神聖騎士エルシオン 魔人ホルス編
シチュエーション


月光で淡く照らし出された夜の公園に、二つのシルエットが対峙していた。
魔力と魔力がぶつかり合い、閃光が交差する。
衝撃波とエネルギー弾が衝突し、耳をつんざく爆音が鳴り響く。

「なかなかやるね」

ワシの翼と頭部を持つ魔人が、けたたましい声を上げた。

「なら本気でいくよ、神聖騎士。この僕のスピード──捕らえられるものなら、捕らえてみるがい
い」

音速に匹敵するスピードで上空を駆け回り、羽毛の弾丸を降らせてくる。
若草色のバトルコスチュームをまとった女騎士は、軽やかなステップワークで羽毛の散弾をかわ
してみせた。

「……まだ、あんたの名前を聞いてなかったっけ」

鮮やかな朱唇が、笑みを含んで告げる。

「僕はホルス。風を操る鳥人さ」
「奇遇じゃない、私も風の術が得意なの」

女騎士が紅の髪をかきあげた。鋭いシャギーの入った前髪の間から、切れ長の瞳が小さく笑う。

「……人が名乗ったんだから、君も名乗りなよ」
「私は神聖騎士ディーテ。まあ、覚えなくてもいいよ。どの道、あんたは消えてなくなる」
「消えてなくなるだと」
「そ。私にやられて。今ここで、ね」

女の口元に笑みが浮かぶ。

「こ、この僕を愚弄する気か!栄えある魔人軍の一員である、この僕を!」

ホルスは激昂とともに急降下した。
風を切り、音さえも切り裂き。
凄まじいスピードで肉弾と化す。

「許さないぞ、女!ズタズタに切り刻んだ後で、死ぬまで犯してやる!女に生まれてきたこと
を後悔するくらいにね!」
「脅し文句までワンパターンか。三流だわ、あんた」

ディーテはふん、と鼻を鳴らした。
音速のダイビングを、彼女はほんの数歩さがっただけであっさりと避ける。

「僕の攻撃が当たらない……!?」
「あんたの動きは直線的過ぎる。読みやすいのよ」

女岸が告げた。

「いくらスピードがあっても、当たらなければ意味がないでしょ」

翼の角度、風の流れ、視線の動き──
あらゆる要素を見極め、ディーテはホルスの体当たりをかわし続けた。
一向に攻撃が当たらない魔人は、次第に焦りをにじませ始める。

「くっ、僕のマギは三万を超えているんだぞ。どうして……」
「私が前に戦ったアスモデウスってやつは、三十万を越えていたわよ」

女騎士が不遜とさえ言える態度でうそぶいた。

「じゃあ、そろそろ消えてもらおうかしら」

すらりと伸びた繊手の先に、エメラルドの輝きが灯った。

「マギ開放・ウィンディブレス!」


ごおっ!


風圧の奔流が魔人に迫り──

「う、うわあああっ!」

ホルスは悲鳴を上げて、天空へと飛翔した。
翼を広げ、全速力で戦場を離脱していく。

「あらら、逃げられちゃったか」

ディーテはぺろりと舌を出して、つぶやく。月光の照り返しを受け、若草色のコスチュームが淡
く輝いていた。



「瞳子ちゃん……」

天空高校の廊下で出会ったとたん、蛍は顔を青ざめさせた。

「おはよう、蛍」

冷静に、冷静に、と自分自身に言い聞かせながら、瞳子は挨拶を送る。

「あ、あの……」

蛍は唇を震わせ、立ち尽くしていた。

「どうしたのよ、蛍。挨拶くらい返してくれてもいいでしょう」
「わたしのこと、怒ってないの、瞳子ちゃん?」

蛍の声がかすれる。人形を思わせる大きな瞳に涙がにじんでいた。

「わたしがちゃんとしてれば、しっかり戦えていれば……瞳子ちゃん、あんな目に遭わずにすんだ
のに……」
「やめて、蛍」

瞳子は親友の言葉をさえぎった。

「あたしが敗れたのは未熟だったからよ。犯されたのも、その報い」

『犯された』という言葉を発した瞬間、体が我知らず痙攣した。
アスモデウスとの戦いから一夜が明け、多少なりともショックから立ち直ったつもりだった。
だが悪夢は、瞳子の心を確実に蝕んでいる。唇をかみ締め、嗚咽が漏れないように食いしばりな
がら、彼女は平然を装い続けた。

