電光少女グリッドガールゼロ 〜それぞれの出会い〜
シチュエーション


季節は春のこと。何もかもが新しく始まる時期だ。
そんな時期に、どこにでもいる普通の少年、藤代健二は憂鬱な顔をして学校へ行っていた。
そんな所に同じクラスの男子が健二の横を通りかかる。

「お、おはよう」

健二は一応、その男に挨拶をする。しかしその男子は返事をしないで通り過ぎていく。

「……、当然だよな……」

と、うなだれる健二。健二が憂鬱な理由はいじめに遭っていたからであった。

「何でこうなっちまったんだろうな……?」

健二はふと考え込んだ。健二がいじめられるようになったのには深いわけがあったのだ。
本来なら快活で頭もまわる健二はいじめられるような人間ではない。
しかし、彼の強すぎる正義感が仇となってしまったのである。
ちょっと前まで健二はいじめを見ている側だった。だが、彼はそれを見過ごすことが出来ずに被害者を庇ったのだ。
それで、いじめている側は今度はしゃしゃり出た健二をいじめの標的にしてしまったのである。
そして健二はいじめられた人を守るためにそれを甘んじて受け入れたのだった。

(これで、よかったんだよな……。)

そう正義感の強く優しかった健二は考えていた。
しかしそんな健二を残酷な出来事が襲ってしまう。
なんと、いじめられていた人も健二をいじめるのに楽しそうに加わっていたのである。
それは健二にとって衝撃的な出来事であった。
そう。それは自分の信じた正義を裏切られることに他ならなかった。
そして心の支えをうしなった健二は虚ろな日々を耐え抜いてとうとう憂鬱になってしまったのである。
今の健二に話しかけてくる人は誰もいない。
そんな健二が教室に入ると健二は2人の女子が1人の座ってる女子を取り囲むのを見た。
取り囲まれているのは能登川マナ。クラス1の優等生である。
しかし彼女は困惑していた。

「へぇ〜。能登川にしてはかわいいノート持ってんじゃん、見せて見せて!!」

といったことを言う女子A。とうてい友好的とは思えない態度である。

「で、でも、これは……」

当然、嫌がるマナ。しかしその反応をいじめは楽しんでいた。

「いいじゃん、私達、友達でしょ!!」

心にもないことを言う女子B。そして女子Aがマナからノートを取りあげた。

「あはは。ガリ勉ってノートの中まで計算式ばっかり〜」
「ほんと〜。女の子らしさがないよね〜」

マナのノートを読んで下品に笑う女子二人。
頭の悪そうな女子二人には書いてあることがプログラムだということは理解できるはずがない。

「か、返して!!これは大事な……」

今にも泣き出しそうなマナ。しかし相手は2対1だ。
また健二の目の前でいじめが起こっていたのである。そして思ったときにはもう健二は行動していた。
裏切られてもまだ健二の正義感は消えていなかったのである。

「ふざけるなっ!!」

二人の女子からノートを取り上げる健二。その瞳は怒りに満ちていた。

「何、ちょっとマジギ……」

女子が何かを言いかけると健二はその女子を睨み付けていた。

「ひっ!!」

女子二人は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

(なんて醜いんだ)

そう健二は思った。
そして健二は無意識のうちにノートを開いてしまう。
計算式と言われて少々、中身が気になったのである。
そしてノートを夢中になって読み出す健二。

「あっ、あの……」

恥ずかしそうにマナは健二に話かけようとする。しかし内気なマナは何もいえなかった。
しかし健二に気づかせるにはそれで十分であった。
我に返って申し訳なさそうな顔をして言い訳をする健二。

「ご、ごめん。能登川だっけ?面白いなプログラム書くんだなって思ってちょっと夢中になっちゃって……」
「えっ!!そんなこと……」
「これ、本格的な星占いのプログラムだろ?俺は細かいことよくしらないからこれくらいしか分からないけど」
「あっ……」

