ロスト・エンジェリカ
シチュエーション


※やや鬼畜、触手怪物系


ブウウウウウウウン……

深い、地の底まで落ちていくような音が響いていく。
それに伴い「暇ね…」と、熱の灯らない、
底冷えするような声が混じった。
降下中の高速エレベーターに乗り合わせているのは、
黒のレディーススーツを着た、長い髪の女が一人。

「…………」

四方を囲まれた空間では、なにもできはしない。
階層を示す数字を見上げるぐらいしか、やる事がない。
しかし「1」階から「30」階までを示す数字には、
どれも光は灯っておらず――

「三秒前」

不意に、女が小さな声で呟いた。
エレベーターがノンストップで、まもなく二分を超え
ようとした時――急速に勢いが低下した。



――地下???階――

……ィィン!

扉が左右に開くのと同時に、踏みだす。
白い壁面、さらに青白い蛍光灯、まっすぐな廊下。
幅は広く、天井も高く、必要以上に明るい。
だが全体的に薄汚れており、とても清潔そうには
見えなかった。

「……」

女はただ、黙して進んだ。
掃除をする人間、もとい誰ともすれ違うことがない。
いずれ行き止まり、突き当りに存在した扉を見上げる。
どこにでもありがちな、ドアノブ製の扉だった。

「……ふぅ……」

視線を細め、一つ吐息をこぼす。
覚悟を決めるようにして、慎重にドアノブを掴むと、
耳障りなノイズを伴った音が、天井から響き渡った。

『――いらっしゃいましー!
そのままで百秒間、お待ちくださーい!
いやー、それにしても本日はお日柄もよくー
ってここ、地下でしたねー!地下といえばー、」
「三秒」
天井から届く機械音声を、完全に無視。
ドアノブを左にゆっくり、傾けた。

『……トラップ解除。ごゆっくり、どうぞ……』

――地下研究室――

踏み入れた部屋の中は、薄暗かった。
何かしらの機会音が、絶えまなく蠢いていた。
部屋の左右には、ガラス張りになった温室の空間が
設けられ、間にある中央の床では、
無数の配線がひしめき、波打っている。
そのいくつかは、左右にあるガラス窓の前に置かれた、
巨大なコンソール機と繋がっているらしい。

(……相変わらず、不気味な場所だ。
まるで化け物の腹に収まったかのよう……)

思い、女が一歩を踏み出した。その時、

「やめてっ!やめてよぉ……っ!
もう、こんなのヤダぁ……
壊れる、壊れちゃぅぅぅっ!!」

部屋中に、響き渡る悲鳴を耳にした。

(……紛れもなく、腹の中か)

捩れた腸のような配線の上を、
尖った靴のヒールで踏みつけ、進んでいく。
細められた女の視線に写るのは、温室内の内側だ。

―――ピピッ、ピピピッ

コンソールは今、一台が稼働している。
そのガラス張りの内側で行われている光景を見て、
ニヤニヤと、気持ちの悪い笑みを浮かべ、
やせ細った白衣の男がいる。

『男』
「……おやぁ?」

薄暗い部屋の中でも、男が身に着けた白衣は、
皺だらけで薄汚れているのが一目で分かる。
本人もまた無精髭を生やし、かけた眼鏡は曇っている。
しかしその中身は研究者という風にはまだ若く、
下手をすれば十台。二十歳にも届かぬ顔立ちだ。
ただ一つ、男の瞳に宿る色だけはひどく不気味で、
怪しげだった。

なにもかもが不揃い。
年齢不詳といえば、まだ聞こえがいい方かもしれない。

「百合さん、お久しぶりですねぇ」
「殺されたいのか板道。私を下の名で呼ぶな」
「えー、マジすんませんした、白亜隊長。へへぇ〜」

わざとらしく、恭しく礼をする。芝居かかった態度に、
軽薄な若者を素で演じるような口調。しかし何故か、
型に嵌まった流麗さと、微細な洗練さも覗えた。
厭でも記憶に残る、正体不明の"うさんくさい男"。
それが、板道鉄牙という男であった。

「昨日、私が捕縛した <聖天使> の具合はどうだ」
「それよかまずは見てください。この新しいスピーカー。
ノイズが無くてですねぇ、室内の音がクリアーに拾える優れ物なんですよぉ。ほら、聞こえてくるっしょ?」

板道と呼ばれた男が、ガラス窓の上を指差す。
蜂の巣のように歪で巨大な音響機がぶら下がっていた
そこから、

「――あんっ!あ、は、いや、う、くぅん……っ!」

生々しく、苦痛に色濃く、しかし確かな嬌声も混じる
声が、途切れることなく聞こえてくる。

「……無駄な予算を使うなと言ったはずだな?」
「無駄?いやいやそんなことありませんって。
やっぱ最高の機材がないと駄目っすよ。
主に、俺のやる気がでません」
「……ふむ。 <聖霊値> は正常に作用しているな」
「無視られたし。はいはい、データはこちらですよ」

――ピピッ!

『 <堕天使> アーク・エンジェリカ転用被献体 No.6』

真名:吹雪奏(ふぶきかなで)
<聖霊値>:3500
聖天使クラス: <C級>

心拍数……脈拍……………"処女膜" ...有

一通りの情報を見終わった後、
白亜は改めて、中で行われている行為を直視した。

「どうすか、アレ。俺が造った遺伝子配合の
<調教魔> は魔力を食らって、まだまだ強くなるっすよ」
「…………」

白亜は黙って、露骨に眉をしかめるのみだ。
ガラスの内側には、巨大なイソギンチャクのような
生き物と、それに絡みつかれた少女が一人。



――実験室内――

赤色の太いミミズのような触手が、
吹雪奏という名の少女を、宙に持ち上げ、犯している。

「いやぁ!ダメ……だめっ!もう挿れないでぇ!
お尻、お尻は、だめええぇぇぇっ!」

――にゅぅ――ずぷんっ!

