テクノブルー2
シチュエーション


床の上には汗が水たまりを作るほどになっていた。
その中心でテクノブルーこと青井純夫は、左右への素
早いステップ、時に高いジャンプを繰り返す。先ほどま
ではウェイトトレーニングを繰り返していたが、いまは
足腰と跳躍力の強化だ。
空調の効いた部屋の中には青井が一人きり。このフィッ
トネスセンターの中では比較的狭い、それでも旅館の大
広間ほどある部屋の中には、青井一人の熱気がこもって
いる。

「くそっ……」

爪先が汗に滑って体勢が崩れそうになる。
しかしそれを連続跳躍で無理矢理に制御して、契れそ
うな悲鳴を上げる足の筋肉をさらに酷使するように空中
に飛び上がり、激しいパンチを繰り出す。
デスイービル軍団の攻撃は激しさを増している。トレ
ーニングは疲労時に行ったものが一番身体にしみこむと
いうのも本当だ。だがこれは明らかにオーバーワークだ
ろう。
プライドの高い青井はぎりりと唇を噛む。本人だって
認めはしないがテクノピンクこと桃山絵美華が行方不明
になったことが気になっているのだ。
定期パトロールに出掛けた後、ぷっつりと連絡が途絶
えたまま帰還せず、一晩が過ぎている。考えたくはないが、
まさか迷子になったとか、うっかり連絡を忘れたなどと
いう状況ではないだろう。
心配だ、とそうつぶやくことは出来る。メンバーは互
いにそう話合っている。しかし、青井は不安であり、
もっと言ってしまえば恐怖していた。プライドの高い彼
はそれを認めてしまえば自分が負ける気がして認められ
なかったが、桃山絵美華を密かに思っていたのだ。

ぱしゃり。

水たまりの中心に正確に爪先を卸して着地する青井。
筋肉は疲労で熱を持ってずきずきしている。実戦では無
いただのトレーニングで身体を酷使しすぎて疲労したり
故障しては意味など無いのだが、気持ちの中にわき上が
る黒くてもやもやしたものを振り払うためにやり過ぎて
しまったのだ。

「そんなに無理をしたら疲れちゃうよ」
「桃山っ!」

青井は雷の速度で振り返る。今の今まで考えて――
いや、考えないようにしてきた桃山絵美華がいつの間に
か背後に立っていたのだ。

「お前、どこにいたんだよっ。みんなに心配かけやがって。
大丈夫だったのか」

青井は動揺を必死に押し隠そうと声を無理矢理押さえ
つける。女一人のことで心配して狼狽していたなどと、
その当の本人に悟られるわけにはいかない。

「ごめんなさい。実はトラブルにあって意識が戻ったのも
さっきなの」
「何があった――」

絵美華は答えずに視線を伏せた。その伏せた視線に誘わ
れるように青井はつい絵美華を観察してしまう。
絵美華は青井も何度か見たことのあるトレーニングウェア、
ピンクのジャージを着ていた。首もとまできっちりあげら
れたファスナー。
いつも清潔感を失わなかった桃山絵美華。その屈託のな
い明るい笑顔に青井は淡い思いを持っていた。
しかし、いまの絵美華はちょっとへこた
れたような雰囲気で、そのせいかぐっと女らしく見える。

(こいつ、こんなに胸があったんだ……)

禁欲的なジャージの胸元を押し上げるボリューム。
まろやかな曲線が視線を吸い付ける。ちょっと痩せたの
だろうか?アップにまとめた髪のせいで首筋が細く見
えて色っぽい風情を漂わせている。

それに、身体のラインは圧巻だ。
もちろん以前からスタイルが良いな、とは感じていた。
だが女の身体などじろじろ見るものではないという、
ある種少年じみた克己心が青井にはあって、意識しない
ようにしていたのだ。しかし、いまの絵美華の身体から
はほのかに甘い香りが漂い、その身体付きも肉感的でい
つもより魅力的に見えてしまう。