嬉しさと恥ずかしさを足して2で割った表情をするマナ。
マナのプログラムは同年代の女の子にはまず理解されないものだった。

「優等生にこんなかわいい趣味があるなんて意外だよな……、」
「えっ、えっ!!」

と久しぶりに話が出来ることに嬉しくて調子に乗ってしまう健二。
それに対してマナは困っていた。それもさっきとは少し違う困り方で。
だがマナには遅れながらの救いの手が差し伸べられる。そして、その手は健二を突き飛ばした。

「だぁぁぁぁぁ!!マナに手を出すなっ!!マナ……、大丈夫!?」

その手はマナの親友のものであった。彼女は毎日、遅刻寸前に学校に来るのである。

「ち、ちがうの!!藤代君はそんな人じゃ……」
「でも、マナ嫌がってたでしょ。マナは引っ込み思案だから……」
「とにかく違うの!!藤代君に謝って!!」
「わ、わかった、わかった。藤代〜、大丈夫?」

名前を呼ばれて健二が振り返る。そこにいたのはマナの親友、緑河光莉であった。

「だ、大丈夫だけど……。でも能登川に迷惑かけちゃったみたいだな。じゃ、俺は行くよ……」

と去っていく健二。マナはそんな健二の様子を遠目に見ていた。

「またやっちまったな……。俺、学習能力ないのかも」

健二はぽつりと言った。

そして、健二の中にはいろいろなものがうずまいていた……。

さきほど、いじめをしていた二人、そして自分を嬉々としていじめてくる奴。
あの状況は健二のトラウマをフラッシュバックさせるには十分であった。

どうして人間は群れてこんな酷いことが出来るんだろうか?
どうして人間はこうも愚かなのだろうか?
どうして人間はこうまで醜いのだろうか?

そんなことを健二は延々と考えていた。

彼は人間の本性に心の底から絶望していたのだ……。
さらに帰りの下駄箱の靴の中の画鋲は彼の怒りを一層引き立てた。
最近は、毎日のようにそれが入れられるのである。

「どうして彼らはこうまでバカで醜いんだ!!」

健二は人の愚かさと醜さに激怒し絶望しながら家に帰っていく。
そして、家に帰って気晴らしにパソコンをつけると追い討ちをかけるかのようにモニターに奇妙な画面が映し出されていた。

「パソコンまでバカになったか!!」

健二は机を叩く。しかしここから有り得ないようなことが起こる。
なんとパソコンが健二に話しかけてきたのだ。

「ふははははは。貴様の人類に対する絶望。確かに感じたぞ!!」
「誰だ、お前は!!」

健二はパソコンの画面に向けて大声を出した。普通の人ならそれくらいはするだろう。
すると画面には角の生えた魔王のような怪物が現われていた……。

「がはははは。威勢がいいな。それに免じて教えてやろう。我はサイバーワールドの大魔王、サタンデジファーだ!!」
「サタンデジファー!?」

健二は驚愕した。と、いうよりは呆れていた。
いったいどこのバカがこんな手のこんだウイルスを作り出したのだろうかと。
しかし、ウイルスプログラムにしては何かがおかしかった……。

「そうだ。まぁ、驚くのは無理もない話だろうが……」
「驚いているというよりは呆れて……って、俺の言葉に反応してる!?」

会話して数秒で健二はサタンデジファー様の違和感に気づく。
プログラムの癖に流暢に喋りすぎなのである。そしてサタンデジファー様はにやりと笑う。

「そうだが、何か問題でも?」
「そんな、バカな……。ありえない、人工知能がここまでの意思を持つなんて……」

健二はだんだんとサタンデジファー様の恐ろしさに気づいていった。
そもそも今、パソコンにはマイクが付いていないのである。

「ふははははは。人工知能ではない。サタンデジダファーだ!!そして健二。お前はこの世界をどう思っている!?」
「この世界だと……?何故そんなことを聞く!!」

健二は恐怖を押し殺しながら言った。

「お前は絶望に満ちている。お前は心の底で世界を変えたいと思ってるんじゃないのか?」

サタンデジファー様の言っていることは健二の心を読んだものであった。
そして健二は思わずその質問に答えてしまった。

「俺が変えたいのは世界じゃない……。バカで愚かな人間の本質だ!!」
「グハハハハハ!!いい返事だ、健二。我と一緒に世界征服をしないか!?」
「世界征服!?正気か!?」

