シチュエーション
![]() 胸の前にある腕をふり解くと 「あのねえっ!!」 と強気の姿勢で振り向いた。 「うん」 何で早く会いに来てくれなかったの、一体今までどこで何してたの、あたしの事本当はどう想ってるの? ――頭の中は言いたい文句が腐るほど浮かんでは弾ける。 「ごめんなミナ。会いたかった。会いたかったよぅ……」 なのに。 「…… 何やってたのよ」 「ん?ミナんち行ったらもう出た後で、携帯通じないし捜しても会えないから。今年の司会のやつ、 同級生だったから」 「……昨日は?」 「両家の顔合わせした後俺だけ先に帰らして貰ったのに、帰省した連中に拉致られーの 飲まされーの、で今日は秋姉志郎さんに任せて買い物から先に帰ったのに、途中でガキんちょ共に 捕まりーの、にわか雨で着替えてミナんち行ったらいませんみたいな」 寝不足気味の赤い目に剃り損ねたであろう髭。何より今度は前から壊れ物を抱くような優しさで、 そっと包み込まれる腕の温度に、 「……バカ。バカバカ」 「うん。ごめん。ごめんなミナ」 ……悔しいけどやっぱり大好きなんだと思う。 「足、痛いのか?」 手を引かれて教室を出ようとして顔をしかめたのに気付かれた。 「見せてみ?」 ドアを閉めて、机に腰掛けるよう促された。擦れて痛む指の間を痛々しいと言いたげな顔で見る。 「無理しなくていいのに」 「だって」 可愛いと大ちゃんに喜んで欲しかった、白地にあやめの柄の浴衣。今時の柄じゃなくて地味かも しれないけど、あたしはこういうのが好きだから。 「へん?」 「ううん。可愛いよ。すげー可愛いし嬉しい」 あたしの足下に跪くような形に座ると、膝においた手に手を重ねてそう言った。 「俺にとってはミナが一番綺麗だ」 「本当?」 お世辞でも嬉しいよ。単純なあたしはちょろいかもしれない。 「うん。だから、俺……もっとしっかりしなきゃなと思う」 「大ちゃん?」 ぎゅうと強く握った手は、熱くて重くて少しだけ痛かった。 「ミナ。お前俺の事好き?」 頷く。何を今更、もう散々言わせてきたじゃないか。 「俺のどこがそんなにいい?」 「どこって……」 物心ついた時には当たり前のように、気持ちは大ちゃんにあった。だからどこがどう、と言っても 嘘ではないけど、後付けのような感じがする。そりゃ挙げれば色々あるんだろうけど。 「言うまでもないと思うよ、そんなの」 膝を立てて上げた顔に、背中を丸めて見下ろしながらキスをした。ちくん、と髭がつつく。 「……俺さ、実際は単に自分のやりたい事好きにやってるだけに過ぎないんだよな。現にまだ半人前 でそれだけじゃ食ってけない。家業継ぐったって今の俺の力はまだまだだ。父ちゃんには及ばないし、 志郎兄と違って講師も片手間にしか過ぎない。中途半端だ」 「えぇ?大ちゃん畑もセンセもどっちも全力で頑張ってるじゃん。全然そんな事ないよ」 うちの親だってそう思うから反対する素振りは見せないんだろうし、信頼されてるから生徒にも慕われ てるんだと思う。 「でも今の俺じゃ、口だけでミナの事自信持って貰いに行けない……」 だから?だからあたしの事あんな扱いしたっていうの? 「……あたし大ちゃんがいたらそれだけで幸せだよ。それじゃダメ?志郎さんだって好きなのが一番 だって言ったよ?」 「でも、俺だけ好きにやっててそれで満足でも、お前を幸せにできなきゃダメなんだよ。志郎兄みたく ちゃんと色々固めて、胸張って任せろって言えなきゃ……ただ好きってだけじゃ、俺んとこ来いって 言えないじゃんよ」 確かに愛だけじゃお腹はいっぱいにはならない。でも、愛が無ければあたしはそれだけで生きていく 自信もない。 「……バカ」 なんか段々腹が立ってきた。 「バカバカバカ!この大バカ野郎!!あたしが好きだっつってんのよ、そんでいいじゃん。それのどこが ダメなわけ?あたしは好きな事やってる大ちゃんが好きなの。