「ん……」

身体を揉むように手を這わせた絵美華は、ジャージの
ボトムに指をかけた。そのまま前屈みになるようにズボ
ンをおろしてゆく。

「えっと、何すんだよ。桃山っ」

一気に体温が上昇するのを自覚して青井は視線をそら
そうとする。しかし視界の隅にちらりと写った太ももの
映像が脳を灼く。むっちりと肉ののった、決して細いと
は云えない太もも。柔らかそうでそれで居て引き締まっ
た極上のラインの柔肉だ。
おそらくトレーニングインナーをつけているはずで、
いきなり下着が見えると言うことはないだろうし、前屈
みになった絵美華の体勢では、ちょっと丈の長いジャー
ジの裾が肝心の部分は隠している。
それだけにそのジャージの裾からいきなり生えている
ように見える真っ白な太ももの破壊力は抜群だった。

「クールダウンしないといけないでしょう……?
ストレッチをしないと、筋肉疲労がたまっちゃうよ?
手伝ってあげる」

絵美華は視線を伏せたまま上半身を起こすと、一歩前
に出る。ピンクのジャージできっちりと包装されて露出
のない上半身、まるで尿意を我慢しているかのように
すりあわされる太もも。
そのギャップが青井にぞくぞくするような、後ろめた
い興奮を植え付けてゆく。
絵美華の身体からは、甘い香りが漂ってくる。その香
りとただ立っているだけなのに、まるで空気をゆっくり
とかき混ぜているかのようにくねる腰の小さな動き。強
い磁力のように引きつけられているのに、プライドが邪
魔をして青井は怒ったように視線をそらす。

「うん。ああ」
「ほら、座って。背中を押してあげるから」

絵美華は小さな笑いを含んだような声で指先をあげる。
その白くて細い指先に強い電流が宿っているかのような錯
覚を覚えて、青井は急いで背中を向けると、床の上に腰を
下ろした。

「ほら、息を吐いて……」

つぶやくような小さな声に耳を澄まそうとする青井。
青井は壁の方を向いてストレッチをしているが、その意
識は全て背後へと向けられていた。先ほど見た絵美華の真っ
白い太ももが脳裏をちらついて消えないのだ。背中に当て
られる小さなてと、絵美華が力を入れるたびに背後から聞
こえる湿った息づかいが、全身の神経をぴりぴりと刺激す
る。こんな事をしているわけにはいかないと、頭を二三回
振った青井は思い切って尋ねる。

「なぁ、桃井。なにがあったんだ。まさか奴らの……」

「ふふふ。ジャージ、汗でどろどろ」

青井の問いかけに気がつかないかのように、絵美華は
まるで独り言のようにぽつりとつぶやく。

それは青井のジャージに対する寸評。
トレーニングに我を忘れていた青年は羞恥で真っ赤に
なる。3時間ものオーバーワークだ。全身に疲労はたまっ
ているし、汗もすごい。シャワーも浴びていないし、
どろどろな自覚はある。普段なら気にもしないのだが、
その汗で汚れきった背中を、あの桃山絵美華に押させて
いるかと思うと居ても立っても居られないような気分に
なってしまう。

「仕方ないだろっ。トレーニングなんだから」

それをごまかすために、青井は怒ったようなぶっきら
ぼうな声で答える。

「ううん。……すごい良い匂い。頭がしびれそう」
「っ!?」

絵美華の艶を含んだ甘い声が、蜜のように染みこんで
くる。心臓を鷲掴みにされるような、甘くて、危険な声だ。

「それって、どういう事だよ」
「でも、汗でぐしょぐしょだと冷えちゃうよ。うふふ……
脱がせてあげるね」

突然絵美華の身体が背後から抱きついてくる。細い腕が
前に回されるとジャージの胸元を探るように這い回る。
甘い、甘い香り。

蜂蜜のような、チョコレートのような。
いや、どちらかと言えば……思考は巡り青井は一瞬香
りに気を取られる。

甘い香り。押しつけがましいほどの甘ったるさは人に
よっては嫌悪感を抱くほどだ。しかし、一度でも嗅いで
しまうと、強すぎる香りだとは感じていても、もう一度
嗅ぎたくなる。
嗅いでしまうと後頭部がじわりとしびれるようになっ
て、くどいなと思いつつも探してしまうような、かさぶ
たをはがし続けるような快楽の匂い。
ダメだと判っているのにもう一度、吸い込みたくなる
ような匂い。……その正体を探るため、これは分析のた
めなんだからと考えながら吸い込み続けているうちに、
青井はその匂いに病みつきになっていってしまう。
そう、南国の熱帯雨林に咲き乱れる毒々しいが魅力的
な花ののような、焦げたような、膿んだような、甘すぎ
る匂い。