「いや……!あっ、はぅ!やっ、らっ、らめっ!
中で、ごりごりって、あ、当たってるぅっ!?」

――にゅにゅ――ずぶ!

「あんっ!はっ!おくぅ!いれないでぇっっ!」

「いやぁぁっ……お尻がぁ、おひぃがあぁっ!?
裂けるっ、裂けちゃうぅぅぅっ!!」

尻穴には最も太い触手が挿入されている。外からでも
分かるほど、菊穴の座に激しく出し入れされていた。

「んや、んぁーっ!いやああっ!
お尻で暴れちゃダメっ!あっ、あっ!あはぁん!

ずぶっ!ぐちゅっ!
ずぶぶぶぶ……ぐちゅぅっ!

「や、やめて……っ!お腹っ、おなかいたいっ!
いたいってばっ!やめっ……!」

少女は、がくっ、がくっと、
壊れたマリオネットのように、身体を躍らせていた。

「ダメ、ダメ、ダメェ!お願い止めてえええぇっ!」

ずぶ、ずぶっ!ずちゅっ!
ぎゅ、ぎゅ、ぎゅっ!

「あふぅっ、ふっ、んはぁ、はっ、あはあああっ!」

激しく乱暴に犯され、
時には苦しそうに呻きながらも、

「い、いひいいいぃっ!!らぇ、らぇええぇっ!!」
にゃかぁ、らへえぇええええっ!?」

時折、恍惚とした表情を見せる。
触手の挿入音と共に、次第に粟立つ淫らな音も
聞こえはじめていた。

「い、いやぁ、こんなのいやなのにぃ……っ!
おひりぃ、おひりの穴ぁ、じゅぽじゅぽされてぇ!
止めへぇっ!お、おかひくなっひゃうっ!!」

「誰か、たす……ひっ、ぁ、ひああああぁぁぅっ!?」

拡げられた穴から零れる液。それに伴い、
前の膣内からも愛液が噴出した。
待ちかねていたかのように、触手が吸いつくす。

じゅぶ!じゅぞっ、じゅぞぞぞぞぞ……っ!

「んあぁーーっ!」
その感触は少女の背筋を駆け、全身を巡る。
軽くイってしまった <聖天使> を追うように、
触手もまた、不気味に膨れ上がり――。
「……あぁ……!?ま、た……!?」

―――びゅぐっ!

「んはああああああぁぁぁああああぁッッッ!!」

触手から、大量の白濁色の液体が噴き出し、
<聖天使> を白く染め上げた。

――研究室――

「いやぁ、隊長ってば。タイミングいい時に
来ましたねぇ。どっすか今の。なかなかっしょぉ?」
「下衆が」
「ねー、最低でしょー、新しいスピーカーのおかげで、
ケツ穴から漏れた音まで、しっかり拾い取るんすよ。
飯食わせてないんで、スカトロにならんのが残念っ」
「……犯して数時間どころではないな。
休息は取らせていないのか?」
「あー、すんませぇん、時間計るの忘れてましたぁ〜。
もしかすっと、丸一日近く、こうかもしれませんね。
まー、いいじゃないですか」

へっへ、と板道は笑う。

「どーせ失敗すりゃ、壊れるんですよ?
処女でなくなった時 <聖天使> の力は同時に消える。
単なる雌になり下がった連中は、彼女達を保護していると公言するこの国に見放され、後は好事家にでも」
「……黙れ」

白亜の眼差しが、板道への嫌悪と侮蔑に激しく昂る。
だが、それ以上のことは、強く言えない。
逆に板道の舌先は、雄弁に語りはじめていく。

「まァ、中には処女を破られた時、サイッコーな快楽に溺
れた淫乱 <聖天使> が、最強の <堕天使> になる場合もあるんすよ」

下舐めずりしかねない勢いで、白亜の方を見る。

「ねぇ……隊長?」
「黙れと言っている!それ以上に余計な事を言えば、」
「百合ちゃぁん。最近お兄さんが相手にしてくれなくて
寂しいなら、俺と実験動物で3pやんない?」
「三度は言わぬ―― <聖装> エンチャント――」

―――ヒュッ!

いつのまにか、どこからともなく、抜き取られた。
それは、夜色の細剣だった。
板道の首筋を突き刺す、その手前で止まっていた。

「……お喋りな声帯にだけ、傷をつけてやろうか……」

白亜が着ていたスーツが消えた代わりに、
漆黒の軽鎧が浮きあがっていた。
頭上には黒い翼を一対広げた、同じく漆黒の輪。
<堕天使> アークエンジェリカが <聖装> と呼ばれる
武具に身を包んだ、いわば戦闘体勢であった。

「こえーこえー、さすがは我らが組織、
<ロスト・エンジェリカ> の大隊長様ですなぁ」

愉快に笑い、軽く拳を作り、ガラスを叩く。

「C級の小娘相手じゃあ、相手にならないのも頷けるって
話ですよねぇ。くひひひひっ。
んで正直、俺としては隊長のおかげで大助かりすよ。
素材を集める手間が、楽ちんに省けてるんで」
「貴様ッ!」
「事実でしょう?」
「ぐ……いつか、殺してやる……」

