魅惑の皇后 第二話
シチュエーション


朝。
太陽の光がカーテンに遮られ、布の縁から輝きが優しく漏れる。
シャロスはゆっくりと目を覚ました。

「うっ……」

あんまりいい目覚めではなかった。
体のあちこちにけだるい疲労感が残る。

「あれは……夢だったんだろうか……」

シャロスは曖昧になった記憶を思い起こした。

「確か昨日の夜はレイラが来て、その後皇后が……それからは……」

そこまで思い出すと、シャロスの顔から火が噴くほど真っ赤になった。
皇后にあそこをいじられ、生まれて初めてイカされた。
そのうえ、皇后をお母さんと呼んでしまった屈辱。

(くっ……私はなんてことをしてしまったんだ。あんな淫乱女をお母さんと呼ぶなんて、母上への冒涜だ!)

シャロスの心は後悔の念が満ち溢れる。

リテイア皇后といえば、噂では不貞を続けるふしだらな女性である。
シャロスにとって、彼女は貞淑な母上とは大違いで、下賎で淫猥で、いやしい女である。

(昨日のことだって、あの女の色仕掛けに間違いない……くそっ、それが分かってるというのに!)

そうと思ったものの、シャロスは嫌悪以外に、何か不思議な感情を抱いていた。

リテイアを淫乱女と思えば思うほど、少年の心がドキドキし、息が苦しくなった。
目を瞑れば、リテイアが黒の下着だけ身に着け、しなやかな肢体を妖艶にひねらせる光景が、
いきいきと浮かび上がる。

彼女が男を誘惑する時の表情を想像すると、シャロスの全身の血流が速まり、股間のペニスが硬くなった。
シャロスはリテイアにされた行為を思い返すと、やがて自然と股間の一物を握り、こすりはじめた。

「あっ……!」

くぐもった声を抑えながら、シャロスは自慰に耽った。
彼の股間の先はすでにぬるぬると濡れ、竿は赤く醜く怒張していた。

「くっ……あ、うっ!」

あの女がもしこんなみっともない自分を見たら、きっと冷たい視線を向けてあざ笑うだろう。
その悔しい気持ちは、逆にシャロスの欲望を煽った。
彼はリテイアの手つきを思い出しながら、自分のペニスをしごき続いた。

(はぁっ……また、あの感触が……ああ、出る!)

一物がドクン、ドクンと大きく脈打つと、シャロスは盛大に射精した。
白く濁った熱液がシーツに散らばり、全身から力が抜けた。

「はぁ、はぁ……」

シャロスの体中に汗が噴き出た。
頭がぼうっとしていて、考えがまったく定まらない。
しかし、彼が余韻に浸っている最中、不意に寝室の扉が開けられた。

「おはようございます、シャロス様」
「ひゃっ!?」

シャロスは思わず露出した下半身を奥側へ隠し、突如現われた少女を見つめた。
彼女は黒のメイド服を着ていた。
眉目は秀麗で、悩ましい首筋は綺麗だった。
服の下から胸が程よく膨らみ、女性的な部分がシャロスを挑発する。
半袖のスリーブから真っ白い二の腕が露出する。
手首にはカフスがつけており、彼女の腕をより可愛らしく見せる。
白いエプロンは黒服の上から前側を覆い、清潔感を感じさせる。
いわゆるフレンチメイド服だろうか、彼女のスカートの裾は膝よりも上で、裾下からは白いフリルが隠れ見える。
光沢の帯びた黒ストッキングは彼女のほっそりとした両足を覆い、優雅であると同時に妖しい魅力を放っていた。
つややかな髪にフリルのカチューシャがつけられている。
そして、後ろへ垂れ下がるポニーテールにシャロスは見覚えがあった。

「お前は皇后様の……?なぜここに……」
「はい。リテイア様の言いつけで、本日より王子様の身の回りの世話をさせて頂く、エナと申します」
「ほかの人はどうした?」
「王子様はお取り込み中なので、退避させました」

エナはそう言って、見透かしたような目でシャロスに一瞥した。
シャロスは思わず焦った。

「お前をここにいれた覚えは無い、皇后のところへ……」
「王子様、いけませんわ。まだ病み上がりなのに、あそこを裸のままにしては」

突然、エナはベッドに近づき、シャロスの下半身を覆う布を拾い上げた。

「あら、こんないっぱい出たのですね」

空気がひんやりとしてシャロスの股間を襲う。
下半身の醜態は、全て相手に見せてしまった。
シャロスはまるで毒牙を抜かれたかのように、どうしたらいいか分からない表情になった。

しかし、エナは大したリアクションもせず、
あらかじめ準備した暖かいてぬぐいを取り出し、手際よくシャロスの股間を拭う。
すぐさま、彼のあそこはほかほかした感触が包む。

シャロスの心は驚愕と疑念に満ちた。
彼は顔を赤らめながらも、とろけそうな気持ちを押さえ込み、

「お前は、一体いつから部屋の外にいた?」
「しばらく前からです」

エナは表情一つ変えず、淡々と答えた。
だがその一言に、シャロスのプライドが傷ついた。

(それじゃ、物音が全部聞かれてしまったのか……)

しかし、彼はすぐに動揺を治め、つとめて普段の気迫を取り戻す。

「もうよい。さがれ」
「分かりました。しかし、お風呂の用意ができましたので、先にそちらで身を清めさせて下さい」

言われてみれば、シャロスは自分は汗だくになっていることを思い出す。
彼は一瞬戸惑ったが、やがてエナの意見を受け入れた。

「ふん、ずいぶん用意周到じゃないか」

シャロスがエナに王子専用の広い浴室に導かれた。
エナは「失礼します」と言って、シャロスの貴族の服を脱がせる。
その瑞々しい指先を感じ、シャロスはまたもや落ち着きを失う。
エナが彼のズボンを脱がしたとき、上から見下ろすと、ちょうど彼女の無防備の谷間が覗ける。
シャロスは顔を赤らめ、慌てて他の方向へむいた。

