聖母マリアのソード
シチュエーション


―近未来、ジャンヌ星ではナポレ王体制の下、平和と非罪で統一された富国であった。
小惑星であったが豊富な資源、食物により、平民一人一人が幸せに満ち溢れ、また代々のナポレ王も
心優しき王であった為、誰もが不自由のない暮らしをする事が出来た。
周囲に敵星もなく、誰もが安泰と思われていた星に、遠く離れたムーン星のリタ王が目をつけた。
近星を既に征服したリタ王が、遠く離れたジャンヌ星に目をつけたのは、女だった。
偶然にも、ジャンヌ星で生まれた女が、征服した星に移住して来ており、そのあまりの美しさにリタ王は
ジャンヌ星の制圧に踏出したのだった。

小惑星と、数々の星を征服し豊富な民と軍部を揃えた大星集団、戦えばどちらが勝つかは明白で
あった。
リタ王とて、無駄に戦いをし、美しい女たちを死なせてしまっては、元も子もない。
できれば戦いを避けての、自主降参をさせようと企てた。
ナポレ王に、リタ王の遣いが入った。

「ムーン星の男集1,000人の相手を選ばせてもらいたい」

星交間交渉だと、表面上は友好的関係を求めた遣いに対して、ナポレ王は断固拒否をした。

それから間もなく、ムーン星の勢力が、ジャンヌ星に襲い掛かった。
ジャンヌ星周辺に配下されたスターゲート防衛軍壊滅の知らせは、ほんの数時間でナポレ王へと
伝わって来た。

「すまん、席を外す。しばらく、頼むぞ・・・・・・」

側近のマサンにそう伝えると、ナポレ王は城を後にした。

―ムーン星ではリタ王が、吉報を今か今かと待っていた。
軍が、星に攻め入った報告を受けてから、やがて丸一日が過ぎていた。

「あんな小星に一日かかるとは・・・・・・俺が指揮をしていれば、半日で制圧してやるものだが」

若く精力的なリタ王は、王を引く継ぐまでは軍部総隊長として、数々の難敵星の制圧に貢献していた。
ただの勢いだけではなく、頭脳派としても類稀な才能を発揮していた。

そこへ遣いの兵が戻って来た。
その姿を見るなり、リタ王はニヤリと笑みを浮かべた。

(ふん、やっとか・・・・・・まあいい、ジャンヌ星の若い女と、領土は全部頂き、男共は皆殺しだ)

「王・・・・・一次突入のサハサ軍隊が全滅しました・・・・・二次のビルタ軍隊も、劣勢におかれています」

兵は慌てた様子で伝えた。
それを聞いて、驚いたリタ王は腰掛けていた王座から、思わず立ちのめって兵に詰め寄った。

「なんだと!あの小星に、我が軍が負けるはずがなかろう。それにビルタ達が劣勢だと!そんな
バカな話があるわけがない。どこにそんな対抗する軍がいたと言うのだ!」

兵はしばらく口を包んでいたが、細々と口を開いた。

「・・・・・そ、それが・・・・・・ひとりの女に・・・・・・」
「女だと?どう言うことだそれは。女に負けたとでも言うのか?」

「は、はい・・・・・・その女の振りかざす剣の様なものの光で、我々の軍が一瞬のうちに消えて・・・・・
私も目の前で起った事が信じられませんでした。どんな攻撃も、その剣によって跳ね返され、
歯が立ちませんでした。このままでは・・・・・・」
「もういい、下がれ!いったん送った軍は引き返させろ。だが、出来る限り、その女の特徴を記して
来い。その剣とやらも見たい。出来れば映像として撮って来い!」
「わかりました」

兵は再び戻って行った。

リタ王の焦りは増して行った。
だが一つの事が脳裏に浮かんだ瞬間に、その焦りは恐怖へと変わった。

―『聖母マリアのソード』まだリタ王が幼い頃に、父親から聞いた伝説的な話であった。
昔、ある小惑星に挑んだ星々が、次々に消滅した。
その星には、捨て子を守り育てる聖母マリアと呼ばれる女がいた。
聖母マリアは、神が創り出した奇跡であった。
男女問わずに、誰もが魅了される美しいマリアは、年齢を重ねても微塵も変わらぬエルフ的な身体を与えられていた。
そして星への危害を感じると、戦女神の姿へと変え、その剣により、子供たちを守っているとの事だった。

