サンキュークレープ
シチュエーション


『恵瀬(えのせ)クレープ店 アルバイト募集。』

求人雑誌の片隅にその広告を見つけたとき、俺は胸がときめいた。

恵瀬クレープ店は小さな店だ。
市の中心街からひと駅離れ、いい具合に落ち着いた街にひっそりと店舗を構えている。
会社の近くにあったので俺も時たま買いに行ったものだ。
そこは家族三人で経営されていた。
夫であり、厳格そうなフランス人のアルバン・リゴ氏。
いかにも令嬢然として大らかな恵瀬八重子夫人。
そしてその娘の恵瀬都(えのせみやこ)ちゃん。

当時8歳ぐらいだった都ちゃんもよく店に出て働いていた。
俺は父であるリゴ氏が苦手だったため、八重子夫人と都ちゃんが居る時だけ買いにいっていた。
その狙いはクレープよりも都ちゃんだ。
都ちゃんはフランス人とのハーフだけあって、見たこともないほど愛らしかった。
雰囲気は母親に似て和風だ。つやつやの黒髪は今どき見事に大和撫子している。
しかしすらりとしたスタイルと透けるような白肌は、その辺りの日本人少女とはモノが違う。
あまりに縁遠すぎてファンタジーにさえ思える美しさだ。

その彼女と一緒に働けるかもしれない。
会社を首になり再就職もままならなかった俺は、そこの求人広告に飛びついた。

八重子夫人はイメージ通りの優しい方で、意外にも俺を歓迎してくれた。

「まぁ、29で首切りに…大変でしたね。

でも今日、こちらへいらして下さって本当に良かったですわ。
求人を出したところで誰も知らないだろう、と思っていましたもの。」
夫人はゆったりした喋り方で話し続けた。

聞けば、主人であるリゴ氏が少し前に亡くなったのだそうだ。
新たに店の長となった八重子夫人はそれまでリゴ氏に頼りきりで業務に詳しくないし、
原料の仕入れや売り上げ管理で手一杯のため店に手が回らない。
都ちゃんはしっかりしているが、現在12歳の少女に1人店を任せるのは不安がある。
だから俺のようなバイトが必要になったらしい。

「それじゃ、しばらくの間は都が学校から帰ってくる夕方から夜にかけての勤務ね。
主に都からお仕事を教えてもらう事になるけれど、よろしくお願いします」

八重子夫人はそう頭を下げる。

このようにして、若干12歳の少女が俺の上司になったのだった。


間近で見る都ちゃんは、店の外で見るよりずっと愛らしかった。
俺は妖精のような姿に見惚れる。

「よろしくお願いします、斉藤さん。」

そう礼儀正しく挨拶する姿は、もう立派な社会人に見えた。

「よ、よろしく。僕、何度かここに買いに来た事があるんだけど、憶えてる!?」

俺は舞い上がってそう切り出した。
俺が彼女を覚えているからといって、彼女が客の1人でしかない俺を覚えている筈が無いのに。

「え、ええと……う〜ん……」

当然、都は少し困った笑顔で首をかしげた。
やってしまった。都はいきなり俺を変な奴だと思っただろう。

それでも都は、俺に丁寧に仕事を教えてくれた。
レジの打ち方、商品の説明、渡し方…。俺が失敗しても、彼女は笑ってフォローしてくれる。
和やかに話もした。
彼女の話によれば、八重子夫人は実は病気を煩っているらしい。
もともと身体の丈夫な方ではなかったが、夫を喪った嘆きでさらに病状が悪化したのだそうだ。
そのため最近では頻繁に病院通いをしているらしい。
八重子夫人自身はもう店を畳んで都ちゃんを実家に帰したほうが…と思っているそうだが、
夫人がどれほどこの店を愛しているかを知っている都ちゃんは、たとえ1人ででも続けようと思ったらしい。
いじらしい話だ。俺はぜひ力になりたいと思った。

しかし、俺の要領の悪さはひどいものだった。
何しろ会社をクビになるような男だ、当然のように何度もミスを繰り返した。
それは3日経っても、1週間経っても変わらない。
何かとフォローしてくれた都ちゃんもさすがに堪忍袋の緒が切れたのか、その態度は次第に冷めていった。