剣を収められた音が響くと共に、元のスーツ姿の
白亜が現れる。しかし眦の険しさだけは変わらず、
歯を噛みしめていた。
噛み締めることしか、できなかった。

「んじゃ、実験の続きをはじめましょうか、ねぇ?」

少女が化け物に犯される。目前の光景は決定事項だ。
彼女が所属する組織 <ロスト・エンジェリカ> の主で
あり『白亜仁(はくあじん)』が定めた上での行為。

(……兄さま……)

唯一の肉親であり、妹であり <墜天使> でもある、
白亜百合には、異を唱える権限はない。

(私達のやっていることは……)

正義ではない。単純な善悪などは存在せずとも、
これは間違っても、正義が成す行いではない。
口を閉ざし目を開き、事の成り行きを観察するのみだ。



――実験室――

(……どうして、こんな、こと、に……)

少女の年齢が、十に達した時。
稀に不思議な力に目覚めることがある。

力に目覚めた少女達は <聖天使> と呼ばれた。

<聖装> と呼ばれる武具を呼びだし、その身に纏った
少女達は、最新技術を費やした軍の大隊にさえ
打ち勝てた。

しかしその力故に『保護』という名目上で、身内や
知り合いから引き離され、隔離された巨大施設 <楽園>
にて、生活することを余儀なくされた
『ロスト・エンジェリカ』は、そんな彼女たちの待遇に
異を唱える、過激派の武装団体だ――というのが、
国が公に語る組織像であった。

昨日ついに、ロスト・エンジェリカのアジトが判明したという
知らせを受け <聖天使> である吹雪奏は、
上からの要請を受けて出動した。そして、戦闘に破れた。

(……くろい、てん、し……)

彼女が対立した、黒天使。
敵の頭上に浮かんだ天使の輪は、彼女の色とは、
正反対であった。本来なれば <聖天使> の輪と翼は、
どちらもが純白のはず。

相手の能力も未知なるもので、剣を重ねる度に、
奏の力は失われていった。最後には <聖装> を維持する
ことさえも出来なかった。
<聖装> なければ、只の少女に過ぎない奏は、
抵抗もできず拉致され、睡眠薬を飲まされた。
目を覚まし、気がつけば――――

(……わた、し、また……汚され、て……あぁ……)

奏は丸一日、謎の生物に犯され続けていた。
回復力も普段より遥かに遅く <聖装> ができる状態
にもならない

(……この怪物が、私の魔力を……吸収している……?)

力が満ちない。さらには一睡もせず犯され続け、
身体の疲労感も激しかった。
ともすれば、気絶していてもおかしくないのだが、

(……身体が、アツい、よ、ぉ……)

意識は、最後まで飛んではくれなかった。
迫りくる快楽の波と、意識を失った後の恐怖が、
奏をギリギリのところで現実に留めていた。

――にゅるり。

「……ひっ!?も、もうやだっ、やぁぁっ!?」

怪物が再び動きはじめた。絶頂に達させた触手が一本、

奏の口に入り込み、生ぬるい液体を流し込んでくる。

「……んぐぅ!?……んくっ!……ごくっ、く……っ」

謎の液体を嚥下することに、最初は抵抗した。
しかし直接注ぎ込まれてはどうにもならず、早く苦痛が
終わる事だけを望み、自ら舌を絡め、喉を潤す。

(……へん、なのぉ……臭いのに、いや、なのに……
これ飲んだら、また、なのに……わたし……)

触手の先端から溢れる液体を飲み下す。
身体の細胞にまで、火が点いていく。
意識が冴え、次第に触手の愛撫をハッキリ感じる度、
それが、気持ちが悪いものでは、なくなっていく。

(……アソコが、すっごく、熱い……っ)

そして、彼女が未だ知らぬ秘部の最奥が、
未知なる刺激を求めて、締め付けてくるのだった。

(……はぁ、はぁ、はぁっ……!)

処女を失えば――総じて <聖天使> はその力を失う。

奏は力に目覚めた以後、国の指導と監視の下、
<楽園> と呼ばれる男子禁性の、
閉鎖された世界で育ってきた。
洗脳的な言語教育を刻み込まれ、
オナニーをすることでさえ、悪なのだと刷り込まれて
きた彼女にとって――

(……私、ヘン、こんなの、ヘン、だよぉ……っ)

疼く身体の火照りに、少しずつ、理性が削られていく。

彼女は今日まで、キスをしたこともなかった。
それが一晩で、化け物のような生き物に嬲られ、
後ろの穴に挿入され、何度もイってしまった。
途中から、自分は狂ってしまったのかと疑う程、
痴態の大声をあげた。
もはや触手の触れていない場所はない。
ただ、一箇所を除いては。

「ごく…ん……ふ、ぁぁぁ……っ!」

触手が口内から離れていった。
閉ざされ、逃げ場のないこの場所は、
行為による熱気と、体液の臭気が蔓延している。

「げ、ほっ、こほっ、けほっ……!」

天井の一角にある換気口は、常に最大限で稼働して
いるようだが、丸一日近く繰りかえされる行為に、
換気が追いついていない。

「……も、おねが、い……許して……ぇ」

<聖天使> は、呆然と喘ぐ。
とろん……と力なく開いた口元からは、
唾液が滴り落ちていく。

――実験再開――

調教魔に再び力が宿り、
イソギンチャクのような赤い触手が少女に絡んだ。

「……ぁっ!?」

再び、空中に吊り下げられる。凌辱は未だ止まらない。

「無理……これ以上されたら、
私、ヘンになる……っ!壊れちゃうよぉぉっ!」

調教魔が、雌の嘆きに欲情した雄のように、
自らが伸ばした触手を、踊るように蠢かせる。

「また……っ!も、もう無理っ!お願い誰か!
私をここから出してよぉ!お願いだからああっ!」

温室を囲うガラスは特殊な物で、
内側からは、白亜と板道の二人が見えてはいなかった。
すぐそこで、自分を観察しているとも知らず、
奏はひたすら虚空へ向けて、助けを求め続けていた。