もちろん、幼いとは言え、リタ王がそんな伝説が、実際に存在すると信じたわけではなかったが、
今、それが現実になっているのではと脳裏から離れなかった。
そんな国に攻め入っては自軍崩壊である。
だが、リタ王はもう一つの事を脳裏に浮かべていた。

(美しき聖母マリアか・・・・・女神・・・・・・本当に存在するのならば、拝みたいものだ。そして・・・・・・)

そんな淫想を考えつつ、リタ王は退陣を命じた軍からの報告を待つ事にした。


リタ王は、ビルタより報告を受けたレポートを開きながら、撮られた映像を見ていた。
レポートは一度目を通しただけだが、映像は繰り返し、繰り返し、もう何度見たかも覚えていない。
空中に浮かぶマリアに、近づく軍機、そして鋭く剣を振りかざすマリアによって、一瞬の光と共に
軍機が消滅する映像だ。

映像は離れた場所からのもので多少の映像の乱れはあるが、マリアの全身は、しっかりと、とらえていた。

(素晴らしい・・・・・・これが伝説と言われた聖母マリア・・・・・・戦女神の姿か・・・・・・)

背丈は180cm程度に見えた。軍装の気配はまるでなく、身体にフィットした白いボディスーツ姿をしている。
肩の部分までで、両腕は完全に露出していたが、雪肌のせいか、全身が白くボワリと幻想的にも見えた。
足首までスーツに包まれていたが、それより下の両足は、繭の糸の様なもので巻かれていた。
そして背中まで達する、艶やかな黒髪は風に靡き、全身の白さとは非対称と相成って、よけいに
神秘さを浮かび上がらせた。
首から、金色に光るものを下げていたが、映像では、はっきりと見えなかった。
何より正義に満ち溢れ、軍機を鋭く睨む、その勝気なマリアの表情がたまらなかった。
言葉などでは言い表せない、いかなる男も圧倒させ、身震いさせる美貌であった。

―この世に存在するとは思えない。
リタ王の想像を遥かに超えた美しさだった。
羽が生えていれば、天使と間違えても、おかしくはないと、リタ王は思った。

そしてマリアの持つ剣は、銀とも白とも言えぬ、不思議な光源を発していた。
剣は全長150cm程の鋭いもので、マリアが振りかざすと、その光源が、剣先を電光石火で拡がり、
光に包まれた、周囲の軍機を瞬間的に、消し去るのだった。

軍機が消え、青空が広がると、マリアは哀れむ様な表情をして、地上へと消えて行き、映像は途切れた。

(これでは勝てる訳がないな・・・・・・全勢力で向かっても一網打尽だ・・・・・・さて、どうするかな・・・・・・)

そう苦笑いするリタ王だが、頭の中では策を考える余裕など無かった。

(聖母マリア・・・・・・なんとしても俺のものにしたい・・・・・・一生に一度でいい、あんな女を抱いてみたい・・・・・・)

あの圧倒的な強さと美しさ、そして軍機を睨む気高き正義感に包まれたマリアを全裸に剥いで、思う存分に
調教したい。
あの全身を包むスーツの中に、どんな秘められた肉が潜んでいるのか。
戦女神を泣かせ、屈服させ、完全に自分のものにしてしまいたい。
肉の奥底に自分の精を流し混み、身篭らせるのも良い・・・・・・。

そんな淫想をしていると、いつしかリタ王の下半身がモゾモゾと膨らんでいった。
すでに数え切れない美女と呼ばれる女を抱き、今の若さで、既に女に対しては飽きさえも来ていた。
今では最高級の女を抱く時にくらいしか反応しないリタ王にとっては、淫想だけでこんなになるのは
初めてだった。
映像を見ただけのマリアに、はやくも、これだけ魅了されているのである。

(だが・・・・・・)

今のムーン星に、マリアに太刀打ち出来るだけの軍備はあるとは思えず、新規開発も期待できるとは
思えなかった。
リタ王は映像をいったん止め、レポートに再び目を通し、夜を通して、思想にふけっていった。

