くの一の誘惑
シチュエーション


「あー、メンドくせえ……」

平太は眠い目をこすりながら呻いた。
草木も眠る丑三つ時。虫の声が微かに聴こえるくらいで、街は寝静まっている。
ここはとある国の城下町。
この国の主、荒木家のお膝元である。
下っ端足軽の最も下っ端である平太は、城下の夜間見回りを命じられていた。

「こんなことなら村で畑仕事していりゃあ良かったなあ」

手柄を挙げて侍になってやると意気込んできた平太であったが、早くも弱音を零し始めている。
上官や古参の先輩たちは横柄で暴力的であり、同輩も田舎者の平太を馬鹿にする。仕事といえばこのような
地味なくせに大変なものばかりで、最初に想像していたのとは大分違っていたのだった。

「サボっちまうか……」

どうせ誰も見ていないのだし。
そう思い、チラ、と周囲を見回したときだった。
視界の隅を小さな影が走り抜けた。

「だ、誰だ!」

思わず叫んでから、平太はハッとなる。
こんな夜中に歩き回る者がいるだろうか。見間違いでないとすれば、そいつは碌な相手じゃない。
ゴクリと唾を呑み込んで、平太はじりじり近づいていく。
泥棒だろうか。捕まえればちょっとした手柄だ。仲間も彼を見直してくれるに違いない。しかし、敵が逆上
して襲いかかってきたらどうしよう。訓練は受けているが、まだ戦の経験はなく、もちろん人を殺したことも
ない平太に戦えるだろうか。
期待と不安で胸ははち切れんばかりに高鳴っている。
長柄の槍を前へと突き出し、いつ敵が飛び出してきても良いように構えた。
具足のがしゃがしゃいう音がやけに大きく響く。

「…………」

ひとつ深呼吸してから、平太は曲者の隠れる物陰へ飛び込んだ。

「う、動くなっ。ここで何を…………ぇ、ええっ!?」

口から洩れたのは勇ましい詰問の言葉ではなく、驚愕の悲鳴であった。

「あ…………」

かぼそいため息は女のものだ。
平太が泥棒と勘違いしたのは、十代後半くらいの娘である。
年齢は平太とほとんど変わらない。しかし、裾からこぼれた太ももの肉づきといい、合わせ目の乱れた胸元
の膨らみといい、白いうなじの妖艶さといい、ただの町娘でないのは明らかだ。
ははん、と、平太は合点がいった。
この女はどこぞの町人の娘というわけではあるまい。
遊女の類か、豪商や武家の側女といったところであろう。春を売る生業の後、こうして遅くに寝床へ帰ると
ころを平太に見咎められたというわけだ。

「おい」

平太は槍を下ろしながら、敢えて意気高に声をかけた。

「!…………」

娘はびくりと肩を震わせて俯いている。平太に対する怯えが見てとれて、彼は満足だった。

「女、このような時間に何をしておる。家に帰り、床に就いておる頃であろう。怪しまれても仕方ないぞ」
「…………お、お許しを……」

俯きながら、女はかぼそい声でやっとという風に答えた。

「ん?許すも何も、そなたがこのような遅くにまで何をしておったのかと訊いておるのだ。やましいことが
ないなら言えるはずだぞ」
「……どうか、ご容赦ください。はばかりのあることにございます。お侍さま、どうか、お見逃しください」

平太は心中ににやりと笑った。やはりそうか。『はばかりのあること』とは、身体を売る仕事に違いあるま
い。何らかの事情で相手に口止めされているのかもしれない。
思った通りに事が進んで、平太はより強い態度に出る。実際は下っ端の足軽なのだが、女にとっては『お侍
さま』であるように、武士として見られたことが彼を勢いづかせたのである。

「見逃せと言われてもな。そのような口上、ますます怪しい。これではひっ捕らえて、白状するまで牢にでも
ぶち込んでおくしかなさそうだな」

わざと恐ろしげに言ってやると、

「そ、そんな……後生でございます。決して謀などではありませぬ。ひらに、ひらにご容赦を……」
「謀などと、俺は一言もいっていないぞ。語るに落ちたとはこのことか。自ら曲者と認めたようなものではな
いか。違うか?ん?」

言葉尻をとらえられて、女の顔はもはや蒼白だった。反面、平太にしてみれば笑いが止まらない。最初から
彼女を怪しいなどと思ってはいないのだ。ただ、脅すだけ脅し、その後でそっと救いの手を差し伸べてやれば
よい。