世界征服。それは古代より数々の悪の組織が夢見て破れてきたこと……。
そしてそんなこと無理に決まっている。健二は思った。けれど、もしかして、こいつなら……

「我の力はサイバーワールド全域に及ぶ。これがどういうことを意味するか賢いお前なら理解できるな?」
「電子機器は全てお前のいいなりってことか……」

なるほど。この世界の電子機器を好き勝手に操作できるというのはこの近代社会に置いて
世界征服を成し遂げうる力である。確かにこれなら出来るかもしれない。

「そうだ!!もう一度言う。我と手を組まないか!?
「……」

健二は考えた。どうしてこの世界は醜い人間に満ち溢れているんだろうと。
確かに能登川みたいにいい人間もいる。だがそれは決まって醜い人間の被害者になる。
もはや、これらは誰かに管理されるべきではないのかと……。

「さぁ、返答は!?」

サタンデジファー様は三度聞く。そして健二は答えた。

「……。やりましょう。サタンデジファー様」
「ぐはははは。健二よ。よく言った!!」
「さきほどまで、大魔王様に無礼な言動、申し訳ございません……」
「何、気にするな。さぁ、健二よ、見るがいい!!」

サタンデジファー様はそう言うとパソコンの中にある屋敷を健二に見せた。
すると中に巨大な怪獣が潜んでいるではないか。

「ジラルスの拷問屋敷へようこそ」

怪獣の割には丁寧な口調で喋るジラルス。狡猾さを持っていそうで恐ろしい怪獣だ。
そしてジラルスは健二に語りかけてきた。

「ご主人様。何かご用件は?」
「……」

少し返答に詰まる健二。実は健二には現在、具体的な作戦はなかった。

「この世界からバカをなくすにはどうしたらいいか、お前分かるか?」

悩んだ末に健二は怪獣に悩みを打ち明けてみる。すると怪獣は素早く返答した。

「バカにつける薬はない。といいますから病院でバカに効く薬をつくればよろしいのでは?」

少し歪んだ回答をする怪獣。しかし健二はそこからおぞましい作戦を考え付いたのだった!!

「……。なるほど。確かにいい案だ。政治家というおバカによく効くお薬を投与してやろうじゃないか!!お前という劇薬をな!!」
「さぁ行け、ジラルスよ!!病院を破壊しつくすのだ!!」
「はっ、かしこまりました。ご主人様」

二人の主人の命を受けジラルスは病院に向かっていった。
ノリノリのサタンデジファー様と歪んだ正義感から悪に堕ちてしまった健二。
この後、健二はサタンデジファー様の参謀として十二分に暗躍するのである!!

今、病院のプロテクトを突破しようとするジラルス。いや、もう突破していた。

「パスワード解析完了……、解除!!」

それにしてもジラルスの性能は素晴らしい物である。
ジラルスは一瞬にして厳重なはずの病院にプロテクトを突破したのだ。

「……、仕事が早いな……」
「お褒めに御預かりまして光栄にございます……」

と満更でもないジラルス。そしてジラルスが病院で暴れだした!!

