 なるほど、寮とあれば食事が出るのも道理だ。 昼に早川家でご飯を食べてから、6時間以上経っていたため、ミユキも結構お腹が空いていたので、急いで部屋から出る。 食堂の場所は知らないが……まぁ、他に生徒もいるのだからわかるだろう。 そしておよそ30分後、ミユキは寮の食事とは思えぬ豪華な夕飯のメニューを堪能し、お腹をさすっていた。 本物の美幸に釘を刺されていたので、おかわりこそしなかったものの、それでもご飯粒ひとつ残さない気持ちのいい食べっぷりだ。 ちなみに、本日のメインディッシュはニジマスのキノコのムニエル。選曲は、これに合わせたのだろうか? デザートの杏仁豆腐とホット烏龍茶まで堪能したうえで、さて部屋に戻ろうかと思ったところで……。 「あれ〜、みゆみゆが魚残さずに食べるのって珍しいね?」 背後から声をかけられた。 振り向くと、「彼女」よりひと回り小柄で、背中にかかる程の長さの赤茶っぽい髪をサイドポニーにした娘が、お気楽そうに笑って立っている。どうやら美幸と、そこそこ仲が良い知り合いらしい。 「う、うん。今日はお腹が減ってたから……」 当たり障りのない返事をするミユキだったが、相手──元気の良さそうな赤毛の少女は首を傾げる。 「……ま、いっか。それよりさ、こないだ貸したCD返してもらっていいかな?」 「へ!?うん、いい…わよ」 従姉の口調を思い出しつつ、しゃべるミユキ。内心は汗ダラダラだ。 (どうしよう……お姉ちゃん、何のCD借りたのかな?) こうなったら、忘れたフリをして相手に聞くしかあるまい。 女の子を部屋に招き入れ、CDラックに歩み寄りつつ、できるだけ自然な切り出し方を考えるミユキだったが、生憎それは徒労に終わった。 「ねぇ……キミ、誰?みゆみゆじゃないよね?」 ミユキ──「早川美幸」のフリをした従弟の少年、浅倉要は、女子寮に来て早々にピンチに陥っていた。 「ねぇ……キミ、誰?みゆみゆじゃないよね?」 夕飯後に、本物の美幸の友人と思しき女の子から、いきなりそう問い詰められたのだ。 いや、実際には相手はノホホンとした口調で「問い詰め」とかいう雰囲気ではなかったが、やましいトコロがあるミユキには、そう感じられた。 「な、何を根拠にそんな……」 焦っているせいか、従姉の口調を真似できてるかは微妙にアヤしい。 「んー?だってさっきの晩御飯の時、みゆみゆが魚残さなかったし〜」 「あ、アレはたまたま……」 「わたし、CDなんて借りた記憶ないし〜」 どうやらカマをかけられたらしい。 「だ、だよね。道理で思い出せなかったはずだ、わ。や〜、他の人と勘違いしちゃった」 それでも、何とか誤魔化そうとするミユキだったが、そこに少女がトドメをさす。 「そ・れ・に……いつもなら、美幸ちゃん、わたしが「みゆみゆ」って呼んだら怒るじゃない」 これ以上の言い訳は無駄らしい。観念したミユキ──要は、美幸のクラスメイトにして寮のお隣りさんである少女、長谷部奈津実(はせべ・なつみ)に真相を打ち明けることにした。 「──ってワケなんです。こんなコトになったのは、不幸な偶然が重なった事故って言うか、その……」 自分の正体から、この入れ替わり劇を強行した経緯に至るまで、ミユキは自分の知る限りの情報を奈津実に話した。 「なるほどね〜。偽・美幸ちゃんは、本当はイトコの人なんだ」 「はい」 相変わらず笑顔のままでいまいち表情の読めない奈津実の確認に、神妙に頷くミユキ。 と、その瞬間、小さな静電気のようなモノがミユキの身体に走る。 「ひゃっ!」 思わず自分の身体を抱きしめ、俯くミユキ。 「!どうかしたの?」 「い、今、なんか、バチッと……」 心配そうに尋ねる奈津実だが、顔を上げたミユキを見て息を飲む。 「あ!