「だから──あなたが気にすることじゃない」

蛍は泣きそうな顔で叫ぶ。

「でも、わたしがもっと強かったら!」
「いい加減にして」

瞳子は、氷のように冷たい視線を相棒に向けた。
蛍はびくん、と体を硬直させ、言葉を止めた。

「あなたがいたらどうだっていうの?あなたがいたところで戦局は何も変わらない。うぬぼれな
いで」
「瞳子ちゃん……わたし、そんなこと……」
「役立たずなのは今に始まったことじゃないでしょう」

こんなことを言うつもりはなかった。
いつものように、いつもと何も変わらず、友人として接するつもりだった。
だがあふれ出る感情が、瞳子の口から鋭い言葉をほとばしらせる。

「足手まといなのはいつものことよ。中途半端な同情はやめて。迷惑なのよ」
「迷惑……」

蛍の瞳にみるみる涙がたまっていく。
明るい笑顔は見る影もなく曇り、力なくうなだれる。

「そう……だよね。ごめんなさい、瞳子ちゃん」

唇を震わせながら、蛍は背を向け、廊下の奥へと走り去っていった。

「……蛍」

相棒の姿が見えなくなると。瞳子は苛立たしげに壁を殴りつけた。
拳の皮が裂け、血がにじむ。


──自分の感情が、うまくコントロールできない。


(最低だ、あたし)

瞳子は深くうつむき、悔恨にうめいた。
と、

「どうした、瞳子。そんなところでボーッと突っ立って」

廊下の真ん中で立ち尽くしたままの瞳子に、一人の男子生徒が声をかけてきた。
クラスメートの立花花太だ。

「悩みでもあるのかよ?なんなら、俺が相談に乗ってやってもいいんだぜ、ん?」

にっこりと笑いながら、花太が肩に手を置いた。

刹那、


──どくん。


心音が激しく高鳴った。

「さ、触らないで!」

瞳子の体がびくん、と震える。
大慌てで花太の手を振り払い、飛び下がった。
はあ、はあ、と荒い息をつき、両肩を上下させる。

「なんだよ、瞳子。人をレイプ魔みたいな目で見るなよ」

花太が驚きと呆れの中間の表情で鼻白んでいた。

「うう……」

瞳子は、自分の顔から血の気が引くのを自覚する。
上下の歯がガチガチと震えて止まらなかった。
恐ろしかった。

『男』が体に触れただけで、あのときの記憶がフラッシュバックする。


キスも知らなかった清純な唇に、無理やり押し付けられた汚らしい口づけ。
大股に広げられ、動かない脚。
股間に押し当てられた、熱く、堅い感触。
処女の印を無慈悲に破り裂いた、男の象徴。
そして──無垢な子宮を汚した魔人の子種。


凌辱の記憶が、瞳子の身と心を激しく揺さぶる。

「いやっ、いやぁっ!」

頭を抱え、その場にしゃがみこんだ。

「お、おい、瞳子……?」
「いやっ、来ないで!触らないでっ!」

子供のようにわめき散らし、瞳子は叫んだ。

恐ろしかった。
男が、恐ろしかった。
たまらなく──恐ろしかった。

「はあ、瞳子ちゃんとどう接すればいいんだろ」

蛍の口から何十回目かのため息がもれる。
朝の挨拶以来、一言も口を利いていなかった。
瞳子は、自分のことをどう思っているのだろうか。
魔人アスモデウスとの戦いで、全く役に立たなかった自分を。
いや、アスモデウス戦だけではない。
今までにも、何度となくエルシオンの足を引っ張ってきた。そしてそのたびに、エルシオンが苦
境に立たされてきた。

(全部、わたしのせいだ)

思い返すたびに、胸が苦しく詰まる。

(わたし……瞳子ちゃんのパートナーでいる資格、ないのかな)


軽蔑されたかもしれない。
見切られたのかもしれない。


考えれば考えるほど、不安でたまらなかった。
と、そのときだった。


──どんっ。


額の裏に、重く衝撃が響く感覚。
強烈なマギがどこかで開放されたときの、独特の感覚。
蛍は慌てて駆け出した。
校門の前まで走ると、ちょうど瞳子が走ってくるところだった。

「瞳子ちゃん、この気配は……!」
「あなたも感じたのね、蛍」

瞳子がうなずいてみせる。

「魔人の反応よ」

クールな表情が今は曇っていた。
蛍にもその理由は分かっている。
瞳子は、昨夜の戦いで大量のマギを消費してしまった。たった一夜では回復など望むべくもない。
今、魔人に向かっていっても戦いになるかどうか……
もしかしたら神聖騎士に変身することさえできないかもしれない。

