紅内家の奴隷
シチュエーション


雨の音にまぎれて山内にある豪邸の部屋の一室からもれ聞こえるのは若い女のうめき声だった。
男の快楽に耽る呻り声と女の苦痛と恥辱に満ちた泣き声

「ふぅ。」

男は、性欲の捌け口として満足すると、一息つき、タバコに手をかけながらベルを鳴らす。

「終わった。」
「はぁっはあっっうぅぉえぇぇっ」

無理やり飲まされた大量の精液にむせ、床に伏せ、吐きながら息を切らせている女を尻目に男は携帯をいじりだした。
女には快感などまったくなかった。そして、事後としてのいたわりも全く受けていない。
それが女をより一層惨めな気分にさせた。

「風呂の用意をしろ。」
「はい」

男の命令に対し、呼び出されてきた屋敷のメイドが返事をすると、男のほうは咽いでいる女を一瞥し、

「それは、牢屋に閉じ込めておけ。」

とだけ呟いた。

「かしこまりました。」

メイドが感情のない声で返事だけをする。
男は性欲を吐き出した後、もう女のことなど興味がないと言わんばかりに振り返りもせず部屋から出て行った。

「うぅっぅぅぅううううううう」

声にならない声で泣きくずれている女は、抵抗虚しく屋敷のメイド達に引き連れられて行った。

男の名前は紅内洋一、この屋敷に住む3男だった。
先ほどまで性欲を吐き出していた女のことなど、もう覚えてすらいないという表情で携帯をいじりながら歩いていると不意に背中から声をかけられる。

「洋一。」
「ん?おう。」

洋一が振り向くと、兄の剛が立っていた。

「風呂か?」

剛は洋一を見て、先ほどまで何をしていたか知っている。

「どうだった?」

日常的ではないが紅内家の兄弟にとっては当たり前の会話に洋一は何でもなさそうに答える。

「別に、ただの女だ。」
「そうかよ。結構かわいい顔してたんだがなぁ。こんど俺も"遊んで"みるか。」
「兄さん。何か用があるんじゃないの?」

洋一は用事がない限りこの兄が話しかけないことは知っている。
そんな兄の剛が妙に親しげに話しかけてくるのを訝しく思い、質問を投げかけた。

この山内の豪邸は「紅内家」の私有地で、泥棒が入る事で有名であるため別名「泥棒屋敷」と囁かれていた。
といっても、盗みを目的とした純粋な泥棒が入るわけではない。
実は紅内家は、ある施設に巨額の寄付をしている。
その施設は借金を返す見込みがなくなった女性を一箇所に集め、管理する女性専用の強制収容所だ。
主にホスト遊びやブランド物に嵌り多額の借金を作ったものの風俗働きを拒む若い女性が中心として集める。

その施設の警備員は女性であるため、性的暴行をその施設で受けることはないが、警備員が女性であるが故に施設内のいじめは屈辱的で、施設内の多くが一秒でも早くそこを抜け出したいと願っていた。
その希望の隙を突いたのが、紅内屋敷へ泥棒に入るということであった。
つまり、定期的に施設内の労働者に紅内屋敷のどの場所に借金の証文が隠されている。
そして、この時間帯には紅内屋敷は誰もいないので泥棒に入るチャンスが多々あるという情報を囚人に定期的に流す。
しかも過去の盗み成功率が5割という実績とともに。
普通であればそれほど頻繁に盗みに入られ成功している以上あからさまな罠であるとしか思えないが、施設内を抜けたいと切望している囚人達には魅力的な情報としか受け取ることができない。

囚人達は安易に盗みに入ろうとする。
そして捕まった泥棒が、冒頭で牢屋に閉じ込められた女だった。
彼女達の運命は完全に閉ざされている。一生紅内家の奴隷として生きていくしか道が残っていないのだ。

洋一の質問には答えず、剛は自分の言葉を続ける。

「今日例の施設から、月一の報告写真もらってさ。」

剛が洋一の顔を見ながら面白そうに窺いながら続ける。

「面白いのが写ってたんだ。」

そう言いながら、施設の名簿写真を開いた。

洋一は兄の遠まわしな言い方に苛立ちを覚えた。
しかし、見せられた写真の周りに赤い丸で囲っている箇所を見て洋一は、驚きの表情を浮かべ、一瞬で苛立ちを忘れた。

「こいつ。那賀野 亜未じゃねえか。」

洋一は驚きを隠せず叫んだ。

那賀野 亜未。紅内洋一が以前通っていた学校の同級生。
いつも、セミロングのストレートヘアをポニーテールにした髪型をしていた。
その髪型が芯の強そうな目つきをした色白の顔に妙に似合っている。
スタイルも出るところはしっかり出ていたが、バランスの良い体つきをしていて頭が悪そうに見えることは決してなかった。
この「純和風の大和撫子」という言葉がピタリと当てはまる少女のことを洋一は鮮明に覚えている。
そして、高校時代に一度アプローチしたときに、きっぱりと拒絶されたことを未だに恨んでもいた。

「何故、こいつが?」

洋一は、疑問半分に誰に向けてともなくそう呟いた。
そして、うまくやれば、これからこの女を奴隷にし、その命運を自分が持ち続けていられる妄想を浮かべ嫌らしい笑みを浮かべた。






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