その一方で光莉とマナはなんと病院へ行っていた。
実は今日、光莉の妹が盲腸の手術をしていたのだ。

「大丈夫かなぁ?」
「全く、グリリンは心配性ね。そんな盲腸なんてたいした手術じゃ……」

他愛もない話をする二人。するといきなり院内の電源が切れた。

「うそっ、何これっ?停電?」
「そんなことありえないわ。だって、病院は発電機が……」

そうマナが言うと明かりが一斉にチカチカと点滅し始めた。
これはもはや発電機の異常とは呼べないものである。

「どうなってるの!?」
「グリリン、落ち着いて。妹さんの病室に行きましょう!!」

妹の病室へ駆け出す二人。すると医療器具がプラズマを発生させているではないか。

「あの……、何があったんですか!?」
「何があったって。病院のコンピュータがハッキングされたんだ」
「ハッキングって……。そんなことで医療器具からプラズマは……!!」
「今、お姉ちゃんが助けるから……きゃっ!!」

少し身を乗り出したグリリンにプラズマが当たりかける。

「落ち着いて、グリリン!!ここは危ないから戻るわよ!!」
「でも!!」
「でもじゃないの。それに私達がここにいても出来ることは少ないと思うわ」
「……。分かったわ。今、助けるからねっ!!」

マナに言われて冷静さを取り戻すグリリン。
そして急いでこの場から離れる二人。2人が向かう先はマナの家である。

「それで、マナ……、ここから何をする気なの?」
「病院のコンピュータのコントロールを取り戻すの!!」
「そんなこと出来るの!?」
「無理でもやるしかないわ!!」

そして、コンピューターに相手に悪戦苦闘するマナ。
画面の中ではジラルスが大暴れをしていた。

「とりあえずワクチンプログラムを送るわ!!」

とマナがワクチンを送り込む。しかし、それはジラルスの鼻先に当たってバチンと弾けただけである。

「ダメじゃないっ!!」
「そんな……」
「マナ、私に貸して!!」
「グリリン、これはゲームじゃないわ!!」
「分かってるわよ!!この、この、このっ!!」

マナの静止を無視してワクチンを連射するグリリン。しかし、一向に効果はなかった。

「何で効かないのよ……!!」

妹を救えない自分の無力さにうちひしがれる光莉。その目には少し涙が見えた。

「グリリン……」
「この……、怪獣!!病院からでていきなさいっ!!」

グリリンは自分の力の限りキーボードを叩いた。
するとパソコンの画面がおかしくなってしまったではないか。

「ちょっと何してるのよっ、グリリン!!、パソコンが壊れたら妹さんが……」
「ごめんっ、マナ」

2人がパソコンの前で戸惑っているとパソコンから声が聞こえてきた。

「正しき心を持つものよ、お前は力を欲するか?」

と。光莉とマナは驚いていたが、藁をも掴む思いで光莉は言った。

「欲しいに決まってるじゃない。今、妹を助けるためにはどうしても力が必要なんだから……!!」
「なるほど……。ならばお前は悪を相手に戦いぬく覚悟はあるか?」
「悪?悪って何なの!?悪の正体は!?」

マナが聞いた。明らかにこの病院の事件は現代の技術では起こりえないことだからだ。
そして謎の声が答える。

「悪の正体はサイバーワールドに封印されていた魔王サタンデジファーだ。そして封印を破ったサタンデジファーが地上を征服しようとしているのだ」
「サタンデジファー!?」
「ひどい……。それで関係ない人を巻き込むなんて、絶対に許せない!!」

光莉は身勝手なサタンデジファーに怒りを感じていた。
彼女の心の奥深いところにある燃え滾る正義感がそれを許せないのだ。

「緑河光莉よ……。お前の正義感を見込んで頼みがある」
「何よ……」
「このアクセプラーをお前に授ける。これでグリッドガールに変身して怪獣を倒してくれ!!」

謎の声がそう言うと光莉の手に腕時計のようなものが装着される。

「変身って何よ……、そもそも怪獣ってパソコンの中にいるのに……」
「アクセスコードはグリッドガールだ!!」

謎の声がそう言うとパソコンは元の画面に戻っていった。
普通の人からしたらわけも分からない話に二人取り残された光莉とマナ。
しかし時間は刻々と過ぎていって、このままでは妹の命が危ない。