「ちょっと、釣り銭足りないんだけど。」

金髪のギャルが俺を睨みつけて言った。千円札が足りなかったらしい。昨日もやったミスだ。
都ちゃんがこちらを振り向く。唖然としたような顔は、明らかにまたやったのか、と言っていた。

「も、申し訳ございません!!」

都ちゃんは大慌てでこちらへ駆け寄り、俺の横に立つと、ドンッ!と思いっきり俺の足を踏みつけた。

「ぐ!」

俺は思わず叫びそうになるが、客の手前堪える。
都ちゃんは客に平謝りしている。ギャルはその頭越しに様々な罵声を浴びせていた。
俺は申し訳なくて頭を下げたまま縮こまる。

ギャルがようやく帰った後、都ちゃんはこちらにゆっくりと向き直った。
その顔は疲れ切っている。俺は息を呑んだ。

「どういう…つもりですか」

都ちゃんは静かに言った。

「このお店、潰そうってつもりなんですか」

俺はぶるぶると首を振る。

「…だって、ひどいじゃない。もう何回目のミスよ!!あんた何歳なの、30前じゃないの!?
一体そんな歳まで何を学んできたのよ!!!」

都ちゃんはその令嬢然とした顔を憤怒に歪めてこちらを睨みつけてきた。
可愛いなどという感情は起きない。その美しい顔が、今はただ怖い。

「クビにしちゃいたいわ。こんな状況じゃなきゃ、絶対あんたなんかと仕事しないのに」

都ちゃんは最後に吐き捨てるように言って業務に戻った。
そこにはあの礼儀正しかった都ちゃんなどいない。
だがそうさせたのは俺だ。

都ちゃんだって、本当は俺を頼りたいだろう、仲良くしたいだろう。
29歳がバイトに入ると聞いて、最初は心強かったに違いない。だが実際はこんなクズだ。
今さら俺を首にして新しい奴を雇うのは大変だ。
第一そんな事を進言すれば、俺を雇った八重子夫人の心に様々な負担を掛けることになる。
だから俺をクビにするわけにはいかない。
明らかに都さんの足を引っ張ってしかいないのに。
俺は情けなくて涙が出そうだった、だがそうして心を乱れさせていると、また失敗が起きる。

「何だこの渡し方は、汚らしい! チッ……少し見ぬ間に最低な店になったな!!」

スーツ姿の男性が俺に罵声を浴びせる。
最悪な事をしてしまった。
相手は店の常連らしい。俺はクレープを渡す時、その常連客の手に誤ってチョコをつけてしまったのだ。
あわてて都ちゃんの方をみると、顔から完全に血の気を引かせていた。

「すす、済みません岸江様!うちの者がとんだ無礼を……」

すぐにタオルをもって駆け寄り、男性の手を拭う。
男性はこちらを指差して何かを言っていた。何をいっているのかショックで聞こえない。
都ちゃんは涙ながらに許しを請うていた。まだ小さな小6の少女が。俺のせいで。

結局男性はどれほど謝罪しても聞き入れず、二度と来ないと叫んで立ち去った。
都ちゃんは呆然と立ち尽くしていた。立ち尽くし、がくりと腰を抜かすようにショーケースに寄りかかると、拳を握り締める。
俺の背中に冷や汗が伝った。

「裏へ来て」

俺に背を向けたまま、都ちゃんが呟いた。店先に「準備中」の札をかけている。

都ちゃんに続いて店奥の座敷に入ると、いきなり彼女が俺の股を蹴り上げた。
ぐちゃっと音のするような感触と共に足の甲が触れ、太い電流が腹を突き刺す。

「がああああああああアアアアアア!!!!!!!!」

俺は絶叫してその場に倒れこんだ。やばい痛みに涎と汗が噴き出す。
痛みに喘ぐ俺の顔に、さらに都ちゃんの踏み付けが見舞われた。
鼻の骨がへこむ感触の中、むうっと臭気がする。一日中仕事をしていた都ちゃんの靴下の匂いだ。
その白い靴下の裏が執拗に俺の顔を踏みつける。微塵の容赦もない。