その甘い匂いに気を取られているうちに、背後から抱
きしめた絵美華はの指先は一件不器用そうにファスナー
を探して青井の胸の上を這い回っていた。
その白い指先が迷子になったように青井の胸の上を彷
徨うたびに、青井は心臓が痛いほど高鳴って、硬直して
しまう。

何かがおかしい、と本能が危険信号を発している。
正体は判らないが危険が迫っている。それは幾多の死
地をくぐり抜けたテクノブルーの勘だった。

絵美華の指先はやっとファスナーのスライダーを発見
したのか、指先でつまむ。まるでスローモーションのよ
うな動きに、青井は見とれてしまう。自分の胸板の上で、
密かに思いを寄せていた絵美華の白くて華奢な指先がファ
スナーを引きずり下ろしてゆく。
その光景は、ちっともそんな要素はないはずなのに、
淫靡で蠱惑的すぎて、指先がゆっくりじわじわと金具を
引きずり下ろしていくのが羞恥心をかき立てるのだ。

中から現れるのは汗を吸い込んで水をぶちまけたかの
ようになっている白いTシャツだ。金縛りのように動け
ない青井の脳内の危険信号は一層強くなる。

ダメだ、何かがおかしい。離れなければいけない。腰
を浮かそうとした瞬間、絵美華の低く色っぽい声が耳元
で囁かれる。

「わたしブルーの汗の匂い大好き。いっぱい嗅がせて
欲しいな」

甘える猫のような声に頬が熱くなる。

「わたしのは、どうかな。――ふふふ。こんなにくっつ
いていたら、ブルーの汗の匂いと混じっちゃいそう」

背後からその大きな胸をこすりつけるようにもたれか
かる絵美華。その言葉に誘われるように青井は絵美華の
香りに意識を向けてしまう。蜜がしたたるようなフェロ
モンの香り。思考が寸断され、浮かしかけていた腰が落
ちて、身体の芯がマグマのように熱くなる。

「混・ぜ・ちゃ・う・ね」

青井の上半身のジャージを脱がせ、絵美華は改めて背
後から抱きつく。もはや隠そうともせずにジャージに包
まれた腕を胸板に回して、汗を吸って重く湿ったTシャ
ツの胸をなで回す。

「桃山、おかしい……ぞ」
「うふふ。ごめんね。そうだよね、ストレッチしなきゃね」

絵美華は背後から体重を乗せるように、青井の身体を
前屈させてくる。背中でつぶれる二つの豊かな膨らみ。
ジャージの中で窮屈なのだろう。互いにコネ合うような二
つの膨らみが鍛えられた青井の背筋の上を滑って、つぶれ、
形を変えてはこね回される。
絵美華の柔らかな胸の感覚で青井は翻弄されて、言葉を
失う。出来てしまった心の隙に忍び寄るように、前に回さ
れた指先は、かりかりと爪先で掻くように青井の胸や二の
腕、腹筋をくすぐり続けるのだ。疲労した筋肉にじわじわ
と浸透していく心地よい、甘い蜜のような毒液。

危険信号に従おうとするのだが、胸の感触や指先の悪戯、
首筋に吹きかけられる細い吐息のせいでままならない。青
井を今まで勝利させてきた無意識からの警告は強くなって
いるのに、その警告に耳を貸すのがどんどん難しくなって
行く。

(ふふふふ。隠したってダメ。どきどきしてるんでしょ?
意地を張ったってダメ。こぉんなに柔らかい胸でこねる
ように擦られて、腰の奥がうずうずして血が逆流しちゃっ
てるくせに。あんっ。ほぉら、気持ちいい?ぞくぞく
する?ふふふ。柔らかくて、ねとねと絡むように、おっ
ぱいをこすりつけてあげる。ほぉら、最高の感触でしょう?
……さぁ、落としてあ・げ・る)