そのどこが不満!?」 ばーっとまくしたてて息継ぎしながら、そこではっきり自分の気持ちが見えてくる。 あたしがこの人を好きなのは、きっと正直な所。好きな事には一生懸命で、真っ直ぐで、諦めないで がむしゃらな所。でなきゃ志郎さんの言うとおり、せっせと毎日地道な努力の必要な自然相手の仕事 なんて出来はしないだろう。 そして他人を大切にする。だからバカバカ言われながらも人に慕われる。 あたしはそんな自分に正直なバカ男が大好きなのだ。 「大ちゃんがいなきゃあたし幸せじゃないよ……」 それともそれがいけないのかな?それはやっぱり甘い考えなんだろうか。 膝にある大ちゃんの手の甲に涙が落ちた。それをそのままに手を離すと、前よりごつごつした指は 優しく頬を拭ってくれる。この手好き。 「……ミナが居てくれるようになって、俺の中で色んなもんが変わった。お前の居ない世界なんかいらない。 だからそれを守るために強くなりたい」 恋をする。そして世界は変わる。大事な誰かのために強くなりたい、それを知りたいと切に願う。――ああ、やっぱり子供なのはあたしだ。大ちゃんはバカだけど大人なんだな。 「ごめんなミナ。だから言えなかった。好きだ。大好きだ。ごめん。本当ごめんな」 唇を離すとあたしの両頬を包むように手を添え、首をのばしてきてキスを何度もねだってくる。 「……好きだ」 「ほんと?」 「うん。言葉にすると凄く重いって言ったの覚えてる?」 あたしが告白した時だ。あの時も大ちゃんからはなかなか言ってくれなかった。 「俺も同じ気持ちで、だから大切にしたくて、嫁だとかはしゃいで言っちまうくせに、ミナがいっぱい 言ってくれるからってそれに乗っかって甘えてた。本当に胸張って貰いに行けるまでは、恐くて言えなんだ」 でも、この人はあたしを好きでいてくれたんだ。そしてそれはもしかしたら恋よりもっと深い――。 「……言ってくんなきゃわかんないよ」 「だな」 何度目かのキスの後、腕を廻して抱き合った。 「だったらさ、約束してよ。あたしの事幸せにするからって」 だからついて来いって。 「うん。する。絶対する。だから頑張る。お前の事も滅茶苦茶好可愛がってやる」 そう言うと、浴衣の裾を割って開き、のぞいたふくらはぎを撫でて膝に唇を寄せた。 「なぁミナ。……パンツ履いてないの?」 「履いてるって!何言い出すの!?」 「えー。着物って下着着けないんじゃ無いの?」 そう言いながら太ももまで浴衣の裾を割って持ち上げる。 「ぎゃっ!何すんの!?今時そんなわきゃないじゃん」 確かに正式にはそれが正しいのかもしれないけど、あたしはそこまでした事無い。ていうか周りも 普通にブラとかしたままで、案外気にしてなかったように思うんだけどな。 「何だ都市伝説か」 何その言い方。つか明らかに落胆してるよ。何期待してたんだあんたは。 「ああ、でもねぇ……線の出ない工夫はしてあるよ。上はさらしの手拭い巻いて押さえてんの。その、 胸……苦しいから」 「おお、ノーブラ!?」 大袈裟な。つか食いつくな、このおっぱい星人が!! 「きゃっ」 あたしを立ち上がらせると、胸の合わせをぐいと開いて覗き込む。 「なんだ結構厚着じゃん。見えねー、つか脱がせらんねー」 一応薄い襦袢みたいな下着も着けてるからね。残念でした。 くるっと後ろを向かされると胸元から手を滑り込ませ、汗ばんだ肌を撫でると、さらしの上から膨らみを掴む。 「暑いだろ?」 「うん、まあ案外……」 「じゃ、涼しくすっか」 ええい!とやや強引に合わせを左右に引っ張られ、巻かれた胸が露わになった。 「いやぁ!何すんの!!」 「だって邪魔だし」 手探りで巻き終わりの部分を見つけるとそれを引っ張り、脱がせようとするので、抵抗しようと しゃがみこむ。 「もう、じっとしろよ」 「だって、やだ、ちょ」 崩れるんだってば!そんなふうにやられると。 