「グリリン……」
「あ〜!!もうこうなったらやけっぱちよ。アクセスフラッシュ!!」

グリリンがアクセプラーのボタンを押しながらそれっぽい言葉を叫ぶ。
するとグリリンはパソコンの画面の中に吸い込まれていった。

「マナ!!私、パソコンの中に入っちゃったみたい……」
「嘘……」

と適応力の高いグリリンと驚いているマナ。そしてグリリンは意を決する。

「私、怪獣をやっつけてくる!!病院のサーバーまで転送して」
「……。分かったわ。アクセスコードグリッドガール!!」

驚いて半分放心状態のマナは勢いでグリリンに言われたことをしている。
そしてグリリンは飛び立っていった。

「気をつけてね、グリリン……」

マナはグリリン、いや、グリッドガールの後姿を見送りながら言った。

そして病院のサーバーにたどり着くグリッドガール。
その勢いを利用して怪獣に見事な飛び蹴りの先制攻撃をかます。
正義のヒロイン、グリッドガールが大地に降り立った瞬間である。が……、

「キシャァァァァァ!!」

怪獣の息で吹き飛ばされてしまうグリッドガール。相手は圧倒的に大きすぎたのだ。

「ちょっと、待ちなさいっ!!聞いてたよりデカイじゃない!!こんなんじゃ勝てないわよ……」

と泣き言を言うグリッドガール。しかし、ショックから帰ってきたマナは冷静に解決策を打ち出していた。

「そうね……、分かったわ。ならこっちもグリッドガールを大きくしてみる」
「そんなこと出きるの!?」
「知らないわよ。でもやるしかないじゃないっ!!」
「マナ、できるだけ早くね!!」

急いでグリッドガールを巨大化させるプログラムを組みだすマナ。
一方、健二の家では健二とサタンデジファー様が余裕をかましていた。

「そろそろいくつかの機能を復旧してあげましょうか」
「健二、それだと病院を襲った意味が!!」

やや意見の食い違う二人。そこで健二はサタンデジファーに訳を話す。

「いいえ。病院を襲ったのはあくまで脅しです。殺すと今後の脅しの効力が弱くなりますからね」
「むむむ、お前はかなり深くまで考えているのだな」

と唸るサタンデジファー様、健二はそれなりに後先の事を考えて行動しているようである。

「えぇ。それより、あの豆粒みたいなのはなんでしょうか、サタンデジファー様」
「むむむっ、あれはサイバーポリス、グリッドガール!!」
「はぁ。それは脅威なのでしょうか?」

健二がそのグリッドガールを拡大してみる。割とスタイルはいい方である。
そしてニヤリと健二が微笑む。

「いや……。見たところ脅威ではないようだが、えぇい。面倒だ、ジラルスよ!!踏み潰してしまえ!!」

そうサタンデジファーがジラルスに命令を下そうとすると、その命令に健二が意外な反応をした。

「おっと。ちょっと待ってください」

と命令を止める健二。いったい何を考えているんだろうか。

「何だと!?我に逆らうというのか?」

サタンデジファー様の機嫌は当然悪くなるが健二はおかまいなしだった。
そして健二はさらに火に油を注ぐようなことを言った。

「まぁまぁ。ところであなたはリサちゃん人形で遊んだことはありますか?」
「ぬなっ!!健二よ、この大魔王サタンデジファー様をバカにする気か!!」

ことさらに機嫌を悪くするサタンデジファー様。しかし、健二はさらに続けた。

「いえいえ。そんなつもりは滅相も。ただ、今日はサタンデジファーとリサちゃん人形で遊びたいなぁって気分になりまして……」
「我はそんなもので遊ばぬと何度いったら!!」
「まぁまぁ。ジラルス、グリッドガールを捕まえろ!!」
「キシャァァァァ!!」
「健二よ、何をするつもりだ!?」

サタンデジファーを差し置いて独断で命令を下す健二。いったい何を考えているのか?
そして健二とサタンデジファー様が漫才をしている中、グリッドガールはピンチに陥っていた。

