神聖騎士エルシオン 魔人カマプアア編
シチュエーション


両脚の付け根に熱いものがあてがわれた瞬間、吉沢朋美(よしざわ・ともみ)はひっと息を飲んだ。

朋美は市内の高校に通う二年生だ。黒いおさげ髪に眼鏡をかけた容姿は、地味ではあるが十分に
美少女の水準に達している。生真面目そうな美貌が、今は恐怖と屈辱にゆがんでいた。

(いやっ、どうして私がこんな目に──)

全身を硬くして男の体を弾きだそうと力むが、なにしろ相手の体重が重すぎてビクともしない。

「へへへ、入れるぞ。入れちゃうぞぉ」

朋美の上にのしかかっている男がにやりと笑った。

月光に照らされた顔は、豚そっくりの醜い顔立ちだった。おまけに肥満体型で、脂肪だらけの腹
が朋美の引き締った体の上に、だらしなく乗っかっている。

「お、お願い、許して……」

朋美は必死で懇願する。

──襲われたのは突然だった。

学習塾の帰り道……人通りの少ない路地裏で、突然男が襲い掛かってきたのだ。あっというまに
押し倒され、制服を奪い去られ、全裸にされてしまった。

「そう嫌がるなよ。ひょっとして、処女か?」

朋美は無言でうなずく。

セックスはおろか、キスの経験もなかった。ずっと勉強一筋で生きてきて、男女交際とはまるで
縁がなかったのだ。

肥満男は嬉しそうな顔で哄笑した。

「そいつはいい!じゃあ、これが記念すべき初体験ってわけだ」

太った腹がのしかかり、グイグイと腰を押し進める。

「ああっ、やめてぇ!」

朋美は絶叫した。

堅い先端が閉じられた花びらを左右に押し開いた。

「うぐっ!」

滲みるような痛みとともに、熱いモノが押し入ってくる。膣内の粘膜をこそぎながら、陽根が一
直線に突き進む。

「うっ、うう……」

ろくに抵抗もできないまま男のペニスは容赦なく潜り込んでいった。じりじりと、だが確実に清
らかな純潔が散らされていく。

「そうら、これで終わりだ!」

勝利宣言とともに、肥満男はひときわ強く腰を押し出した。同時に、太いクイのような感触が膣
いっぱいに収まる。

「へへ、奥まで入ったぜ。見ず知らずの男に汚いモノ突っ込まれて、処女を失うのはどんな気持ち
だ、ん?」

男が、朋美の胎内でピクピクとペニスを動かした。

「うう……ひどい……こんなことって……」

名前も知らないデブ男に大切なバージンをあっけなく奪われてしまった。

怒りや悲しみを通り越し、呆然とした気持ちが朋美を打ちのめす。

ショックをかみ締める間もなく、男の身体が朋美の中でゆっくりと動きはじめた。生まれて初め
て味わう摩擦感だった。胎内の奥の奥まで潜り込んだモノが下半身全体をずんっ、ずんっ、と突き
上げてくる。

延々と突かれているうちに、少しずつ痛みが和らいできた。

乙女にとって最も秘められた内部を擦られ、えぐられ、こそがれる。


じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ……
じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ……
じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ……


強弱をつけ、リズミカルな抽送を受けているうちに、無垢な体はあっという間に火をつけられた。

「んっ……ああ……」

苦鳴は甘い喘ぎ声に変わり、可憐な唇から漏れていく。未知の感覚に眉をしかめながら、朋美は
瞳を潤ませた。

「おいおい感じてきてるのか?レイプされてるくせに気持ちよくなってきたのかよ」

男が愉快そうに叫んだ。

桃色の結合部には白く泡立った粘液がまとわりついている。言われたとおり、朋美の体は彼らか
ら与えられる刺激に自然と反応していたのだ。


意に沿わぬセックスを強いられているはずなのに、なぜ──?