「暴れたら余計……ちょっと、ちょっとだけだからぁ」 「うわぁ!?」 後ろからぐいと襟を下ろされ、巻き崩れた胸元はあっさりとひん剥かれた。 アップにしたせいで露出したうなじに、それから徐々に首筋へと唇で撫でるように下りてくる熱に 、ぶるんとからだが震え、足が崩れる。 「……ぁ」 大ちゃんが床にぺたりと座り込み、伸ばした両足の間にあたしを挟むようにして抱き締めた。 ぎゅうと腕に力をこめて肩に顔を埋めてくる。髪の毛、くすぐったいな。 「ミナ」 ん?と振り向くとそのまんまの不安定な姿勢でしたキスは、ちくちくと当たる無精髭が少し痛くて、 でもそれ以上に優しくて胸がキュンとなる。 「……やべえ。俺ミナがすげぇ好きだ。こんなんなるなんて思わなかった。自分でもびっくりする」 「大ちゃん?」 「この何日か会ってくんなくて、すげぇ寂しかった。このまま嫌いになられたらどうしようってさ。 恐かった。ミナがいなくなったらって……もう恐くて考えたくないよ」 あったかい、と言って肩に顔を乗せ頬を寄せてくる。 行かないよ、どこにも。 あなたのいない場所なんて行けない。きっと行こうとも思えない。 「大ちゃん、大好き」 「俺も。俺も好き。大好き」 嬉しい。 ほっと一息ついて幸せな気分に浸る間もなく、両方の手が巻きの崩れたさらしを剥いた。 「うん、いい重さだ」 ゆさゆさと縦に揺らしたり、開き手のひらに乗せて柔やわと揉んでみたり、 「あー好きだ。この乳」 とご満悦の様子。 やっぱりおっぱいか。 大ちゃんに言わせると、あたしの胸はなかなかの物らしい。 だからエッチの時は勿論、何かにつけてこれをどうにかしたがる。 「ミナの乳だからいーの。好きな女の乳だから好きで当然じゃん?」 うーむそうくるか。そんなに言われたら怒れない、ずるい。でも挨拶代わりに揉むのはやめれ。 肩に吸い付きながら両胸を揉む手に段々力が入ってくる。 「ん……」 指先に力が加わる度に不思議な感じが全体にじんと走って、曲げた体育座りの膝がガクガクと震えた。 「ふ……」 仰け反って突き出した胸の先をつんと摘んでは転がして、 「……お前ヤらしい」 と嬉しそうに笑う。 揉まれる手の指の間に挟まれ、同時にくいくいと弄ばれるつんとした先っぽが、窓から入る外からの 僅かな夜の明かりに照らされて、白い肌ごと浮かび上がる。それを見て綺麗と言ってくれる。お前は 俺の、可愛い、好き、 「――愛してる」 そんなふうに甘い言葉であたしを狂わせる。 「あ……ん……やぁ……」 だらしなく開いた口からは『大好き』なんて返したくても返せずに、ただ乱れた息と鼻につくような (普段のあたしなら絶対思うだろう)声ばかりがこぼれる。 「いい。すげーいい声。柔らかいし重くてでかさもいいし、やっぱりミナ最高だわ。あーもうたまらん!」 くうーっ!と本っ当に嬉しそうな声を出してうなる。やだ、おじさんじゃん。そんなに良いですか? 「ミナこっち向いて。ちゃんと見て触りたい。あと……吸わして」 もう、と思わず声に出した。ごめん、と苦笑いしながら振り向かされ今度は向かい合わせになる。 そのまま押し倒されるのかと思いきや 「あ、ちょっと待ちな」 と着ていたTシャツを脱ぎ始めた。普段は土埃にすぐうす汚れてしまう白い布は暗がりに映えて、陽に 灼けた肌が余計に際立って見える。 「せっかくの浴衣が汚れっから。気休めだけど」 あんまし綺麗じゃないけどな、と言いながらそれを床に敷き、その上にあたしはそうっと横たえられた。 「大ちゃん……いいのにそんなの」 「いいよ。それに」 軽く体重をかけて覆い被さると、あたしの肌に自分の肌を合わせる。 「この方がちゃんと感じられるから」 鼻がぶつかって目を閉じる。キスされた瞬間に、大ちゃんの肌が胸の先に触れて擦れて、ふっと吐いた ため息を拾うように何度も唇が重なる。 それが離れると、今度はさっきの宣言どおり(?)