まぞが島物語 戸惑いの午後
シチュエーション


木陰を歩いている間にミサの汗は引き、肌寒ささえ感じていた。
かすかに身体が震え、鳥肌が立った。
しかしそれは寒さのためだけではなかったのかもしれない。

大きな瓦屋根がある正門の所まで来ると、すでに頑丈な門は開いていた。
そこには白い着物姿の老婆が待ちかまえていた。
老婆はシミだらけでしわくちゃの顔としわがれた声で出迎えた。

「お帰りなさいましぇ。旦那様」

そしてミサの裸身を頭の先からつま先まで、品定めをするように流し見た。

「ミサしゃんじゃな。これからめでたい儀式じゃ。しっかりとお勤めするんじゃよ」

シワの奥に隠れた目が鋭く光ったように見えた。

「それじゃ、ワシは奥座敷で支度して待つからの。トメ婆さん、儀式を頼むぞ」

源三はそう言うとミサの両肩に手を置いて続けた。

「ミサ、なんにも心配することはないぞ。ワシに全てを任せるんじゃ。昔の母ちゃんみたいにな」

源三の股間はすでに膨張していた。

(17年間待ったんじゃ。今、目の前にその娘がいる。至福の時がそこまで来ているんじゃ)

ミサの気持ちなどお構いなしに源三は自分の肉欲が満たされることに喜びを感じていた。

「さて、まずはお清めの儀式からじゃ。婆に着いてきなしゃれ」

源三が屋敷の中に消えていくと、トメは庭の東側にミサを案内した。
広い庭の東南角、そこには楠の大木の影に隠れるように小さな社と古びた井戸があった。

ミサは小さい頃ここに来たことを思い出した。

(あれは日照りが続いた夏だったわ。島中が水不足で困ってて、この井戸からお水をいただいたわ)

小さな島、まぞが島では生活用水の確保が何にもまして重要な問題である。
まぞが島の歴史書にも記されているとおり、古来から島の各地に井戸がいくつも掘られたが、
この屋敷の井戸だけは、どんな干ばつの時にも涸れることなく豊富な水を供給していた。
そのため神聖なる命の井戸として、島人たちの信仰を集めていた。
源三の一族が代々網元として、揺るぎない権力を保てたのもこの井戸の存在に起因する。

「さあミサしゃん、その褌を脱ぎなしゃれ。素っ裸になるんじゃ」

トメはぶっきらぼうに命じた。

「え?・あの・・私、お誕生日の儀式だとしか知らされていないんです。これから何が始まるんですか?」
「ほう、母様から教えてもらっとらんのか?」
「はい。なんにも・・。母は、私が17才になる前には島を出ようって言ってましたから・・」
「お前たち親子も、この儀式から逃げ出すつもりだったんじゃな」

まるで裏切り者を見るような目でトメはミサを睨んだ。

「逃げ出すだなんて・・引っ越すのは亡くなった父も生前から希望してたんですから」
「それなら何故出て行かなかったんじゃ」
「母が病気になっちゃって・・」
「そうか。出ようにも出れん訳じゃな」

トメは無遠慮にミサの腰ひもに手を伸ばした。

「はい・・私たちこの島でしか暮らせないです」
「ならば、この儀式をきちんと受けて一人前のまぞが島女になるんじゃ」

トメはそう言うと腰ひもの結び目を器用に解いた。

ミサが唯一身に付けていた薄布が足下に落ちた。

「あ!・・いや・・」

ミサは咄嗟に股間を両手で隠す。

まぞが島の海女は褌一つで生活するのは慣れている。
しかし、完全な全裸、女性器を人前に晒すのは固く戒められている。
たとえ同性であっても全裸を見せることはない。それは恥ずべき事なのだ。