軍を退散させてから数日が経過したが、ジャンヌ星、いや、マリア側から攻撃を仕掛けてくる様子は
微塵も感じなかった。
リタ王が予想した通り、マリアは無駄な戦いをするつもりはないらしく、一安心をした。
そこでリタ王は、普段のマリアの様子を探るために、忍兵を送った。
だが、数日が経過しても音沙汰はなかった。
今度は忍兵二人を送り、一人に、忍兵を観察させて報告を待った。

戻って来たのは、予想通り、観察を命じた忍兵だけだった。

「星へ入ると、すぐにマリアがいまして、一瞬の光を放ち、忍兵は消滅しました。こちら側の作戦を、
予め予期していたとしか思えません」

これにはリタ王も焦った。

(予知能力があるとでも言うのか・・・・・・)

リタ王は、古びた部屋にある、父親の残した書物を読みふけった。

『聖母マリアのソード』に関する記述の書物が、一つだけあった。
それによると、マリアは防衛本能を察知する働きがあり、星に存在する邪心を読む事が出来ると言う。
つまりは、ジャンヌ星の中に入ってしまえば、マリアに探知されると言う驚きの記述であった。

―完全なまでに、策は潰えた。
もはや聖母マリアに付け入る隙は、微塵もなかった。
それが余計にリタ王の淫心を揺さぶる。

(くそっ、なんとしてもマリアをものしてやる・・・・・・何か手はないものか・・・・・・)

忍兵を送り込み、聖母マリアが育てる子供を人質に取る、そんな筋書きが不可能となった今、マリアを
抱く事はおろか、生の姿を拝む事すら無謀と言える、そんな状況に陥ってしまった。

それから一月の間、寝ても覚めてもリタ王の脳裏には、映像で見たマリアの美貌と身体が、一時も
離れる事はなくなっていた。

そんな折、新しく制圧した小星より、女が連れられて来た。
どれも選りすぐりの美女だちだった。
女たちは皆、慰み者の運命を歩む事になる。
そのため、覚悟を決め、搬送中に舌を噛み自害する女も少なくなかったが、新しく開発した機器に
より、自害本能を消失させる事に成功している。

リタ王の前で、一人一人紹介されるが、自分の女にする考えなどなく、流れ作業で進んだ。
最後の女の紹介で、リタ王が初めて口を開いた。

「今までの女とは肌色が違うな」

兵にせかされ、女は返答を強要された。

「私はスケルゥ星より、環境学を学ぶために、移住して来ましたので・・・・・・他の方とは系統が異なり
ます」
「そうか・・・・・・行っていいぞ・・・・・・」

一人になったリタ王は、ブツブツと一人で考え事を始めた。
そしていつしか、微笑を交えたかと思うと、高らかに笑い始めた。

(ふふふ・・・・・・いいぞ・・・・・・ほんのわずかだが、隙間が開きやがった・・・・・・)

リタ王は、すぐに早急の調査を、配下に命じたのだった。

報告を待つ間、リタ王はエルフについて調べていた。

―『エルフ』
女系のみで、小惑星に生息したヒト型の生物。生誕については謎に包まれている。
怪奇な能力を持っていたとされる。
特徴としては、老う事のない身体のため、成長のピークを迎えた後は、その身体を維持する。
平均寿命は千年とされている。

―絶滅
ナーム星の戦闘部隊100余名を乗せた空中軍艦が不時着し、エルフたちは彼らを介抱したとされる。
しだいに戦闘部隊とエルフたちの間に、愛が芽生えた。
エルフは、その処女を捧げた相手を心から愛し、懇親となって生活をしたと言う。
だが、彼らの子を出産すると間もなく、エルフとしての能力を失い、寿命を向かえて逝った。
愛するエルフを失い、発狂した一人が、次々とエルフを襲い、制止に入った仲間との殺し合いに発展したと言う。
その愚かな姿を目のあたりにしたエルフたちは絶望し、次々と自害し、平和だった小惑星に残ったのは、
生き残った男たち数人であったと言う。

その他、エルフの特徴には、蘇生能力、心読能力などもあると書かれていた。

(なるほど・・・・・・戦うこと以外の能力には、秀でていたと言うわけか・・・・・・)

リタ王の考えてでは、マリアは戦う能力に加え、エルフの全ての能力をも兼ね揃えた、まさに無敵の
能力を持って、誕生したのだろうと確信していた。

(神は、エルフを聖母として復活させたわけか・・・・・・)