ぢゅぢゅ、にゅるり……

「……いや……やだ、いや、いや、いやああぁっ!」

再び、調教魔の触手が迫る。
細い触手を二本伸ばし、やや控えめな双丘の蕾をいじり
はじめた。一日中、繰り返されてきた愛撫によって、
そこは最初から張りつめていた。

「あっ!あっあっ、あふぅ……ぅんっ!」

――こり、くり、ちゅぅ。

「やだぁ……っ!ヌ、ヌメヌメしたのがぁ!
私の、私のおっぱい!吸ってくりゅうぅっ……!」

――れる、れろ、れる、ぐしゅ、ぐしゅ、しゅ。

「……はっ、あぐ!やめ、やめて!
おっぱい、ふっ、ふにゃぁっ!やっ、しないでぇ!」

さらに調教魔の本体から、数本の触手が伸びてくる

「ひ、あ……っ!」

女の下唇へと向かう。剥き出しになった肉肌へ、
吸いつくように触れられるのと共に、
奏は驚愕の声をあげていた。

「だ…ダメぇぇ!そこは!ダメなの!
そこだけは許してぇぇ!あ、っく、んはぁっ!」

――ずぶぶぶ……っ!

肉壁を押し分けようとする動きが、
しかし弾かれたように止まった。
触手の先端に、なんらかの感覚器があるように、
マジックミラーの方を向く。

「な、なに……?おわっ、た、の……?」

――研究室――

「いっやー、あぶねあぶね。もーちょっとで、
ヤッちまうとこっしたねー」
「……私がいなければ、止める気などなかっただろう」
「バレてーら。……って、ウソウソ、冗談すよ
コレコレ、ほらこれ見てくださいってば〜」

いつのまにか板道の手には、ボタンが一つだけついた
黒いリモコンが握られていた。上には細長いシールが
張ってあり、文字が印刷されている。

『エターナルマルマイーン。効果:相手は死ぬ』

「意味がわからない」
「純粋無垢な子供ゴコロってやつです」

悪ふざけする小さな子供のように、ケラケラ笑う。
その声はやはり、奏には届かない。

「メインディッシュがほしけりゃ、前菜は残さず
食べましょうって、なぁ?」



――実験室――

彼が造った物は、確かな恐怖を感じとっていた。
秘部へと向けた触手が、口惜しそうに離れていく。

「……お、おわった、の……?」

勿論、そうではなかった。
触手は <聖天使> に向き直ると、
秘部を除いた全身を、強く絡め取っていく。

「……んはあああああっっ!?」

――うぞうぞ……ぎゅぎゅ……うぞぞぞぞ……っ

「いやぁっ!もうやだぁ……!
いつっ!いつになったら終わるのおおぉぉっ!?」

――ずぶり。

「ん、っぐっ!」

無数に分かれた触手が一本、奏の口内に入り込んだ。
舌に絡み、歯の裏、上顎などを丹念にくすぐっていく

「ゃ、めて……くっ……んくぅぅ!」

蕾の頂きへ伸びていた二本の触手は、先端が吸盤状に
なっており、ちゅうちゅうと音を立て、吸いあげた。

「んふっ、んっ、ふっ、むむぅ……っ!」

ほそりとした首筋、うなじ、へその上、背筋。
ふっくらした尻、脹脛、太もも、足の裏まで。
それぞれの肢体をいじるのに適した触手たちが、
奏の全身を這いずりまわる。

「んん、んんん、んっ、ん、んっんっんっ!!」

口を封じられたまま、身体が躍る。
そして、彼女の淫部。
浅い場所に膨らんだ、淫芽を目掛け、
舌先のように平たな触手が、そこを舐めあげる。

「んーーーーっ!んぅぅーーーーっっ!?」

<聖天使> の全身を、苦痛だけではない感情が奔る。
それは昨日、この部屋で初めて目覚めた、雌の性だ。

(……なに、これ……だめなのに、いけないことなのに、
すごい、すごい気持ちいいよぉ…ッ!)

<楽園> と呼ばれていた <聖天使> たちの世界では、
強制的な禁欲を命じられてきた。それが仇になった。
この触手群は、確かにおぞましい存在ではあるが、
女を知る悦びを、与えてくれた物にも映るのだ。

(いいっ、いいのお!もっと、もっともっと、
じゅぷじゅぷって奥まで……だ、だめっ!
そんなこと考えちゃっ!)

<聖天使> として教育された心が、
徐々に雌の性に浸食されていく。
触手も特別な立場の女を犯せることを悦ぶように、
その勢いを激しく増していた。

「んっ、んーーっ!んきゅうぅぅーーっ!」

――ぐちゃっ!ぐちゃっ!ぐちゅううう!

(もう、もう無理ぃ……っ!
頭の中っ!真っ白にっ!なって……!
すごいのがきちゃうぅぅぅっっ!!)

