まぞが島物語 君想う風
シチュエーション


青い海と白い砂浜の上を真夏の風が渡っている。

一人の少女が長い黒髪をなびかせながら歩いている。
衣服らしい物は着けていない。
身に着けているのは、股間を被う小さな白い褌だけだ。
しかしその姿を恥じているそぶりは見て取れない。

少女の名はミサ。
この小さな島で海女をして暮らしている。
この島の海女は、裸に褌一つで漁をするのが習わしである。
ミサは小さいときから、島の女たちが褌一つで海に潜り、浜を歩くのを見て育った。
彼女にとって褌は当然の姿なのだ。

ミサは午前中の漁を終え、家路についていた。
そこを網元の源三とすれちがう。
源三は五十才半ばの口ひげを蓄えた小太りの男だ。

「おお、ミサ。今、漁の帰りか?」
「網元さん、こんにちは。はい、家に帰るとこです」

ミサは日にやけた屈託のない笑顔をみせる。

「母ちゃんが病気で大変じゃなぁ」
「いえ、少しも辛くないです。私、海が好きだから・・」
「良い心がけじゃぞ!最近の娘は何かと理由をつけて本土に行きたがるもんなぁ」
「私の家、貧乏ですから・・働かなくちゃいけないし」
「本土では、セーラー服だとかミニスカだとかチャラチャラしたかっこうで遊んどるらしいで」
「私、これしか知らないし」

ミサは細い指先で褌の腰ひもを撫でた。

「いやいや。女はそれがいちばんじゃ」

源三はミサの胸のふくらみとくびれた腰、そして股間の布きれを見つめる。
夏の日差しが容赦なく照りつけ、ミサの肉体から汗が流れ出ていた。
白い褌は薄手の生地でできているため、その汗で肌に貼りつき黒い陰毛がくっきりと透けて見える。

源三は舐めるようにミサの裸体を鑑賞したあと、満足そうに口ひげを撫でて言った。

「またおっぱいが大きくなったようじゃの」

「えっ?やだ!」

咄嗟にミサは恥ずかしそうに両手で胸を被う。

源三はミサの隠そうとする手を抑え、胸を凝視する。

「何も恥ずかしがるこたあねえ」
「でも・・」
「村の男衆の間じゃあ評判じゃぞ。ミサ坊のおっぱいに勝るものはねえっ!てな」
「そんな・・みんなそんな変なこと言ってらっしゃるんですか?」
「ああ、胸だけじゃねえぞ。最近とくに体つきが色っぽくなったもんな。いくつになる?」
「今日で17才になりました」
「そりゃあ、めでたい!早速お祝いをせねばならんな」
「えっ?お誕生日のお祝いですか?」
「島の女は17才になったら一人前じゃ。儀式をしてお祝いをするんじゃ」

源三は猫なで声になってうきうきした様子だ。

「これからですか?」
「ああ!これからワシの屋敷で儀式をするんじゃ。ミサも早く一人前になって母ちゃんを喜ばせたいじゃろ?」
「はい・・じゃ、家に帰って着替えてきます。」
「なあにそのままでいい。何も遠慮するこたないで」
「でも・・お母さんに言わなくちゃ・・」
「安心しろ!母ちゃんも、知っとるで!」

源三は黄色い歯をむき出しにしてニヤリと笑った。

源三はさっさと歩き始めた。

「あ・・!」

仕方なくミサは源三に付き従うように追いかける。

真夏の浜辺。
白い浴衣に麦わら帽子の五十年輩の男と
日に焼けた裸身を褌一枚だけで股間を隠した17才の美少女が連れ立って歩く。
まるで主人と奴隷の散歩のように。

二人の行く手から白い自転車に乗った青年が現れた。

「こんにちは。網元さん。それに・・ミサちゃん」

男は最近、島の駐在所に赴任してきた克彦だった。

「やあ、駐在さん。パトロールかね。ご苦労さん」

源三は尊大に答える。

ミサは隠れるように、源三の背後で身を小さくした。
内心は、島の男たちにはない上品さと優しさを持つ克彦に対し、淡い恋心を抱いている。
だが世間知らずなミサは、それを彼に伝えるすべを知らない。
ミサは克彦の額に流れる汗を見ながら、
自分の心に初めて生まれた不可解なときめきにとまどい、無意識に豊かな胸を隠した。