要ちゃん……だっけ?さっきまでと違って、確かに美幸ちゃんと違う人に見えるよ」 「えぇっ!?」 もしかして、例の絵の効果が切れたのだろうか? 「ううん、そうじゃないと思うよ。あのね、パッと見は確かに美幸ちゃんとよく似てるんだけど……でも、キミが「小早川美幸」本人じゃないって、認識できるの」 「??えぇーっと……」 小学六年生の少年には、奈津実の説明は少々難しかったが、どうやら「絵の効果」が完全に解けたわけではないらしい。 「うーんと、ね。ホラ、お話とかマンガとかでも、幻覚を使う敵の術を見破ったら、効果が半減するじゃない?そんな感じ……なのかなぁ」 どうやら奈津実にもうまく把握できてないらしい。 要するに、奈津実がミユキの正体を見破り、それをミユキが認めたことによって、少なくとも奈津実に対するあの絵の効果が薄れたのは確かなようだ。 「え……そんな中途半端な状態、困るよー」 元気が取り柄の男の子とは言え、よく知らない場所で不測の事態に陥ったミユキは、泣きそうになる。 と、その時、そっとミユキは背後から奈津実に抱きしめられた。 「ごめんね、要ちゃん。わたしが、好奇心に負けていろいろ追求したから」 小学生の男の子を泣かせてしまったことに、どうやら罪悪感を覚えているらしい。 「グス……ううん、奈津実さんは悪くないよ。元はと言えば、ボクと美幸お姉ちゃんのせいなんだし……」 「お詫びの代わりに、要ちゃんと美幸ちゃんが元に戻れるまで、わたし、色々フォローしてあげるから」 優しく慰める奈津実は、従姉である美幸よりも「お姉さん」らしく見えて、ミユキは安堵感に包まれた。 「うん……ありがとう、奈津実さん」 「じゃあ……まずは、寮の談話室に行ってみようよ。その「絵」の効果が薄れたのが、わたしに対してだけなのか、それとも他の人全員なのか、確かめないと」 奈津実に手を引かれ、恐る恐る1階の談話室へと降りるミユキ。 その結果、美幸の顔見知り何人かと出会い挨拶などした感じでは、入れ替わりについて他の人間は誰も気づいていないようだった。 さらに、お茶を飲みながら軽く雑談をしてみたものの、異状を指摘する人間は皆無だった。 「ふぅ、良かった。これでちょっとだけ安心だね〜」 美幸の部屋に戻ったふたりは、ホッとひと息ついた。 「うん……じゃなくて、はい」 「ああ、別にいいよ〜、敬語なんて使わなくても。て言うか、同学年の友達なんだから、普通にしゃべる方が自然だし」 「……奈津実さん、いいの?ボク、本当は小学六年生なんだよ?」 ミユキは遠慮がちに奈津実に尋ねる。 「うーん、でも、要ちゃんは、これからしばらく「ミユキちゃん」になるんだから、できるだけ不自然なトコロはなくさないと。それに、わたしはミユキちゃんとお友達になりたいと思うんだけど、ダメかな?」 ニッコリ笑う奈津実に、慌てて首を横に振るミユキ。 「そ、そんなことない!」 「じゃ、決まり〜。寮だけでなく学校でもできるだけフォローしてあげるから、安心しておねーさんに任せてね〜」 災い転じて福と言うべきか、こうしてミユキは寮生活一日目にして心強い味方を得ることができたのだった。 明日からの学校生活に関して簡単な相談を終えたところで、奈津実がふと壁にかかっている時計を見た。 「あ〜、もぅこんな時間だ〜」 釣られてミユキも時計を見れば、確かに10時前だ。そろそろ寝る準備……いや、その前に、明日の学校の準備をすべきなのだろうか。 (でも、高校生なら、12時くらいまでは起きてるんじゃないのかな?ボクだってお昼にうたた寝したせいか、まだあんまり眠くないし) しかし、当の奈津実は、そんなミユキの思惑から大きく斜め上にズレた発言をする。 「ミユキちゃん、そろそろお風呂に行かないと〜」 「!