王族だから、これぐらい奉仕されるのは慣れたはずだが、
昨日リテイアによって射精させられてから、シャロスは無性に異性が気になった。
気付いたら、シャロスの股間部が再び疼いた。

「もういい、後は私自身がやる」
「はい」

エナはやや驚く顔をみせるが、シャロスの命令には逆らわなかった。
彼女が去ったあと、シャロスは下着を脱いで裸になった。
案の定、彼のまだ幼さが残る一物は、硬くなっていた。

シャロスは浴室に入り、真っ先に冷水をすくい、それを頭の上からかぶった。
骨を突き刺すような冷感が皮膚から伝わる。
普通の人間にとって厳しい冷たさだが、
毎日冷水浴を続け精神を鍛えた王子にとって、これぐらいは平気だ。

彼は五度ほど水をかぶった後、お湯に浸かった。
冷え切った体を、今度は熱い温度があたためる。
こうしているうちに、シャロスはいつもの感覚を取り戻した。

(あの召使いは皇后の人間だ。もしかしたら皇后と同じように、
私を誘惑してくるかもしれない。気をつけなければ……!)

湿った蒸気が立ち上がり、浴室全体は霧に覆われたかのようだった。
そんな中で、突如入り口の方から物音がした。

「誰だ!」
「エナです。王子様の御体を洗わせていただきます」
「なっ……!」

シャロスの集中力が途切れた。
もやもやした向こうから、髪を短く巻いたエナの姿が近づく。
メイド服は脱がされ、その代わりに薄地の白い素衣を着ていた。
質素で丈の短い衣だが、服の下にある少女の胴体のラインをはっきりと描いた。
可憐な肢体は、あらぬ妄想を起こすほど魅力的だった。

彼女の艶姿を確認すると、シャロスは顔を真っ赤にさせた。

「ここに入っていいと、誰が言った!」
「申し訳ありません。私がリテイア様に仕えた時、いつも御体を洗わせて頂いたもので……」
「私にそんなのいらん」
「はい……しかし、お言葉ですが、王子様はいずれこの国の王になるもの。
こんな些細なことまでご自分の手を煩わせては、きりがありませんわ。
リテイア様が私を王子様の側に置いたのは、まさにこういう事を奉仕させて頂くためかと存じます」

エナの視線は、まっすぐシャロスの両目を捉える。
シャロスは彼女の妖しい躯体を見つめ、ついに折れてしまった。

「……ふん、好きにしろ」
「ありがたき御幸せ。では、こちらへどうぞ」

と、エナはシャロスを浴室の大鏡の前に座らせた。
鏡の中で、エナは服を着ているのに、自分が裸である。
そう思うと、シャロスはなぜか恥ずかしい気分になった。
エナは無表情のままなので、彼はその心境を推測できなかった。

(なんだか、すっごく馬鹿にされたみたい……
こっちがこんなに恥ずかしがってるのに、むこうが全然気にしていないなんて……)

エナはシャロスの背後にひざまずき、水がめやシャンプを用意した。

「しばし目をつむって下さい」

シャロスは言われたとおりに目を閉じる。
頭上から、暖かいお湯がゆっくりと垂れる。
エナは彼の高貴なブロンドを優しくほどき、撫で下ろす。
彼女の指に頭を撫でられると、脳の裏から甘い痺れがじんわりと広がる。
シャロスは思わず考え事を止め、彼女の指使いに委ねた。
サラサラとした金色の長髪は、エナによって水を含まされ、地面のタイルに届く。

そして、エナは何かひんやりとした溶液を頭上に垂らした。
彼女は十本の指を使い、その溶液を巧みに髪にしみこませる。
たちまち泡が広がる音が聞こえ、そしてかぐわしい香りがシャロスの鼻に浸透する。

(ああ、この匂い……リテイアの匂いと、すごく似ている……)

シャロスの緊張がゆるみ、心がリラックス状態になった。
エナの指は、時は放射線状に頭を撫で、時は爪を立たせてやや強くひっかき、
シャロスの髪の毛を泡の中で洗浄する。
目を閉じたまま彼女の手加減を感じると、シャロスはまるで雲の中に浮いているようで気持ちよかった。

エナは後ろ髪に手をそっと添え、それを掻き分けるように優しく指を滑らす。
広い浴室の中は水が滴る音と、髪の毛がザワザワ触れる音しか聞こえない。
洗うことに集中しているのか、エナは黙ったまましゃべらない。
生温い空気や、はてしない静けさが心地よい。
全て終わった後、エナはもう一度頭からお湯をかぶる。

エナはシャロスの閉じた目を優しく拭う。

「もう目を開いても、よろしいですわ」
「はっ……」

シャロスはやっと我に帰り、鏡を見つめる。
この鏡は特殊な薄膜を施されており、湯気の水滴は弾かれる構造となっている。
王族の育ちらしく、シャロスの肌はエナに負けないほど雪白く、キメが細かい。
常にストレスを抱いているためなのか、彼の成長が遅く体は小柄で、後ろのエナと同じぐらい背丈であった。
彼はエナに気付かれないように、彼女のほうを見た。
さきほどの水をかぶったせいか、エナの薄地の白服は濡れてしまい、べったりと肌に貼りつく。
そのため、彼女の女らしいラインは今まで以上にくっきりと現われ、柔らかそうな乳房がうっすらと映る。
シャロスは口の中が乾いていくのを感じた。