胸に顔を埋め、両方の膨らみをそれぞれ交互に 手のひらで包み、ためらいなく唇に挟み込むようにくわえてつっと引っ張り、舌の先で転がす。 こそっと視線をやると、目を閉じて吸い付く大ちゃんの姿に思わず笑みがこぼれそうになる。 いっちょまえの成人男性のくせして、ちっちゃい男の子の安心しきった顔のように見えてくる。 「ん……?」 あたしのそんな様子に気が付いたのか、首を傾げて躰を上げる。 「……何でもない」 大ちゃんの首に腕をまわしてまた胸に引き寄せる。 また熱い舌が動き始めると、肌が震えて思わず仰け反った。 気持ちいい。 指と唇同時に使われ、揉みくちゃ寸前の胸の感覚にそれどころじゃない筈なのに、なんだかその温もり と重さに安心する。 でもそれが気持ちいい。 時々切なくなるようなドキドキ感も悪くはないけど、やっぱり側にあるこの優しさが気持ちよくて、 安心できて、ほっとして――すき。 「……っ!」 なんて浸ったのも束の間、あっという間に現実に戻される。 「ごめん、ちょっと……どいてえぇっ」 「えっ!?おわ、ちょっ……ぶっ!」 あたしの突然の拒絶に驚いて上げた顔に押し付けた手がヒットした。ごめん。 「ごめん無理。やっぱり無理。背中痛い……」 最初は『お、イケる?』と思ったんだけとな。ちょっとずつ帯が動いてズレて、やっぱり何か違和感が あって集中できない。 「う〜……おっぱい……」 未練がましく起き上がったあたしの胸をさわさわしてくる。どんだけ弄りたいんだあんた。 「じゃあさ、寝なきゃいい?」 「どうすんの?」 こっち、と連れて行かれたのは教卓の前だった。一段高い位置にあるそれを黒板側にずいっと押して スペースを作ると、そこへあたしを立たせる。まあ身長差を考えると 「おお、何とか」 らしいんだけど。 教卓に手を付いたあたしの背後から最初みたいに胸を鷲掴んで揉んでくる。そこまでしてシたいか。 「やぁん、大ちゃ……」 あ、また。指の腹で擦られると弱い。 「んー、やっぱり邪魔かなこれ。取っちゃダメ?」 「ダメ!」 「ちぇっ」 帯の盾が密着するのを邪魔するのが気にくわないらしい。だからって外されると困るんだってば。 いくらつけ帯でも、これ以上着崩れするのは勘弁して貰いたい。 「じゃあ尻触っていい?」 じゃあって何だ、じゃあって!唇尖らすな。 軽く揉むように浴衣の上から撫で回す。が、それは 「お?……おお!?」 という声と共にぴたりと止まった。 「……ない。ない」 「何が?」 「パンツ……パンツの線が無い!お前下着……まさか……」 おおっ!と感嘆の声が洩れる。ていうか待て。早まるな、しゃがむんじゃない!! 「期待外れで悪いけど穿いてるからね。さっき言ったじゃん」 「えぇ!?何だ……でもゴムの痕がない」 「ああ、それは」 一応胸(これは大きさもあったけど)と同じで線に気を遣ってみた結果。 「……Tバック穿いてみた」 しーん。 あれ?反応ナシ。てっきり色好い返事が得られると思ったのに。やっぱりおっぱい星人は尻には興味 は無いのか。振り返ってみると足下に膝を付いて床に転がらんばかりの男が。 「大ちゃん……?」 「お前……俺にどうしろと」 「は?」 「鼻血の海で溺死させる気ですか?」 いやその前に出血多量で死ぬだろう。ていうかそんな死因で嫁入り前に未亡人は嫌だ。その前にあたしが 死因になるのだろうか? 「見せて見せて♪」 しゃがんだまま体勢を立て直し、浴衣の裾を捲ってくる。 「え、やだ待って、下まで崩れたら……」 「大丈夫。ちょっと、ちょっとだけだから」 そっとね、わかった、とごちゃごちゃやり取りしながら少しずつ素足が露わになっていく。もう何べんも 脚なんか見られてるのに、こういうふうにされると妙に恥ずかしくて顔が火照る。 「うわぁ……生尻」 ちょっと、そんな言い方やめて。なんか萎える。いや喜んでるのはわかるんだけど、もう少し色気の ある言い方は無いのか。 