まぞが島物語 運命が連れてきた少女
シチュエーション


今から22年前の夏。
一人の少女がまぞが島の港に着いた。
赤いリボンが着いた黄色い麦わら帽子、レモン色のワンピース、赤い靴。
白い大きな旅行カバン。
透きとおるような白い肌、なめらかな黒髪、大きく澄んだ瞳。
あどけなさが残る顔に不釣り合いな憂いのある表情が、少女を少し大人に見せている。

少女の名はアヤ。
この夏に15才になったばかりだった。

アヤは本土で両親と何不自由なく幸せに暮らしていた。
しかし、1ヶ月前に両親を事故でなくしたため、唯一の身寄りである祖母を頼ってこのまぞが島にやってきたのだ。
アヤは南の浜で一人暮らしをしていた祖母に引き取られ、まぞが島の中学校に通うことになる。

美少女揃いのまぞが島でもアヤの美しさは飛び抜けていた。
その本土育ちの垢抜けた物腰と可憐な仕草で、アヤは人気者になっていった。
そして島にも少しずつ慣れ、友達もできて、アヤは再び幸せを取り戻した。
まだ片想いで気持ちを伝えることは出来なかったが、将晃という初恋の同級生もできた。
ただ将晃の方もアヤに恋しており、このままなら二人は幸福な青春を過ごすはずだった。

しかし中学卒業を前にして、アヤは進路になやむことになる。
ほとんどの同級生は島を出て本土の高校に進学するか就職していく。
アヤも他の友達と一緒に島を出たかった。
だがアヤの祖母は高齢と持病のため一人にしておくのは難しい状況だった。

ある日、親友のクミが話しかけてきた。

「アヤは進路どうすんの?」
「島に残ろうと思うの。おばあちゃんの体わるいし・・」」
「えっ。もったいないよ。アヤは成績も一番だし」
「でも、おばあちゃんがかわいそう」
「絶対出た方が良いよ。へんな噂もあるみたいだよ」
「何なの?噂って」
「なんだか詳しくは知らないけど、この島の娘、17才になると変な伝統行事させられるんだって」
「伝統行事?」
「うちのお母さんに聞いたけど、教えてくれないからこれ以上知らないよ」

結局アヤは島に残り、港の雑貨屋に勤め始める。
島一番の美少女がいると聞いて、多くのお客達が連日訪れ、店は大繁盛した。
アヤは清楚な雰囲気と明るい性格で、店主にもお客の誰からも好かれた。
アヤを明るくさせたのは将晃の存在だった。
家業を継いで漁師となった将晃も島に残ったのだ。
以前と同じように毎日顔を会わせている二人だったが、少しずつその距離は近づいていった。
そして二人の周囲もそれを暖かく見守っていた。

しかしそれを快く思っていない男がいた。

網元の源三である。
源三の不満は、アヤが家業である海女を継がないことと、将晃の存在。
源三は30才を過ぎた頃で網元を継いだばかりだった。

「このままじゃいかん」

源三はアヤが留守の時を狙い、こっそりとアヤの家を訪れ祖母に詰め寄った。

「アヤは雑貨屋で仕事してるがそれじゃダメだ。あんたの家業の海女を継がせるべきじゃ」
「島の伝統じゃ。雑貨屋辞めさせて海女をやるのが筋っちゅうもんじゃ」
「わしの言うことがわからんのか?ダメなら島を出てくはめになるで」
「アヤのことはわしに任せておけ。悪いようにはせんから」

源三の試みは成功し、病気と高齢で気弱になっていた祖母は、仕方なくアヤの説得をしなければならなかった。
そして祖母の話を受け入れ、アヤは雑貨屋を辞め海女になることになる。
アヤはその時、16才になっていた。

アヤは海女が嫌だった。
いや、海は好きで仕事自体に抵抗はなかった。
ただ問題なのは、褌ひとつになることである。

なぜ彼女たちは恥じらいもなく、あんな淫らなスタイルで外にいるのか。
褌ひとつで男性の前でも平気でいられるその感覚が理解できなかった。

そしてアヤは中学の時のスクール水着で海女を始めるようになる。
胸もお尻もかなり窮屈になっていたが、どうにか使うことが出来た。
他の海女達は30才を越えた女達だったため、アヤを子供のように思い可愛がった。
水着を着ていることについても「やっぱり若いから嫌じゃろうな」「ええよ。そのままで」と干渉しなかった。

