そこはとあるお屋敷
シチュエーション


そこはとあるお屋敷。
その一室にて、メイド服に身を包んだ人物が
その主人と思われる人物に給仕している。
一見在り得る光景だが、何かが違っていた。

「なんで俺がこんな事を・・・」

メイド服の人物が小さく呟く。

「あら、約束は守らないとだよ」

その呟きを聞き逃さず、主人らしき人物が言葉を続ける。

「今日一日は私が遥人(はると)様で、遥人様が私なんだからね」

その言葉にメイド服の人物はあからさまに嫌な顔をする。
「でも、これはなぁ」

「こら、雛子。なんだその態度は、給仕は立派なメイドの仕事だぞ、
ちゃんとするんだ」

すかさず叱咤を入れる主人らしき人物。

「(俺の事、雛子って…。名前まで交換だもんな)」

メイド服の人物は声に出すとまた指摘されそうなので、心の中で呟く。
そして意を決し、返事を返す。

「申し訳ありません。遥人様」

その態度に満足そうに頷く主人らしき人物。

「分かってくれれば良いんだ。じゃあ食事の続きをお願いするよ」

そうして食事が再開される。
何かが違っている光景。
それはこの一連のやり取りから察することが出来るであろうが、
メイド服の人物は男性であり本来はメイドの主人にあたるはずで、
主人らしき人物は男物の服に身を包んでいるが女性で本来はメイドの
はずだと言う事なのだ。
つまりは、立場が入れ替わっていると言う事の他ならない。
何故こんなことになったのか、事の起こりは一週間前の出来事だった。

お屋敷の雛子が使用している部屋に、遥人と雛子の姿があった。
その様子は主人とメイドと言う感じではなく、気心が知れた友達同士と
言った感じだ。

「雛子って来週誕生日だよな?」
「そうだけど、なんかお祝いしてくれるの?」
「そのつもりなんどけどさ、どんな感じのが良いのかなって思ってさ。

出来れば雛子の要望を叶える形でって思ってね」

「どんなのでも良いの?」
「まあ、出来る範囲でならね。莫大なお金が掛かるとか、時間が掛かり
過ぎるものとかはダメだけど」
「えーっ、世界一周旅行とか言おうと思ってたのに」
「それ、俺も行った事無いぞ。って言うか俺の小遣いじゃ無理だし、
そんな長い期間メイドの仕事を休まれると困るから」
「冗談冗談、わかってるって」
「これでも、雛子には感謝してるんだよ。幼馴染で昔から何かとお世話
してもらってるからさ」

そう、遥人と雛子は幼少の頃からの付き合いがあり、雛子のメイドとしての
勤務時間が過ぎた後は主従関係ではなくこうして幼馴染として交流を持って
いるのだ。
まあ、多少幼馴染の交流を過分する所もあったりするのだが。

「ありがと、どうしようかな〜。考えておくね」
「ああ、出来る範囲だったらするから。後で聞かせてよ」
「うん、分かった。じゃあ、明日も早いし私寝るから」
「ん、じゃあおやすみ」

遥人はそうして雛子の部屋を後にした。
この約束が後に大変な事になるとは思いもよらずに。

雛子に何をして欲しいかを聞き、その度にまだ考え中と先送りを続けられ、
とうとう当日になってしまった。
時刻はまだ5時前、夏ゆえに日は出ているがまだ朝露は晴れていない。
遥人は自室のベッドで眠りについていた。
そこへ近づく、メイド服姿の人物がひとり。

「起きて、起きて遥人」
「うーん、雛子?」

それは雛子だった。
雛子は遥人を揺すり起すと、笑顔を見せる。

「おはよう遥人。あのね、例のお願い決まったよ」
「おはよう雛子。それで何をして欲しいの?って言うか今何時だ?」

遥人は眠い目をこすりながら、時計を確認する。

「まだ5時前じゃないか。ねむ…」
「まあ、確かに早いけど私はいつも5時起きよ?6時には働いてるんだから」
「そうなんだ。いつもご苦労さん」
「でね、お願いなんだけど。今日一日私と代わって欲しいの」
「はい?それって俺が雛子の代わりにメイドの仕事をするってこと?」
「うん、そう。夏休みで学校もないし大丈夫でしょ?」
「まあ、それで雛子が休めるって言うならそれで良いよ。
でも俺に出来るかな?」
「大丈夫、私が側に付いてあげるから」
「それなら、大丈夫かな?」
「じゃあ、決まりね。じゃあ早速」