――びゅっ!びゅびゅっ!びゅるるるるっ!

(と、とけひゃう……とろけ、ひゃぅぅぅ……)

触手から同時に白い液体が乱れ飛ぶ。
<聖天使> の全身を、穢れた白へと色濃く染める。

(……あぁ、いっぱい、いっぱい、熱いのでてる……
くるひぃ……のにぃ……ら、らめ……きもち、いい?)

液体には、特殊な媚薬効果も含まれているのか、
普段なら嫌悪するはずの匂いが、今の奏にとっては、
芳香な、甘い蜜にさえ思えていた。

(どろ、どろ、ドロドロしたの、いっぱ、い……あぁ。
わたしの、からだ……白くて、汚れてる、のに……)

その匂いが、感触が、思考をさらに溶かしていく。

(……もっと、もっと……ぉ……。
ください……ちょうだい……アソコに……も……)

無意識に、口内へと侵入していた触手、
その先端を舐めあげていた。

「……んっ、んふ、んっ……ちゅ、ちゅぽ……」

雌が初めて、自ら動いた行為であった。
触手が舌の動きに合わせて、激しく前後に進退する。

――ずっ、ずちゅっ、ずっ、ずっちゅ!

「……ちゅぽ、ちゅ、ちゅぱ、ちゅぱ……んふぅ」

(お、おひんぽ、おとこの、ひとの……
こんなかんじ……?甘くて、おいひくへ……
くせ……なりそ……)

「んっちゅ、ちゅぷ!ちゅぱっ!ちゅぽぷ!」

時折、唇からはみだした舌が覗く。
ペニスの裏筋を舐めまわす行為は、やがて熱い精液を
求める行為へと変わっていく。

(……頂戴……私の、お口に……熱いの出してっ!)

――ずっ、ずちゅっ、ずっ、ずちゅ!

「……んふっ!ちゅぅ、ちゅ、ちゅ、ちゅばっ!
んちゅ、ん、ちゅ、ちゅぅぅぅっ……!」

――不意に、前後の運動を繰り返していた触手が、動きを変えた。
ぶるぶる震え、喉の奥へ、突き刺すように入り込み、

―――どくっ、どくっ、どくっ!

「んぐぅぅーっ!?ぐ、ぅぅ、ぐーーっ!」

尽き果てた。触手から溢れるように出てくる液体を、
奏は零さないように、必死に飲み込んでいく。

「……ぅ、んくっ、ふっ……ごくん…ごくん……!」

苦しげな表情をしながらも、喉が二度、三度と、大きく

動いた。溢れだした液体を、自ら望んで飲み干した。

「あ……あはっ、は、は……もぉ、やだぁ……はは。
……ワケ、わかんない……ふ、ふっ、ふふふ」

整った可愛らしい顔も、控えめな膨らみの体躯も、
今は全身にべったりと、白い液体が張りついていた。
ただ一点を除き、全身が犯し尽くされていた。
もはや清廉とした <聖天使> の姿からは程遠く。
立ち上る雌の色香だけが一層強くなるばかり。
まるで、淫靡に溺れた <堕天使> の様な有様。

(……ほ、ほしいよぉ……絶対、ダメ、なのに……)

小さく控えめな胸が、ふぅふぅと、息苦しそうに、
上下に激しく揺れ動く。

(今度はぁ、アソコの奥にぃ……びゅー、って……)

いつ終わるとも知れない快楽の境地に、少女は墜ちはじめていた。

――研究室――

<聖天使> の眼差しに影が浮かぶのを確認した二人は、
コンソールのモニター画面を見やった。
モニターに記された <聖霊値> は大幅に低下している。

「さぁて、白亜隊長。アレも限界でしょーし、
開通式やっちゃっていいすかぁ?」
「……成功する可能性は、どれぐらいとみている?」
「さー、どんなもんでしょーねぇ。
でも今なら、うっとりしちゃってますし。
上手く行けば <墜ちます> よぉ」

ひへへっと、気持ち悪い声をだしながら、
板道は白亜の方を見た。

「お堅い天使サマも、媚薬と催眠効果のある液体で、
あんなんなっちゃうんすよねぇ。隊長もストレス解消用
のオナニーグッズとして、一匹どうすかぁ?」
「精子から人生をやり直して、
私の知らぬところで百万回死ね」
「まー、そりゃー、いつかは死にますけどねぇ。たぶん」
「ゴキブリのような男だな」
「意外と生命力ないんすよゴキって。それはともかく、
やっちゃっていいすかぁ?」
「……許可する」
「うぃーす。ほんじゃまぁ、ぽちっとな」