その時、エナは石鹸をシャロスの背中に滑らせていた。
どうやら、自分の服が透けて見えるのが気付いていないようだ。
シャロスはなんとなく股間のところを手で覆い、罰悪そうな表情を浮かべた。
もともと秀麗で凛々しい顔立ちは、今でははにかむ少女のように赤くなっていた。
彼はいけないと知りつつも、ついついエナの肢体を見続けた。

今まで召使いに奉仕されることは何度もあったが、シャロスはこれほど興奮したことが無かった。
昨日のリテイアの下着姿を見てから、シャロスはどうしても女性が持つ神秘さに惹かれた。

「王子様、いかがなさいました」
「は、はうっ?い、いいえ……ちょっと考え事してて……」
「まあ。私はてっきり湯加減が至らないかと」
「ううん、大丈夫だよ。エナの手つき、すごく気持ちよくて……」

そう言った後、自分のペニスをしごいたリテイアの手つきを思い出し、慌てて頭を伏せた。

「お褒め頂き、大変光栄です。私、実は按摩を少し心得ています。どうかそちらもご堪能してください」

エナの細い指はシャロスの肩にかかると、ぬるぬるした泡を掻き分けるかのように、彼の肩のツボを押した。

「あっ!」

シャロスは思わず声を漏らした。
あまりにも気持ちいい快感が、彼の神経を瞬時に通過する。
エナの親指は肩の下側に突き、やや痛みを感じるぐらいの力加減で押し続ける。
その位置は肩から、徐々に背筋のほうへ移り、そしてまた背中の外側へ移る。
味わったことも無い痛快さがシャロスを襲う。
エナにさわられた筋肉は、まるで彼女に支配されたかのように、シャロスの言うことを聞かなくなり、力が抜けていく。
エナの手は彼の背筋を続けて押さえ、腰際まで強く撫でられる。
やがて、背中に力が入らなくなったシャロスは、後ろのエナの体へ倒れ掛かった。

「あっ……」

なんとか起こそうとしても、体は彼の言うことを聞かない。

「大丈夫です、そのまま私に寄りかかってください」

エナの言葉を聞くとシャロスはなぜかほっとした。
だが次の瞬間、彼は背中に二つの柔らかい肉感が当たっていることに気付いた。

(これは……エナの胸……!?)

シャロスの心臓の勢いは一気に増加した。
鏡を見ると、彼の体は完全にエナの体とくっついていた。
しかし、エナはまったく気にする気配を見せなかった。

女性特有の柔らかい感触が、背中から広がっていく。
シャロスはその感触に陶酔し、何も考えられなくなった。
エナはそんなことをまったく知らない素振りで、背後からシャロスの左腕に両手を移した。
彼女の十本指は、まるで触手のようにシャロスの細腕に絡み、妖しく蠢いた。
右の腕も同様に、指の先までエナにほぐされると、シャロスはついに恍惚の表情を浮かべた。

エナが体を動かすたびに、胸の先端の柔らかい感触がコツコツと当たり、
シャロスの欲望を掻き立てる。
彼女の指先は徐々に中央へ滑り、シャロスの胸に触れた。

(あっ……そこは……!)

わざとやっているのか、それとも無意識なのか。
エナの指先はシャロスの乳首のまわりをくすぐるように、円を描いていた。
気持ちいい波紋が体中へ広がるが、もどかしい気が充満した。

「体を横にしますね」

突然、エナはシャロスを床に倒す。

(えっ?)

シャロスは慌てて股間に両手を置き、いきり立ったペニスを強引に押し倒す。
頭の下は、折り畳んだタオルが当てられる。
エナはシャロスの裸体の上にまたがり、彼の足の方に頭を向けた。
そして、彼の足のふくらはぎを按摩した。
どうやら股間が膨らんでいることは、ばれていないようだ。
シャロスは思わずほっと息を吐いた。
しかし、彼はすぐに目の前の光景に固まった。

エナの体勢はちょうどシャロスと逆向きになっていた。
彼女は足をシャロスの体の両側に分けてひざまずき、一心不乱に彼の足のマッサージを続ける。
そのため、今の彼女の両足、無防備に開かれていた。
濡れた裾は彼女の魅惑な美尻にぴったりとくっつく。
その下に、女の大事な部分が見え隠れする。

それに気付いた瞬間、シャロスの股間は爆発しそうになった。
エナの動きと共に裾が上下する。
女体の最も神秘な茂みが、シャロスの視界にチラつく。
彼は懸命に首の角度を変え、そのむこうにある光景を目に収めようとした。

(ああっ……もう少しなのに……!)

エナはまるでシャロスを焦らすように、お尻を少しずつ揺らす。
彼女が動くたびに、シャロスも角度を変えなければならないため、とにかく首を動かし続けた。
柔らかそうなお尻と水平に、彼女の美乳が服を突き下げ、ピンク色の先端がうっすらと見える。
シャロスはゴクリと唾を呑み、欲情したサルのように、エナの動きを追った。

その時だった。
シャロスの足裏から、突然激しい痛みが広がった。

「うああーっ!」

シャロスは思わず大きな悲鳴を上げる。

「あっ、すみません。足裏のツボで痛がるということは、体に何らかの不具合があるということです。
王子様はきっと普段で勤労なさっているから、疲れが溜まったでしょう。
しばらく痛いかと思いますが、どうか我慢してください」

エナが言い終わると、激痛が連続してシャロスの足裏から襲う。

「ああっ、ううっ……ああああぁぁ!」

痛感の中には快いものも混ざっている気がしたが、シャロスはそれを感じる余裕が無かった。
彼は痛みの間を徘徊しながら、ただ情けない悲鳴を出すしかなかった。
五分もすると、彼の額に大粒の汗が滴り、目の焦点が合わなくなった。