しかしそれを快く思わないのが源三だった。
源三はアヤの裸体が見たかったのだ。
これでは海女にさせた意味がないと思った。

源三はアヤには直接言わず、またもや祖母に詰め寄った。

「なんじゃ、あの格好は?島の海女をバカにしとるで」
「仕事の厳しさがわかっとらん」
「島の伝統じゃ。大切なことじゃで、これは」
「褌を着させるんじゃ。わしが特別にあつらえた褌をな!」

ただ源三は自分からの要望だと、アヤに言わないように口止めした。
アヤに嫌われるのをおそれたのである。

その夜、祖母はアヤに特製の褌を渡し、これを来て仕事をするよう懇願する。

「これを着るの?」
「頼む。婆の最後の願いじゃ。堪えてくれ」

祖母が土下座で頼む姿を前に、アヤはそれを着るしか残された道はないと悟った。

島の海女の褌は、全て自分たちで作る。
女性用の褌を市販してるわけがないので、それぞれが思い思いのデザインになる。
多いデザインはかすりの着物を切ったタイプ。
下腹部も尻もすっかり被う物だ。

しかし、手渡された褌はアヤが初めて見るデザインだった。
腰ひもは麻縄、陰部を被うのは手ぬぐいを切った薄い物。その布も極端に小さく細い。
尻の部分も腰ひもから麻縄が結びつけられてそれが股間の部分で布につながっている。
これでは、後ろから見たら丸裸だし、前から見ても陰部のみを隠しているに過ぎない。

部屋で一人になり裸になり褌を身に着けたアヤは困惑した。

(絶対やだわ!これじゃ裸そのものじゃないの!)

鏡に映っている自分を見る。
そこには麻縄の褌をくい込ませて困惑している淫らな変態女がいる。

(こんなの・・私じゃない・・)

ビキニの水着さえ着たことがないアヤにとって、それは屈辱以外のなにものでもない。

しかし、年老いた祖母を苦しめることはできなかった。

(お母さん・・)

アヤは今際の際の言葉を噛みしめた。

「アヤちゃん・・これから辛いことがあるかもしれない・・でも負けちゃだめ・・強く生きるのよ」

翌朝、アヤはその褌を身につけ家を出た。
誰かに見られたらどうしよう・・逃げ出したい・・その気持ちを抑えて、浜まで歩いた。

「やあ、おはようアヤ。ええ格好だで」

待っていたのは源三だった。

「・・おはようございます・・」

顔から火が出るほど辛く恥ずかしい瞬間だった。
よりによって、裸を最初に見られたのが網元の源三だとは、アヤは自分の不運を恨んだ。
アヤは源三を生理的に受けつけなかった。
弛んだ顔、だらしない体型、ギラギラした目、源三の全てに嫌悪感を感じていた。

(やだっ!見てる・・私の胸・・あんまり見ないで・・でも恥ずかしがっちゃダメ・・気にしないようにしないと)

アヤは両手で胸を隠したい衝動を必死で堪えて、無理に笑顔を作った。、

「お婆ちゃんに、これにしなさいって言われたんです」
「そうかそうか、アヤはばあちゃんの言いつけを守るよい子じゃな」

源三はアヤの両肩に手を置き、その肌を愛でるように撫でる。

(やめてっ・・さわらないで)

ビクンと反応する。

「すみません・・私、急がないと、みんな待ってますから」
「おお!そうじゃな。仕事じゃったな」

源三はアヤの肩から手を下ろす際わざと指先で、その初々しい乳首をかすめる。

「あぁっ!」

またピクンと反応する。

「すまん、すまん。じゃがアヤは感じやすいようじゃの。かわいいのう」

そう言うとアヤの背後に回った。

「白い尻じゃのう。つきたての餅のようじゃな」

源三は島の海女達とは違う、雪のような裸身を視姦して楽しんだ。

(あと一年か。このうぶな肉体を堪能できるまで。待ち遠しいのう)

それからのアヤはその褌で仕事をするようになった。
アヤは恥じらいを他人に悟られることがないように、気丈に明るく振る舞った。
アヤにとって、恥じらいを知られることは、自分の弱さを知られることで、母の遺言に背くことだった。