「きゃっ!!ひっ!!」

巨大な足を避け、必死に逃げ回るグリッドガール。まるで猫とネズミだ。
そして行き止まりに追い詰められてグリッドガールは怪獣に捕まってしまう。

「このっ!!離しなさいっ!!」

ジラルスの手のひらの上でじたばたともがくグリッドガール。
しかし、そんなものは無駄な抵抗だ。
そして健二が残酷な命令を下す。

「ジラルス。手に持っているリサちゃん人形の服を脱がしてあげなさい」
「キシャァァァァァ!!」

健二の忠実な手下、ジラルスはその恐ろしい命令を実行に移した!!

「この、変態っ!!何考えて……、きゃぁぁぁぁぁ!!」

手先の器用なジラルスは柔らかい野菜の皮を剥くようにグリッドガールのタイツを爪で剥がしていく。
そしてグリッドガールの超硬質スーツは怪獣の爪に耐えられずに徐々に破れていく。

「いやっ!!やめてっ!!そんなのだめっ!!」

いろいろと際どい所が見えそうで見えない。そんな危険な状態まで追い込まれるグリッドガール。

「おぉ。これはあと少しで……!!」

とサタンデジファー様はご満悦だった。

「でしょう?こんなにかわいい物を踏み潰すなんてとんでもない。家に飾っておきましょう」

さりげなく恐ろしいことを言う健二。
彼がそんなことを言えるのは相手がプログラムだと思っているからである。
もし、これが朝に自分を突き飛ばした少女だと知れば絶対にこんなことは出来ないだろう。
そしてサタンデジファー様もそれに賛同する。

「それはいい考えだ!!だが、その前に……」
「その前に?」
「その邪魔なスーツを全て剥ぎ取るのだ!!」

やはりサタンデジファー様も男なのである。

「えぇ。そこだ、やるんだ!!ジラルス!!」

その意見に全面的に賛成する健二。この二人は出合ったばかりなのにものすごく仲がよくなっていた。

「キシャァァァァァ!!」

とそれに応えるジラルス。男の友情は固いものである。

「いやっ!!そんなのだめっ、お願いっ……」

中身を傷つけないようにスーツを上下に引っ張るジラルス。
するとブチっと嫌な音が聞こえた。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

そして上下に千切れたスーツを奪われたグリッドガールは丸裸にされてしまう。
直接人が見ていないとはいえ、グリッドガールは言いようのない羞恥にその身を晒されたのである。

「うぅっ!!な、なんでこんなことになってるのよっ!!」

ジラルスの手のひらで、じたばたともがきながらグリッドガールは言った。
さっきまで勇ましかった女戦士の顔は羞恥で紅く染まっていた。

「おぉ。意外とナイスバディーじゃないですか。よく作りこまれてますねぇ……」
「グハハハ、健二よ。そんなのタイツの上から分かってたことではないか」
「それもそうですね。どうです、リサちゃん人形遊びもたまには悪くないでしょ?」
「そうだな。ジラルス、そのリカチャン人形で精一杯遊ぶのだ!!」
「頑張れ、ジラルス!!」
「キシャァァァァァ!!」

「な、なによ……、この変態怪獣!!」

捕らえた女戦士を相手にいやらしいことを考える男二人とオス一匹。
この決断ミスは、のちにその身を滅ぼす直接の原因となるのだがそんなことを彼らは知るよしもなかった。
そして、グリッドガールの体中を嘗め回すジラルス。

「ひゃっ、あぁん!!らめぇ!!」

体に伝わる電流のような快楽とべとべとと纏わり付く不愉快な涎。
ジラルスはグリッドガールに付いている二つの出っ張りを重点的に舐めた。
年の割りにかなり発達した胸に目をつけるジラルスはたいへん目の付け所がよろしいと言えよう。