「はい、おしまいです。少し力を入れすぎたでしょうか?
でも、こうして続けていれば、王子様もいずれ痛みではなく、快感しか感じられないようになりますわ」

エナの無表情の顔に、ほのかな笑みが含まれていた。
しかし、彼女の意味深長な言葉は、シャロスの心に届かなかった。

「はぁ、はぁ……」
「おや、王子様のあそこ、すごく腫れているようですが」
「はあぁっ!?」

痛みのせいで、シャロスはあそこを隠すことをすっかり忘れてしまった。
彼は慌てて覆おうとするが、それよりも速くエナの頭が覆い被さる。

「大変申し訳ありません。王子様がこんなに溜まっているのを、
気付かなかったなんて。私にぜひご奉仕させてください」

シャロスが拒否する間もなく、エナは可愛らしい舌を吐き出し、シャロスのペニスの先端をチョン、と舐めた。

「うっ……!」

あそこから走る衝撃は、シャロスの全ての言葉を封じ込めた。
エナは指でシャロスの剥けたばかりのペニスを摘み、赤ピンク色の亀頭を口に含んだ。
ねっとりとした異空間が、シャロスのペニスを覆う。

「ああっ!うぐっ……はぁっ」

シャロスは思わずリテイアにされたことを思い出した。
あの時味わった新鮮な感触は、エナによって再現される

エナは口をすぼめたり、吸い付いたりする動作がシャロスの目に入る。
生暖かい舌は蛭のように蠢き、彼女の唾液をいやらしく絡ませ、ぬるぬると滑らせる。
その熟練とした動きは、経験が少ないシャロスを追い詰めるのに余裕だった。

シャロスが彼女の下のほうを見ると、襟の開きに沿って、胸元の谷間が覗ける。
まるでシャロスを誘惑するかのように、服越しの乳房が激しく揺れる。
こんな時でも、エナの顔はただ動く機械のように、行為を淡々と続ける。
まるで彼女が扱っているのは男ではなく、もっとどうでもいい物体のようだ。
シャロスはその涼しげな目元を見ると、彼女にとって自分はなんともない存在のように感じ、
とても惨めな気分になった。

しかし、それでもシャロスはエナから目を離すことができず、彼女の女性の象徴に興奮した。

「あっ、だ……め、はぁああ!」

やがて、欲望が一つの塊に凝縮され、徐々にシャロスの下腹部へと集まった。

また、イカされてしまう。
自分の意思とは無関係に、ほかの人にイカされてしまう。
プライドの高いシャロスにとって、それは許しがたい事である。
しかし、今の彼は、エナ押しのける力さえ残っていなかった。
彼はただ弱々しくうめき声を上げた。

「はむっ……んはぁ、王子様、どうか我慢なさらないで下さい。
私の口の中でザーメンを存分に出してください」
「うっ……だ、だめ……い、いやっ!」

シャロスは顔を歪め、絶頂にのぼりつめる一瞬を味わおうとした。

だが、エナはそこでペニスの根元をギュッと押さえ、頭が離れた。
彼女の唇とペニスとの間、唾液の糸が一筋伸びる。

「えっ……?」

シャロスは突然の停止に混乱した。
彼の体内の苦悶は後一歩のところで、発散できなくなった。
エナの方を見ると、彼女はおもむろに立ち上がり、シャロスをゆっくりと立ち上がらせた。

「大変残念ですが……王子様がイヤだというのであれば、仕方ありません」
「えっ?」

シャロスは焦った。
どうやら、彼が先ほど口走った「いや」という言葉を、エナが実行したらしい。
しかし、だからといって「続けろ」という言葉も、言えるはずが無かった。
そんな事を言ったら、まるで自分が快感に溺れたようで、エナに軽く見られるじゃないかという恐怖があった。

王子としての威厳がシャロスを苦しめる。
ペニスはビクビクとわなないたまま。
大きく腫れあがった一物は、刺激を追い求めるように、醜く蠢く。

その様子を見て、エナは挑発的な口調で尋ねる。

「王子様、本当によろしいでしょうか?」
「……うっ、うん、だ、大丈夫だ」

言った後、シャロスは激しく後悔した。


浴室を出た後、シャロスは軽い朝食を取り、そのまま執政殿へ赴いた。
その間も欲望の熱は冷めなかった。
シャロスはあそこを触りたい気持ちでいっぱいだったが、
エナがずっと側にいたため、それさえ叶わなかった。

朝から執政殿で群臣と国政を討議することは、この国のしきたりであり、
そのため明け方の自由時間は非常に少ない。
確かに過去には幾人もの愚君が登場し、国政を放り投げた国王もいた。
しかし、将来に向けて抱負を持つシャロスは、決してそのよう真似はしなかった。
皇后と宰相の発言権が強いとはいえ、群臣の中には王子に忠誠を誓う臣下もいる。
何かがあると、執政殿の朝会でしばしば険しい答弁が続く。
シャロスの役割は、皇后派の発言を食い止め、彼らの言うことへすんなりと傾けさせない事にある。

名目上とはいえ、シャロスは次期国王。
彼は唯一皇后と対等になれる身分である。

「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」
「ああ。皆のもの、おもてを上げてよいぞ」

シャロスは王座に居座った。
その気品高い外見、まだ十六歳とはいえ王者の威風が漂っていた。
しかし、今日のシャロスはいつものように、瀟洒に振舞うことが出来なかった。
高貴な貴族服の下で、下賎な欲情が出口を見つけることが出来ず、彼の体内で暴れる。
シャロスはそれを顔に出さないように努めた。

執政殿に群臣が集まり、官位に従って近くから遠くへ立ち並んでいた。
シャロスの王座は高く設置されているため、彼を見つめるのに、必ず見上げなくてはならない。
もちろん、理由も無く王子に眼を飛ばす人間は誰一人いない。
それを知っていても、シャロスは自分のいきり立つ股間がばれてしまわないか、と心配していた。