「こんなときに──」

瞳子が唇をかみ締めた。
と、

「大丈夫だよ、瞳子ちゃん」

蛍が顔を上げた。
心の中には暗い恐怖と──そして堅い決意が同居していた。

「今度は、わたしが戦うから」
「蛍……」
「見てて。わたし一人で勝ってくる」
「あなた一人でどうにかなるわけないでしょう。まだ半人前なんだから」
「わたしも、強くならなきゃ」

蛍が小さく微笑んだ。

「瞳子ちゃんと一緒に戦えるように」
「待ちなさい、蛍──」

瞳子が止める暇もなく、蛍が飛び出していく。


──そう、これはわたしの戦いだ──


強い決意を心に刻み、戦場へと走る。心臓の鼓動が痛いほどだった。独りで戦うことへの恐怖感
が足をすくませ、体を震わせる。
萎えそうになる決意を奮い立たせ、蛍は走り続けた。マギをたどっていくと、オフィス街の路地
裏にそいつはいた。
ワシの翼と頭部を備えた、異形の魔人。

「見つけた──」

かすかに声が震える。
一人で魔人と対峙するのは始めてだ。
いつも……いつでも、側には瞳子がいた。
無敵のエルシオンが、いつも蛍を助けてくれた。
だが今、彼女はひとりだ。大切なパートナーは、初めてといっていいほどに打ちのめされ、乙女
の純潔さえも汚されてしまった。
とても戦えるような状態ではない。
身も、心も。
だからこそ、今回は蛍一人で戦わなければならない。

「僕は魔人ホルス。栄えある魔人軍の一員だよ」

魔人が甲高い声で告げた。

「君一人かい?この街には、他にも神聖騎士がいるはずだけどね」
「わ、わたし……一人よ」

蛍が一歩前に出た。
拳を握り締め、大きく息を吐き出す。

「わたし一人で十分なの、あなたを倒すくらいはね」

つぶらな瞳でまっすぐに魔人を見据えた。
いつも瞳子がそうしているように。
クールに魔人を見据えつける。
魔人ホルスはおどけたような口笛を吹いた。

「へえ、言ってくれるじゃないか」
「魔力世界へ精神接続!マギエネルギー封印解除!」

蛍の呪文が朗々と響き渡る。
天高く宝具を掲げ、魔人の前で変身のキーワードを開放する。

「武装顕現!ナイトシルエット!」


そして──
蛍の戦いが、いま始まる。


日高蛍(ひだか・ほたる)が神聖騎士として覚醒したのは一年半前のこと。魔人に立ち向かう者
たちの本拠地である『神殿』で訓練を積み、やがて実戦に出るようになった。
最初の実戦から今まで、蛍は瞳子とともに戦ってきた。比類なき強さを誇るエルシオンは頼れる
相棒であり、彼女の美しさは蛍の憧れだった。
その瞳子に『足手まとい』だと断じられたとき、心を引き裂かれるような衝撃を感じた。


瞳子に見限られたくない。
そのためには自分の力を示すしかない。
一人前の戦士としての、自分の力を。


蛍──神聖騎士ジュデッカは悲壮な決意とともに、魔人ホルスと対峙する。
ワシの翼と頭部を備えた、鳥人タイプの敵だ。

(見ていて、瞳子ちゃん。わたし、ひとりで勝つから)

湧き上がる恐怖を押さえ込み、闘志を燃やす。

「第一段階マギ開放っ」

蛍は魔力を高めて、勢いよく叫んだ。虚空で印を結んだ両手の前に、オレンジ色の輝きが生み出
される。

「ファイアブリット!」

炎の輝きは無数の散弾と化し、四方から魔人を襲った。

「そんなスローな攻撃で!」

ホルスは翼を広げて飛び上がった。


ごうっ!


