連鎖少女 メビウス
シチュエーション


日本の首都 東京――
国の主要機関や大手企業の本社が集結する世界に誇る大都市では、
今日も多くの人々が行き交う。
すぐ近くまで危機が迫っていることを知らずに―

深夜のビジネス街。

昼間は多数の人々が行き交うこの街もこの時間となると、
人気が無く車も殆ど通らない。明かりといえば、街灯と月明り程度だ。
その街を一人、小走りで駆けていく女性の姿があった。

(やっば〜、すっかり遅くなっちゃった)

スーツを身に着けハイヒールを履きバックを肩にかけた、いかにもOLらしい女性だった。
新入社員歓迎会の飲み会に誘われ参加したのはいいが、
終電もない時間まで行なうとは思いもしなかった。
困った彼女は近くの規模の大きい駅で、タクシーを拾おうと走っていた。

遠かった駅も近くなり、足が痛くなってきた彼女は普段のペースで歩いていた。
ふとケータイが気になりカバンの中を探そうとしたとき、
突然目の前に背の高い男が現れた。

男は特別に寒くもない、むしろ暖かいくらいの気温なのにコートを纏い、
ポケットに手を突っ込んでいる。
さらにつばの付いた帽子を目深に被り、一層不気味さを感じさせた。
男に気が付いた彼女は足を止めていた。

すると男は

「お嬢さん。こんな時間にここを歩くなんて危ないですよ」

と話しかけてきた。

いきなり話しかけてきて何を言うかと思えば、と思いながら彼女は

「はい、すぐに帰りますから」

とこれ以上かかわらないようにそっけなく答えた。

彼女は男を避け、通り過ぎたが

「理由は聞かないのですか」

としつこく聞いて後ろを付けて来る。

しばらく歩き、まだ付いてくる男にうんざりした。
そして、なるべく男の顔が見えないように街頭の中間で振り向き、

「どうしてこの辺が危ないんですか?」

とまたそっけなく答えた。

男はうれしそうに、

「あぁ、やっと答えてくれましたね」

彼女はムッとして、早く答えなさいよと心の中で男に言った。
男は少し間を置き、ゆっくりと答えた。

「この辺が危険な理由…それは私が獣人だから…です」

彼女はナニ言ってんのコイツと思った。
しかし、次の瞬間男の左腕が動いたかと思うと、
彼女が肩に掛けていたバックの持ち手から切り離されていた。
突然のことに彼女は、気が動転し動きも思考も停止していた。
男は彼女の顔が青ざめていくのを、子供が悪戯を成功させたときのように
楽しそうに見ていた。

数秒後、状況を確認するべく彼女は男の腕に目を向けた。
薄暗くてハッキリ分からないが、男の指先から何かが伸びているのが見えた。
すると男はその視線に気が付いたのかゆっくりと左腕を持ち上げていく。
月明りに照らされたそれは鋭利な刃物のような爪だった。
それが分かった途端、彼女は男と反対の方向へ本能的に走り出した。
爪と一緒に見えた男の目。それは氷のように冷たく寒気がした。
目的は分からないが、あんな物騒なものを見せてきたのだ。
あれで脅して襲われること。あるいはあの爪で殺される。
様々なパターンが脳裏をよぎるがどれも最悪のビジョンでしかない。
しかし、本能に対し体はついてこなかった。
はいていたヒールが折れ、転んでしまった。
振り向けば、すでに男がすぐ近くに立っていた。
すると男は静かに語り始める。

「きれいな女性を殺すのは楽しい。何故か分かりますか?
恐怖に青ざめていく顔はきれいという括りでも、十人十色なのです。
 私はそれが好きでたまらないのですよ!」

ゆっくりと右腕を構える男。その目はただ純粋に楽しんでいるようにしか
見えなかった。
恐怖に怯える彼女。本能は動けと言っているのに、体が反応しない。
彼女に迫る男の爪。

そのとき、金属音とともに目の前に人影が立ち塞がった。
それはあまりに現実離れした格好だった。
純白のミニスカートになったウエディングドレスのような服。
腰の辺りまで伸びた青い髪。手に持っているのは長いチェーン。
その少女は、男の爪をチェーンで受け止めていた。
呆然とその姿を見ていた彼女に少女は、振り返り

「早くここから逃げて」

と言った。

その顔はまだあどけなさが残るが高校生くらいの年に見えた。
その言葉に彼女は立ち上がり、バックを拾って駅の方へ走っていった。
遠ざかっていくハイヒールの音。
男が狙っていた今宵の獲物は逃がされてしまった。

男は少女を睨めつけながら質問する。

「誰ですか?貴女は。」
「え、エーと……正義の味方 メビウス…?」
「正義の味方なのに名前を決めてないのですか?」

しばらくにチェーンが爪を受けている状態でのにらみ合いが続いたが、
ハイヒールの音が聞こえなくなると、少女はチェーンで男の爪を弾く。
距離をとる両者。

「正義の味方…と言ってましたね。今時そんなもの流行りませんよ。」
「世界征服を狙っているようなどこかの組織よりマシだと思うけど……」
「なぜ、貴女がそのようなことを知っているのですか?」
「あ、口が滑っちゃった。」

そのようなやり取りを行いながらも、男はじっくり品定めをするように
少女の全身を観察していた。

着ている服は、全体にフリルの装飾が施された、ウエディングドレスのような服。
しかし、スカートはミニスカートになっており少女の生足が見えている。
顔は、前髪がかかっていてハッキリとその全貌は見えないが、
輪郭だけでも相当な美少女であることが分かる。
さらに、特徴的だったのはその胸の膨らみだった。
身長が平均程度なのに対して、自己主張をしているその胸は、
EいやFカップはあるだろうか。