「殿下、ご機嫌麗しゅうこと」

突然、誘うような甘い声が響いた。
シャロスが声の方を見ると、王座より五段ほど下がったところに、皇后リテイアの姿が現われた。
王子がいる位置と床の間に十段差があり、それはリテイアは群臣よりも高い地位を持つこと表す。

今日のリテイアは、濃紺のドレスを着ていた。
切り開いた胸元に、趣向が凝ったリボンを結ばれ、その中心は赤い宝石がはめてある。
肉感のある乳房はドレスに持ち上げられ、魅惑な輝きを放つ。
胴体はヘソまで締まり、女らしいくびれが現われる。
紺色スカートの中央は白い三段フリルが挟み込まれ、その鮮やかさに発見した者は驚く。
スカートの柄は高級感のある刺繍が二枚構造に施され、彼女の下半身を装飾する。
その煌びやかな出で立ちは人目を奪う一方、
一体どれほどのお金を費やしたかと想像したくなるほど豪華さがあった。

しかし、その服飾は彼女の魅力を最大限に引き立てたことに、誰も疑うことが出来ない。
外に露出したうなじや胸肌は、男の欲情をそそるのに充分だった。
艶麗な笑顔と人を見下ろすようなな目付きは、他人をひざまずかせるような魔力がある。

いつもなら、シャロスは嫌悪感溢れる気分になるはずだった。
しかし、今日のシャロスは彼女を見た途端、言いがたい甘い気持ちが心に充満した。
股間の一物は今でも無かったほど苦しむ。

昨夜見た彼女の肢体が、まるで悪魔のように浮かび上がる。
魅惑的な微笑み。
自分をあざ笑うかのような目線。
いやらしくひねる太もも、黒い下着に包まれた神秘の区域。
このまま彼女の淫乱な体に抱きつき、成熟した乳房をしゃぶりたい衝動が、シャロスを激しく襲う。
彼女の濡れた唇と重ね、舌を中に入れて絡められる。
彼女にいやらしい手に股間の一物を握られ、色っぽい言葉をかけられながら射精させられる。
リテイアの艶美な姿を見れば見るほど、シャロスの中に妄想が大きく膨らんだ。

(そんな……!くっ、彼女に一回イカされたぐらいで、こんなになるなんて……)

シャロスは渾身の意志をかき集め、やっとの思いでリテイアの体から目を離した。
しかし、数秒もたたないうち息苦しくなり、あまりにも切なく胸が詰まってしまう。
シャロスは再び首をひねると、ちょうどリテイアもこちらに笑顔を向けてきた。
その笑顔に触れた途端、まるで年上の綺麗なお姉さんに恋をしてしまった男のように、
シャロスは照れくさそうに顔を赤らめた。

(シャロス、しっかりしろ!あの女は、男なら誰でも喜ぶ、娼婦のような女だぞ!
しかもあいつはお前の敵だ!いつまで惑わされてるのか)

彼は額に汗をかき、自分を叱責した。
だが、彼女を見れば見るほど、リテイアの豊艶な体が彼の脳に焼きつく。

「皇后陛下、お言葉ですが……殿下より遅く到着するのは、いかがなことかと」

と、一人の臣下が前に出て、厳しい口調でリテイアを咎めた。
その男は灰色の眉と髭を伸ばし、満面の正気で凛としていた。
その名はスデラス伯爵、王国軍を率いる五将軍のうちの一人で、中央軍を統制している。
武人らしい面影からも分かるように、根っからの熱血漢である。

「あらスデラス伯、今日もお元気で。わらわは少し身内の用事ができたため、仕方なく遅れましたわ」
「たとえ皇后陛下というお方でも、殿下を待たせるのは大いなる侮辱行為であり、罰を受けなければならない」
「ふふふ、スデラス伯ったら、大袈裟ね。それでしたら、侮辱かどうか、
殿下ご本人に聞いてみましょう。ねぇ、殿下、どう思われます?」

そう言うと、リテイアはくすりと微笑み、シャロスの視線を絡めるように見つめた。
彼女の嬌艶な仕草を見ると、シャロスの背筋がぞくりとした。

「ねぇ、殿下、わらわは今回、本当に仕方なかったのですの。
心の中でちゃんと反省するから、見逃してくれない?」

リテイアの優しい語り口は、シャロスの心をくすぐった。

「う、うん……皇后様も多忙の身。今回は特別に許そう」
「ふふふ、聞いたかしら、スデラス伯?殿下も許してくれるって。これでまだ意見あるわけ?」
「……いいえ。殿下がそうおっしゃるのなら」

スデラス伯爵は一歩下がった。

「さて、今日の朝会を始めよう」

そう言った後、リテイアはシャロスに向かってこっそりとウィンクを投げた。
それを見て嬉しくなったことに、シャロス自身はまだ気付かなかった。

いつもなら精力的に臣下の報告に耳を傾けるシャロスであったが、
今日に限って一刻も速く終わってほしいと思った。
彼はもともとエナによって欲情が引き起こされ、
それがリテイアと対面した後、更に油に火が注ぐ状態となった。
おもてでは臣下の言葉を聞くふりをするが、裏では股間をしごきたい願望で頭一杯だった。

「……と思われます。ところで、トーディザード卿にお伺いしたいことがありますが」
「何でしょうか、オイバルト殿」

突然、場の空気が険しいものへと変わった。
シャロスもそれに察し、発言者のオイバルトを見た。
三十代の活力的な男で、物事をはっきりと言う人間である。
その権威を恐れない性格が災いし、同僚から推挙されることはなかなか無い。
そして今も、彼は自分より位が遥かに高いトーディザード宰相に、意見を述べようとしている。