朋美の疑問は、次の瞬間、押し寄せてきた快楽の波に流され、消えていった。痺れるような魔悦
が下肢全体に波紋となって広がる。

気持ちよかった。

信じられないほど気持ちがよかった。

朋美はいつのまにか夢中で腰を振っていた。やがて、快感が頂点に達したとき朋美は堪えきれず
に叫んだ。

「あぁぁぁっ……駄目ぇ、こんなのって……あああっ……!」

「それでいい。快楽の波動が最高潮に達したときこそ……」

激しいピストンを続けながら、男がほくそ笑んだ。

その声色が不気味なエコーを伴い、闇の中に響き渡る。

「純粋な生命エネルギー『マギ』が放出され、俺は真の姿を取り戻す」

そして。

そのときが来た。

「あああ……イクう!」

少女がオルガスムスの声を上げた。
頭の中を真っ白な閃光が埋め尽くす。
華奢な四肢に痺れるような快感が伝わっていく。

ほぼ同時に──
男の姿が変容した。
肥満体が大きく膨れ上がり、ふた回りほどサイズを増す。
闇の中で、蜃気楼のように男の姿が歪んだ。

──それはもはや人のシルエットではない。
ねじれた角が突き出した兜に包まれた、豚の容貌。甲冑を思わせる硬質の皮膚に包まれた巨体。
怪物だった。

「ひっ……!」

朋美はようやく異変に気づき、悲鳴を上げる。

「ば、バケモノ……!」

自分にのしかかっていた男は、人間ではなかった。
まるで特撮ドラマに出てくる『怪人』だ。

だが、これでドラマではない。
股間に滲みる痛みが、裸身に吹きつける夜風の寒さが、これが現実なのだと教えてくれている。
目の前の異形が、決して幻などではないのだと悟らせる。

「ひ、ひい……」

恐怖のあまり、朋美の喉から漏れるのは意味を成さない呼気だけだった。
体が動かない。
完全に、竦んでしまっている。

「ありがとうよ、優等生。おかげで元に戻れたぜ」

男が吼えた。

「俺の名は『カマプアア』」
「カマ……プアア?」
「お前のおかげさ。お前がイッたときの波動を受けて、俺は封印から目覚めることができた」

男──カマプアアが満面の笑顔で告げる。

「真の姿を取り戻してくれた礼だ。とっておきのプレゼントをやるよ」
「プレゼント……?」

「俺の子を孕むってプレゼントをな!」

豚の目が邪悪な輝きを放つ。

「えっ、そ、そんな──」
「俺の子種はとびっきり濃厚だからな。一発で孕んじまうぜぇ!」

ピストン運動が一気に激しくなり、朋美の胎内で肉根がビクビクと跳ねた。

「きゃっ、熱っ……な、中に出てるっ……ああ!」

膣いっぱいに注ぎ込まれたスペルマの感触に、朋美は悲鳴を上げた。

どくっ、どくっ……しばらく胎動を続けていたそれは、朋美の子宮に熱い樹液を放出しきると、
ゆっくり引き抜かれた。強ばっていた全身の力が抜けていく。ただ彼を迎え入れるため開かれた膝
だけが、ガクガクと震えていた。

「くく、たっぷり出たぜ。こりゃあ妊娠しちまうだろうな」

魔人が膣の入り口に指を差し入れ、引き抜いた。その指には、たった今彼自身が吐き出したばか
りの精液がべっとりと絡みつき、白く光っている。

異形の男に体の奥まで征服された証だった。

「い、いや……妊娠なんて……」

朋美は半ば呆然とした気持ちつぶやく。
処女を奪われたショックと人知を越えた出来事に、正常な理性は完全に麻痺していた。

「一回きりで終わらせるのは勿体ねえ。もう一発ヤるか、ひひ」

カマプアアがふたたび朋美の体にのしかかろうとする。

「い、嫌……」

朋美は涙に濡れた顔を左右に振った。


これ以上犯されるのはもう嫌だった。

これ以上汚されるのはもう嫌だった。


(助けて)

絶望に意識が塗りつぶされていくのを自覚しながら、祈る。
神でも、天使でもいい。
誰かこの怪物を退治してほしい。

(誰か……)

脳裏に浮かんだのは、子供のころに見たヒーロー番組だった。
無敵の、正義の味方が現れ、悪を倒してくれる。
苦しめられている人々を救ってくれる。
そんな、都合のいい空想。

「祈ったって無駄だ。それよりも、俺と楽しむことだけを考えるんだ」

カマプアアが下卑た表情を浮かべた。
汚らしい先端部が処女を失ったばかりの花弁にあてがわれる。ぐにっ、と秘唇を左右に割って、
亀頭が入ってこようとする。

と、そのときだった。


「──見つけた」


凛とした声が響き渡る。

朋美はゆっくりと顔を上げた。
月光の中にたたずむ、二つのシルエットが見える。

いずれも十代後半の少女のようだった。
一人は長身の少女で、背中まである黒髪をなびかせている。先ほどの声の主はこちらだろうか、
涼やかな美貌がまっすぐに朋美たちを見据えていた。