板道が、手元にあった黒のリモコンを掲げる。
『効果:相手は死ぬ』と書かれたボタンを押した。

「……さァ、最終実験だ」

「ギュ、ギ、ギュギギッギィィィィイイイイ!!??」

<調教魔> の本体が、
緑色の鮮血を吹き上げていた。

「―――ひっ!?」

その鮮血は <聖天使> の肌をも緑に汚していく。
さらに <調教魔> の傷口が広がり、その中から
血と共に、緑色に染まった"子機"が、転がり落ちた。

『あーあー、ただいまマイクの最終テストちゅー
あーあー、聞こえますかぁ。聖天使ちゃぁん。
たった今、触手君はぁ。体内に埋め込んであった
毒物によってぇ、まもなく死滅しまぁす』
「……え?な、なに?」
『あ、触手君つーのはね。君たち天使を犯す為だけに、
俺が造った単細胞な魔法生物なんすけどー。
これがいろいろ大変でねー。
なかなか言う事聞かないもんだから、
バクダン埋め込んだのよ。うん、しかたないね』
「……なに、ねぇ、なんなの、なに言ってるの」
『最後のスイッチが入ると、そいつ必死に産卵しようと
すんですよぉ。子供を残したい親心。もしくは生命の
本質的な行為。わかるぅ?』
「……さ、さん、らん……?」
『種付けって言いかえてもいいよ。つまり親の命令も
聞かず、死にもの狂いで性行為に励むわけ。
単純に言っちゃうと、君が母親になるんだよ。
バケモノの、ね』
「!?」
『さぁ、最終テスト、はーじまーるよぉー!
元気出して、張りきっていこーかああああぁぁっ!!』
「――ギ、ギ、ギギギギギィ……ッ!」

ぶしゅ、ぶしゅ、ぶしゅ!
緑色の鮮血が、いくつも吹きあがる。そして、

「――ギィィイイイアアアァァァッッ!!」
「いやあぁ!!<聖装> エンチャントッッ!!」

最悪の予感。
それが皮肉にも、戦う意識を取り戻させていた。
青白い光が浮かびあがる。
一瞬後、壮麗な蒼の鎧と、一対の白い翼を広げ、
正しき天使の輪を持つ <聖天使> が現れていた。
<聖装> により生みだされた <障壁> 。
調教魔の暴挙を食い留め、さらに彼女は反撃する。

「くるなあぁぁァァッ!<蒼の矢> レイ・シュート!」
「――ギイッ!?」

調教魔の触手が、数本まとめて宙を舞う。

『あーらら。まさか <限界突破> が発動するなんてねぇ。
こりゃ予想外。C級どころか、A級レベルでねぇの。
火事場のなんとかにしちゃ、上出来過ぎんだろ
あーあ、このまま、すんなりいくかと思ったのに、
……くくっ、くけけ、ひひひひひ――
ひゃっはーーーっ!予想外の事態、サイッコーッ!
あっさり開通しちゃった、D級E級なんぞとは同じよう
に行きませんなぁー!うひはははぁあァァァッ!』

怪物の腹から飛び出た子機からも、
狂人染みた笑い声が押し寄せる。

「やっぱり、外に誰かいるのねッ!」
『ごめーさつぅ!まぁ、防弾にも <聖霊攻撃> にも、
いろいろと万能強化してあるガラスなんでぇ、
先に触手くんをやっつけた方が良いと思うよぉ?』
「覚えておきなさいッ!
こんな組織、跡形もなく消し崩してやるッ!」
『おーおー!いきなり強くでたねぇ。
いいじゃないの。ほら、やってみやってみ。
俺の作った調教魔も必死に再生して、
奏ちゃんの足元に迫ってんぜぇ〜?』
「なっ!?」

――ずちゅぐちゅ、ぶちゅちゅ、ずちゅっ!

板道の言う通り、調教魔は緑の血飛沫をあげながらも、
その動きを止めはしなかった。しかし奏が作り上げた
不可視の防壁に阻まれて、求める場所を食らい尽くす
ことが叶わない。

「――グジュグギユユギュギュ!!」

口惜しそうに、蠢きまくる。
生々しいピンク色の触手が <聖天使> を捉えんと蠢く。

「邪魔よっ!力さえ戻れば……レイ・シュート!」

蒼の刃が、再生した触手を薙ぎ払う。
さらに緑の血液が溢れ飛び、溶けそうになる <防壁> を
修復し、奏は狭い空間で見事に立ち回っていた。

「……はっ、はぁっ!はっ……!」

それでも、疲労の色だけは、隠せない。

『ふぁいとー!あと数分も我慢すれば、そいつ
自滅しちゃうからねぇ。ほらしっかりー、
イソギンチャクの腹んとこが弱点だからァー、
よーく狙って狙ってぇ!』
「なんなのアンタッ!さっきからうるさいッ!」
『目ぇ逸らしたら、嬲られちゃうよぉー!
ほらほらァ、今にも君のおマンコ狙って、障壁部分に
押し寄せてるからねぇ。よく見て撃てよーっ!』
「うるさい!黙れっ!」

先に、喚く子機から破壊してやると、
睨みつけた時だった。

――ずぞる……

「ひあっ!?」

足首に、触手が絡み付いていた。
床の隅を伝い、いつのまにか背後に回っていた一本。
板道の声に気を取られ、注意に至らなかった。

「しまっ……!」

意識の届かなかった背後からの接触に、集中が乱れた。

手に集わせていた <聖霊> の力が消えると共に、
捩じ上げられるように、腕を縛りあげられてしまう。

『だから目ぇ離すなって忠告してやったのにバカだねー。
箱庭育ちの女は、単純過ぎて騙しがいがねぇよなー』

「このぉっ!」

反論する声は、首の後ろを噛みつく触手に封じられた。

――くちゅ、ちゅちゅ――ガリッ!

「いぎぃッ!?」

先程までの、絡んでいただけの行為とは違っていた。
内からギザギザとした歯が現れ、皮膚を齧りとる。

「や、やめっ、やめてっ、いたっ、いたいっっ!!」
『ほらほらぁ、気をつけねぇと、その鋭い歯で、
いろんなところが食い千切られちゃうよぉ?』
「や、やだっ!こ、のっ、離れなさいッ!」

――ずりゅ、りゅ、ぐちゅぎィィッッ!

