美少女戦士フリーダム・エンジェル!【第一話・怒れる拳】
シチュエーション


五人の乙女戦士、フリーダム・エンジェル!彼女達はオーブンシティを守る愛と正義のヒロインである。
オーブンシティの平和と安らぎを脅かす悪の組織を倒す彼女達はシティに住まう市民にとって自分達を守ってくれるかけがえのない存在。
シティに住む人達の応援の声を背負い、フリーダム・エンジェルはにっくき悪の組織を倒すために戦うのだ!

しかし・・・・いくら正義をうたおうが武力を行使すればどこかしらに必ず犠牲が生まれる。
犠牲になった者はいくら正義の味方を非難しようとも、その声を聞く耳を持つ者はおらず
逆に非難した者を悪の手先と決め付け、罵り、迫害する。
ジン・ヤヨイ、この一人の少年もまた正義と言う名の力によって運命を大きく狂わされる事となった。

幼い頃にジンは両親を交通事故で亡くし、妹のマミと共に父親の友人に引き取られてオーブンシティで暮らしていた。
父親の友人は二人にとても優しくしてくれたおかげで、ジンとマミは両親の死からどうにか立ち直る事が出来た。
ジンはいつか父の友人に恩返しをしようという気持ちと共に、唯一の肉親である妹を絶対に守ると決意をしていた。
だが、そんなジンに悲劇が訪れる。それはジンが父の友人とマミの三人で新装開店したショッピングセンターに行った日の事だった。
その日はマミの誕生日だった。マミは兄からもらったブローチを大事そうに持ちながら、
嬉しそうにショッピングセンターではしゃぐマミを父の友人とジンはやれやれといった様子で見守っていた。
と、突然にショッピングセンターで爆音が鳴り響いた。オーブンシティを狙う悪の組織の一つであるロンゴスが攻撃を仕掛けてきたのである。
ショッピングセンターを破壊するロンゴスの手下、ジンは妹の手を引きながら父の友人と逃げ道を探す。
しばらくするとオーブンシティを守る正義の味方、フリーダム・エンジェルが見飽きた登場ポーズと共にやってきた。
エンジェル達はロンゴスの手下を情け容赦無く攻撃する、が彼女達が暴れれば暴れるほどにショッピングセンターが壊れていく。
出口に差し掛かった所でマミが瓦礫につまずいてしまい、手に持っていたブローチを階段に落としてしまう。
ブローチを拾おうと階段に行こうとするマミをブローチはまた買ってあげるからと、ジンは制止しようとするが
マミは首をブンブンと横に振って頑なに兄の言う事を聞かない。

仕方なくジンはマミを父の友人に任せると階段へと走ってゆく。
しばらく階段を降りていたジンはようやくブローチを見つけると、それを広いほっと一息をつく。
と、急にジンの頭の上で大きな爆音が鳴り響く―――出口の方からだ。
背筋に冷たいものが流れるのを感じたジンは全力で階段をかけあがる、どうか二人が無事でいてくれる事を祈りながら。
階段を登り終えたジンは辺りを見回す、周囲は瓦礫で滅茶苦茶になっており二人の姿はない。
再び遠くで爆発が起きる、ジンはその場でしゃがみこみながら上空を見上げる。
そしてジンは何故、爆発が起きたのか分かった。フリーダム・エンジェルの一人が手から光線を放っている。

「も〜!さっきからチョロチョロと逃げないでよね!」

フリーダム・エンジェルから放たれた光線をロンゴスの手下が回避し、その光線が地面に当たって爆発していたのだ。

「マミ!おじさん!」

ジンは瓦礫を起こし、必死で二人を探していると近くでうめき声が聞こえた。
ジンはうめき声のした方へと駆け寄り、瓦礫をどかすと父の友人が頭から血を流しながらその場にうずくまっていた。

「おじさん!おじさん!」

ジンは大きな声で叫ぶ。父の友人は苦しそうに息をしながらジンの後ろの方に指をさす。
ジンが振り返ると、妹のマミがうつ伏せで倒れていた。

「早く・・・マミと・・・逃げ・・・くっ」

父の友人は一言ジンにそう言って静かに息を引き取った。
ジンはギリッと歯を食いしばりながらもマミの方へと駆け寄る。
ジンは妹の名前を狂ったように呼ぶが、マミは息はあるものの瞳を閉じたまま動こうとしない。
マミの頭から一筋の血が流れる。どうやら頭にダメージを受けたようだ。