「…………」

俯いた女の表情はさぞ絶望に染まっていることだろう。そこでひとつ咳払いして、大仰に言ってやるのだ。

「本当なら、上役に引き渡し、厳しく取り調べねばならん。しかし、俺も鬼ではない。条件次第では、そなた
を見逃してやってもよいぞ」
「!!…………ま、まことでございますか!?」

顔を上げた女の表情はまさしく救世主を仰ぎ見るかのようだった。

「ふむ。獄吏の取り調べは酷いもの。そなたのような若い娘がそれを受けるとあっては不憫じゃ。今宵のこと
も故あってのことであろうし、哀れと思って、俺の胸の内に留めてやってもよい」

「ありがとうございます!本当に、ありがとうございます!」

感極まったか、女は平太の片膝にすがりついた。

「!!」

柔らかな女の胸が平太の脚に押しつけられる。
たっぷりとした肉感は脳髄を痺れさせるほどの刺激を平太にもたらした。
それだけで腰砕けになりそうな柔らかさ。
これは思った以上だ、と平太はほくそ笑む。

「では、服を脱げ」
「…………え?」

喜びに染まった女の表情が凍りつく。

「どうした?服を脱げと言っておるのだ。これ以上駄々をこねるようなら、獄吏に突き出すぞ」
「…………は、はい……」

諦めたか、女は俯いて、腰帯を解き始めた。
黒い帯に紅の着物。太ももも露わになるひどく短い裾は、やはり男の気を惹くためのものなのだろう。女の
仕事をうかがわせる。
おや、と思うのは女の肌を滑る、なめらかな衣ずれの音だ。下賎の女と見ていたが、存外良い着物である。
客がかなりの金持なのかもしれない。この城下なら、井原屋か黒崎屋か……。

「おお…………」

色々と考えを巡らしていた平太であったが、女の裸がさらけ出されると、すぐにどうでもよくなった。
これは楽しめそうだ。
男なら誰もがそう思い、生唾を呑む、見事な身体だった。
平太の知っている、日焼けした農家の田舎娘や、年増の遊女とは肌の質からして違う。月明かりに照らされ
るとどこまでも白く透き通り、手で触れずともその触感を想起させる。手荒く扱えば壊れてしまいそうであり
ながら、乱暴に犯してやりたいという男の獣欲をそそる華奢な身体。
いや、細いばかりではどんなに美しくとも物足りない。
しかし、強くかき抱けば折れてしまいそうな柳腰とは対照的に、太ももから尻にかけてのむっちりとした肉
づきは、思わずふるいつきたくなるほどだ。豊かな尻とうっすら恥毛の覗く秘所。そこへ自身をぶち込む想像
をするだけで、平太は袴の前を膨らませて屈み腰になってしまう。
そして、さっきから彼の目を惹きつけてやまない、女の乳房だ。
こんなに大きい胸を見るのは初めてだった。以前、金で買った女も大きかったが、彼女とは比べ物にならな
いし、醜く垂れていた。しかし、この女の乳房は、手のひらに余るほどでありながら、まるで乱れぬ張りを保
ち、つんと上向いた乳首は名匠の手になる彫像のようだ。
平太は、もう幾度目かの生唾を呑み込む。
夜回りの役得としては充分すぎる。

「ぬ、脱ぎました。お侍さま……」

尚もしげしげと視線で舐め回す平太に、女はすがるような目で訴えた。
羞恥に赤らめた顔は年相応に可憐だ。しかし、その下の身体がなんとも生意気だからたまらない。生娘ぶり
やがって。やることやって帰ってきたんだろうが。
ひひ、と下卑た笑いを零しながら、平太はゆっくり近づいていく。女の怯えた表情が楽しい。
ふと、訊き忘れていたことを思い出した。どうでもよいことだが、なんとなく気になる。