い、いや、さすがにそれは……」 ミユキ──要だって思春期の男のコなのだから、年上のお姉さんたちの裸に興味がないと言えば嘘になるが、この状態で「覗き」みたいな真似をするのはさすがに憚られた。 ところが、奈津実の方はそんなミユキのささやかな純情をアッサリ無視してくれた。 「気にするコトないよ〜。小学生に見られたってそんなに気にならないし。それに、今はキミがミユキちゃんなんだよ。年頃の女の子が毎日お風呂に入らない方がよっぽどヘンだよ〜」 一応各部屋に簡易シャワーは付いているのだが、キチンとした浴槽は一階の大浴場にしかない。 結局、「ちょっと変わり者なトコロのある本物の美幸ちゃんだって、お風呂には毎日入ってたんだから〜」と、力説する奈津実に説き伏せられ、ミユキは大浴場に一緒に向かうことになったのだが。 「あ、そ〜だ。ミユキちゃん、今どんな下着付けてるの?」 「ブッ!な、奈津実さぁん……」」 スケベな中年オヤジみたいな奈津実のエロ発言に、さすがに噴き出す。 「あ!誤解しないでね。ホラ、脱衣場で着替えるとき、ヘンな下着着てたら怪しまれるじゃない」 なるほど。言われてみればその通りだ。 「え、えっと……ちゃんと、美幸お姉ちゃんのパンツを履いてるから……」 さすがに恥ずかしいのか、僅かに頬を染め、小声になるミユキ。 「ふーん。どんなの?」 「その……白にピンクの水玉が入ったヤツ……」 答えつつ、ますます赤くなるミユキを「可愛いなぁ〜」と思いつつも、奈津実は追求の手を緩めない。 「じゃあ、上は?」 「え?」 「あ〜、その調子だと、ブラジャーしてないでしょ。ダメだよ〜、高校生の女の子が、いくら寮内だからってノーブラなのは」 多少マセてるとは言え、それでもやはりミユキ──要は小六の少年だ。現役女子高生にそう説得されれば、そんなモノかと思ってしまう。 「うぅっ……でも、ボク、ぶ…ブラジャーの付け方とか知らないし」 「だいじょ〜ぶ!わたしが教えてあげるよ〜」 そこまで言われてしまっては、ミユキも断れない。 隠してミユキは、奈津実の「緊急女の子講座その1:ブラジャー編」を受けるコトになるのだった。 「それで、美幸ちゃんは下着はどこにしまってるのかな?」 「あ、それは……コッチの下から二段目のはずです」 奈津実をシンプルな木目地のタンスの前に案内するミユキ。 ──しかし、彼、いや「彼女」は気づいているだろうか? 確かに美幸は要に、寮のタンスに「制服の替えや私服、下着がある」ことは説明していたが、その詳細までは教えていなかったコトに。 それなのに、今自分が迷うこともなくブラジャーのしまってある場所を奈津実に教えたコトに……。 それが何を意味するのかは、「彼女」自身が理解するには、いましばらくの時間が必要であった。 「ふむふむ……相変わらず、素っ気ないデザインの下着だなぁ……って、アレ?」 物怖じしない性格故か、友人のタンスを物色していた奈津実は、白や薄い水色の地味な下着類に隠れるように、黒や紫、あるいはショッキングピンクなどの派手なカラーのものがしまわれていることに気付く。 デザインの方も、かなり大胆なハイレグや紐パン、あるいは逆にレースの装飾がたっぷり施されたブラやシミーズなど、15歳の少女としてはなかなか思い切った代物だ。 「なぁんだ……やっぱりみゆみゆも女の子だね♪」 奈津実はそれらを美幸がコッソリ買った「勝負用下着」だと思い、ニンマリしたのだが、事実は多少趣きが異なる。 コスプレの隠れ趣味がある美幸が、こっそり通販で買った衣装を着る時、気分を盛り上げるために着るためのものなのだ。 まぁ、ソレはソレで、ある意味「勝負用」と言えないこともないのだが……。 「ミユキちゃーん、ねぇ、どっちがいいかな?」 