言って突然メイド服を脱ぎだす雛子。

「ちょっとまって、もしかしてメイドの仕事をするからメイド服を
俺に着ろって事!?」

その様子に慌てる遥人。
だがしかし、遥人のその考えは半分正解で残りは違っていた。

「そうなんだけど、ちょっと違うわね。私は遥人に私と代わって欲しいって
お願いしたの。つまり、遥人には私雛子になってもらって、
私は遥人になるって訳」
「え?え?それってどう言う??」

その答えに遥人は混乱してしまう。

「だから、今日一日は遥人には私として振舞ってもらって、
私は遥人として振舞うって事なのよ。立場の交換ってやつ」
「えぇぇ〜っ」

あまりの突拍子の無さに遥人は驚きの声を上げるしかない。

「さ、遥人も脱いで。私が着るものがないから」

いつの間にか全裸になった雛子が遥人の衣類を全部脱がしていく、
もちろん下着もだ。
あれよあれよと脱がさせた遥人はただされるがままだ。

「ふっふん、遥人の脱ぎたてパンツ♪」

そして、脱がせた服を着こんで行く雛子、妙に上機嫌なのがアレである。
すっかり先程までの遥人のパジャマ姿だ。

「これで私、いや俺は遥人だ。さあ、そっちの遥人は雛子になっちゃおうか?」

今度は雛子が自分で脱いだ服を、遥人に着せようと近づく。

「あのさ雛子。本当に着なきゃ駄目?」

腰が引けて後ろに下がる遥人。
しかし雛子は逃げるのを許さない。

「雛子はおまえだろ?いつまでも裸で居ないで服を着て仕事に行かないと
ダメだぞ」

そう言い、壁に追い詰めショーツを遥人に履かせる。

「あの、雛子このショーツ濡れてるんだけど、たぶんアソコの液で」
「あ、ゴメン。遥人に履かせる事思い付いたら、つい興奮しちゃって濡らしちゃった」

つい素に戻る雛子。

「雛子ってそう言う変態なとこあるよな。昔から」
「まあ、そこはね。ちなみにそのパンツ3日履き続けた
私のフェロモンたっぷりのパンツだから、このブラも同じね」

言ってショーツとお揃いの清楚な白いブラを遥人に装着する。

「このブラもなんか湿っぽいんだけど」
「それは私の汗のせいだから。さて次はスリップを着て貰ってと」

話しつつも雛子は休むことなく遥人に自分の衣類を着せて行く。
遥人は観念してさせるがままだ。

「そして、こだわりのニーソックスにワンピースにエプロンっと最後にカチューシャをつけてっと。うん完成」

そこにはすっかり雛子のメイド服を着た遥人が完成していた。

「どう?これで遥人は私になったのよ。
そのメイド服もニーソも私の匂いたっぷりでしょ?
それ着たまま部屋を閉め切って暑い中一晩布団の中に居たから
汗たっぷりしみ込んでるからね」
「なんでわざわざそんな事するんだよ?」

すっかり諦めてる遥人が聞き返す。

「だって、私の匂いが遥人からしてきたらそれだけで遥人は私なんだって思えるし、
遥人も自分が雛子だって言う風に思えるでしょ?それに匂いがあった方が喜ぶと思って」
「思わないし、喜ばないから」

どこでそう言う感性が磨かれたか知らないが、幼馴染の持論に脱力する遥人。

「ああ、あと靴だけど、こればっかりは私のじゃ入らないから別なの用意したわ」

もうどうでも良くなった遥人は差し出されたローヒールを黙って受け取り履くと、
ふと姿無を見てため息を吐くのだった。

「さあ、雛子早速仕事だ。まずは俺の着替えを手伝ってくれ」

切り替えスイッチが入った主人の雛子は早速メイドの遥人に命令を出す。

「はい、ただいま」

着換えの手伝いなんてしてもらった事無いよなと思いつつ、
それでも素直に遥人は手伝うのだった。


まあ、いろいろあって今に至る。

「遥人様、紅茶をどうぞ。今朝の紅茶はウヴァのミルクティーです」
「うん、ありがとう」

主従を入れ替えている二人、果たしてどんな一日が待っているのだろうか?
願わくば、これ以上の変な事にはなりたくないと願うメイド姿の遥人であった。






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