ブルーの惑乱などお見通しの蠱惑密使セダキナ――
偽絵美華は、舌たらずな媚びるような声で語りかける。

「ねぇ、ブルー」
「なん……だよ」

相変わらず不機嫌そうな声を絞りだそうとしているも
のの、その防御ももう見せかけだけで、ブルーの股間は
痛いほどに大きくなってしまっている。
壁に向かっていてこちらが背後にいるためにばれてい
ないと思っているだろうが、そのようなこと、壁一面に
貼られちゃトレーニング用の鏡を見るまでもなく、経験
豊かなセダキナには己のことのように察せられているの
だ。

「ブルーは、この匂い、嫌い?」
「え?」
「この甘い香り、嫌いかな……?」

さり気ない偽絵美華の言葉に誘導されて、青井はまた
もあの魔香を吸い込んでしまう。
ぞくりと背筋を太い感触が駆ける。香りが変わっている。
絵美華の体温で暖められたせいか、それとも自分の汗と
混じったせいか、蜜のような甘さは、熟れたように発酵
して粘り着くような甘さに変化しているのだ。
動物的な発情臭は最初に嗅いでいたら嫌悪感を感じた
かもしれないが、絵美華の甘い匂いを何度も嗅がされて
染みこまされた青井にとってはたまらない催淫香だった。
身体中が心臓になったように、目の前がくらくらして絵
美華の指先が自分に絡みつくのがたまらなく淫らに見える。

(ふふふふ。どう?セダキナの毒の香り。
甘いでしょう?濃くてどろっとしてて、癖になっち
ゃうでしょ?
汗の香りと混ぜ混ぜしてあげた特性ブレンド。
密室の中で暖めた、脳みそとろかしちゃう毒の蜜よ。
吸いなさい。ほら、動物みたいに嗅ぐのよ。ふふふふ)

「甘過ぎだろ……これ」

プライドをかき集めて抵抗するブルー。それには多分、
心の警告も入っているのだろう。

「え、嫌いなの……?ね、もう一度確かめて?」

絵美華は今にも泣きそうな弱々しい声を上げると、身
体を絡ませるように背後から青井の身体を抱きしめて、
首筋から耳にかけてふぅっと細い息を吹きかける。

「……甘い匂い、嫌い?」
「嫌いじゃ……ないけど……」

息を吹きかけるまでもなく、部屋の中にはセダキナの
身体から発散する、粘り着くような甘い香りが満ちてい
る。男ならいつまでも嗅いでいたくなるような、魔性の
淫香だ。

「じゃ、好き?」
「ああ……。嫌いじゃ、無い」

ぼそりとつぶやくように言う青井。その言葉に背後で
偽絵美華がにんまりと笑ったのにも気がつかないほど真っ
赤になっている。

「嬉しい。私もね……ブルーの匂い、好きなの。汗でいっ
ぱいのブルーの香り、すごいの……頭の中がしびれて……」

次第に小声になっていく演技。でも、青井にだけは、
はっきり聞こえるように細心の注意を持って調整されてい
る偽りの可憐さなのだ。

「ねぇ、本当に好き?」
「ああ」

繰り返される問い。そのたびにご褒美だとでも言うか
のように絵美華は細い腕で青井を抱きしめては、豊乳を
こすりつけ、首筋にわずかに唇さえ触れさせて囁く。
こすりつけるたびに青井の身体が緊張してびくびくと
跳ねるのが、絵美華に化けたセダキナには楽しくて仕方
がない。
鉄壁と思われたブルーの精神力も、もはや虫食い穴だ
らけでぼろぼろの違法建築のようなものだった。

「絵美華の甘ぁい匂い。好き?」
「ああ」

何度目になるだろうか。傍目には恋人同士のじゃれ合
いに見えるかのような甘い問いかけ。そのたびに繰り返
される抱擁とさり気なく見えるのに、執拗で悩殺的なス
キンシップ。
淫らがましい粘膜生物のような絵美華の唇が、青井の
背後から首筋をたどり、催眠術でもかけるかのように囁
を続ける。