悪戯っぽい表情で(いや、完全にからかう気満々で)、ワザとそれら派手な方の下着の上下セットを、ミユキに見せびらかす奈津実。 「う、あ、えーと……ボクが選ぶの?」 小学生とは言え、微妙なお年頃のミユキが、顔を真っ赤にしながら奈津実に聞き返す。 「うん。だって、さすがに毎朝わたしが来て選ぶのもヘンでしょ?」 確かに、もっともな話だった。 「ええっと……」 利発なミユキもソレは理解できたので、努めて意識しないよう心がけつつ、奈津実に示されたふたつの「選択肢」を吟味する。 そして、冷静に考えると、すぐに答えはひとつしかないことに気付いた。 「み、右の方でお願いします……」 奈津実が左手に持ってる方は、角度のかなり際どい角度のハイレグショーツとストラップレスのブラジャーだ。デザインが比較的シンプルなのはよいが、まがりなりにも生物的に♂なミユキでは、身体の線やナニの形が明確に浮かび上がってしまう。 その点、右手のショーツとフルカップブラジャーは、フリルとレースの装飾がごっちゃりついた少女趣味なデザインだが、だからこそ体型その他がカバーしやすそうだった。 もっとも、実のところ例の鳥魚相換図の魔力?で、ミユキの姿は、本人同士とバレた奈津実以外には完全に「美幸」本人に見えているので、あまり気にする必要はなかったのだが。 「お、お客さん、お目が高いね〜。コチラはエンジェルドリーム「天使の夢」って人気ブランドの売れ筋商品だよ。コレを着たら、どんなお転婆娘も可愛らしい天使に早変わり、って評判なんだ〜」 本当か嘘か分からない奈津実のウンチクを素直なミユキは「へー」と感心して聞いている。 「じゃあ、ミユキちゃん、これに着替えよっか」 「う、うん……」 そう返事はしたもののモジモジしているミユキ。 「うーん、恥ずかしいのはわかるけど、お風呂はもちろん、体育の時の着替えとかもあるし、慣れないとね?」 優しく言い聞かせる奈津実の言葉にコクリと頷くと、ミユキは躊躇いながらもTシャツとショートパンツを脱ぐ。さらに、耳まで真っ赤になりながら最後の砦──ピンクの水玉模様のショーツを下半身から脱ぎ棄てた。 「ほぇ〜」 「あ、あのぅ奈津実、さん?」 感嘆したように彼の裸身、特に股間のあたりを見つめる奈津実の視線に、落ちつかなげに身をよじるミユキ。 自然と右手で股間を隠しているのはいいとして、左手を胸に回しているのは何故なのだろうか? 「あ、ゴメンゴメン。や〜、男の子だとは知ってても、わたしの目には、どう見ても女の子に見えるんだよねー、不思議なコトに」 どうやら、奈津実からも、鳥魚相換図の影響が完全に抜けたワケではないらしい。 「そ、そうなんだ……」 ミユキは微妙に複雑な表情になる。 (バレないのは助かるけど、男として何か悔しいような……でも、ちょっとホッとしたような……) そう思いながら、奈津実に渡された明るいライムグリーンのショーツに足を通す。 (女の子のパンツって、不思議だよね。元はちっちゃく見えるのに、履いてみたらそんなに窮屈じゃないし……) 「それに肌触りとか気持ちいいし」という正直な感想は、あえて考えないようにする。 まったく恥ずかしくないワケではないが、この1週間あまり美幸の自宅で、ミユキとして(できるだけ中性的なものを選んでいたとはいえ)女物で過ごしてきたのだ。多少は慣れて免疫もできている。 そう、ショーツまでは。問題は、ココからだった。 「は〜い、じゃあミユキちゃん、いよいよ初ブラジャー、試そうか?」 何が楽しいのかニコニコ笑顔の奈津実が、ショーツとセットのブラジャーを手にミユキの背後に迫る。 「お、おてやわらかに、おねがいします」 テレビで聞いたことはあるものの、自分では一度も使ったことのなかったフレーズで、おそるおそる頼み込むミユキ。 