「お二人はこれからどちらへ?」

中年の男と全裸同然の少女が、白昼堂々と連れ立って歩くことなど本土ではあり得ないことだ。
犯罪に近い行為である。克彦は怪訝そうに質問した。

「ああ、これからワシの屋敷で大事な儀式やるんじゃ」

源三はさも嬉しそうに答え、ミサの肩を抱き寄せた。

「でも、網元さん。ミサちゃんは裸じゃないですか。いくらなんでもその姿じゃかわいそうだ。」

知らない土地の風習とはいえ、やはり職務上、一言注意をしなければないられない。

その言葉を聞き、源三の顔色は一変し怒鳴り始めた。

「本土から来たばかりの若造が何を言うとるんじゃ?!島の女は褌一つで十分じゃ。
お前たち本土の人間が、島の神聖な伝統をぶちこわしにしとるんじゃぞ!」

小さい島のことである。
ミサが克彦に好意を寄せていることは、島人たちの噂で、源三もうすうす知っていた。
しかしそれは源三にとって耐え難い屈辱であり、腹立たしい出来事だった。

この島の名は、「まぞが島」・・日本海にある孤島。
連絡船も一ヶ月に一度あるかないか、という現代社会から取り残された秘境。
まぞが島の人々は海女漁を中心に細々と生計を立てている。

まぞが島での絶対権力者は、数百年前から代々網元を受け継ぐ一族だ。
源三はその当代の当主。島の領主のような地位を持っている。

とはいえ、近代化の流れを彼一人の力で押し止めることは出来ない。
ここ十数年の間、この取り残された島も行政改革の名の下に少しずつ変化が現れていた。
そのため急速に源三の権威も薄れつつあった。

「こいつら本土の人間は、わしの大事な財産も権利も全て奪うつもりじゃ!」

源三にとって、本土から来た人間は憎い敵同然なのだ。

代々まぞが島の網元は島人に対して数々の特権を有していた。
その中で特に女性にとって屈辱とも言えるものがあった。

それは島の少女の処女を奪うことが出来る権利だ。
島で育った女性は全て17才の年、性の儀式を受け、その肉体を網元に捧げなければならない。
その儀式を終えるまで、どんなに好きな男が出来ても手を握ることさえ許されない。
島の少女は網元が最初に手を着けることによって一人前の女になる・・これが習わしであった。
網元にとって・・特に異常に性欲旺盛な源三にとって、それは何より大事な儀式だった。

しかし、その大切な特権さえここ数年は行使されないでいる。

まぞが島にも、少子・高齢化、過疎化の問題がある。
ほとんどの若者は閉鎖的でおもしろみのない島の生活をきらい、本土へ引っ越していた。

その人口流出傾向の中で島に残ったのがミサの家だった。
ミサの父は十年前に漁の最中の事故で他界した。
源三は、それを機に本土へ引っ越そうとするミサの母を、島での生活を優遇する、と言いくるめ、引き留めたのだ。

それはこのミサの成長が何より楽しみだったからに他ならない。
源三は、ミサが小さい頃から注目していた。

源三の期待どおり、いやその期待を上回るほどミサは美しく成長した。
目鼻立ちが整い、均整の取れた肢体を持つ美少女になっていた。
性格も素直で優しく、親孝行な礼儀正しい娘に。

「ワシの手で一人前にしてやるんじゃ。逃がしてたまるか。ミサはワシのもんじゃ」

数年前から源三にとっての生き甲斐は、ミサとその行為をすることだった。
ミサの顔を見かけるたびに、彼女との儀式に思いを巡らし、年甲斐もなく勃起していた。
いや最近は、つねにミサのことしか頭になく、一日中欲情している状態だったのだ。

(ワシは17年もこの日を待ったんじゃ。
それをこんな、本土から来たばかりの若造に渡してたまるか。
ミサはワシのもんじゃ。おまえには渡さんぞ!)

源三は心の中で叫んだ。
そして怒りの目で克彦をにらむ。

「ワシたちは急ぐんじゃ!さ、ミサ行くぞ!」

源三はそう言うとミサの手をつかみ足早に歩き出した。

これから自分の身に何が起きるのか、何も知らないミサは、振り返って微笑み、軽くお辞儀をした。

残された克彦の目には、ミサのまぶしい裸身が焼き付いた。
長い髪が風に揺れ、柔らかな丸い尻が歩くたびに弾んで上下した。
腰ひもと尻の谷間に消えていく麻縄が痛々しい。
その後ろ姿は、まるで悪魔に連行される無垢な生け贄のようだった。


ミサが源三に引かれしばらく歩くと、緑豊かな林があり、その中に白い土塀に囲まれた古い屋敷が現れた。
武家屋敷を思わせるその旧家。それが網元・源三の住まいだ。
これまで多くの少女たちが無念の涙を流した場所だった。

ミサの耳には、おだやかな波の音と梢をならす風の音だけが聞こえている。






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