もう一人は小柄な少女で、栗色の髪を肩のところで切りそろえている。可愛らしい容姿は、まる
でアニメに出てくるヒロインのようだ。

「なんだ、お前ら」

レイプを寸前で中断されたカマプアアは、苛立たしげに唸った。朋美の秘孔から亀頭を抜くと、
下半身を勃起させたまま少女たちに向き直る。

「きゃっ……」

栗色の髪の少女が、恥ずかしそうに顔を背けた。
一方のロングヘアの少女は眉ひとつ動かさない。
冷然と、魔人のペニスをにらみつけている。

「俺たちはこれからお楽しみなんだよ。それとも何か?いや、ナニか?お前らもヤられに来た
のかよ」
「ヤられる?その汚らしいモノで?うぬぼれないで」

長身の少女は黒髪をかきあげ、前に進み出た。

「あたしがヤられるんじゃない。あたしが、あなたを殺る」

両手を前方に突き出し、指先が虚空に印を描く。

「────」

朋美の位置からは聞き取れなかったが、謳うような口調で何かを叫ぶ。

瞬間。
目の前に閃光が走った。

ロングヘアの少女が、光の柱に包まれる。
身につけている衣服が光の粒子となって、溶け消える。
白い裸身があらわになった。
豊かに膨らんだ乳房、丸みを帯びた腰のカーブ、両脚の付け根には控えめな翳り──
刹那、ひときわまぶしい光が美少女の裸身を覆う。
次の瞬間には、白い衣装となって少女の全身に固着していた。
体のラインを浮き立たせるような紺碧のボディスーツ。優美な金色に縁取られた純白の衣装。ミ
ニスカートがはためき、健康的な太ももがあらわになる。
夜風の中でひるがえった黒髪が蒼色へ、闇の中でも強い光を放つ黒瞳が深い紫へと変化する。

「こ、この馬鹿でかいマギは──」

カマプアアが唸った。

先ほどまでの余裕が消えうせている。

「お前は……いや、お前らが!」

少女の周囲を青白いオーラが包んでいた。ほとばしるエネルギーが大地を揺らす。あふれ出た燐
光が大気をプラズマ化し、爆発させる。

「神聖騎士──エルシオン」

正義のヒロインへと『変身』した蒼髪の美少女は、澄みきった声で宣言した。

「お前たちを滅ぼすもの、よ」

「お前は……いや、お前らが!」
「神聖騎士エルシオン──お前たちを滅ぼすもの、よ」

蒼きオーラに包まれた美少女……エルシオンが豚の魔人に宣告する。

「神具召還」

右手を天に掲げると、雷鳴とともに空間が裂けた。
少女の右手に現れたのは、黄金に輝く一振りの剣。優美な曲線を描く、長大な剣だった。

「武器を呼び出したか。ならば、俺も……」

カマプアアが同じように右手を掲げる。

「神具召還」

地鳴りとともに背後の空間が裂け、その手におおぶりの斧が現れた。

「先手必勝──ってね!」

予備動作もなしに、いきなり大斧を投げつける。
完全な不意打ちだった。
美少女騎士は動じない。
凄まじい速度でバックステップし、間合いを取る。

同時に、エルシオンの唇から歌うような旋律がつむがれた。朋美には聞き取れないが、それは何
かの呪文のようだった。

「第一段階マギ開放──」

エルシオンの体がひるがえる。

華麗な動きに合わせ、白いコスチュームに覆われた乳房がリズミカルに跳ねた。十代後半の少女
としては豊かな双丘だった。さらにミニスカートがまくれあがり、二ーソックスに包まれた長い脚
から瑞々しい太ももまでがあらわになる。

踊るような動きで、長剣が旋回した。

「アイシクルウォール」

黄金の刀身から蒼い光が放出される。
刹那、巨大な氷の壁が美少女騎士の前方に出現した。怪人の斧は氷壁にぶつかり、あっさりと弾
き返される。

「ちっ、氷嵐系のマギか」

回転しながら戻ってきた斧をつかみ、怪人は悔しげにうなった。

「その程度じゃ、あたしの氷結結界は破れない」
「ちっ……生意気な」

カマプアアが舌打ちした。

「な、なんなの、これ……」

朋美は呆然とうめいた。
美少女騎士と、豚の魔人と──完全に人知を超えた戦いだった。

「一瞬にして氷の壁を作るとはな。マギを使った神術が得意らしいが──」

カマプアアは斧を両手でかまえ、大地を蹴った。

「接近戦ならどうだ!」

コンクリートの路面を踏み潰し、爆発的な勢いで突進する。一瞬にして美少女騎士の間合いに入
ったカマプアアは、大斧を抱え上げた。

凶悪な刃が弧を描き、振り下ろされる。

──ぎんっ。

鈍い金属音ととに、少女の長剣と魔人の大斧がぶつかりあった。突風にも似た衝撃があたりに吹
き荒れる。

カマプアアの、丸太のような両腕に筋肉の束が浮かび上がった。人間をはるかに超越した巨体が、
渾身の力を込めて──大斧を押し込んでいく。

「華奢な体でどこまで耐えられるかな?」
「教えてあげる。戦いの初級講座よ」

剣と斧のつばぜり合いを続けたまま、エルシオンが告げた。

「あたしたちの戦いは、マギ数値の総量に大きく左右される」
「くっ……このっ……!」

魔人のフルパワーを受け止めながら、平然と説明を続ける。

「マギによって肉体能力を増幅し、攻撃能力を倍化し、特殊能力へと変換する。所有するマギが大
きければ大きいほど、各能力を強化することができる──」
「お、俺のマギ数値がお前に劣るとでもいいたいのか」