「娘よ。そなた、名は何という?」
「…………天音でございます、お侍さま」
「ほう。アマネ、か。雅な名ではないか」
「はい……ありがとうございます……」

天音はじっと耐えているようだった。それが一層、平太の嗜虐欲をそそるのだ。

「では、天音よ。これからわしが取り調べをおこなう。なに、楽にしているがよい。優しくしてやろう」
「はい……よろしくお願いします……」

平太は背後に回ると、再び、まじまじと天音の身体を見つめた。やはり、いい尻だ。すぐにもぶち込んでや
りたいが、ここは我慢しよう。
天音は髪を後ろで束ねていた。

「髪に何か隠しておるかもしれんな」

束ねる紐を力づくで引きちぎると、長い黒髪が弧を描いて解き放たれた。しっとり湿った感触の、艶やかな
黒髪である。自然に鼻を利かせてしまうこの匂いは香だろうか。
長い髪を手入れし、香をたてる余裕があるとは、天音はただの遊女ではないようだ。
いや、彼女自身は下賎の生まれであろうが、それなりの人物の寵愛を受けているのだろう。
とすれば、と平太は考える。
俺もこの女を利用して美味い目に遭えないだろうか。こんな時化た足軽なんざ止めて。

「髪には何も隠しておらぬようだな」

どちらにせよ、これほどに良い女、めったにお目にかかれるものではない。この夜限りで終わらせてしまう
のは勿体ないというものだ。
天音のわき腹に腕を差し入れ、ねっとりいやらしい手つきで肌を撫でまわしていく。見立てた通り、素晴ら
しい身体だ。程よく熟れて、それでいて感度も良いようだ。

「っ…………ぁ、……」

平太は、時折天音が小さく声を洩らすのに気づいていた。彼女は悟られぬよう必死で堪えているのだろうが、
頬は朱に染まり、吐息は荒く、平太の愛撫で感じ始めていることは明らかだ。
それでいて、平太は聴こえていないように、なおもねちこく天音の身体を弄ぶ。

「ふうむ、ここも違うようだ」
「……お、お侍さま……」
「どうした?」
「……まだ終わらぬのでしょうか」
「戯けたことを言うでない。わしはそなたのためを思って、こうして調べてやっているのだぞ。獄に突き出し
てもよいのか?」
「……い、いえ、それだけは…………」
「だろう。大人しく、わしに従っておればよいのだ」

もちろん、取り調べなど口実だ。散々弄り、辱めた後、俺の女にしてやろうと平太は考え始めていた。
むんず、と、豊満な乳房を無遠慮に揉みしだく。
これはいい。手に吸いつくように柔らかく、それでいて、押し返すような弾力もある。
女の口から、甘い吐息が洩れる。声に出して喘ぐことだけは堪えているらしい。
生意気な。
背後でにやりと笑うと、平太は前触れもなく、天音の乳首を指で弾いてやった。

「あっ…………」

とうとう堪え切れずに、天音の嬌声が夜の街へ響く。

「あ、ああっ、んっ……や、やめ……おやめ、ください……」

尚も乳首をいじってやると、天音は喘ぎ混じりに、面白いように身体をくねらせて悶えた。
乳首が弱かったのか。
白い肌もほの紅く、じっとり汗ばんで、耳たぶに至っては真っ赤だ。

「なんだ?取り調べをしているだけだというのに、なんという声を出しておる」
「……いえ、その……っ、ん、ああっ……あ、あぁんっ……」

乳首をこねくり回しながら、平太は意地悪く責める。

「こちらは誠意でやっているというに、なんとふしだらな。そなたのような女を淫婦というのだぞ」
「も、申し訳も……あ、ああっ……いや、ぁんっ!……」
「はしたなく喘ぎおって。どうせ、こちらも濡らしておるのだろう。ほれ、股を開け」

左手で乳房を弄びつつ、右手を天音の秘部へのばす。

「やっ……い、いやっ、……そ、それだけは……」
「ごたごたぬかすな。これも取り調べの内ぞ」

ぴったり股を閉じて天音は拒んだが、男の力には敵いようもない。右手を割り入れ、強引に股を開かせると、
指に湿った感触があった。

「ん?…………これは、なんだ」

わかりきっていながら、平太は確かめるようにより深く指を突き入れ、掻き回してやる。

「ああっ!……あ、あ、あぁん、はぁ、ぁんっ…………」
「まったく、取り調べの最中に濡らしてしまうとは。これは仕置きじゃ。仕置きをせねばなるまいな」
「んっ、あっ……お、おゆるしを……ごしょうで、ございます……あぁ、」
「黙らっしゃい!そなたのような淫婦、人並みに扱ってやったのが間違いであった。しかと引導を渡してや
る故、尻を出せ」

自身も具足を脱ぎ、帯を解いて裸になった。股間には、さっきから痛いほどに充血した肉棒が隆々と反り返
っている。
天音は形ばかり嫌がってみせるが、とろとろに潤んだ秘所は正直だった。
背後から押さえつけ、無理やり足を開かせると、平太は自身の尖端をあてがう。