「にゃはは、大丈夫ダイジョ〜ブ、ヘンなことはしないから」 明るく笑う奈津実の言葉を、とりあえずは信用する。 「ではまず、最初に前に回したホックをとめます」 「え!?でも、コレじゃあ後前だよね?」 「うん。だからホックをとめたらグルリと180度回転させるんだ。わかる?」 「──こんな感じ?」 「そうそう。で、次にその状態からストラップの部分を肩にかけるの」 確かに、奈津実の説明は丁寧でわかりやすかった。また、ミユキが幼く身体が柔らかかったことも幸いしたのだろう。 「えーーっと……こう?」 「うん、OK。で、最後に脇腹のお肉とか脂肪を寄せて……」 「ひゃん!な、奈津実さん、くすぐったいよォ」 「アハハ、ちょっとだけ我慢してね〜。本来は自分でやるから、そんなくすぐったくはないだろうから」 「う、うん……でも、何でこんなコトするの?」 「フフ、乙女のたしなみ……ってか見栄だよン。こうした方が、ブラジャーのカップの中味が充実して、オッパイが大きく見えるんだよ。ミユキちゃんも鏡、見てごらん」 奈津実がミユキの両肩に手を置き、鏡の前に誘導する。 「へ?鏡って……あっ!」 視線の先、鏡の中には、ミユキ自身の目から見ても「今時の女子高生にしては、ちょっと小柄な女の子」にしか見えない「少女」が映っていた。 親戚とは言え、顔立ち自体は本物の美幸とさほど似てないはずなのだが……今鏡に映っているのは、どういうワケか「美幸」そのものに思えた。 「え……う、嘘?」 ミユキ自身も、そんな自らの姿に違和感を覚えることなく、それが当り前のように感じる。 (あれ?ボクって、本当は早川美幸じゃなくて浅倉要……のはずだよね?) 自分のアイデンティティが揺らぐような、不安定な感覚に一瞬目眩がしたミユキだったが。 「ん〜、ミユキちゃん、可愛いっ!」 背後から奈津実に抱きしめられることで、すぐに現実感覚を取り戻す。 「うわっ!な、奈津実さん、はなれてよー!!」 「ヤダよ〜。それに、女の子同士のスキンシップなら、コレくらい普通だよ?早く慣れないと」 「わ、わかった。わかったから、いったん離してーー!」 キャイキャイとはしゃくふたりの様は、すっかり同年代の女の子そのものだ。 だから、ミユキは気付かなかった。あるいは、見過ごしてしまった。 自分が、たった今、取り返しのつかない第一歩を踏み出してしまったコトに。 ──カッポーーーーン…… と言う効果音が響くここは、お約束通りに風呂場。ただし、一般家庭の浴室などではなく、星河丘学園女子寮の1階に設置された、温泉A風の大浴場である。 脱衣場から入って右手に5、60人程度は余裕で入れそうな大きな檜製の湯船があり、その隣りには女生徒の美容を考慮してかジェット風呂なども備えられている。 左手側は洗い場となっていて、同じく50人分のシャワーと蛇口が風呂椅子とともに備えられていた。簡単な仕切りもついているのは、体型その他でコンプレックスを抱く子への配慮だろうか? さらにはガラス戸を開けて外(といっても周囲は高めの塀で囲われてはいるが)に出れば、いわゆる露天風呂(日替わりハーブ入り)を堪能できるし、10人程度が入れる小部屋となったサウナや、水風呂までもある。 下手なSPAに行くのが馬鹿らしくなるほどの充実ぶりだった。 ちなみに、クラスメイトの男子によれば、男子寮の方の大浴場は、やや古いこともあってここまで豪華ではなく、昔懐かしい銭湯風の造りなのだとか。 「まぁ、それはそれで風情があって、おもしろそうだよねぇ〜」 「あ、う、うん。そうだね……」 歯切れの悪い答えを返す「クラスメイト」の方を見て、目をパチクリさせる長谷部奈津実。 