「何をするんですか!」

ミサは突然のことに驚き、その場にしゃがみ込んだ。

「うるさいっ!これからお前の肉体は旦那様への貢ぎ物になるんじゃ!」

トメは、地面に落ちた褌をすばやく取り上げる。

「そんな・・貢ぎ物だなんて・・いやです!・・」
「ミサ!口答えなぞ、できんぞ!まずはお清めじゃ!」

トメは井戸の脇にある大きな桶を手に持つと、中にそれを落とした。
しばらくして、水面に落下した桶の音が井戸の下から聞こえる。

「ミサ!さあ、桶を引き上げるんじゃ!」

トメは乱暴に、うずくまるミサの髪を引っ張り、井戸の脇に立たせる。
そして滑車の綱を両手に持たせた。

「ぐずぐずするんじゃねえぞ!旦那様が首長くして待っておられるで!」

「なぜなんですか?こんなことを」

ミサは涙目になってトメを見た。

「なんじゃ!その反抗的な目は!」

トメはミサの美しい尻を、力一杯右手で打ち据えた。

「ああっ!」

一瞬丸い尻が弾んで歪む。
叩かれた肉の音が静かな庭内に響く。

ミサにとって生まれて初めて味わう感覚だった。
ミサは両親の深い愛情に包まれ、島中の誰からも可愛がられて育った。
体罰など受けたこともないし、受ける覚えのあることもしたことがなかった。
それが突然裸にされて、これから貢ぎ物にされるというし、理由を聞くだけで打たれてしまう。
この理不尽な状況に困惑していた。
ミサは、両目をきつく閉じ、綱を両手で持ちながら立ちすくんだ。

「まだわからんのかっ!」

トメはミサの態度に憤り、さらに叩き続ける。

「これでもかっ!これでもかっ!」

トメは往復でミサの尻に何発も平手をあびせる。
くすんだ白髪を振り乱し、その形相はまるで鬼婆そのものだ。

「わ・・わかりました・・水をくみますから・・これ以上打たないでください・・」

ミサは苦痛に耐えかね、トメの命令どおり桶を引き上げ始める。

「重い・・」

たっぷり水が入った大桶は予想以上に重く、ミサの細腕が悲鳴を上げる。
それでも、両手に渾身の力を込めて引き上げる。

「あと少し・・あと少しだわ・・あっ!」

手元まであと1m程というその時、気が緩んだのか手が滑り、桶は再び井戸の奥底に落ちてしまった。

「あぁっ!・・・」
「馬鹿者っ!この根性無しがっ!」

またも容赦のないトメの平手が、ミサの柔尻に飛ぶ。

「ごめんなさい・・かんにんしてください・・」
「ならんっ!身体ばっかり一人前になりおってっ!徹底的に躾けてやるでっ!」
 
ミサの尻は先ほどからの連打で赤く腫れ上がり痛々しい桃のようだ。

「さあ・・もう一度じゃ。今度は両足を踏ん張って力を込めるんじゃっ!」
「・・は・はい・・」

ミサは両足を拡げ膝を曲げて踏ん張った。
全裸の少女にとっては、あまりにも情けなく耐えられない姿だ。
誰にも見られたことのない股間の女性器も、肛門さえも白日の下に晒されている。

「そーれっ!そーれっ!もっと足に力を入れて踏ん張るんじゃ!尻の穴など気にするなっ!」

トメはミサの後方に立って応援とも命令とも思える声をかける。

「いやぁ、見ないでください、はずかしい」

恥ずかしさで力が抜けそうになる。

「しっかりせいっ!また平手を喰らいたいかっ?」
「それは、かんにんしてください」

ミサは恥ずかしさを堪え、さらに両手両足に力を込めた。

数分後、ようやく大桶を井戸の縁に上げることが出来たミサは、それを地面に降ろした。
両腕に力はもう残っていない。

「よくやったで、ミサ。さ、正座をしなしゃれ」

先ほどとうって変わって優しい言葉でトメはミサの頭を撫で、静かに力を入れた。

「は、はい」
「これからこの命の水でお前の身体をお清めするからな。合掌しなしゃれ」
「お清めって・・」

ミサは戸惑いながらその場で正座をし両手を合わせた。
その時、トメは袂の中から荒縄を取りだし、ミサの両手首をきつく縛った。

「あ・・!?」
「逃げ出されると困るでな。念のためじゃ」

力を無くしたミサはもう抗うことはできない。

トメは井戸の傍らに置いてある柄杓を持ち、桶の中の水をすくった。

「ええか?大切な命の水じゃ。心して受けるんじゃぞ」

トメは正座をして手を合わせているミサに、水を浴びせる。
髪、顔、肩、胸、背そして股間に、何度も何度も水をかける。
井戸から引き上げられた水は、氷のように冷たくミサの体温は徐々に奪われていく。
ミサは修業する尼僧のようにその冷たさに耐える。
全身を冷水が包み、流れ落ちる。
まつげの先から水がしたたる
鳥肌が立ち、小刻みに身体が震え、唇が青ざめていく。

「ミサ、冷たかろうな。寒かろうな。じゃが、もう少しの辛抱じゃぞ」

トメはミサに冷水を振りかけながら声をかける。

「もうじき旦那様が、抱いて暖めて下さるからな」

(えっ?私、網元さんに抱かれてしまうの?)

全裸で手を縛られ自由を奪われたミサの不安は、絶頂を迎えていた。






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