「ギャアアアアア!」

エンジェル達の方はようやく敵を倒したらしく、ロンゴスの手下は絶叫と共に炎に包まれる。

「やったね、みんな!今日も私達の大勝利だね!」
「ううん、リーダーが頑張ったおかげだよ!正義は勝つ!なーんてね!」
「やれやれ・・・また調子に乗っちゃって」

お互いを称賛するエンジェル達とは対照的に、泥だらけになったジンはマミを両手に抱え涙を流す。
そして、天を見上げフリーダム・エンジェル達を見つめる。遠くではエンジェル達が勝った事に対して喜ぶ市民達の声がジンの耳に聞こえてくる。
彼女達はエールを送る市民達に笑顔を振り撒きながら手を振る。
やがてフリーダム・エンジェル達はショッピングセンターを後にした。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

エンジェル達の後ろ姿をジンは鬼のような形相で睨みながら泣き叫ぶ。ブローチを持った右手を力強く握り締めながら。

その後、マミは病院へと運ばれ治療を受けたが意識が戻る事はなかった。
主治医が言うには脳に深刻なダメージがあり最悪の場合、このまま目覚めないかもしれないらしい。
それにマミを入院させ続けるためには医療費が必要となる。
父の友人が死んでしまった今、身寄りがいないジンには金などない。
主治医は仕方ないから今は払わなくても構わないと言ってくれたが、それだって長くは続かないかもしれない。
ジンはベッドに横たわるマミの顔を見つめながら泣く。周囲はジンの事を悪に巻き込まれた被害者だと口々に話す。

だが、ジンはそう思わない。あの時フリーダム・エンジェルが放った光線で父の友人は死に、妹は意識が戻らなくなってしまった――――ジンにとってそれが真実なのである。
けれども、その事を言った所でジンの言葉を聞いてくれる人間など誰もいない。
結局、ジンはエンジェル達相手に泣き寝入りするしか道はなかったのであった。
ジンは誰もいない家の中で一人、ただただ涙を流し続けていた。
あれから数日の時が流れたがマミの意識は戻る事もなく、またジンは高校を中退してしまった。
ジンを慰める声はあるものの、エンジェル達を咎める声は全くなく、それがジンの心を苛立たせる。
また、テレビや新聞でフリーダム・エンジェルをもてはやす報道を見るたびにジンは例えようのない怒りに身を震わせる。

(何が正義の味方だ、何が正義のヒロインだ。お前達のせいで恩人が死んで妹は意識が戻らない。
そして俺は高校を中退してこのザマだ!
何で誰もアイツラに文句を言わないんだ?この街に住んでいる奴らは・・・・馬鹿ばっかりだ)

外を歩いていたジンは手に持っていた缶コーヒーを握り潰した。

「ようやく見つけたぞ・・・・ジン・ヤヨイ」

歩いていたジンの前に一人の長い金髪の少年が立ち塞がる。ジンは怪訝そうな顔をして握り潰した缶コーヒーを地面に捨てる。

「俺に・・・・何の用だアンタ?何で俺の名前を知っている」
「俺の名前はライ・ザ・レーベル。フリーダム・エンジェルと対立する組織ザフートの幹部だ」
「ふーん・・・・つまりアンタは悪の秘密結社の一員って訳か。んで、その幹部さんが俺に何のようだ」

ジンの問いにライと名乗った少年は表情を変える事なく歩み寄る。何処と無く威圧感を感じたジンは警戒の構えを見せた。

「安心しろ、俺はお前に危害を加えるつもりはない。ただ、フリーダム・エンジェルに対するお前の姿が気になっただけだ」
「なんだと?アンタは何が言いたいんだ」
「このオーブンシティに住む者達は揃って、フリーダム・エンジェルを褒め称えたり尊敬の眼差しを送る。
だが、お前だけは違う。お前は奴らに対して怒りと憎しみの感情を抱いている」

まるで自分の心を見透かすようなライの言動にジンはゴクリと喉を鳴らし、ライの顔を見つめ続ける。

「ついてこい、ジン・ヤヨイ。お前の望むものが欲しいのならな」

ライはクルリと後ろを向くとゆっくりと歩き出す。ジンは少し躊躇したものの、ライの言葉がどうしても気になっていたたも、彼について行く事にした。

マミが大切にしていたブローチを首に下げながら――――――。


【次回予告】
正義が悪を呼び、悪が戦いを呼び、戦いが悲しみを呼び、悲しみが怒りを呼ぶ。
終わり無き負の連鎖を知りながらも少年は力を求める。己の守りたいものを守るために。その先にあるものは果たして何が。
次回、美少女戦士フリーダム・エンジェル!【ザフートとジンと】






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