炎の散弾の大半が地面に着弾し、盛大な爆炎をまき散らす。
そして残った散弾は──
軌道を変え、空中のホルスを追撃する。

「追尾型の魔力弾だと!?」

魔人は驚きの声を上げた。
無数の炎弾がワシの魔人へと迫り──

「マギ開放・ウィンディウォール!」

瞬間、ホルスが魔力を放出した。
風のバリアが形成され、炎の散弾を受け止める。

風と炎と。
二つのエネルギーが中空でぶつかりあい、衝撃波が吹き荒れた。
と、

「ううっ……!」

苦悶の声を漏らしたのはホルスのほうだった。風のバリアで完全に防ぎきれなかった攻撃が、魔
人の体を焼き焦がしたのだ。

「なかなかのパワーだ……!」

忌々しげに地上のジュデッカをにらみつける。

「わたしのほうが、マギが高いみたいだね」

蛍は長大な弓を取り出し、かまえる。
先ほどの攻防で実感した。相手のマギはせいぜい二、三万といったところだろう。対する彼女の
マギ数値は五万五千。


このままパワーだけで押し切れる──


蛍の中に闘志が湧き上がった。

「いっけぇぇぇっ!」

炎の散弾を連発し、ホルスを追い込んでいく。ありったけのマギをつぎこみ、次から次へと炎の
弾を量産した。
ワシの魔人は翼を広げ、空中を自在に旋回し、攻撃のことごとくをかわしてみせた。幾度となく
放たれた『ファイアブリット』が、そして『ブレイズキャノン』が虚空へむなしく消えていく。パ
ワーが低いとはいえ、スピードのほうは侮れない。

「このっ、チョコマカとーっ!」

蛍は苛立ちを隠せずに叫んだ。

「戦いの場で感情をむき出しか。パワーは高くても、戦士としての資質は三流だね」
「うるさいっ」

怒声まじりに、さらに炎の弾丸を放つ。
攻撃を放つ。
魔人が避ける。
攻撃を放つ。
魔人が避ける。
まるでイタチごっこだった。

だが一連の攻防の中で、ジュデッカは勝利を確信する。
先ほどから一方的に攻撃を続けているのはこちらのほうだ。たとえ魔人が逃げ続けていても、い
ずれは避けきれなくなり攻撃をまともに受けることとなるだろう。
そうなればパワーで上回るジュデッカの勝ちだ。

「えぇぇぇぇいっ、ブレイズキャノン!」

もう何度目になるのかも忘れたが、蛍が全力のマギを込めた攻撃を撃ち出す。

──そのとき異変は起きた。

「えっ……!?」

蛍が戸惑いに瞳を見開いた。


急激に──力が抜けていく。


両腕がだらりと下がり、ガクガクと膝が笑う。四肢に力が入らず、ジュデッカはその場にへたり
込んだ。

「おやおや、どうしたのかな、神聖騎士」

ホルスは嘴を歪め、笑みを形作った。

「ガス欠のようだね」
「そんな、どうして!」

愕然と叫んだ。

「実戦で、全力で長時間戦った経験がないのかな?まるで素人のようじゃないか」

上空からホルスが嘲笑する。

「僕は攻撃を避け続けるだけで、あとは君が自滅するのを待つだけだった。楽な戦いだよ」
「…………」

今までの訓練で自分のマギ総量を量ったことは何度もある。だが実戦でどれくらい魔力が保つの
か──こればかりは実戦経験を積んで、体得していくしかない。
蛍には、マギを限界まで使用した『実戦経験』が皆無だった。
もっと慎重に戦うべきだったのに。

「こんな初歩的なミスを……」

蛍は痛恨の思いで呻く。自分ひとりでの、初めての実戦に舞い上がっていた。
視界が蜃気楼のようにかすんだ。意識が徐々に遠のいていく。

(わたしは、なんて未熟なんだろう)

悔恨が心の中をドス黒く染め上げた。

「そろそろ反撃の時間だね」

ホルスの両翼が大きく広がる。


ざぁっ……


木枯らしにも似た音とともに、魔人の翼から無数の羽毛が撃ち出された。鋭く尖った刃を備えた
羽毛の弾丸が、四方からジュデッカに向かって降り注ぐ。

羽毛の刃がジュデッカの全身を覆うバトルコスチュームを切り裂いた。マギの減少とともに防御
力が低下している衣装は、ひとたまりもなくズタズタにされてしまう。

「きゃあっ」

衝撃で大きく吹き飛ばされ、蛍は悲鳴を上げた。

「全段命中、だね」
「くっ……!」

愉快げなホルスの声を聞きながら弱々しく立ち上がる。
司祭風のローブはあちこちが破れ、半裸同然だった。コスチュームの破れ目から未発達のなだら
かな肢体がのぞき、白い肌がさらされている。なかば以上露出した右の乳房は桃色の乳首までがあ
らわになっていたが、手で隠す余力さえなかった。股間の辺りも衣装の大部分が剥ぎ取られ、可愛
らしいショーツが見えている。