「トーディザード卿、失礼を承知しておうかがうが、王都の近郊で王家の名を騙り、
農民から土地を取り上げる事件をご存知ですが?」

トーディザードはふんと鼻を鳴らし、

「オイバルト殿は随分お暇のようですな。そんな風の影のような事に、いちいち労力を費やしておられるのか」
「しかし、もしそれが本当であるとしたら、王に反逆を企てると同様の重罪でございます」

オイバルトは一歩も引かなかった。

「オイバルト殿、それはあなたの管轄範囲ではないはず。
土地関係のことなら、そちらの専務機関がわしに報告してくるだろう」
「その専務機関が機能していないとしたら、いかがでしょうか」

まさに一触即発の場面だった。
その時、リテイアの心地よい声が割り込む。

「オイバルト殿もトーディザード卿も、少し落ち着きなされ。ここでずっと争っても、
結論は出てこないでしょう。今日の殿下は、気分がまだ優れないようですし……ねぇ、殿下?」

リテイアは意味ありげに、シャロスの股間を一瞥してから、ニコッと笑った。

「あ、ああ……」

シャロスは顔を真っ赤に染めた。

「しかし、私には確かなる証拠が……」
「オイバルト殿、いいかげんにしなさい。わらわは殿下を休ませようと言ったのよ。
国を案じるのなら、まず殿下の身を案じなさい」

オイバルトはしばらく黙った後、

「はっ。度が過ぎたことを、お詫び申し上げます」

とシャロス王子が何も異論を返さないことに驚きつつ、引き下がった。

「今日の朝会は、ここでおしまいにしましょう」

リテイアはそう宣言した。
群臣の中には、シャロスの様子におかしいと感じた者もいた。
しかし、彼らはリテイアの言ったとおり、それを王子はまだ病み上がりであると解釈した。



シャロスは一足速く執政殿から出た。
彼は自分の失態を反省しながら、一刻も早く誰も居ない場所へ行きたかった。

(くっ……なんてことを!あの女の姿に、自分を見失うとは)

リテイアが見えなくなってから、シャロスはやっと我に帰り、そして自分の不甲斐無さを悔やむ。

メイド服のエナはすかさず彼の側へ駆けつき、

「王子様。リテイア様より伝言です。昼食を共に進めたいため、ぜひ後宮へお越し頂きたいとのことです」

一瞬、シャロスの頭にリテイアの妖艶な笑顔が横切る。
彼は慌てて頭からその念頭を追い出し、

「ふん、彼女に伝えとけ。私は体が不調であるゆえ、参られないと……」

「あら、せっかく殿下のためにいろいろ用意したのに」

突如、美しい女声がシャロスの言葉を遮る。
そして次の瞬間、シャロスはその人物から放たれた香りに反応し、彼女へ振り向いた。
濃紺のドレスを着たリテイア皇后と、エナと同じ顔立ちのマナがそこにいた。
マナはエナと同じメイド服を着て、悪戯っぽい笑顔を浮かべていた。

「皇后様……」
「ねぇ、殿下。今日どうしてもお越し頂かないの?」

リテイアはやや悲しげな表情を作る。
彼女の熱っぽい視線に見られると、シャロスの胸は破裂しそうになった。
彼は罰悪そうに相手から視線を逸らし、

「し、しかし……」
「わらわは殿下の体を思い、回復を速める滋養品を選りすぐりましたの。
……ふふふ、殿下の体も、きっとそれに喜ぶわよ」

リテイアの言葉は、シャロスの妄想をかきたてる。

彼女についていったら、何が起こるかわからない。
しかし、むしろ何かが起きると思うと、シャロスの胸に妖しい期待が躍り出る。
理性と欲望は互いに争い、彼の心を苦しめる。

「ふふふ、迷っているようですわね。とりあえずわらわに付いて来ましょう。
途中で意見が変わったら、わらわも止めませんわ」
「う、うん……」

シャロスは迷った表情のまま頷いた。
彼女について行ったら、きっともう意見が変わることは無いと分かっていたが、彼にはどうすることもできなかった。


しばらく歩いていると、后妃や女召使いたちが住んでいる区域に足を踏み入れた。
ここは王族を除けば、女性のみが入れる禁区である。
その理由もあって、宮殿全体を守る近衛隊は女性のみ構成される。
近衛隊隊長のレイラは太子派であるため、リテイアの勢力下にある後宮は普段から近衛隊と距離を取っている。
そのため、後宮の情勢は不透明である。

シャロスはまわりの建物を見て、ふと小さい頃を思い出した。
あの頃、ここのあるじは彼の母上であった。
彼の幼年はここで母上と共に過ごし、そしてレイラと知り合ったのもここの庭だった。

「殿下……殿下ったら!」
「はっ!」

シャロスの目の前に、リテイアのやや不機嫌な顔があった。

「どうしたでしょうか、皇后様……」
「殿下ったら、さっきからずっと上の空。わらわという人が側にいながら、何をお考えでしょうか」

リテイアはまるで恋人に向かって拗ねる様な口調で言った。
恋愛経験がまったく無いシャロスは、すぐに飲み込まれてしまった。

「い、いいえ……」
「殿下、いいかしら?殿下は今、わらわに招かれています。だから、わらわ以外の女性を、考えてはなりませぬ」
「は、はい……」

シャロスは左右をチラッと見た。
エナは相変わらず無表情だが、マナはニヤリと微笑んだ。
その意味ありげな笑顔に、シャロスの顔は赤くなる。

道で出会った人は、みんな女性であった。
当然といえば当然だが、自分だけ男という環境に、シャロスは焦りを感じた。

しばらくすると、彼らは一番豪華な屋敷にたどり着いた。
正門から十数人のメイドが立ち並び、リテイアやシャロスをみかけると、みな恭しく頭を下げた。
彼女達もまた、マナやエナと同じ服飾をし、彼女達二人に負けないぐらいの美貌の持ち主だった。