カマプアアが吼えた。

巨大な両脚が地面にめりこんだ。凄まじい力で踏ん張ったために、コンクリートの路面が陥没す
る。

「俺のマギは一万を越えてるんだぞ!ガキが舐めやがって──」
「あたしのマギ数値は七万二千」

エルシオンが凛とした顔で告げた。

「なっ……!?」
「理解した?力の差、というものを」

エルシオンが剣を押し込んだ。
カマプアアの体がゆっくりと仰け反る。
朋美はその光景に驚きの声を上げた。
パワーで、圧倒していた。
華奢な体の美少女騎士が。
自分よりも二回りも、いやそれ以上に大きな相手を。

「すごい……!」

長剣が跳ね上がり、大斧ごと魔人の巨体を吹き飛ばす。

「こ、このっ……」

「遅い」

雷光の速度で、エルシオンが踏み込む。


一閃──


黄金の軌跡とともに、カマプアアの巨体を斧ごと切り裂く。断末魔すら上げられず、豚の魔人は
倒れ伏した。

一撃にして勝負ありだった。

甲冑にも似た硬質皮膚が、見事なまでに切り裂かれている。仰向けに倒れたまま、魔人はぴくり
とも動かなかった。

「ふう」

小さく息をついて、美少女騎士は朋美のほうに歩み寄る。

「もう大丈夫だから」

と、無表情に告げた。
間近で見ると、同性の朋美でさえ息を飲むほど美しい少女だった。
氷のように凛として、近寄りがたい聖性させ感じさせる。
エルシオンの美貌には一点の曇りもなかった。
どこまでもクールで、どこまでも無機質だった。

「立てるかしら?」

差し伸べられた手をつかみ、腰を浮かせる。立ち上がろうとして、朋美は股間に鈍い痛みを感じ
た。

「痛い……」

エルシオンの瞳が彼女の股間に向けられる。
太ももからは赤い血が伝っていた。
朋美が、あの怪人に純潔を奪われた証だ。

「──ごめんなさい」

美少女騎士がつぶやくのを、朋美は確かに聞いた。
それは、もしかしたら無意識の言葉だったのかもしれない。
だが少女は確かにつぶやいた。
クールな美貌は崩さないままで。
おそらくは、痛恨の思いを込めて。

「守れなくて……ごめんね」

と、そのときだった。
朋美の視界をピンク色の軌跡が横切る。

「っ……!?」

同時に響いたのは、声にならない苦鳴。
鮮やかなピンク色の触手が、美少女騎士の体に巻きついていた。

「これ……は」

朋美とエルシオンが同時に振り返る。

「へっ、油断しやがって」

倒れたはずのカマプアアが立ち上がっていた。甲冑のような皮膚は亀裂だらけで、青緑色の体液
があちこちから流れ出している。
大きく開いた口からはピンク色の舌が伸び、触手状に変化して少女騎士の体に巻きついていた。

「不意打ち、か」

エルシオンが小さく舌打ちする。

「まさか、卑怯者とでも言いたいんじゃないだろうな」
「不意打ちしか能がないのね」

少女はひるまない。
冷然とした瞳をまっすぐに怪人へ向ける。

「強気な台詞もいまのうちだぜ。俺の本領はこれからだ」
「本領?」
「俺の舌は特殊な体液を分泌できる」

見れば、舌先から白濁した粘液が滲み出していた。濃厚な体液が、神聖騎士のバトルコスチュー
ムを濡らし、汚していく。

「その能力は──」

カマプアアが得意げに笑った。

「媚薬効果さ」





神聖騎士エルシオン──月読瞳子(つくよみ・とうこ)は唇をかみ締め、カマプアアをにらみつ
けた。

──ぎりっ、ぎりっ。

正義のヒロインとはいえ、普段はごく普通の高校二年生である。肉体的な耐久度は一般的な高校
生と大差ない。

「う、くっ……」

華奢な体を強烈に締め上げられて、苦鳴が漏れた。
魔人の舌は強固なロープとなって、エルシオンを拘束している。

(油断した……!)

瞳子は心の中で舌打ちした。

魔人の中には、信じられないほどの生命力や再生能力を有する個体もある。彼女とて、今までの
戦いの経験から承知していたことだった。長剣で一刀両断にしたくらいで、勝ったつもりになった
わけではない。

だが……一瞬、意識が逸れてしまった。魔人によって犯され、乙女の純潔を奪われた少女を目に
して、ショックを抑えきれなかったのだ。

(あたしのせいだ)

自分の無力さが悔しかった。

もう少し早く駆けつけていれば、彼女を救えたかもしれないのに。

「動けないらしいな、小娘。反撃開始といかせてもらうぜ」

舌を伸ばしているせいか、豚の魔人はくぐもった声で笑った。舌の先端が目の前に突きつけられ
た。先端部からはミルク色の粘液が滲み出ており、生臭い匂いが鼻をつく。

(気持ち悪い……)