「いい格好だよ、神聖騎士。このまま殺すのは簡単だ。もう一度今の攻撃を放てば、君はもう防げ
ない」

ホルスが笑った。

「馬鹿に、しないで」

呼吸を荒げながらも、ジュデッカは気丈な顔で魔人を見上げた。

「馬鹿にしているわけじゃない。事実を告げているのさ。君のマギは極端に低下している。防御力
も半減している。この状態で僕の最大術『フェザーラッシュ』は防げない」

「くっ……」

ジュデッカは悔しげに奥歯を噛み締めた。

死んでも認めたくはないが、確かに魔人の言葉は事実だ。ホルスがもう一度先ほどの術を使えば、
ジュデッカに勝機はない。


殺される──


今さらながらに恐怖感が込み上げた。ホルスはおびえる少女の様子を楽しむように、嘴の端を吊
り上げる。

「だけど君みたいな可愛いコをただ殺すなんて勿体ないからね。存分に楽しませてもらうよ」
「楽しむ……?」

不吉な予感を覚え、少女の四肢がこわばる。

「踊れ、我が羽たちよ」

ホルスが呪文のように告げた。


ざぁぁぁっ……


広がった両翼から無数の羽毛が射出され、自らの意志を持つように乱舞する。羽毛群はひらひら
と降下していき、少女騎士の周囲を浮遊した。

「これ……は……?」

ジュデッカは驚きの声を上げた。一枚一枚の羽毛が空中に舞いながら、少女の肌にまとわりつい
たのだ。

「さあ、彼女を楽しませてやれ。僕の分身たち」

ホルスの号令とともに、無数の羽毛が露出した肌へと殺到した。

「はっ、あぁぁぁぁっ!」

ジュデッカの悲鳴が甲高く響く。
まるで筆で掃くように──滑らかな肌を、小ぶりな乳房を、可愛らしいへそを、キュートなヒッ
プを、そして乙女の秘処をもなぶっていく。
羽毛は一枚一枚が己の意思を持っているかのごとく、独自の動きを見せた。鋭敏な箇所を絶妙の
タッチでさすり、くすぐり、撫でる。

「んっ……う」

少女の口から艶かしい喘ぎが漏れた。
性的に初心な蛍だが、年頃の少女としての性感は備えている。あらゆる性感帯を同時に弄られ、
なぶられて、否応なしに反応が昂ぶっていく。

「はあ、あああっ……!」

背筋に電流のような痺れが走った。右の乳首がコリコリに勃起している。ショーツ越しにさすら
れた秘裂からは愛液がしたたり、太ももの辺りまで垂れ落ちている。

(やだ、わたし……戦いの場所で、こんないやらしい……)

頬が赤熱するのを感じながら、蛍は喘ぎ続けることしかできなかった。

「やれやれ、随分とエッチな正義の味方だね。悪の魔人に責められるのがそんなに気持ちいいのか
い?」
「ふざけないで……はぁぁぁ、だめぇ」

乳首を集中的に撫でられ、ジュデッカの声はたちまち力を失った。白い乳房が紅潮し、痙攣する
ように震えている。

「そろそろ止めといこうか。最後は僕の手でバージンを散らしてあげるよ」

ホルスは翼を閉じて地面に降り立った。ズボン状の衣装を脱ぎ捨てると、下腹部から隆々とした
肉根があらわれる。
赤黒い先端部は先走りの粘液によってテラテラと濡れ光っていた。

「ひっ……!」

間近で目にした男の象徴に、ジュデッカは息を呑み込んだ。

(あんなモノで犯されたら、壊れてしまう──!)

脳裏に、アスモデウスによって純潔を散らされた美少女の姿がよみがえる。清らかな秘処を無残
に貫かれ、最後にはヨガらされた美しい相棒。
自分もあんなふうに狂わされるのだろうか……と不安が込み上げる。同時に妖しい快楽の予兆に、
腰の芯がじわり、と熱くなった。
ホルスは巨大な肉茎を揺らしながら、一歩一歩近づいてきた。
蛍は動けない。疲労困憊のうえに、羽毛群の嬲りによって体に力が入らないのだ。
地面にへたり込んだジュデッカの前に、ホルスが仁王立ちをした。

「しゃぶれ」

火照った亀頭が頬に押し付けられる。信じられないほど固く、熱い切っ先が頬をぐりぐりと押し、
さらにスライドして唇にあてがわれた。

「んっ……」

キスも未経験の唇におぞましい男根が押し付けられ、蛍の小鼻が膨らんだ。

「いやっ、汚い……!」
「なにが汚いんだ。これから君を女にしてくれる大切なモノだぞ」

ホルスが小馬鹿にしたように告げた。

「さあ、敬意を込めて口づけするんだ。そしてお願いしろ。『私の処女を奪ってください』とね」
「そんなこと言えるわけないでしょう!」
「なら、このまま生殺しにしてあげようか?」

ふたたび羽毛が舞い踊り、ジュデッカの全身をなぶっていく。

「くぅっ……うあぁぁぁっ!」

じっとりとした責めに少女はひとたまりもなく嬌声をあげた。
快楽の中に、理性が蕩けていくようだった。

「このまま嬲られるより、ひとおもいに貫かれたいだろう?違うかな」
「わ、わたしは──」

かすれた声でうめく。
どうすればいいのか分からなくなっていた。正常な思考が混濁し、次第に妖しい愉悦に染まって
いく。
このままでは魔人に対して、凌辱を懇願することになってしまう。

(そんなのゼッタイ駄目……!助けて──)

ジュデッカの瞳が絶望に見開かれる。

(助けて、瞳子ちゃん!)