「ふふん。嫌じゃ嫌じゃと言いながら、これが欲しかったのだろう?今くれてやろうぞ、存分に乱れるが良
い。まあ、もう夜更けだ。声はほどほどにしてくれよ」

卑猥な笑みを際限なくしながら、平太は天音を抱く腕に力を込めた。女の腰は、凌辱のときを怖れ慄いてい
るのか、もしくは待ちわびているのか知れないながら、きゅっと固く張り詰めている。

「ゆくぞ…………!」

そうして、一息に自らの腰を打ち込んで、

「…………!!……お、う、うおぉぉおおおオオオ!!」

野太い悲鳴をあげたのは平太の方だった。

「ひ、ひいいぃっ、あ、あ、あああっ!」

なんだこれは。
驚愕に歪めた顔から涎が滴り落ちて女の尻を汚す。
思わず引き抜こうと力を入れたが、それ以上の剛力で逆に引きずり込まれ、より一層の快楽を与えられるこ
ととなる。

「おお、お、お、うおおおっ!」

無数の襞がびっちり絡みつき、うねり、くねり、絞り上げる。
それは、男を射精させるための動きであった。しかし、それだけでしかないが故に、平太は喘ぎ、呻き、泣
き叫んでいるのだ。
天音はこれまで見たこともない、美しい女だったが、膣内さえも平太などには想像も及ばないものだったの
だ。平太は、未知の異界に手を、いや、肉棒を突っ込んでしまったことは確かだった。

「ああっ、い、イク、イクぅうぅ〜〜…………」

悶え、のた打ち回るままに、平太は女のような悲鳴をあげて天音の膣に精を放った。
最初は天音をこのように泣き喚かせ、犯してやるはずだった。けれど、散々に打ちのめされた平太が感じる
のは、壮絶なまでの快楽の残滓と、やっと終わったという安堵感だけである。

「はあ、はあ、はぁぁ…………ふぅ……」
「……………………ふふふ」

まだ腰が震え、荒い息も整わない平太は、嘲るような女の笑いにぎょっとして顔を上げた。
尻や胸を弄り回してやっていたときは面白いように喘いでいた天音が、モノを打ち込んでから一言も発して
いなかった。
平太を泣き喚かせる一方で、彼女は喘ぐどころか尻を預けたまま一切乱れる様子がなかった。
いや。
平太は見逃さない。
彼が射精する直前、かすかに、だが、はっきりと、天音は腰をくねらせたのだ。まるで手玉にとるように。

「…………お、おまえ……」
「ふふ……ふふふ、くすくす…………あははは!」

危険と恐怖を感じて平太が腰を引くよりも早く、女の膣口が再びがっちりと男根を締めつけた。

「くっ……う、ああああっ!!」
「あはは、声を出すのもほどほどにねぇ。お・さ・む・ら・い・さ・ま♪」
「ああっ、くああ!お、おおっ、おまえは……!」
「さあ……?それより、続きをしましょう。一度や二度では萎えたりしませんでしょう」

今度は天音の方からゆるゆると腰を動かし始める。弄るように。味わうように。

「くっ、ぐあああ、あ、あああっ!……あ、あひいぃぃぃ……!!」

最初は犯してやるつもりだった。それが犯されている。
何が何だかわからない。ただただ、平太は、鳴き、喚き、涎と涙さえ垂れ流して腰を振り続けた。いや、振
らされ続けていた。
二度、三度と既に射精しているが、萎えることなど許されない。もはや体力も尽きているはずなのに、あの
魔性の淫膣に絡みつかれたが最後、再びむくむくと固さを取り戻すのである。
その間、天音は妖艶な笑みを浮かべているだけ。
本当に、これはただの女ではなかった。遊女だとか、金持ちの妾などという話ではない。もっと恐ろしい、
危うい女だ。
しかし、平太は気づくのが遅すぎた。


干からびた男は、すっかり生気を絞り取られてぐったりしていても、どこか幸せそうな表情だった。

「足軽風情が私に犯してもらえたんだもの。最高の死に方でしょうね」

天音は膣に吐き出された精液を指でかき出しながら、着物を整えた。
妊娠しない工夫はしているが、身体は洗ってしまいたい。
当座の潜伏場所も必要だろう。

「ふう…………。さて、いきましょうか」

ここはとある国の城下町。
ひとりのくの一が忍び込んだことに気づく者はまだ誰もいない。






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