瞳子はかすかに眉をしかめた。


どろり……


汚らしい粘液が白い衣装の上に垂れ落ちる。

「くっ……」

相手が液体では防ぎようがない。

媚薬体液は、白いバトルコスチュームの隙間から染み込んできた。さらに青色のボディスーツを
も透過し、彼女の裸身に到達する。
素肌にヌルヌルとした感触があった。

「媚薬体液は肌の上から、体内に染み込んで効果を発揮するんだ。すぐに気持ちよくなるぜぇ。自
分からハメてくれってお願いしちまうくらいにな」
「誰がお前なんかに。笑わせないで」

美少女騎士が鼻を鳴らした。
たとえ媚薬を用いられようと、こんな醜い怪物に身を任せるなどあり得ない。
まして瞳子はバージンだ。
純潔な乙女のしるしを、憎むべき怪物に捧げるはずがなかった。

「気が強いねぇ。それでこそ堕とし甲斐があるってもんだ」

(どうにかして拘束を解かないと……)

瞳子は思考をめぐらせる。
背後に控える相棒の少女に視線を向けた。
彼女……日高蛍(ひだか・ほたる)はもう一人の神聖騎士だ。当然、彼女にも魔人と戦うだけの
能力がある。

だがエルシオンが捕らえられているため、うかつに手を出せない状態だった。明るい顔を緊張気
味に引きつらせ、動向を探っている。

と、全身を縛りつける舌がもぞもぞと動いた。胸元の締めつけが強くなり、豊かなバストが上下
に揺れる。

「オッパイもでかいじゃねーか。何カップなんだ、ん?」
「下品な……!」

エルシオンが唇を噛む。

舌の先端が延びてきて、バトルコスチュームの上から乳房の頂上部に触れた。

「んっ……あ!」

瞳子は思わず声を上げた。
服の上から乳首を擦られ、甘い痺れが走る。

「感じやすいねぇ!オッパイ触られるのが気持ちいいのかよ」

エルシオンは火を噴くような瞳で、下劣な魔人を睨みつけた。
睨みつけることしかできなかった。

(この戒めを解いたら、たたき斬ってやる)

強い闘志を視線に込めて、たたきつける。媚薬体液がしみ込んだコスチュームは、時間が経つに
つれ重くなっていった。


──ふいに、少女の感覚に変化が起きる。


「っ……!」

引き締った下腹部……股間の奥が火照りはじめたのだ。

かすかな熱は次第に高まり、肌に汗をにじませる。欲情の炎が股間から四肢に向かい、伝わって
いく。

「顔が赤いぜ、正義の戦士様」

カマプアアが豚の顔を醜くゆがめた。
笑っている。
正義のヒロインらしからぬ風情を嘲笑している。

「くぅ……んっ……!」

呼吸が荒くなってくる。
首筋が汗でびっしょりと濡れ、蒼色のロングヘアが何本も張り付いていた。

「気持ちいいのか?まさか、戦いの最中にヨガってるのか?」
「馬鹿なことを言わないで──ああっ……」

抗弁しかけた唇から甘い吐息が漏れた。
きつく瞼を閉じ、湧き上がる快楽から意識を逸らそうとする。
怪人はここぞとばかりに哄笑した。

「さっきまでの威勢はどうした?んん?」
「うう……くっ……」

唇をかみ締めて、必死で声を押し殺す。
性器の内部で、熱いものが蠢いているような感覚だった。痒みと痺れの中間のような、甘美さ。
そして心地よさ。

いくらバージンとはいえ、彼女にもそれが性的な興奮だということは分かる。
気を抜くと、喘ぎ声が漏れてしまいそうだった。怪人の前では死んでも言いたくないが、気持ち
がよかった。

ひとりでに内ももを擦り合わせてしまう。
まだ男を知らない秘唇がほころび、その奥から熱い樹液がこぼれてくるのが分かる。


濡れていた。


(敵を前にしながら、何てはしたないの……!)

自分で自分を叱咤するが、一度火がついた体は反応を止めてくれなかった。
もしこの場に誰もいなかったら、今すぐ股間を弄り、自慰を始めているかもしれない。
ずきん、ずきん、と瞼の裏が脈打つようだった。
背筋を甘い陶酔感が駆け上っていく。

「そろそろ頃合いか」

怪人の手が、バトルコスチュームの下腹部に伸びた。

「あっ……見ないで!」

瞳子は思わず悲鳴を上げた。
股間の状態は分かっている。

今、怪人に見られたら──
だが拘束されている状態では、抵抗のしようがない。
カマプアアは可憐なミニスカートの裾をつかみ、ゆっくりと捲り上げる。少女騎士の心をいたぶ
るように、一センチ刻みで少しずつ持ち上げていく。