シャロスが連れて来られたのは、趣きのある小さめな部屋であった。
部屋の中央に円卓があり、その上には綺麗なテーブルクロスが敷いてあった。

「わらわは殿下の近くに座りたいから、このセッティングを許してください」

リテイアの言葉通り、テーブルの向かい側に置かれた二つの椅子の間は近かった。
彼女とシャロスが席に着くと、マナはワインとグラスを持ってきた。
エナは料理の準備を進めに行ったのか、どこかへ消えた。

「ふふふ、わらわと殿下との、お近づきの印よ」

と、リテイアは注がれた赤ワインを口元に持っていった
シャロスもおもむろにそれを口元に持っていくが、眉をしかめた。
記憶の曖昧なところ、どこかいやな感じがした。

「あら、まさか殿下はわらわが毒を入れたと疑っているかしら」
「いいえ、そんなことを、私が思うはずはありません」
「では、なぜ殿下は嫌がるようなそぶりを見せるのです?ふふう、わらわが先に飲んで、潔白を証明いたします」

リテイアはグラスの縁につややかな唇を乗せ、グラスを傾けた。
ワインは彼女の口へなまめかしく流れ込む。
その量が半分ほど減った時点で、リテイアは唇を離れた。
グラスの縁に、赤いルージュの跡がくっきりと残った。

「いかがですか、殿下?」
「皇后様が私を害するなど、最初から思っておりません。皇后様も、ご冗談を……」

シャロスはやや引きつった笑顔を浮かべて、自分のグラスを持ち上げた。
しかし、その手をリテイアが遮り、

「いいえ、冗談ではありませんわ。殿下はきっと、そのグラスが細工されているじゃないかと、
疑っていることでしょう。殿下には、私のグラスを飲んでいただきます」

リテイアはそう言うと、自分が飲んだグラスを、シャロスの口元へ近づける。

彼女の言動にシャロスは困惑した。
それを見たリテイアは、悪戯っぽい表情を浮かべる。

「ふふふ……さあ、殿下。口を開けてごらん」

魔力を帯びた音色に、シャロスのあらがう意思が薄くなる。
リテイアはルージュの跡が残った側を、シャロスに向けた。

(はぁ、そ、それは……!)

そこにリテイアが口付けをしたと思うと、シャロスの股間が反応した。

「さあ、殿下。遠慮しないで下さい」

ついに、シャロスの唇はルージュの跡と重なる。
甘いぬくもりと、ワインの芳ばしい味が口の中に広がる。
シャロスはまるで、リテイアの唾液を味わっているような居心地になった。
やっと全て飲み干すと、アルコールが彼の身をめぐり、血流を速めた。
リテイアは突然身を乗り出し、シャロスの耳元でささやく。

「これで殿下はわらわと間接キスを交わしちゃったね」
「あっ!」

シャロスは思わずビクンと跳ねた。
横からマナがくすくす笑っているのを見て、彼は自分の失態に気付き、更に顔を真っ赤に染める。

「ふふふ……殿下って本当に面白いお方ね。さあ、マナ。あなたは下がって頂戴」
「はい、リテイア様」

マナは一礼すると、扉を閉じて退出した。

二人っきりになると、部屋中に微妙な空気が流れる。

「皇后様、私は……」

突然、リテイアはシャロスの唇に柔らかい指を立て、

「だめよ、シャロス。二人っきりになったとき、わらわのことを『お母さん』と呼ぶの、約束したじゃない?」

彼女の優しい語りは、昨日と同じ妖艶な悪魔になった
シャロスの胸がドキドキに鳴り続き、息が浅くなった。

「うふふ……そんな緊張しないで。それとも、硬くなったあそこのせいかしら……?」
「ああぁっ!」

シャロスは悲鳴を上げた。
テーブルの下から、リテイアの足先が彼の股間に当たった。

「いやらしい子ね。さっきからずっと硬くなってるのを、わらわが知らないとでも思って?」

リテイアは小さな子を咎めるように語り口だった。
その言葉は、まるで鋭い刃物のように、シャロスの心の防壁を切り裂いた。

「ああ……ご、ごめん……お母さん!」
「ふふふ……こんなビンビンになっちゃって!そんなにしてほしかったら、自分から腰を動かしてみたら?」
「はぁ、はあん……」

シャロスは切ない息を吐き、言われたとおりにリテイアの足にあそこを懸命にこすりつける。

「ふふふ、そうよ。そうやってどんどんスケベになっていきなさい……」

「お母さん、お願い……また、昨日のように、イカせて……」
「だめよ!言ったでしょ、あそこがイライラしたとき、ちゃんと自分で処理しなさいって!」

リテイアのつま先は布を通して、シャロスの一物を摘み、激しく動かせる。
シャロスの余裕が消えた顔には、どうしようもない屈辱と、妖しい悦楽が入り混じる。

「あ、朝起きたとき、一回やったの……ちゃんと、お母さんのことを思いながら……」
「あーら、なんて淫乱な子かしら!朝一度抜いたのに、またこんな硬くさせるなんて!」
「ご、ごめんなさい!で、でも……エナが、エナがあそこを舐めて……そ、それが途中で終わって……」
「あら、エナがそんなことを。……だれか!」

リテイアが高らかに呼び出すと、すぐに駆け付く足音が起きた。

「はい」
「マナ。エナをここに連れてきなさい」
「はい」

しばらくすると、顔が瓜二つの少女が部屋に入り、頭を伏せる。
リテイアはポニーテールの少女に向かい、

「エナ、殿下から聞いた話だと、あなたは朝ご奉仕をしましたね」
「はい」
「しかし、行為は最後まで行き届いていないそうね」
「はい」
「なぜそんな中途半端なことをなさるのかしら。わらわがあなたに、
殿下の煩悩を解かせる為に置いたのよ。
それなのに、行為を怠るなんて……いったいどういうつもり?」