「何が好きなの?」
「それは……」

答えを躊躇う青井。彼の意地っ張りな気持ちが、自分
から好意を表明する事への強い抵抗になっているのだろう。

「ねぇ、好きって言ってくれたよね……」
「香りが……」

その妥協に小さく笑う絵美華。たっぷりしたご褒美が
必要だ。背後から抱きしめたまま、とびっきりの艶美な
声で語りかける。

「私も、ブルーの『匂い』大好きだよ。……こうしてる
だけで、ぞくぞくしてとろけちゃいそうなくらい。
……ねぇ、ブルー」
「うぅう」

絵美華の可愛らしいくせに淫らに聞こえて仕方ない告
白にどぎまぎして、ろくに思考も出来ない青井に、さら
に絵美華はたたみかける。

「ねぇ、ブルー?なにが好きなのぉ?」
「それは……」
「わたし、ブルーの『匂い』も好き。ブルーは、私の
『匂い』だけ?わたしの『匂い』以外は、いらない?
……ね、ほら、いーっぱい吸い込んでぇ確かめてぇ」

(自分が『匂い』を好きだと言ったから。
絵美華も自分の『匂い』を好きだと言ってくれた。
甘い香り……
自分が彼女を好きだと言えば……
彼女も……
とろける甘い匂い……
柔らかい、肉付きの良い身体……
汗を混ぜあって……
粘り着くような発情した甘い匂い……
ゼリーみたいにとろとろと光る唇……)

青井の心が一瞬の間にミキサーのようにシェイクされる。
その思考には今までさんざん条件付けしてきた淫らで甘
いイメージがねっとりと絡みついている。並の男であれ
ば妄想だけでいきり狂った肉棒から白濁を何度も放出す
るほどの、甘い誘惑のイメージ。

(ふふふ。ほぉら。
気持ちいいでしょ?甘い匂いで力が抜けちゃうでしょ
う?それなのに股間だけはびんびんになって、もう我
慢できないでしょう?ふふふ。仕方ないわよね。
妖花セダキナの甘い蜜の香り、十倍に濃縮してこのい
やららしい身体の汗で暖めてぇ、あなたに何度も何度も
嗅がせてあげてるんだから。……濃ゆぅいフェロモンで
しょう?。ほらぁ。あんっ。うふふふ。
ひくひくしちゃってる。もう我慢できないでしょう?
言ってしまいなさい。告白して、心の鍵を開けはなっ
て、私のものになってしまいなさい。ふふふふっ)

しかしその瞬間、青井の視界に一輪の毒花が写った。
壁一面に張り巡らされたトレーニング用の巨大な鏡。
そこに写った狼狽した姿の後ろから、まるで愛しい恋人
に抱きつくかのように身を寄せている絵美華。その頭部
に……髪留めとして。
目にとまったのは、トレーニングなのに髪留めが不自
然だったからだ。怪我の原因にもなる。黒いゴムなどで
止めるのが普通のはずだった。しかしその一瞬の疑念は、
即座にふくれあがる。

その妖花はデスイービル軍団のっ!
言葉にすらならない神速のひらめきに従って、青井は
跳ね起きると背後の絵美華を捕縛する。上からのし掛る
ように肩の痛点をしっかりと点穴する。

「きゃぁっ。ブルー!?え、や、やめてっ」

仰向けに倒れた絵美華は怯えたような表情を見せる。
だが確認してみればその髪留めはやはり妖花だ。

「静かに。絵美華」

青井はじっと髪留めを凝視する。七色の花弁を持つ、
確かに美しいが毒々しいこの花は間違いなく妖花セダキナ。
同じ名前を持つデスイービル軍団の策士、女闇妖怪、蠱
惑密使セダキナのシンボル。青井の頭脳は高速で回転を
始める。知らないうちに頭につけられたのか。いや、催
眠術?洗脳?目的は破壊工作、洗脳?可能性の組
み合わせが無数に広がり、目眩がする。
そんな青井の意識を無理矢理ハンマーで叩き覚醒させ
るかのようなショックを絵美華は生み出した。

怯えたような、すがるような瞳に涙をいっぱいに溜め
た絵美華。彼女が潔癖なまでに固く閉ざされたジャージ
のファスナーをそろそろと降ろしたそこには、汗でぬる
ぬるに湿ったレオタードに包まれた淫らな二つの巨乳が
あったのだ。






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