「アイシクルブリット!」


凛とした叫び声が響き渡ったのは、その瞬間だった。

「アイシクルブリット!」

凛とした叫びとともに、蒼く輝くエネルギー弾が飛来する。

「!」

ホルスは驚きに目を見開き、中空へ飛び上がった。

「今の術は──」

ジュデッカは、攻撃が飛んできた方向に視線を移す。
路地裏の向こう側──オレンジ色に輝く夕陽の照り返しを受けて、白いバトルコスチュームに身
を包んだ美少女騎士が立っていた。

「瞳子ちゃん!」

蛍が喜びに目を輝かせる。
エルシオンは無言で彼女の元へ駆け寄った。

「新手か。やれやれ、この町には一体何人の神聖騎士がいるんだか」

ホルスが空中で舌打ちする。
股間で巨大な肉棒がだらしなく揺れていた。

「あの、瞳子ちゃん、わたし──」

言葉が出てこなかった。
エルシオンに負担をかけないために、勢い込んで戦場へ向かったというのに。無様に敗れたうえ
に、当のエルシオンに助けてもらうとは。
自分自身が情けなくて、瞳子の顔をまともに見ることもできない。

「あなたはそこで休んでいて」

クールに告げて、エルシオンが背を向ける。

「……役に立てなくて、ごめんね」

蛍は嗚咽まじりの声で謝った。きつく閉じた瞳の奥から熱いものがこぼれ落ちる。悔しさと惨め
さが少女の胸を灼いていた。

「蛍」

エルシオンが告げる。
背を向けたままで。
いつも通りのクールな声で。

「ん?」
「よく頑張ったね」

瞳子の声に優しさがにじむ。

「瞳子ちゃん、わたしは、そんな……」

「マギの強さは心の強さ、でしょう。あなたの心は今日、少しだけ成長したの」

瞳子が言葉を継ぐ。

「でも……」
「今日はここまででいいの。いつかきっと、あなたはもっと強くなれる」
「選手交代かい?ま、誰が来ても同じだけどね」

ホルスが空中で翼を羽ばたかせた。


ざぁぁっ……


木枯らしの音を響かせ、無数の羽毛が射出された。羽毛の弾丸を放つ、ホルスの最大術『フェザ
ーラッシュ』。

「神具召還」

エルシオンが虚空に向かって右手を突き出した。しなやかな手に握られたのは、黄金の刃を備え
た聖剣。

だが──

「っ!?」

エルシオンの瞳に愕然とした色が浮かんだ。
蛍も同様に驚きの声を漏らした。
優美な柄の先にあるはずの、黄金の刃──それが半ばから消失している。

「なんだよ、その剣?折れているじゃないか」

ホルスが嘲笑した。
前回の戦いで、アスモデウスの魔剣によってエルシオンの剣は半ばから折られてしまった。今の
彼女には武器がない。完全な丸腰だ。

「くっ」

眉をしかめて、聖剣を地面に放り捨てる。猛ダッシュで横に跳び、間近に迫った羽毛群をかわし
きった。
爆音とともに地面の一部がえぐれ、吹き飛ぶ。

「第二段階マギ開放」

エルシオンは両手で複雑な印を結び、叫んだ。

「くっ、さっきの神聖騎士よりもマギが高いのか!?」

美少女騎士の気が高まったのを感じてか、ホルスの表情に警戒色がまじる。
すらりとした手が高々と突き出された。
上空にいるホルスへと狙いを定め、

「ジャイロブラスト──」

叫んだ瞬間、エルシオンの表情が凍りついた。

「瞳子ちゃん?」

ジュデッカは怪訝な気持ちでエルシオンを見つめる。
術が、発動していない。

「まさか──いえ、やっぱり」

蛍は愕然とうめいた。

「戦えるだけのマギが、まだ回復してないの?」

エルシオンは無言だった。



術が、使えない──


瞳子の胸に絶望感が広がっていく。

前回の戦いでマギを限界近くまで消費してしまい、まだ十分に回復していない。
万全の状態でないことを承知したうえで戦いに臨んだはずだった。しかも今回の相手はアスモデ
ウスに比べれば、数段力の劣る敵だ。なんとか戦えると思って、助太刀に駆けつけたのだが……