再び視線を少女の目に合わせ睨む。
ただし今度は、怒りではなく獲物を見る目だった。
今宵の獲物は逃がしたが、次の獲物は自ら現れてくれた。
こんなチャンスはそう滅多にあるものではない。
しかも、かなりの美少女。過去最高級品かもしれない。

ターゲットを変更した男は、爪を構える。
しかし、興奮の為に先ほど何故女性を取り逃してしまったのか忘れていた。
少女へ襲い掛かる爪。少女はそれをバックステップで軽やかに避けていく。
地面に置いていたチェーンは少女の後を追うように軌道を描いていく。
男はそれを思いっきり踏みつける。
当然チェーンを持っている少女は、動きを止める。
再び少女に爪が迫る。

しかし、またしてもチェーンに受けられてしまう。
もう一度距離を置こうとするが、爪がチェーンから離れない。
よく見るとチェーンが爪に絡み付いていた。
あの一瞬でどうやったのか分からないが、とにかく距離を置かなければ。
そう思ったときには、少女は弛ませていたチェーンを張り、爪が根元から剥がされた。

「ぐあぁーっ!」

あたりに響く男の悲痛な声。
後ずさりしたところへ少女はすかさずチェーンを投げ、男に巻きつける。
チェーンが巻きつき身動きが取れなくなる。
すると少女が男に話し始める。

「やっと捕まえた。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいい?」
「その前に私から質問してもいいですか?」
「え〜、まぁいいケド…手短にお願いしまーす」
「先程、貴女は組織と言っていましたね。私たちのことを知っていたのですか?」
「うん、そう。だからこうして何人も締め上げて吐かせようとしているんだけど、
 みんな全員口がかたくて。」

確かにあの組織は、まとまりは無いが忠誠心の強い者が多いから
当然のことだと男は思った。

(そういえば、最近定期集会の参加人数が減っている気がしていたが、この少女が原因だったのか)

さらに男は質問をする。

「なら、私なら答えるとでも?」
「うん。とても紳士的だし」
「組織のことについては話す気はありませんよ。
 私はあの組織の忠実な犬ですからね。」
「能力は犬じゃなくて猫じゃない」
「えぇ、その通りです。」

少女は最後の質問をする。

「じゃぁ、答える気は無いのね?」
「はい。何度も同じことを言わせないで下さい。」
「そっか。だったら…」

少女はゆっくりと目の前に左腕をかざす。
すると、男の下のアスファルトに青白い光とともに、
魔方陣のような模様が描かれていく。

「生命の理から外れし者よ。本来あるべき姿へ還れ!」

少女がそう唱えると男はまばゆい光に包まれた。
光の中には、チェーンが絡みつき身動きのとれない男の影が浮かぶ。
やがて、男の姿が見えなくなると光が一点に収束していく。
光が消えると男に絡んでいたチェーンがジャラリと落ちる。
その影から、ひょっこりと黒猫が顔を出す。

「もう変な人に捕まって迷惑かけないでね〜」

少女がそう言うと黒猫はニャーと鳴き、路地裏の闇へ溶けていった。

 黒猫を見送ったあと、少女はふぅとため息をついた。
組織の手先の人間と戦い始めてしばらく経ったが、尻尾すら掴めない。
分かっていることは、動物を人間に変えて世界征服を狙っているらしいということ。
そして、戦っているうちに分かったことは、
相手はみな夜間に行動しているということ。
安心してゆっくり眠れる日々は戻ってくるのだろうか。
少女はそんなことを考えていた。

(とにかく、さっさと帰ってシャワーを浴びて寝よう)

少女は路地裏へと歩き出す。
ドレス姿にチェーンを引きずっていく姿は、かなりシュールだった。

ある一画へ来るとその歩みを止める。
目の前には、紙袋とスケートボードが置いてある。
そこで、少女が目を閉じると彼女の着ていたドレスと持っていたチェーンが
光に包まれ、光の粒子となり飛散する。
光が消え先ほどの少女が立っていた場所には、一糸纏わぬ、いや首から
ペンダントを下げた黒い髪の全裸の少女が立っていた。
それが先ほどの少女の正体だった。

ほぅとため息をつく。それに合わせて豊かに育った乳房が上下する。
月明かりの下に照らし出された少女の姿は、まるで一つの芸術作品のような美しさだった。
顔つきは幼く見えるものの、クリッと大きな目が特徴的な端整な顔立ちは、
間違いなく美少女と言って、間違いなかった。
首から下はその幼い顔つきに不釣合いな程、成熟した女性のスタイルだった。
みずみずしく張りのある乳房。その頂のかわいらしい蕾はツンと上を向き、
外気に晒され少し硬くなり自己主張を始めていた。
その手足は、細く長いのでより少女がすらっとした印象を与える。
ウエストはしっかり引き締まり、きれいなヒップラインをより際立たせる。
そして、乙女の秘められた部分は毛の量が少なく、
ピタリと閉じ汚れの無い不可侵領域になっていることがよく分かる。
その身体には、世の男性を魅了する要素が集結していると言っても
過言ではなかった。

目の前の紙袋からまず引っ張り出したのは、青と白のストライプのショーツ。
前屈みになり足を通していくが、その姿勢になると豊かな胸が重力に従い、
少女の上半身を引っ張る。
ショーツを穿き終えると次は同じ柄のブラジャーを引っ張り出す。
そのバストをカップに収め、肩紐を通しホックを止める。
そのボリュームは今にも零れ落ちてしまいそうだった。
その後、ジーンズを穿き英語とドクロがプリントされたTシャツの袖を通す。
この格好だとどこにでも居そうな高校生である。

大きく欠伸をすると、眠そうに目を擦る。
スケートボードに乗り少女は家路についた。






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