「死ね、死ね、しんじゃえこの能無し!グズ!!疫病神ッッッ!!!!」

都ちゃんはミニスカートから白いパンツを覗かせ、口汚く罵りながら俺を踏みまくる。
ハーフ少女の蒸れた汗の匂い。澄んだ声で叫ばれる罵声。
俺はあまりの出来事に頭がおかしくなったのか、その状況にゾクゾクと感じていた。
腰が淫らに蠢いてしまう。

「ははっ!何よこの反応、あんた嬉しいの、こういうのが?
もしかしてこういうコトされたくてあんな事してたってたわけ!?」

都ちゃんの細い脚から繰り出される蹴りが俺の竿を穿つ。はっきりいって相当痛い。
だが刺激的なのは否定しがたい事実だ。
たまらず四つん這いになった時、都ちゃんの足先が背後から強かに玉袋を捉えた。

「うぐふあああっ!!!」

俺は情けない叫び声で腰を抜かす。信じたくないことに、下着の中に熱い物を感じた。

鋭い都ちゃんは突っ伏した俺を転がすと、ズボンと下着を一気にずり下げる。
まだ先端をビクつかせたまま、トランクスの前に白いとろみをぶちまける逸物が曝け出された。
栗の花とも形容される生臭さが立ち昇る。

「くさっ……本当に射精してたんだ、あれが嬉しかったんだ…。考えてた以上のキチガイね。
じゃあいいよ。明日から、お望みどおり失敗した分だけお仕置きしたげる。」

俺の小さな上司は、冷たく見下ろしたままそう言った。

その言葉は事実だった。
その次の日から、俺は大きな失敗をした回数だけ辱められる事になったのだ。
次の日は土曜日だった。かきいれ時で忙しく、俺は6回ひどい失敗をやらかした。
その夜は八重子さんが出かけていたため、俺は都ちゃんに連れられて部屋に上げられた。
ぬいぐるみのある女の子な部屋だ。
俺はそこで服を脱がされ、紐で手を後ろに縛られた。
その上で全身鏡の前に正座させられる。
都ちゃんはその俺の後ろで膝立ちになり、俺に買ってこさせたコンドームを開封した。
そして箱の説明文を一瞥してするりと逸物に嵌める。器用だ。

「興は6回やらかしてくれたよね。じゃ、6回悪いのだそうね」

都ちゃんは俺の耳元で囁き、コンドーム越しに逸物を握り締める。俺は体が震えた。

「ねぇほら変態、鏡見て?男なのに女の子に縛られて、射精させられてるのよ?情けない」

都ちゃんが乳首を弄ってくる。くすぐったい。
俺はそのくすぐったさと状況への興奮から、すぐに一度目を射精する。
握り締める都ちゃんの小さな手から生ぬるい液が溢れ、コンドームを伝って陰毛を濡らす。
さらには透明な液部分が尻穴にまで垂れていって気持ちが悪い。
しかし今はそれより快感が勝っていた。

「1回目。あそこがビクビクしてる。あんたの腐った遺伝子が無駄に殺されてるのよ。お似合いだよね」

都ちゃんは意地悪く囁くと、間髪入れずにまた扱きはじめる。
生暖かい精液が潤滑油になり、ゴム越しの小さな手がすばやく逸物を擦り上げる。
たまらない快感で、俺は2分とせずに2回目を放出した。

「あああああ」

声が出てしまう。気持ちいい。尿道の中を熱さが迸っている。

だが、気持ちが良かったのはそこまでだった。
2回連続で達しては玉袋が萎んでしまい、後は扱かれても逸物の芯が鈍く痛むだけ。

「どうしたの?さっさとぶちまけようよ」

都ちゃんが鏡の中の俺を覗き込みながら言う。俺の顔は歯を食いしばり、つらいのが見え見えだった。

「ほらさっさと出そう、さっさと出そう。」

都ちゃんは傷口を抉るが如く、逸物をより大きく扱くと共に片手で俺の乳首を弄り回した。身体が跳ねてしまう。
小さな手は乳首から、脇腹、腹を少しつまみ、太腿へ。
そして吸い込まれるような動きで肛門へ至った。
指先が肛門付近の白濁駅を集めると、それを潤滑油に穴の中に捻りこまれる。