その噂は島中へ瞬く間に広がる。

「雑貨屋で働いていたアヤが海女を始めたそうだ」
「褌ひとつで海に潜っとるらしい」
「褌とは名ばかりでほとんど裸だそうじゃ」
「あんな形の良いおっぱいを拝んだのは初めてじゃ」
「海から上がった時に会うたが、褌から毛が透けとったぞ!」
「そりゃぜひとも見なきゃならんな」

いつの間にか浜には大勢の男達が集まるようになった。
最初は遠慮がちに遠巻きで・・そして次第に図々しくなり近づいて話しかけるようになる。

アヤが海から上がると、悲惨な光景が毎日見られるようになった。
一人の男がアヤに近寄って世間話を始める。
その話に軽く受け答えをしていると、別の男が近寄ってきて話し始める。
いつの間にかアヤは十人以上の男達に囲まれて身動きができなくなる。
男達の視線は犯すようにアヤの全身をなで回す。
前にいる男達はその張りのある胸をチラチラ見るだけだ。
さすがに凝視する勇気はない。
だが背後に回った男の中には、アヤに気づかれないように尻に顔を近づける者もでてくる。
さらに、陰茎を取り出しこっそりと処理をする者までも。

しかし彼らはアヤの身体に指一本触れることは出来なかった。
それは、17才になって源三が手を着けるまで触ってはいけないという、島の掟があったからである。

アヤは毎日のように、島中の男達からその裸身を視姦され続けた。
島一番の美少女は、その美しさと家族思いの気持ちが災いして、醜悪な性欲の対象になりはてていた。

年寄りから少年まで、島のあらゆる男達にアヤはその肉体を晒さなければならなかった。
恥辱に耐える日々が続く。
だが、アヤはそれを臆面にも出さず、明るく笑顔で応対した。
家に帰っても祖母に恨み言の一つも言わず、以前にもまして優しく接して、家事を受け持った。
全ては、亡くなった母の遺言を守るために。

だが島の男達の中で一人だけ、その輪の中に加わらない男がいた。
将晃だ。
将晃はつとめてアヤに近寄らないようになっていた。

将晃は、アヤが海女を始めた、という噂を聞いた時に一度だけ近づこうとしたことがある。
アヤの真意を聞いて、それを止めさせるつもりだったのだ。
しかし、その情景を見て将晃は愕然とした。
アヤは大勢の男達に囲まれ、裸身を視姦されているにも関わらず、笑顔でいたのだ。
男達の卑猥な視線に喜び、淫らに笑う、以前と違うアヤがいた。

(僕の知っている清純なアヤはもういない)

結局、将晃はアヤに話しかけることなくその場を立ち去った。

その時、アヤは将晃を見つけていた。

(将晃君・・!助けてっ!行かないでっ!)

男達と談笑しながら、視線は将晃を追っていた。

(将晃君・・!私を軽蔑してるのね・・嫌われちゃったんだ!)

もしこの時、将晃が「止めろよ」と言ったなら、アヤは海女を止めていたかもしれない。
しかし二人はその機会を逃してしまった。

二人がその後出会い、誤解を解くまで数ヶ月を要した。
ある日、立ち寄った雑貨屋で、二人は偶然再会した。
どちらからでもなく、二人は歩き出し、浜辺に座り話し始めた。
最初ぎこちない雰囲気ではあったが、徐々にうち解けていった。

「その服、可愛いね」
「うれしい。賞めてくれて。これお給料で買ったの。」

アヤはその時、水色のワンピースを着ていた。

(なぜ、将晃君は私の裸を見ないの?嫌いなの?)

笑顔を続けながらアヤの心境は複雑だった。

(他の人たちはみんな私の裸を知ってるのに、大好きなあなただけが知らない)

「アヤは幸せ?」
「幸せよ・・あなたと今一緒にいるもの・・辛くはないわ」
「海女・・止めろよ」
「ありがと・・でも・・もう無理みたい・・おばあちゃんとの約束だし・・」

アヤの目には大粒の涙が浮かんでいた。
両親が亡くなってから初めて流す涙だった。
泣かない・・強くなるんだ・・そう自分に言い聞かせて、封印した筈の涙だった。
アヤは将晃の肩に頬を載せて,ささやかな幸せを噛みしめていた。






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