「ひぎううぅぅぅっっ!?!」

あの極太の触手が、脚の隙間から突き上げてきた。
つい今しがた犯されたばかりの菊座の穴が、
感触を思い出して、無意識に締まる。

(バカ……!こんな時に、何考えて……っ!)

さらに、小振りな胸を探るように、触手が無数に
這いあがってきた。我先にと <聖装> の上から、
小振りな胸を押し揉んだ。

「あ、はぁっ!ん、ぁ、んひゃあうぅっ!?」

<聖装> は、触手から漏れだす緑色の液体によって、
ドロドロに溶けていく。剥き出しになった桜色の肌が
広がっていく。

(しゅ、集中して……!とにかくまず <防壁> を……)

――ぐちゅ!ジャリッ!

「あッ!?」

間に合わなかった。
桜色の乳首へと触手が歯を立てていた。
続けて大きく開かれた口元へ、太い触手が潜り込む。

「んふ……や、め……んぐううぅぅっっ!?」

ドロリとした媚薬込みの液体を容赦なく流し込まれ、
再び全身が火がついたように疼いてしまう。

「んふぉぅっ、うううううっ!うううううぅっぅ!?」

それでも彼女は、必死に意識を集中する。
最後の砦だけは守ると。必死に抗う。
処女を破られた瞬間。
選ばれし才能が、永久に失われてしまうのだから。

(……こんな、とこ、ろ、で……ぇ!)

<聖天使> は、己が選ばれたという自覚があるせいか、
総じてプライドが高く、吹雪奏も例外ではなかった。

幼少期の頃から、大勢の大人たちから頭を下げられた。
気に入らないことがあれば、力で黙らせた。
<楽園> には、手に入らない物はなかった。
見下ろしてきた者から、罵られ、見下される。
きたない、汚らわしい女だと散々に言われた挙句に、
<楽園> から、ゴミのように捨てられる。
その末路は、風の噂とでも言うべきもので、
幾度か耳に届いていた。…………悲惨な末路だった。
過去。吹雪奏はそのすべてを、可哀想ねと嘲笑った。

(ちがう、わたしが、そんなことになるなんて……っ!
許されないっ、ありえないんだからぁっ!!)

<楽園> には、彼女のプライドを逆撫でする、
A級B級の <聖天使> の存在がある。
しかし億に一人とも言われる彼女達の絶対数は、
十人にも満たない。
むしろまだ数の多い、D級E級の <聖天使> を従える
方が遥かに容易く、才に満ちた者として当然の権利で
あると、少女は信じていた。
正にあの地は <楽園> だった。
少女は狭いながらも <世界> の女王にさえなれた。

帰りたい。
あの幸福を味わって、再び外で生きるなど、無理だ。
その為にも、窮地を脱するのだ。どうにかして。

(……私は、私は! <聖天使> エンジェリカなのよ!
これぐらいの、こと……で……っ!)

波のように押し寄せる快楽に耐え、彼女は集中する。
だが。もはや、手遅れだった。

――ずぶんっ!!

(だ、だめっ、だめえええっっ!!)

アナルを探っていた触手が荒々しく、一息に突き込まれた。
容赦のない挿入に、強烈な痛みが奔る。

(う、うぐ、ぐ、が、ぁぁ、あ、ぁ、ぁぁっ!?)

尻の肉が押し広げられ、拡張された穴の中へと、
再び潜り込んでくる。今まで以上に激しく突き刺しに、
涙が溢れ出した。

(や、やめへぇ!いきぃ、できにゃ、ぃ、っ!!
くるひっ!くる、ひ、ぃいいいぃーーッッ!!!)

苦痛に悲鳴をあげようにも、その口内にも触手が
突きこまれており、満足に息も零せない。

(く、くぅき……っ!いき……っ!あああぁぁ!!
しぬ、し、ぬ、ひっ、うーー、ッ!!!)

快楽を通り越えた死線すらも、瞼の上に浮かびあがる。
頭が燃えるように熱く、全身が酸素を求めていた。
無我夢中に、生存本能だけを集わせた。

( <蒼の矢> レイ・シュート!)

力が、暴発する。縛りあげられた <聖天使> の両指の先に集い、
化物に拘束されていた束縛を、蒼い光が開放する。

「―――ギイイイイイイイイイイッッ!?!?」

口内へと潜り込んでいた触手が、鼻先で切断され、
ずるりとこぼれ落ちた。望んだ空気が、少女の肺へと
満ちていくる。

「げ、ほっ!げほっ!ご、ほっ!」

激しく噎せ込む。ただひたすらに酸素を食らう。
それが精一杯であり、唯一できたことだった。

――ず、ちゅ。

生を掴む為。無意識にすべての <聖霊> を、
指先へと集わせた結果。

――ぐちゅ、ぶちゅぢゅううう!

「…………ぁ」

遮る <防壁> がなくなり、秘部には触手が届き、

「あああああああああぁぁあああ!?!?」

少女を、冥府の底へと突き堕とす。

「……惜しかったなァ、残念無念〜。
触手が死ぬまであと三分ってとこだけど。
それまで耐えれる?無理っしょー?」
「ま、待って!ひぐっ!お、おねが、んぁっ!
ダメっ、あっ、あっ!ゆるし、ゆるしてぇぇ!!」

――ず、ぐちゅ!ずちゅちゅ!
――ぐちゃ!ガシュッ!