「申し訳ありません。しかし、王子様自身がそれを嫌がっておられまして……」
「殿下が……?その言葉に嘘はないのか?」
「はい」

エナは淡々とその時のいきさつを述べ続けた。

マナはかたわらで時々盗み笑いをこぼし、
それとは対照にシャロスは地面に穴があれば入りたいほど恥ずかしかった。

「ふふふ……はははは!」
「こ、皇后様!笑わないで下さい!」

「ふふっ、これは失礼したわ。その時の様子、大体分かったわ。エナ」
「はい」
「あなたは勘違いをしてるのよ」
「勘違い……ですか?」

エナの瞳に、不思議そうな輝きがした。

「あの時王子様は確かにイヤだとおっしゃったが、それは口先だけなのよ」
「では、その時の言葉は偽りだったということですか?」

エナの生真面目な態度に、リテイアは失笑した。

「そうでもないわ。体の方はしてほしいのに、理性の方がそれを恐れている。
殿下はその時、自分の感情を勘違いしているのよ。覚えなさい、殿方はみんな射精が大好きなの。
一度勃起したら、ちゃんと最後までやりなさい」

「はい、心得ました」
「ふふふふ……殿下、私の言った通りでしょ?彼女はとても素直な子なのよ。
今回は殿下も悪いのよ。エナはあなたの召使いだから、彼女にちゃんと命令しないと」

「は、はい……」

シャロスは叱られた子供のように、口答えが出来なくなった。

「それにしても、殿下のあそこ……すっごく大きくなってるわ。朝から今まで、ずっと我慢していらっしゃったのね」
「はぁ、うっ……うう!」

リテイアの足がまた上下にしごく。
その微妙な刺激に、シャロスは喘ぎ声を漏らした。

「ねぇ、殿下。このままでは、いつまでもうじうじしているつもりなの?」
「う、うう……」
「殿下も、速く抜きたいでしょ?」
「は、はい……抜きたいです!」

シャロスは思わず淫語を繰り返した。
彼のペニスは幾度と挑発され、もはや一触即発の状態だった。

「ふふふ……じゃあ、今度こそエナに役目を果たしてもらおうかしら」
「えっ?」

リテイアの足はシャロスの股間から離れた。

「あ、ああっ」
「さあ、殿下。今度はちゃんとエナに指示するのよ」
「し、指示って……」
「殿下のおちんちんに、ご奉仕させることに決まってるじゃない!」
「そ、そんな……!」

その浅ましい発言は、シャロスのプライドに邪魔されて言えなかった。
彼は今日初めて自慰したが、なんとなくそれはいけない事だと感じた。
女にあそこを触られるなんて、もってのほかだ。

「殿下、その姿のままじゃ、とても苦しいでしょ?それに、大臣だって貴族だって、
みんなやってることなのよ。ただ、おもてでは誰も言わないだけよ。
殿下も将来立派な王様になるんだから、今からちゃんと慣れておかないと、ね?」
「うっ……」

リテイアの言葉に、シャロスは動揺した。

欲情に混乱した頭は、その真偽を判断する力が無かった。

「さあ、言ってみなさい。『エナ、そのいやらしい口を使って、
私のおちんちんをしゃぶり、汚いチンポ汁を出させてください』って」

(くっ)

とても屈辱的な言葉であった。
しかし、そんなことよりも、股間から広がる苦悶のほうがもっと苦しかった。

シャロスは口を開き、泣きそうな声で呟いた。

「エ、エナ……その、いやらしい口を使って、わ、私のおちんちんをしゃ、
しゃぶり……汚いチンポ汁を出させてください!」

「はい、かしこまりました」

エナはシャロスのズボンや下着をおろし、慣れた手つきで彼の腫れたペニスを露出させた。

淫猥なオスの匂いが部屋中に広がる。
シャロスはとても惨めな気持ちになった。
側ではリテイアのみならず、メイドのマナまで、彼の下半身を見てくすくす笑っていた。

エナの息が掛かると、ペニスは更に大きく膨らみ、表面に浮かぶ血管がドクン、ドクンと蠢く。
ペニスの先端はぬるぬると湿っていた。
エナは愛おしそうに根元の部分に手を添え、彼の先端から口を覆い被さる。

「あああぁっ!」

とてつもなく敏感になった部分から、雷を撃たれた様な快感が走る。
エナが頭を前後に動かすたびに、彼女のすぼめた口が竿をこすり、舌が亀頭をなだめる。

「はあぁあぁ!も、もう我慢できない、ああ、あああぁあああ!」

シャロスは狂い出すような声で呻いた。
彼はエナの頭を掴むと、シャロスは腰を突き上げた。

「うぅんん――!」

エナはくぐもった悲鳴を上げた。
しかし、シャロスはそれにかまわず腰を振った。
散々溜まった濁汁は、凄まじい勢いでエナの喉へ直射する。
大量の粘液にエナはやや眉をしかめたが、ゴクン、ゴクンと飲み干した。

やがて、シャロスの一物は何もかも吐き出し、小さく萎縮してエナの口からはずれた。
彼は思わず尻を床につかせた。

「あーあ、もうイッたなんて……いくら焦らされたからと言って、速すぎるわ」
「ご、ごめんなさい……でも、どうしても……」
「殿下、早漏れの男性は、女性に好かれないわよ。これからはちゃんと長持ちするよう、気をつけなさい」
「はい……」
「それと、これから自分でイクのが難しいとき、ちゃんとエナに手伝ってもらいなさい。
そのために、彼女がいるんだからね」

「は、はい、皇后様……」

シャロスはそう言って、ついに気を失った。

王子が確実に堕落していく様子を見て、リテイアは会心の笑みを作った。






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