彼女の隣りで、真っ赤な顔して湯船浸かっているいるのは、クラスメイトであり、寮の隣室の住人であり、さらに(幽霊部員とはいえ)同じクラブに所属している部活仲間でもある、「早川美幸(はやかわ・みゆき)」のはずなのだが……。 「あれ、もしかして、みゆみゆ、ノボセちゃった?」 風呂の温度はややぬるめに設定してあるが、かかり湯もそこそこに、「美幸」は湯船に入ったかと思うと、一番端っこに陣取って以来、ほとんど身動きしていないのだ。湯当たりしてもおかしくない。 「いや……って言うか、その……」 言いにくそうに口ごもっている「美幸」の様子に、ようやく「彼女」が何を気にしているか思い当たったようだ。 「ああ、そうか……そんな心配することないと思うよー、周囲には完全に美幸ちゃんに見えてるみたいだし」 そう、言うまでもなく、ココにいるミユキは美幸に非ず。実際には、小学六年生の少年で、本物の美幸の従弟にあたる浅倉要(あさくら・かなめ)であった。 もっとも、アヤしげな魔法の絵の効果によって、一週間程前から従姉と「立場」が入れ替わってしまい、周囲には彼が「彼女」に──星河丘学園高等部1年B組の女生徒、早川美幸に見えているのだが。 「そ、それもあるけど、いいのかなぁ、ボクなんかがココにいて……」 スポーツ大好き少年な要だが、性格的には「やんちゃ」と言うよりは「優等生」と言う方が近い。 気が弱い……というほどではないが、なまじ頭がよくて礼儀正しいため、覗きをしているような今の状態に罪悪感を覚えているようだ。 「アハハ、ミユキちゃんは真面目だね。こういう事態なんだから、役得って割り切ればいいのに〜」 偶然ミユキの事情を知り、「彼女」の協力者となることを約束した奈津実だが、同時に、その軽くて能天気な性格ゆえか、ミユキをよくからかってくる。 まぁ、からかうとは言え、周囲へのフォローはしてくれてるし、「女子高生」の生活習慣に疎いミユキに対して色々教えてくれるので、助かってはいるのだが。 (──美幸お姉ちゃんが苦手にしてたのって、わかる気がするなぁ……) 決して悪い人ではない、むしろ世話好きでお人好しの部類に入るだろう奈津実だが、あのインドア派で騒がしいのが嫌いな従姉にとっては、構われるのはさぞ苦痛だったろう。 ミユキの場合は、時に「もっと落ち着きなよ」と感じないではないのだが、奈津実が色々気遣ってくれていることも十分理解しているため、その手を振りほどこうとは思わなかった。 そういう意味では、本物の美幸より「彼女」の方が、KY能力の高い「大人」だと言えるかもしれない。 「そりゃ、ボクだって興味ないワケじゃないけどさ……さすがに、この状況だと、万が一バレたら、「しめんそか」でしょ」 「お、難しい言葉知ってるね〜。ま、ミユキちゃん、本来は小六でしょ。なら、銭湯とかで女風呂に入ってもギリギリセーフだと思うよ」 元々男子の11、2歳という年齢は、かなり成長差が激しい。 要は、背丈自体は151センチと平均よりやや高い方ではあったが、第二次性徴の兆しはあまり見当たらず、無論声変わりもしていない。陰部に毛も生えていないし、さらに言うなら実は精通自体もまだだったりする。 たとえば母親などと一緒に女風呂に入っても、笑って許されるだろう。 「それは……そうかもしんないけど」 とは言え、ビミョーなオトシゴロ。意識するなと言う方が無理だろう。 しかし、いつまでも湯船の隅に縮こまっていては悪目立ちするし、本当にノボせて倒れるかもしれない。そうなっては、「周囲に怪しまれないように」大浴場まで来たのに本末転倒だ。 奈津実に促されて、ミユキは渋々湯船を出、無意識に股間と、なぜか胸元をタオルで隠しながら洗い場の隅へと足を運んだ。 「あ、そうそう。