その後もリタ王は、マリアに結びつきそうな資料を、ただひたらすらに調べ尽くしたのだった。

リタ王が、待ちに待った報告が来たのは、命を下してから1週間後だった。

「それで、どうだったんだ?」

冷静を装うリタ王だったが、さすがに汗ばんでいた。

「はっ、可能な限りの星を調べましたところ、ジャンヌ星の出生者は、16名おりました。その中で
幼い時期に両親を失った者や、別れていた者は、調べた限りでは4名おりました」
「4人か・・・・・・思ったより少ないな・・・・・・まあいい、その4人を全員連れて来い。そして残りの奴らには
マリアについて、何でも良い、知りうる事を全て吐かせるんだ。喋らすためなら、金銭でも土地でも、褒美を与えても良い。
どうしても喋らぬ者がいたら、無用で拷問にかけて構わぬ」
「はっ、かしこまりました」

そう言うと、使者は急ぎ足で扉から出て行った。

「外せ・・・・・・ひとりになって考えたい」

リタ王は周囲を追い出し、王室でひとり篭って、再びマリアの映像を鑑賞して物思いにふけった。

(4人か・・・・・・その中にマリアによって育てられた奴がいれば・・・・・・さすがにこれは神に願うしか
なさそうだ・・・・・・いなければ、新たに星を制圧して探すしかないな・・・・・・)

その4人の中に、ひとりでもマリアによって育てられた者がいれば、それはマリアにとっては我が子同然。
いや、子供を守るために、神より命を受給したのならば、それはマリアの使命そのもの。
何を犠牲にしても、守ろうとするに違いないだろう。
そうなれば、こっちのものだった。

伝説にもなっている事から、マリアは永遠の命を宿しているのではないかと予測できた。
そして老いをしらぬ肉体、それは今のマリアの美しさを、永遠に保持する事でもあった。
蘇生能力があることから、回復・治癒もあっと言う間だろう。
そう考えると、なんと素晴らしい身体なのかとリタ王は思った。
もしマリアが奴隷になったらと思うと、想像するだけでもゾクゾクした。

(後は、神が俺に味方をするか、マリアに味方をするか、だな・・・・・・)

リタ王の前に、その運命を握る4名と、残り12名からの調書が書かれたレポートが揃ったのは、5日が
過ぎた、雨の激しい夜だった。

次なる星の制圧を検討する、戦略会議に参加し終えたリタ王は、急ぎ足で移動機に戻った。
城へ着くまでの間、調書レポートに目を通した。
そこには12名全員が質問に答え、虚偽の気配は、なかったと記されていた。
長年平和が続く星であるため、実際に、マリアの存在を知る者はいなかった。
どれも、伝説として聞いたり、幼い頃の昔話として聞いていたりと、中身のないものばかりだ。

(平和ボケした星だ……無理もないか……)

その中で、親をなくした孤児を育てている、美しい女についての証言が、唯一の収穫と言っていいものだった。

証言した男は、収穫した食物を配送する仕事をしていたらしいが、一度だけ、大量の食物の注文があり、
その施設へ運んだと言う。
その施設にいた女が、驚くほどの美人だったので、印象に残っていたと書いてある。
施設では、そこにいた兄妹が、どこかの星へ旅立つ送迎パーティーをするようだったと書いてあるが、
残念ながら、その女こそが、聖母マリアである事は知らなかった様で、レポートは、そこで終わっていた。

(兄妹か……)

リタ王は、これから城で会う、4名の詳しいプロフィールを確認した。

1人目は70歳を越えた老人だった。犯罪暦があるなど、プロフィールを読む限り、マリアに育てられた可能性は
薄いとリタ王は思った。
2人目は10歳の幼い子供だった。ジャンヌ星を訪れた商人夫妻が、たまたま交通事故の現場に直面し、唯一助かった子供を
引き受けたと書いてある。

(これも違うな……)

レポートは1枚に2名ずつ書かれており、残りの2名を確認するためにレポートをめくるのだが、手が微塵に震えるのを
リタ王は止められなかった。
そしてリタ王は、残りの2名を確認した。

レポートに目を通したリタ王の手が震えた。
手だけではなく、全身が僅かに震えていたのかもしれない。
これまで幾多の難星を制圧して来たリタ王だったが、これほどの興奮はなかっただろう。
それほどまでの衝撃であった。
そして、笑いを堪えきれぬリタ王は、機内であるにも関わらず、声を上げて笑った。