「うああ!!」

声が出た。

「何それ、まるでおまんこ触られた女の子だね。でも気持ち悪い声で喘いでも可愛くないよ、29歳のダメおじさん。」

くすくすと都ちゃんに笑われる。

「やっぱここ弱いの?少女マンガで見たんだ。……ま、あのマンガの受け手はジャニ系のイケメンだったけど。
あーあ、私なんでこんなダメオヤジのお尻掘ってんだろ。
そのヒゲ面で、この黒いお尻の穴からくっさいうんちこいてるんでしょ?うあーやだやだ。」

都ちゃんは尻の穴をかき回しながら、俺の心まで切り裂いていく。
だがその傷口からじんわりとした悦びが這い出てきて、鏡のなかのハーフ少女と重なった瞬間、
俺の逸物は3度目の射精を経験していた。
精管から先ほどより熱い精がじわりじわりと湧き上がり、カリの辺りで収束した後に尿道口から気持ち悪く溢れる。
1度目2度目がどろり、なら、今度はちょろりだ。湧き出た熱さに対して出た量が情けなさすぎる。
その差分が暴れるように、俺の逸物の根元がぎりぎりと傷んだ。

「ああ゛…でだ……いま゛でだぁ……。」

俺は汚い声で都ちゃんに訴えかけた。
なぜなら彼女は、3度目を搾り出したばかりの逸物をなお同じように扱きあげているからだ。
なんと残酷な。女ゆえの残酷さ。男ならどれだけ冷血を売りにしている奴でもできまい。

「まだ3回目でしょ。6回出させるって言ったじゃない」

都ちゃんは、この残酷で愛くるしい悪魔は、俺をゴミのように見て告げた。
じょぐじょぐじょぐじょ
コンドームに包まれたザーメンが逸物に擦れて音を立てる。
俺は絶望に声が出なくなり、2回無意味に口を開いた。

「ひはっ、ひは」

情けない息の後、ようやく声の出し方を思い出す。しかし強気な声が出ない。

「らすけて……痛いんだ、もう出ないんだ、わかって、もう痛いんだ、もう無理ッ…なんだ……!!」

俺はまさしくレイプされる女のように涙ながらに哀願した。
しかし俺に死ねといった都ちゃんは、それを聞き入れる事などしなかった。

そこから本当に6回射精できたのかは覚えていないが、朝まではやっていただろう。
次の日は出勤が休みだったが、俺は縛り上げられたまま、都ちゃんの布団の中に隠されていた。
都ちゃんが休憩時間に帰ってくるまで、俺は少女の甘酸っぱい寝汗を吸ったシーツを嗅ぎ続け、でも勃起できずに苦悶した。



それからも八重子さんの目の無い日を狙って辱めが続いた。
都ちゃんは俺を心の無い肉玩具とでも思っているのか、聞きかじった事を何でも試した。
俺の尻穴を弄り回して開発し、風呂場で小便を飲ませ、尿道に綿棒を突っ込んできた事もあった。
屈辱だったのは尻穴オナニーを強要された時だ。

新聞紙を敷き並べた部屋で買ったディルドーを尻に入れさせられる。
しかもただのアナルオナニーではない、射精するのに手を使ってはいけないという。
前立腺のみを刺激しての射精、いわゆるトコロテンという奴だ。
都ちゃんは俺にそれをさせながら、ベッドに座ってデジカメで俺を撮り続けていた。
惨め、この上なかった。
ローションをたっぷりと垂らし、地面に固定したディルドーを一気に飲み込む。
湧き上がる感覚に喘ぎ声が出る。