つん、と細い紐を指をかけて引かれる。 「ちょっ……やん」 ぐいっと後ろに引っ張られると、その、なんていうか、ちょっと食い込んだ感じがして、我慢できずに声が出た。 「すげ……」 捲られて外気に晒された肌に熱い息が掛かる。 「見えるかな?」 片手でお尻を撫でながら支えると、浮かせた紐の下を覗いてくる。 「いやっ、見ちゃだめっ!」 そんな位置から眺められるなんてやだ。 「暗いから無理か……」 そっか。いや、でもそういう問題じゃなくて、そういう行為が恥ずかしいんだってば!! 立ち上がって後ろからぎゅっとしがみついてくると 「触っていい?」 というのに頷いた途端、前の合わせ目から割り入った手が何の戸惑いもなく中に入り込んだ。 「んやっ……」 される前からじりじりとしていたそこに指が触れただけで、言われなくても解るくらい恥ずかしい 状態になっていることがまた恥ずかしい。 「あ……あぁ……ぁ」 「どうした?ミナ」 教卓と大ちゃんの躰に阻まれて逃げ場のない躰を片腕でがっちり抱えられ、片手は静かな部屋に淫らな 濡れ音を響かせながら動く。 「あ……やぁん……いや、いや」 「嫌じゃないだろ?もっと、だろ」 そう言うとそこに指を押し当てたまま、ぴたっとその動きを止めてしまった。 「ぁあ……んっ」 じりじり焦がれた感触を持て余して、少々恨めしげに振り向いた。 その途端、またちゅくちゅくと指が動く。 「……ひぁっ!?」 止まる。 「だ……ぁっ」 また今度は撫でて、止まる。 擦って、摘んで、あたしが鳴くと止まる。 「やぁん……何でぇ!?」 自然に開き気味になっていく脚はぶるぶると震え、逝き着けない切なさが目尻に浮かんだ。 「……ナメて」 片手はまだそこにあるままに、もう片方の指を唇に押し当ててくる。 「キスしにくいから。替わりに」 ん、とそれにキスすると、押し込んでくる指の先を吸った。 「舌、使って」 「ん……」 何となく、あれをしている時の事を思い出して舌を絡めると、その時の大ちゃんの顔を思い出して 喉がカアッと熱くなる。 「……触って欲しい?ミナ」 指を吸いつつ頷く。 「ぐちゃぐちゃにしていい?」 ん、んっ、と押し込まれた指のせいでろくに出ない声で返事する。 首筋にちくりと髭の当たる感じがして、それと同時に両脚の間でかき混ぜるような動きがあたしを 襲った。 「……ぃあっ……あ……あはぁ………んっ」 くぐもった意味のわからない声を出しながら、口元のものともそれのものとも解らないぐちゃぐちゃと した湿った音が耳につく。 「は……ふっ」 「もっと?もっといい?」 「ん、んっ、もっ……」 もっと強く、激しくてもイイ。もっと滅茶苦茶に、もっと。ああもう、もう。 「ん……だ、だい」 「ん?」 喋ろうと口を動かすと指が離れ、僅かに糸を引いた。 「や……もう、もうきて、やだ、あぁ」 「ん……うん」 やっと指が抜かれた瞬間、残念だと思うと同時に少しほっとして、力の抜けた躰は上半身を教卓に 乗っけて支える。頬が冷たくて気持ちいい。 ごそごそとする気配にちょっと疑問が浮かんだ。いや、今更なんだけど、 「大ちゃん……」 「ん?」 細い紐が彼の指に絡む。 「アレ持ってるの?」 「あれ以来財布に入れてる」 「ああ、そうなんだ」 この前車でヤろうとしたんだよねこの男は。でもいつも部屋に置きっぱなしなもんだから、諦めて まあ、他で何とか。 「だってシたい時できなきゃ辛かろ?」 いや、軽トラは狭いから無理。てか我慢せんかい。 いつの間にやら裾をがばっと捲り上げて丸見えのお尻に、ゴムの感触がする。 「待っ……ぁ」 「無理」 その部分の僅かな布をずらすと立ったまま後ろから、ずり、と分け入るように奥まで一気に押し込まれる。 「うぁぁっ!?」 ぐいぐいと擦られて、お尻に大ちゃんの腰骨の堅いのがぶつかってパンと鳴る。その度に挟み込んだ 部分が押し開かれるみたいで少し苦しい。 