―『ベールとアイム ベールが兄、アイムが妹』
ようやく震える手を、ぐっと堪えたリタ王は、二人の詳しいプロフィールを確認した。
兄のベールは24、妹のアイムは23。年は一つ違いである。
アイムが生まれてすぐに、研究職をしていた両親が、実験中の事故により亡くなっている。
「キボウ」と言う名の、星をあらゆる攻撃から守る装置の、実験中だったとされている。
まだ幼い二人は、ナポレ王の口利きにより、ある施設に預けられて育ったとされているが、
その場所や、育て親については、不明とされていた。
ベールが1歳、アイムにいたっては0歳なのだから、まさに親と言える存在に違いはなかった。
ベール、アイムは、共に両親の研究の完成を目指し、星内でも一番の優秀なスクールで学び、
そのスクールの推薦で二人は、現在ではムーン星の支配下になっているワクリル星にある、
平和研究学で飛び抜けた研究開発環境のあるスクールへ移ったとされている。
ベール、アイムは揃って優秀で、ワクリル星でも、それぞれトップクラスの成績を収め、
現在は二人とも卒業し、研究者としてスクールに残っていた。
周囲の証言では、二人は、後数年したらジャンヌ星に戻って研究をしたいと話していたと言う。

城に到着したリタ王は、すぐさま4人への接見を行った。
無関係と思われる老人と子供には、簡単に事情を聞いただけで、土産と称し一市民としては生涯困ることが
ないであろう財を持たせて帰星させた。

「次を呼べ」

これまでにない程の緊張感を高めたリタ王の元へ、先に連れて来られたのは妹のアイムであった。

(美しい……)

リタ王だけでなく護衛をしてる者や側近までもが眼を奪われる美しさだった。

母国であるジャンヌ星が、ムーン星の標的にされている事は既知であるらしく、眼光は鋭く、嫌悪感を
あらわにしている。それが敵国である王の前だとしても全くひるまず気の強い性格だと誰もが思った。

「アイムです。兄と共に、ジャンヌ星よりワクリル星へ研究目的のため来星しております」

言葉に緩みや脅えのない、まっすぐで強い口調だった。
資料を目に通しつつも、リタ王はマリア以来、久しく心を奪われたアイムの身体をチラチラと眺めつつ質問をした。

「私の星が君の星との有効的星交渉をしているのは知っているかな」
「いいえ、制圧目的で攻撃をしかけ全滅をしたとは聞いておりますが」
「ほう。それは誰から聞いたのかな」
「兄です」

話をしながらもアイムの長く白い両腕が美振動しているのがわかった。怒りを押し殺している様だった。

(マリアの前にこいつで楽しめそうだな。それにしても素晴らしい美貌だ……これ程の女は、星に1人いるか、いないかだ)

アイムは半袖に、フィットしたズボン姿だったが、そこからでも豊満な胸の膨らみがわかった。
袖から出た腕は白く、マリアをも彷彿とさせる白さだった。

「君はこれまでに男に抱かれた事はあるのか」

リタ王の言葉に、周囲の者たちが淫声を上げて薄笑いを浮かべた。

「ありませんッ。そんな事を聞くためにここまで呼んだのですかッ」

呆れ返った様に強い口調で言ったアイムはそのままリタ王に背を向け、扉の方へ歩き出した。

「これで帰らせて頂きます。これ以上、話をする必要はありませんッ」

リタ王は扉の横にいる護衛に視線を向けると、アゴを少し上げ合図をした様だった。
その合図に合わせて、扉へやや駆け足で歩いて来た、怒りと強気に満ち溢れた美貌のアイムの両腕を掴むと、
誰もが圧倒されてしまいそうな艶やかな唇に、薬をかがせた。

「ああッ!……」

悲鳴を上げたアイムは、一瞬の抵抗も及ばず、そのままガックリと意識を失い、護衛に抱かれ別室へと連れて行かれた。

「ふふッ、よし、次は兄の方を呼べ」

策略通りに進んだ事を喜び、リタ王は余裕の笑みを浮かべながらアイムの兄であるベールを呼ぶよう命じた。

(マリア……もうすぐだ……待っていろよ……)

リタ王の淫らな思惑は計画通り、着々とマリアに忍び寄っていた。






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