「うわー、ヒゲ面の喘ぎ顔。最悪にきもちわるーい!」

都ちゃんは端正な顔を歪めて俺を撮っていた。ベッドの淵にニーソックスを履いた足が垂れている。
美しい脚だ、おれはそれをオカズに腰を上下させる。

「う!う!う!!」

ディルドーの亀頭部に前立腺が擦られて声が出てしまう。

「ねぇ、いまどんな気分か聞かせて?」

時には都ちゃんが蔑んだ目で問いかけてくる。

「は、恥ずかしいです、あと苦しくて、手、手を、手を使ってだしたいです」
「ダメ。豚は前足つかって扱かないでしょ」

俺の訴えなど聞き入れられず筈もない。
手を後ろに置き、無我夢中で腰を上下させる。
だが動きが苛烈になると、固定していないディルドーが尻穴から抜けた瞬間に弾け跳んでしまう。
せっかく性感の頂が見えたのに、そうなるとまたディルドーを置いてやり直しだ。
都ちゃんはディルドーが飛ぶたび、あははと無邪気に笑っていた。
それを聞きながら俺は腰を使い、ディルドーを強烈に叩き込んで何とか射精に持ち込んだ。
尿道口からとろっと流れ出る白濁を確認した瞬間、足が震えて倒れこむ。汗だくだ。

都ちゃんに顔を撮られながら、俺は乙女のように恥じて身をかき抱いた。



そんな壮絶な体験をしながらも、俺はそこのバイトをやめることはしなかった。
なぜか? 何度も己に問いかけ、そのたび苦笑する。
都ちゃんに惚れているからだ。いや惚れているのではない、憧れているのか。
都ちゃんが横でスマイルを振り撒いているのを見るのが楽しい。
都ちゃんの吐く息を吸えているのが、腋の間を通った空気を感じていられるのが有り難い。
始め屈辱的でしかなかった罰も、今では都ちゃんに見つめられるだけで射精しそうになってしまった。
完全な恋だ。

だから、俺はその後何年もバイトとして居続けた。その間に環境は変わっていった。
都ちゃんは中学校を卒業する頃、新しいバイトを雇った。
クラスメイトだというその少年は、いかにも現代風のいけている少年だった。
仕事もでき、俺が3年かけて積み上げたノウハウを2週間で会得しきった。
彼は都ちゃんの俺に対する態度と俺の動きから無能さを察したらしく、すぐに態度を悪化させた。
資材を運ぶ時など、わざとらしくぶつかっていく。

「邪魔だよ、オッサン」

彼がそう吐き捨てると、都ちゃんもこっちを睨んできて今度は何したの、と詰め寄る。

彼が入ったおかげで仕事が円滑に進むようになり、八重子さんは安心して実家で養生をはじめた。
保護者がいなくなった事で、都ちゃんと少年の行動にますます遠慮が無くなる。

2人はやがて恋仲になった。
時期はちょうどクリスマスで、3人で店じまいを終えた後、俺はさっさと帰れと追い出された。
何をするかが解っていた俺は、そっと裏口に回って中を覗く。そこからは都ちゃんの部屋が見える。

「み、ミチヒロ、ミチヒロぉ!!きもち…いいよぉ!!」
「へぇ、処女なのに痛くねーのか?」
「い、痛いよ。痛い、けど、ミチヒロに抱かれて感じる痛みなら…わたしうれしいよ」
「お前、マジ可愛いな。やっぱ一生の女にするわ」

甘ったれた声の会話。水音。ベッドの軋む音。
俺はそれを聞きながら、暗く寒い路地の中で逸物を取り出して扱き出した。
かつてこれを握ってくれた小さな手を思い出す。

涙が出た。

12月25日、都ちゃんはミニスカートのサンタ姿で売り子をしていた。
ミチヒロはそれに手を振りながら店番をしていた。
俺は裏で大掃除の蜘蛛の巣取りをしながら、そんな2人を眺めていた。

「オッサン、サボってんじゃねーよ。首にすっぞ」

ミチヒロが気付き、俺の首元を掴んだ。

「……あと、俺の女なにジロジロ見てんだよ。きめぇよ」

そう囁いて乱暴に手を離す。そして都ちゃんに駆け寄った後、何かを囁いていた。
都ちゃんは目を丸くし、こちらを睨むとミニスカートの後ろを隠した。


それから4ヶ月後の4月1日。都ちゃんとミチヒロは結婚式を挙げた。
純白のドレスとタキシードに包まれた2人は実によく似合っていた。

そしてその日が、俺の最後の出勤日だった。
夜には式を終えて帰ってくるだろう都ちゃんの為に、俺は一つ余計にクレープを作っておく。
生クリームをたっぷりとつかって文字を書く。



THANK YOU・・・






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