念のため聞くけど、ミユキちゃん、ひとりで髪の毛とか身体洗える?」 「あ、あたりまえでしょ。そこまで子供扱いしないでください!」 (一応小声で)それでも憤慨するミユキに、奈津実はチッチッチと立てた人差指を振ってみせる。 「わたしが言ってるのは、「女の子の洗い方が出来るか」ってことなんだけど?」 「う……」 そう言われてしまうと、ミユキとしては、ぐぅの音も出ない。 一昨年くらいまでは、本物の美幸に誘われて一緒にお風呂に入ってたりもしたが、「イトコのお姉ちゃんの裸」を見るのが気恥ずかしいという気持ちもあって、そんなにじっくり観察してたりしてない。 何となく「こんな感じだったかなー?」という仕草を実演してみせると、奈津実の評価は「60点。もう少し頑張りましょう」といったところで、いくつか細かい部分を指摘され、直された。 「お湯で軽く流して、シャンプーして洗って流して、そのあともう一度リンスして流す……って、女の子の洗髪ってめんどくさいんだね」 言葉通りにたっぷりシャンプーを付けて襟を隠す程度の髪を──奈津実に言われた通り丁寧に──洗っているミユキが嘆息する。 「あはは、まぁ、みんなヤってることだしね。その面倒を乗り越えてでも、少しでも綺麗になりたいと言うのが、乙女心というヤツだよん。それに、ミユキちゃんは、ショートに近いセミロングだから、まだ楽な方だよ」 確かにザッと風呂場を見渡してみても、さすがは名門私立の女子高生、背中どころかお尻まで届きそうなロングヘアの娘も何人か見受けられる。あれだけ長いと、髪を洗うのはひと苦労だろう。 目の前の奈津実にしても、普段のサイドポニーをほどくと、背中を覆うくらいの長さはあるのだ。 「ふぅん……だから、女の人のお風呂って長いんだね」 慣れない手つきでリンスしながら(ちなみに、シャンプーとリンスは奈津実のものを借りている)、納得したという風にウンウンと頷くミユキ。 「ミユキちゃんは、家ではカラスの行水?」 「それって、お風呂が短いことのたとえだっけ?ううん、そうでもないかな。むしろ、お風呂に入る事自体は結構好きかも。ただ、家だと、あんまり長く入ってると、待たされたお父さんが、びみょーに不機嫌になるんだよね」 現在の早川家の習慣では、寝る時間の早い要が一番、次が父親で、色々手間のかかる母親が最後と決まっているのだ。 「だから、こんな風に広いお風呂にのんびり入れる点は、ちょっとだけうれしいかも」 大浴場備え付けのボディーシャンプーで身体を優しく洗いながら、笑顔になる。 「あはは、良かったじゃない。今日はもう遅いからあんまりゆっくりしてられないけど、この寮のお風呂は、夕方6時からならいつでも入れるし、明日からはもっと早めに来てみたら? 扉の向こうの露天風呂とか夜に星空を見ながら入るのも、ロマンチックだし、ハーブの効果でお肌つるつるになれるしね!」 「そっかー、明日が楽しみだなぁ」 そんな風に奈津実と会話しているうちに、気づけばミユキは、ここが女風呂だと言うことを忘れ、すっかりリラックスしていた。 いや、正確には「忘れた」のではなく、「気にならなくなった」と言うべきか。 最初女風呂に足を踏み入れた時は、自分自身の恥ずかしさを別にしても、見知らぬ外国に迷い込んだ異邦人みたいな恐れを感じていたのだ。 ところが、ずっといても特に周囲に異端視されることもなく、奈津実と気楽に雑談し、時にはクラスメイトらしき女の子に挨拶されて会釈を返したりしているうちに、自分が今ここにいることが、ごく自然に思えて来たのだ。 ──実は、コレは例の「絵」の効果が一段階進行したからにほかならないのだが、ミユキがその真相に気づくことはなかった。 ![]() ![]() ![]() ![]() |