上級術が発動しないほどにまで、マギが低下しているとは思っていなかった。

「くっ、ジャイロブラストが使えないなら……」

思考を切り替え、別の呪文を唱えだす。
そうはさせじと、ホルスが翼を羽ばたかせた。両翼を畳んで滑空しながら、猛スピードで降下す
る。
自らの肉体を一個の弾丸と化し、まっすぐに突き進む。さらに魔人の全身が薄い緑色の輝きに包
まれた。
マギエネルギーをまとって特攻するつもりなのだ。

「フリーズレイ!」

氷の散弾がホルスを捉え──
すべての散弾がはじき返される。

「くっ!」

やはりランクの低い呪文では決定打にはならない。
輝く弾丸と化したホルスが間近に迫る。
攻撃態勢に入ったままのエルシオンは、回避行動をとるのが遅れた。

避けられない──
歯を食いしばった瞬間、全身がバラバラになるような衝撃を覚えた。十数メートルも吹き飛ばさ
れ、地面にたたきつけられる。

「ぐっ……!」

エルシオンは苦痛を無理やり押し殺して、立ち上がる。体中の骨が軋むように痛んだ。
と──

「コスチュームが……!」

ぱっと閃光が散り、白いバトルコスチュームが消失する。もはやコスチュームを象るだけの魔力
も残っていないのだ。

天空高校の制服姿に戻ったエルシオン──いや、月読瞳子は呆然と立ち尽くした。

「はははは、こりゃあ傑作だ。ただの女子高生が魔人様と戦うつもりなのか」

ホルスは哄笑を響かせて着地した。
無防備に、無警戒に近づいてくる。
だが瞳子には戦う術がない。魔人の言うとおり、マギが尽きた神聖騎士は単なる女子高校生にす
ぎないのだから。

「踊れ、我が羽」

呪文とともに、無数の羽毛が浮遊した。

「くっ……!」

瞳子は長い黒髪を振り乱し、羽毛群から逃れようと走る。スカートをひるがえし、白い太ももが
あらわになるのもかまわずに駆け抜ける。

──その眼前に魔人が出現した。

「っ!」

瞳子の動きが止まった。

「……なんてスピードなの」
「君が遅すぎるんだよ」

ホルスの嘲笑がどうしようもない敗北感を瞳子に与える。
圧倒的な移動速度だった。運動能力があまりにも違いすぎる。しょせん、神聖騎士に変身してい
ない状態では魔人にかなうはずもない。

「さあ、鬼ごっこは終わりだ」

無数の羽毛がロープのようにひとつながりになり、手首にまとわりついた。同じように両脚に絡
まり、縛り上げる──
あっというまに四肢を拘束され、瞳子は磔となった。

「う、動けない……!」

「いいザマだね」

翼の先についた鉤爪がスカートをめくりあげた。もう一方の鉤爪がショーツの上から秘部をなぞ
る。

「あっ!」

デリケートな箇所への刺激に瞳子の頬が紅潮した。唇が震え、恥辱の喘ぎをもらす。爪の尖端が
布地を軽く押し込み、鋭敏な秘裂をゆっくりと撫であげた。

上から下へ。
下から上へ。

鋭敏なクレヴァスに甘痒い感触が走り、背筋がゾクゾクとなった。

「うっ、くっ……」
「ふふふ。感じてきたようだね」
「だ、誰が、お前なんかに」

瞳子はおぞましさに顔を背けた。宙を舞う羽がいっせいにまとわりつき、白い肌を、豊かな膨ら
みを、締まった臀部を……なぶっていく。
いつしか腰の奥が熱くなり、甘い陶酔感が体の芯にひろがっていた。