「駄目……見ないで……」

可憐な唇から淡いため息が漏れた。
が、その願いも空しく……
やがて蒼いボディスーツに覆われた股間があらわになる。

「ははははは、ビショビショじゃねーか!お漏らししてるみたいだぜ、正義の騎士様」

布地を変色させるほど、股間に大きな染みができていた。
瞳子自身が分泌した愛液だった。
羞恥心に頬が熱くなる。
口ではどう言おうと、態度にどう表そうと──
これこそが、快楽を覚えていた証拠に他ならない。

「う、うるさい……!」

エルシオンは潤む瞳で、それでも気丈に怪人をにらみつける。
絶対に屈しない。
鋼のごとき意志を込めて──

少女騎士の美貌には、珠のような汗が浮かんでいた。じん、じん、と下腹からは、途切れること
なく熱い快楽の渦が湧き上がる。
魔人の媚薬体液は想像以上に、無垢な乙女の体を蝕んでいた。

(戦闘能力ならこんなヤツ、敵じゃないのに)

エルシオンのマギ数値は七万二千。
対するカマプアアは一万そこそこ。
マギの数値が戦いの全てを決するわけではないが、それでも正面から立ち会えば、エルシオンが
圧勝するだろう。

(なのに隙を見せて、追い込まれてしまうなんて──)

自分のうかつさに唾棄したい気分だった。

「突っ張ったって無駄だぜ。もっと気持ちよくしてやる」

骨太の指が股間を撫で回した。
蒼いボディースーツは、ちょうどレオタードのような形をしている。
カマプアアはエルシオンの顔を得意げに見据え、にやりと笑った。ミニスカートをまくり上げ、
露出した股間をぐい、ぐい、と押し込んでくる。下腹部の布地が大きくへこみ、ぐちゅ、と水っぽ
い音が響いた。

「うっ……!」

瞳子は紫色の目を細めて、うめく。
敏感な秘処を思いっきり押されて、痛みが走ったのだ。

「おっと、処女相手にキツかったかな」

指のタッチが幾分、優しくなる。
ボディスーツの上から、割れ目をなぞるようにしてさすってきた。


……ぐちゅ、ぐちゃり……じゅく、ちゅくっ……


時に強く、時に優しく。
蒼い布地の上から秘裂を撫で、こすられる。

「くぅっ……!」

感じやすくなっていた性器はほんのわずかな刺激にも敏感に反応する。ぴったりと閉じていた秘
唇が左右にほころんでいくのを実感した。
絶妙な緩急をつけた愛撫に、瞳子は熱い喘ぎをこらえきれない。

「ああ……」

指の腹をつかって、クレヴァスの上から下までを何度もなぞってくる。布地の上から、性器の上
部に位置する花芽を探り当てられた。

「くっ……うっ!」

形の良い眉を寄せて、瞳子がうめく。

敏感なクリトリスは指の刺激と媚薬の効果で、すでに充血しきっていた。ボディスーツの上から
ほんの少し触られただけだというのに、下肢に甘い痺れが走り、頭の中が真っ白になる。

「はあ……はあ……はあ……」

首を左右に振り、意識を保とうとする。
蒼いロングヘアが振り乱れ、汗の珠が飛び散った。
股間を責められている間も、カマプアアの媚薬体液は休みことなく分泌され、美少女騎士の全身
に浴びせられていく。蒼いロングヘアから凛々しい美貌までが、スペルマそっくりの白濁液に汚さ
れていく。

「うっ……あんっ……」

紫の瞳が涙で薄くにじんだ。
体の芯を貫く、火傷しそうなほどの快感。瑞々しい太ももが震えて止まらない。

「相当気持ちいいらしいな。媚薬を使ってるとはいえ、たいした乱れっぷりだぜ」

ごつごつとした手が豊かなバストを鷲づかみにした。
拘束されている状態では防ぎようがない。乙女の乳房に五本の指が食い込んだ。乱暴に揉みしだ
かれ、胸の芯に甘い電流が走る。

バトルコスチュームの裏で敏感な先端が尖りはじめた。醜い魔人の愛撫を受けて、正義のヒロイ
ンの乳首が勃起する。

「く、薬のせいよ!そうじゃなければ、お前なんかに!」

瞳子は声を高ぶらせた。卑怯な手段で、乙女の痴態を無理やりに引き出している下劣さが許せな
かった。

「遠慮することはないぜ。思いっきりヨガればいい」

カマプアアが耳元で囁く。

「こうやって布越しにオマ×コ触るだけじゃ、すぐに飽き足らなくなるだろうけどな」
「なんて……下品なのっ……ううっ」

そのとき視界にもう一人の少女騎士が映った。

(ジュデッカ……!)