「マナ……、はやく巨大化プログラムを……、このままだと、私、壊れちゃう……」

追い詰めたグリッドガールの敏感な所を爪の先端で器用に突くジラルス。
そんな責めにグリッドガールの意識は崩壊寸前であった。
そしてマナはその親友の窮地を見ても見ない振りをしていることしかできなかった。
一刻も早く巨大化プログラムを完成させることが親友の願いだということを理解していたからだ。

「よし、次はあれだ、あれ!!」
「サタンデジファー様も好きですねぇ」
「そういうお前もなかなかではないか……」
「さぁ、ジラルス。グリッドガールに止めを刺すのだ!!」
「キシャァァァァァ!!」

健二とサタンデジファーの命令を受けて止めを刺しに来たジラルス。
当然、目標はグリッドガールの乙女の蕾である。

「や、やだっ!!そこは、はじめては、大好きな人に……」

ジラルスの爪が容赦なくグリッドガールに迫る。
戦士になったばかりのグリッドガールは敵の恐ろしさに押しつぶされてしまっていた。
もう秘所からは蜜が駄々漏れになっている。目からも涙がぽろぽろと流れていた。

「ごめんね……、私、何にも出来なくって……、勇ましく変身までしたのにこんな惨めな姿をさらしちゃって……」

だんだんと迫っていくジラルスの爪。

「……っ!!」
「コンパイル完了!!お願いっ、間に合って!!」

ジラルスの爪がグリッドガールに触れる。
もうダメっ、そう思った瞬間にグリッドガールは光に包まれていた。
そしてグリッドガールは見事に巨大化していた。

「よっし。巨大化成功!!マナ、遅かったじゃないっ!!」
「無茶言わないでよ……。事前知識がないものをこんな速さで組めたなんて自分でも奇跡だと思ってるんだから!!」

と二人。天才少女マナはなんとか親友の貞操の危機を救うことができたのである。

そして健二とサタンデジファー様は驚いていた。

「何、巨大化しただと!!」
「なんて色っぽいんだ……じゃなくて、こんな短期間で巨大化プログラムが組めるなんて……、なんてやつだ!!」

いろいろと混乱してまず初めに何を言おうか戸惑った健二。
しかし、相手に天才プログラマーがいたことは健二の想定の範囲外だったようだ。

「よし、これで……、って何よこれ……」

慌てて局部を隠すグリッドガール。巨大化しても服は元通りにならなかったようだ。

「相手は丸裸の少女だ!!かかれ!!」
「キシャァァァァ!!」

その隙を見逃さないサタンデジファー様。ジラルスは喜んで襲い掛かった。

「だぁぁぁぁ、もうこうなったらやけよ!!」

と局部を隠すのをやめて怪獣に応戦するグリッドガール。
グリッドガールは恥ずかしすぎて頭がおかしかってしまったようだ。
それにしても、乳は揺れるわ、サイバー空間は肌寒いわでもう踏んだり蹴ったりである。

「とりゃっ!!ていっ!!」

とハイキックを二度かますグリッドガール。
その度に乙女の秘所が晒されて怪獣と健二達は思わず見とれてしまう。

「ごめんなさい、グリリン。私にはここまで身を張れそうにないわ」

とマナが画面を見て申し訳なさそうに言った、

等身大の裸の少女を見てさらに興奮する怪獣。
そんな怪獣相手にグリッドガールはファイティングポーズをとった。
もはやグリッドガールはなりふりかまっていられないようである。
そして見とれている怪獣に飛び蹴り。よけられない怪獣にこれはよく効いたようである。
興奮して理知的な行動をとれなくなったジラルスはグリッドガールに突進していく。
本来なら指示をだすはずの健二とサタンデジファーも全裸で戦うグリッドガールに見とれていた。
怪獣相手とはいえ裸で戦う美少女はいろいろな意味で目が離せないのだろう。
突っ込んでくるジラルスを力づくで押さえつけて顔面に2回チョップを叩き込むグリッドガール。
これは一溜りもない。
そして距離をとって必殺の一撃を構える。当然、下半身は無防備だ。