「ううう……」

呼吸が荒くなるのを止められない。瞳子は内ももを摺り合わせ、切なげに喘いだ。
ぐい、とひときわ強く爪が股間に食い込んだ。

「ああああっ!」

瞳子は抑えきれない悲鳴を上げた。
鋭い爪の先に、分泌された蜜液が付着している。いつのまにか濡らしていたのだ。

「ビショビショじゃない。本当は犯されるのを期待していたんだろ?」
「ち、違う……きゃあっ!」

爪の先がさらに奥へと押し込まれる。布地ごと秘唇を貫かれ、体が痙攣した。

「なんだ、意外にあっさり入ったね。ひょっとして処女じゃないの」
「…………」

ホルスの残酷な言葉に唇をかみ締めた。アスモデウスによってバージンを散らされた記憶が脳裏
をよぎる。

「どうなのさ?初体験の相手は彼氏?それとも……」
「どうだっていいでしょう」

瞳子が気丈に魔人をにらみつけた。

「ふん、まあいいか。君が非処女ってことに変わりはない。見かけによらず、ヤリマンなんだね」

ホルスが嘲笑した。

「正義のヒロインならもう少し清純であって欲しいもんだよ」
「ふざけないで!」

プライドを傷つけられて瞳子が叫ぶ。度重なる嘲弄で、頬にカッと血が上っていた。

「今度は僕を満足させてもらおうかな」

四肢を拘束している羽毛がうごめき、瞳子の体に圧力をかけた。両脚をひきすえられ、無理やり
ひざまずかされる。屈辱だった。

「さあ、しゃぶれ」

ホルスの肉棒が唇に押し付けられた。

「ん……」

先走りの粘液が付着し、可憐な唇を汚した。塩気の強い、ひどい匂いだった。

「誰が、お前のなんか──うぐっ!」

抗議の声を上げかけたところで、たくましい怒張が口内に無理やり押し入ってきた。野太い肉根
が半ばまで侵入する。
堅い亀頭で喉奥を突かれ、吐き戻しそうになった。

「うっ、ぐぅっ、むむむ」

あまりの苦しさと圧迫感で瞳の端に涙が浮かぶ。

(調子に、乗らないでよ)

瞳子は大きく口を開き、根元までペニスを飲み込んだ。魔人とはいえ性器は急所に違いない。思
いっきり歯を立ててやれば、ダメージを与えられるはずだ。

「噛むなよ」

瞳子の心中を読んだのか、ホルスが鋭く告げた。

「少しでも歯を立てたら殺す。君だけじゃない。あっちのコも殺す」
「っ……!」

魔人のペニスを噛み砕いてやろうとしていた瞳子は、その一言で動きを凍りつかせた。
視界の端に、力なく座り込むジュデッカの姿が映る。

(蛍……)

胸に、苦い思いが込み上げた。
元はといえば、今回の出来事は瞳子の態度が原因だった。少なくとも瞳子自身はそう思っていた。
蛍に対して決して投げかけてはいけない言葉を発してしまった。
『足手まとい』という言葉を。
それがどれだけ蛍を傷つけるか、分かっていたはずなのに。

(あたしのせいだ)

瞳子は悔恨をかみしめる。

(あたしが心無い言葉を浴びせたから、蛍は無茶をして一人きりで戦った。あたしがあんなことを
言わなければ、蛍はもっと冷静に行動できたはずなのに……)

「分かったかい、お嬢さん」

ホルスはいったんペニスを引き抜き、告げた。

「返事は?」
「……分かりました」

屈辱を噛み締め、瞳子は小さくうめく。蛍を守るための、屈辱的な屈従。

「じゃあ、しゃぶってもらおうか」
「くっ……!」

瞳子は無言で魔人のペニスを口に含んだ。

苦味のある体液が舌の上に広がっていく。かすかに眉をしかめながら、少女はフェラチオを開始
した。
くびれた肉エラに舌を這わせ、先走りの液を舐め取っていく。ぴちゃり、ぴちゃり、と猫がミル
クを舐めるような音が小さく響く。

「いいね、その悔しそうな顔。実にそそるよ」

ホルスが勝利の雄たけびをあげた。
唇をOの字に広げ、おぞましい肉柱を必死でしゃぶりあげる。上目遣いに見上げると、ホルスは
惚けたような顔で美少女の奉仕を受け入れている。情けない気分で涙が出そうだった。
頬をすぼめて魔人の男根をこすりたてる。口内で野太いペニスが力強く脈打った。

「ううっ、出るよ!」

ホルスが叫んで肉棒を引き抜いた。


びゅくびゅくびゅくっ!


極限まで膨張したいちもつが上下に跳ねる。同時に、大量の樹液がほとばしった。白濁したスペ
ルマはシャワーのように降り注ぎ、瞳子の顔や制服を汚していく。

「うっ、けほっ」

栗の花に似た匂いに何度もむせかえる。

「嫌、汚い……」

汚濁の体液に全身を染められながら、瞳子は屈辱に身を震わせていた。
ホルスの肉茎は、放出後もまるで萎えていない。

「上の口の次は、下の口を味わわせてもらおうかな、ふふふ」

ホルスが無慈悲に宣告した。
さらなる凌辱を予感し、瞳子の視界がドス黒く染まっていく──






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