二人の視線が重なり合う。
幾多の修羅場を潜り抜けてきた相棒との、アイコンタクト。この状況を打破するためには、魔人
の隙を突くしかない。
カマプアアの生殖器官がミニスカートを押し上げ、レオタード状の股間に触れた。

「あ……」

柔らかな布地を通して、熱く堅い切っ先を感じ取る。布一枚を隔てているとはいえ、生まれて初
めて触れる男性器に、瞳子は軽く喘いだ。

「そろそろブチこんでやろうか、へへ」

カマプアアが下品に笑い、腰を押し上げた。


──ぐちゅっ……


ボディスーツが押し込まれ、秘唇がわずかにへこむ。

だが──それだけだった。

「くっ、スーツが邪魔でブチこめねぇ」

「神聖騎士のバトルコスチュームは、あたしたち自身のマギで保護されている。お前ごとき下位の
魔人じゃ破れない」

瞳子が冷然と告げる。

「くそっ」

魔人はなおも腰を押し上げるが、処女の膣孔をほんの少し窪ませるのが精一杯だった。

「入らないならしょうがねぇ。これで我慢してやるよ」

挿入を諦めたのか、カマプアアは動きを変化させた。
押し込む動きから、擦りつける動きへと──ペニスの先端部でスーツ越しに秘唇の割れ目を上下
になぞる。
いわゆる素股の状態だ。
両手で細腰をつかみ、上下に揺すりたてる。
触手で拘束されたままの、擬似的なセックスだった。
粘液にまみれた剛直が美少女騎士の股間をこすり、湿った摩擦音が淫らに響く。

「あっ……んんっ……!」

エルシオンは甘い吐息をついた。くすぐったいような、軽く痺れるような感触が無垢な性器を襲
っている。

「はあ……はあ……はあ……」

意識が、桃色の霞に染まっていく。

「どうだ?欲しくなってきたか」

カマプアアが調子に乗って、腰のピッチを上げる。そのたびにクレヴァスを上下にこすられて、
快感が高まっていく。
背筋にジン、とした陶酔が駆け抜けた。

「はぁぁぁぁっ……!」

さすがの誇り高きヒロインも、抑えきれずに甲高い嬌声を漏らしてしまう。

「い、入れて……」

屈辱を噛み締め、瞳子が告げた。

豚の顔がだらしなくにやけた。


──とうとう、正義の騎士を屈服させてやった──


勝ち誇る気持ちをあらわに、少女の顔を覗きこむ。

「あん?いま、なんて言った?」
「もう我慢できないの……あたしの中に……入れてください」
「挿れるったってよ……」
「あ、あたしがマギの力を抑えれば……あんっ……コスチュームの防御力が落ちる。あなたの力で
もスーツを破って……んんっ……挿入できるはずよ」

熱い喘ぎ声を漏らしながら瞳子が説明する。
正義の戦士である自分が──悪の魔人にセックスを懇願すること自体が、耐え難いほどの屈辱だ
った。
恥辱と悔しさで、目の前が真っ赤に染まる。


こんなヤツに。
こんなヤツに。
こんなヤツに。
こんなヤツに。


激しい怒りが美少女騎士の全身を震わせる。

「なんだ、もう降参か?」
「だって……あなたの指が、気持ちよすぎるもの……」

本当なら死んでも言いたくない台詞だった。
勝つためだった。
たとえ誇りが泥にまみれても。
たとえどれほどの屈辱を味わっても。
神聖騎士は勝たなければならない。
世界にたった七人しかいない、正義のヒロインのひとりとして──

「くくく、よーしよし。今、俺さまがお前をオンナにしてやるからなぁ」

魔人が股間に手をやり、いきりたったモノを引っ張り出した。
巨大な陽根は赤ん坊の腕ほどの太さがある。処女の身で受け入れるには、きつすぎるサイズだっ
た。

「入れちまうぞ!入れちまうからな!」

豚の鼻から、興奮の息遣いが漏れた。

先走りの液でヌラヌラと濡れている亀頭を少女の下腹部に近づける。ぬちゅ、と秘唇の入り口に
肉の切っ先が接触した。

「とうとう正義のヒロインの処女をぶち破れるってわけだ、くくく」

魔人の意識は完全に、エルシオンへと向けられていた。
少女は、紫の瞳を見開いた。

(今よ、ジュデッカ!)

心の中で相棒に合図を送る。

以心伝心──
思いはジュデッカにも伝わり、すぐさま行動に移した。

「第二段階マギ開放!」

背後から明るく澄んだ声が響く。
栗色の髪の少女は、すでに『変身』を終えていた。
金色に縁取られた純白のローブと、赤を貴重としたボディスーツ。騎士というよりも司祭を連想
させるシルエット。栗色の髪が光沢のある紅へと、薄茶色の瞳が淡い青へと、それぞれ色彩を変え
る。

そして両手に構えているのは、美しい曲線を描く弓。
もうひとりの美少女騎士──ジュデッカを中心にして、オレンジ色のオーラが爆発的に広がる。

「な、なんだと?」

カマプアアが驚いた様子で振り返った。
種族が違うとはいえ、男の悲しさ。やはり乙女の純潔を奪えるとあって、意識が逸れていたのだ
ろう。
ジュデッカは期待通り、その一瞬の隙を見逃さなかった。

「いっけぇぇぇっ、ブレイズキャノン!」

かまえた弓から──巨大な炎の矢が放たれた。


朋美の目の前で、逆転劇は鮮やかに起きた。


──ごおおっ……!