「だぁぁぁぁ!!グリッドォォォ、ビィィィム!!」
「キシャァァァァァ!!」

必殺のビームを喰らってジラルスは一瞬にして砕け散った。
きっとジラルスは死ぬ直前まで幸せだっただろう。

「な、なんてやつだ……、恐るべし、グリッドガール……」

健二は底知れぬ敵の実力に恐れを抱いていた。
そしてこの戦いは彼にとって、いくつもの意味で絶対に忘れられないものになったのである。

「おのれ、グリッドガールめ……、これで勝ったと思うなよ!!」

と消えていくサタンデジファー様。実はサタンデジファー様も冷静さを欠いていたのだった。
これでグリッドガールは病院を守りきったのである。

「くすん。もうお嫁にいけない……」

緑河光莉は人知れぬところで泣いていた。
ついでにグリッドガールが戦っている最中に機能は復旧して妹の手術は無事に成功したようだったが、
マナはそれを黙っていることにした。
そして帰ってきてしばらくした後に成功したとマナは言った。

次の日

「グ、グリリン……、元気出して。今日は何でもグリリンの好きなもの奢ってあげるから……」

マナは光莉に言った。光莉の受けた精神的ショックはとうてい計り知れないものであろう。

「いいわよ……、気を使わなくたって。どうせ誰も見てないんだからアレは忘れることにしたの」
「う、うん。私もそれがいいと思う……」

マナは言った。二人は健二のことを知る由もなかったのである。
そんな二人の横をふと、健二が通りがかった。
そして、そんな健二を恍惚とした表情で見つめるマナ。
マナは昨日の出来事で健二に一目惚れしてしまったのである。
そして親友の変化を光莉は見逃さなかった。

「どうしたのマナ?顔、赤いわよ」
「な、何でも、何でもないの、グリリン……」

不意に聞かれてなんとか取り繕うとするマナ。
しかし光莉から見ればバレバレであった。

「はは〜ん。さては藤代に惚れたか。昨日のもよく見れば楽しそうに見えたわねぇ……」
「ち、違うの、そんなこと……」
「隠すな、隠すな、親友でしょ」

と見事に真相にたどり着く光莉。実は光莉は昨日からどこか違和感を感じていたのだ。

「……」
「ごめんね、昨日は邪魔しちゃって。マナが困ってるように見えたから、つい……」
「グリリン……」
「だから私が健二とマナの仲を取り持つことにするわ」
「えっ!!」

親友の思いがけない発言に驚くマナ。
マナにとってそれは助け舟でもあり、余計なお世話でもあった。

「まっ、この緑河光莉に任せときなさいって……」

と大きな胸を張っていう光莉。そして彼女は即、それを行動に移した。

「藤代〜、おっはよ〜」

健二を追っかけていって話しかける光莉。
誰からも無視されるようになっていて孤独だった健二にとってそれは天使のように見えた。

「お、おはよう……」

それに元気なく答える健二。
思わず自己嫌悪してしまうが、そんな健二を光莉は気にせずに話を続けてくる。

「あのさ……。昨日はごめんね。マナから話、聞いたんだけど、私けっこう早とちりするタイプだから……」
「いや、俺も勝手にノート見たし、しつこく話しかけたから同罪だよ」

健二は自信なさそうに言った。

「そんなことないって。マナ、結構あんたのこと良く言ってたわよ」

光莉はそう言うとにっこりと微笑んだ。その笑顔は健二にとって、とても眩しかった。

「そっか。ありがと、えっと名前は……」

しどろもどろになりながら聞く健二。そして光莉はそれに答える。

「私?私は緑河。緑河光莉」
「そっか。緑河か……よろしくな」
「うん。よろしく」

と健二と光莉。そして、健二はいじめられている自分に親しく接してくれる光莉に好意を持ってしまうのだった。
世界はかくも残酷に出来ているものである。

こうして敵と味方を巡る奇妙な三角関係が完成した。
そして、この三角関係は世界を大きく揺るがすことになったのであった!!






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