「痛い!痛い痛いっ!痛いぃぃぃぃいっ!!」

触手が <聖天使> の秘所を雄々しく荒らす。
クリトリスを踏みつけ、肉ヒダを強引に押し広げる。

雌に、種を、植えつける為に。

「お願いやめて!あぁっ!やめてぇぇっっっ!」

泣き叫び何度も懇願するも、その言葉が通じるはずも
なかった。通じたところで結果が変わることもない。
グロテスクな赤黒い触手は、さらに奥を求め、
最期の力を込めるかの如く、激しく挿入を繰り返す。

ぎちっ、と、処女膜へと突き当たった。

「やだやだやだあああ!!いやあああああ!!
なんでも言うこと聞きますからお願い助けてえぇ!!」

すべてを失う直前だと知り、絶望が墜ちてくる。

「くるなきえろっ、やめろばかあぁぁーっ!!
お願い助けて助けてお願いだからああぁっっ!!!」

<聖霊> の攻撃は触手をいくらか傷つけ、深部への進行を
ギリギリで拒んでいるものの、切断までには至らない。
奏に残された力は、ほとんど失われていた。

「こないでえ!お願い!助けてよぉ!ねぇ!
助けて助けて助けてタスケテエエェェッ!!!」
「あーあ、じゃ、優しいお兄ちゃんが特別に
アドバイスあげよっかなー」
「お願いします!はやく!ねぇはやくぅっ!」
「うんうん、言い心掛けだねぇ。んじゃ、快楽に
ぜーんぶ、その身を任せちゃいなよ。
本当は膣内も"きゅるきゅる"疼いてるんっしょぉ?」
「……そ、そんなっ!?」
「いーじゃんか。一杯だしてもらえよ。
つまんない禁欲生活なんてやめてさぁ。
もっと開放的に、淫らに振舞いな。
君等には、それがお似合いだって」
「無理、無理だよぉ!そんなの絶対無理ぃっ!!」
「じゃー、バケモノが嫌ならお兄ちゃんと、もしくは
キレーなオバ……あ!いてぇ!オネーサンとでも、
やらしーことしようかぁ。勿論、処女は奪うけどぉ」
「そ、それだって、できるわけないでしょ!」
「えぇ〜それも絶対に無理?」
「無理よ!他、他にはっ!?なんでもするわっ!」

…………。

……。

「ね、ねぇ、ちょっと、ねぇ、ねぇっ!?」

…………。

……。

「返事してよ!ねぇ!まだいるんでしょ!
どうせ向こうで見てるんでしょ!
お願い!他のことなら、なんでもしていいから!」

…………。

「な、なんだってしてあげるわよッ!
お金をあげるわ!エッチなことだってしてあげる!」

…………。

……ず、

「……やだ……いや、いやだよぅ……」

――にぢゅ、

――ぐぢゅ、ぶぶぶぶぶっ、

「ヤダ……ヤダ、こんなのヤダ……お願いたすけて……」

――めぎ、びぢ、めり、めりめりめりりりりり、、、

「ウソウソウソウソ……。
そうでしょ?こんなの、ウソだよ。ねぇ?」

―――ぶちん。

「……ぁ、ぅ……?」

――ずぼっ、ずぼっ、ずぷぷぷぷっ

「…………え?」

緑の体液をこぼしながら、
ソレはさらに奥へと、突き進んでいった。
緑の血液に混じり、赤い鮮血もまた、目に留まった。

「……ぁ、れ……あれ……え?」

『吹雪奏』は自分のなかで、なにかが失われるのを
感じていた。言葉にはできない、なにかの力が、
永遠に、消えていく。

――ずぼっ、ぐちゅっ、ずんっ、ずずんっ!

奥まで突き刺さった触手が、挿入を繰り返す。

「……わ、わた、し……わたし……?」

にゅるりと、新手の触手が、口内へも攻め入ってくる。
防ぐ手立ては、もはやなにもなかった。
ただ、ただ、零れ落ちる液体を、ごくごく飲んだ。

「………………ぷ、は……」

異変を感じた。

(あれ……な、んにも……みえな……い……?)

――ぼご、ぼご、ぼごんっ!

(…………あぅ?おにゃか、いた、い……?)

腹の中で、なにかが蠢いている。
あまりにも激しく動いているのか、
内側から突き上げる感触だけが、微かに伝わってくる。

――ぼごんっ!ぼごんっ!

(……し、しきゅ、ぅ、しきゅー?きゅー?)

自分の膣内が、ソレを絞めつけているらしかった。
ぶるぶると戦慄く巨大なモノを。
しっかりと咥えこんでいる。奥深くで。

――どびゅ!

――びゅびゅびゅっ!びゅしゅうううう!!

でている。出されている。奥に。子宮に。
熱の塊のようなソレが。大量に解き放たれている。
注がれている。種を、子を、精子を。

(――――あ――――)

気持ちが良いのか、そうでないのか。
それさえも、曖昧になってしまっていた。
なにも、みえなくなっていた。

(……あ、はぁ……は、はは……ふふふ……)

――びゅぅぅぅっ――ぅぅっ――ぅ――

闇の中で、温かいものが放出され尽くすのを、
只の少女は、待ち続けるのみだった。
やがて、ずるりと音がして、
なにかが少女の中から抜け落ちていった。
びちゃびちゃ音がする水溜りの中へ、
少女の裸体もまた、横たわっていく。

(……あかちゃ、ん……できちゃ、った……?
わたし、おかぁ、さん……?
……えへ、えへへ、えへへへへぇ……)

少女は腹を一つ撫で、意識の底へと堕ちていく。
一筋の光もない、闇だけが広がっていた。

(..end?)






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