ジュデッカの放った火矢が、カマプアアの舌を焼き払う。白濁の体液をまき散らしながら、魔人
の舌が吹き飛んだ。
縛りつけられていたエルシオンが開放され、地面に倒れこむ。

「き、貴様っ……」

魔人は怒りに燃える瞳を、紅の髪の少女騎士に向けた。

「神聖騎士ジュデッカ、だよ。わたしのこと、忘れちゃ困るなー」

ジュデッカはにっこりと微笑み、巨大な弓を構えなおす。戦場にはおよそそぐわない、にこやか
な笑みだった。

「この力……爆炎系のマギ使いだと……!」

全身が焼け焦げたカマプアアは、弱々しくその場に膝をついた。

「終わりね」

エルシオンが黄金の剣を掲げた。
純白のバトルコスチュームに包まれた肢体から、青白いオーラが吹き上がる。大気が爆発し、衝
撃波となって放射される。

「第二段階マギ開放──」

刀身から無数の氷が吹き上がった。
圧倒的な凍気が周囲の熱を奪い、竜巻を巻き起こす。
氷の嵐は龍のように身をくねらせながら駆け上がった。
激しい風の中で蒼色のロングヘアをはためかせながら、美少女騎士は凛とした声で叫ぶ。


「ジャイロブラスト!」


そして──天空から氷嵐が降り注いだ。
無数の氷群をともなった竜巻が魔人を包み込む。
氷の刃が硬質皮膚を切り裂き、竜巻の衝撃が巨体を砕く。

「ぐっ……おおおおお……!」

か細い苦鳴が、虚空に飲み込まれていく。氷の竜巻に飲み込まれた魔人は全身を切り裂かれ、爆
散した。

──後には、肥満の男が倒れているだけだった。

魔人の姿はどこにもない。
いや──元に戻ったのだろうか。
男の側には小さな珠が転がっていた。虹色の光を放つ、野球のボール程度の大きさの珠が。

「回収完了、ね」

エルシオンは虹色の珠を拾い、つぶやいた。
と、

「瞳子ちゃん!」

ジュデッカがエルシオンに駆け寄った。

「よかったー、瞳子ちゃんのバージンが無事で〜。本当に犯されるかと思っちゃった……」
「あたしがあんなヤツに体を許すわけないでしょう」

エルシオンが冷ややかに告げる。

「それと、こういう場所では名前を呼ばないで、ジュデッカ」
「あ……つい」

紅髪の美少女騎士が悪戯っぽく笑い、頭をかいた。

「えへへ、ごめんね、とう……じゃない、エルシオン」
「まったく」

クールな美貌をしかめ、軽く睨みつける。

「あの……あなたたちって何者なの?」

朋美がおそるおそる話しかけた。
自分を犯し、バケモノに変化した男──
そして正義の騎士に『変身』し、超常の力でそのバケモノを倒した二人の少女──

まるで、夢を見ているような気分だった。
だが、紛れもない現実だ。
股間の奥に残る熱い感触と、セックスの余韻が──
これは現実なのだと、朋美に告げている。自分は怪物に汚され、初めての証を無くしたのだと告
げている。

「ごめんなさい。その質問には答えられないの」

エルシオンが首を振った。

「えへへー、正義の味方は正体を隠すのがデフォだから」

ジュデッカが明るく笑う。

「あたしたちの正体は誰にも知られてはならない。目撃者を残すわけにはいかない」

蒼い美少女騎士が冷然と告げる。

「ど、どういうこと……?」

「マギ第一段階開放」

エルシオンは、朋美の質問をさえぎるように告げた。
すらりとした手がゆっくりと朋美に伸びる。呪文らしきものをつぶやくと、白いグローブに覆わ
れた手の先が淡く発光した。

「え、な、なに……なんなの」

慌てる朋美の意識が、ふいに灼熱する。頭の中に真っ白い光が炸裂するような感覚だった。

「今夜のことは全て忘れて」

エルシオンが告げる。
神秘的な紫の瞳が、朋美をまっすぐに見つめていた。

「あたしたちのことも。怪物のことも」

目の前の景色がぐにゃり、と歪む。
二人の美少女騎士の姿が蜃気楼のようにかすんで見える。
股間の痛みさえも薄れ、消えていくようだ。

「忘れなさい」

エルシオンがもう一度告げる。
同時に、朋美の意識が弾け、目の前が真っ暗に染まった──



【魔人カマプアア編・終わり】






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