「痛い?」 「だい、じょぶ……あっ」 ゆっくりとした動きが少しずつ速くなる。 掴まった教卓の板がカタカタと揺れた。 「ああ、もうイイ。すげぇイイ」 既にくしゃくしゃの胸元を背中からまわしてきた手がぐいぐいと揉みしだき、完全に露出した脚は 震えて、そのせいで古い床の軋みが細かくきしきしと音を鳴らす。 ああもう、あんなに乱したく無かったのに。それがどうでもいいと思える程に突かれる度に喉を鳴らす あたしは淫乱かしら。 大ちゃんはあたしがエロいと喜ぶみたいだけど、こんな状態でよがってるあたしでも良いんだろうか? 「大ちゃん……あ……あたしの事……好き?」 「ん……うん、好き」 「こ……こんなふうに……でも、いいの?」 「俺だけだろ?」 「う……ん」 ぶつかる肌の音に重なる水音が段々大きくなる。胸の手が下に下りて前をいじめる。 「……ゃぁあ!?」 「エッチなミナも好き。俺だけの為なら大歓迎だ……」 耳たぶを噛まれて肩を竦めると、前後から攻められるお腹の下がきゅうきゅうと締め上げられて、 じゅんと今以上に雫が流れ落ちる。 「んふぅ……ぁあ……!」 「好きだよミナ、好き。好きだっ!」 普段は可愛いとか綺麗だとか、それでも嬉しいけど、今日はいっぱい好きだと言ってくれた。 「うぁ……イく、出る」 腰をぐっと力を込めて押し付けると、びくびく震えてあたしの中で果てた。 「……大ちゃん……好き……」 「うん。うん、ミナ、ん……」 苦しそうに、でも嬉しそうにそのままきつく抱き締められて、それだけで一足遅れであたしも震えた。 「ところでどうすんのこのザマ」 「すまぬ……orz」 あれだけ乱れまいと頑張った(?)のに、巻いたさらしはおろか裾は開きーの、帯も曲がって悲惨な 姿になった。姿見があればごまかせる位までは直せそうだけど、ここにはそういう物はなく、廊下の 端まで行かなきゃならない。一旦脱がなきゃならないうえに、誰かに見られたら死ねる。 くしゃくしゃの髪を解いて肩に流す。 「これ着る?」 「いらんっ!」 Tシャツ1枚でどうしろと。下どうすんだ。あと、あんたは裸で帰る気かい?誰かに手伝って貰えれば何とか……。 Σ(゜Д゜)ハッ! 「そうだ!大ちゃん電話して、電話!5分以内に来れる筈の人がいる」 「?」 その後、大ちゃんの『今の格好で写メ撮らせろ』とのオカズ製作を防ぐのに余力を使い果たした頃、 少し上気した頬の秋姉ちゃんがやって来て 「男は皆外に出てー!!」 の掛け声と共に、志郎さんとつまみ出された。 未遂含むと二回もこんなとこ目にさせてごめんなさい。あたしがもし弟の『ピ-----(自主規制)』を 見たらそれこそ死ねる。 *** あれから数日が経った。これから大ちゃんと春果姉ちゃん達と河原まで出掛ける。 あの翌々日、志郎さんと秋姉ちゃんは帰って行った。 「次会うときは花嫁さんだね」 「だな」 田んぼに囲まれた散歩道をずーっと先に春果姉ちゃん達が行った頃、ポケットからだした箱を 「やる」 と言って握らされた。 「秋姉に頼んで選んで貰った。こないだの留守はそのせい」 帰る前、秋姉ちゃんが色々厳重注意を促し、大ちゃんの額にグーでぐりぐりやってたのを思い出す。 何かすっごく懐かしかったんですけど。 『お前、凶器にすんな!』 志郎さんに“熊殺し”と言わせた薬指にきらきら輝いたそれに目を奪われた。 「あれより安もんだけど、ごめんな」 「……ううん」 はめて、と手を出すと照れながら指に嵌めてくれた。秋姉ちゃんからさり気なくサイズ訊かれたな、そういや。 「約束な」 「うん」 向こうから子供達の呼ぶ声がする。 「ミナ、俺に付いて来い!」 夏の青空の下手を繋いで走りながら、その唇が声にならない『好き』をくれた。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |