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シチュエーション


お風呂上がり、ベッドに入りながら、携帯をチェックする私。
彼は、ノートパソコンに向かって、会社から持ち帰った書類を作成してる。
結婚して2年。避妊してるわけでもないけど、子供もいないし、
お互い仕事を持っているから、夫婦と言うよりは、未だ恋人同士気分だ。
周りからは羨ましいわ、と言われるが、自分ではよく分からない。

メールを送信して、静かにふとんをかぶる。

「おっと」

彼のメール着信音が鳴る。
メールの送信先は、すぐ隣にいる彼。

『おやすみ』

いつからか、私たちの秘密の暗号になっている言葉。
セックスしたいとき、私は彼にそうメールする。
何年経っても、女の私からえっちしたいとは言いづらい。
だから・・・。

ベッドの中で、ぎゅっと携帯を握りしめる。
彼から求められて、断る事もあるのに、私から求めて断られると、凄く傷付く。
あ・・・彼も、傷付いてるのかな。

ブルブル、と携帯が震えて、私は思わずビクッとする。
そーっとメールを見る。

『今日はダメ。週末にね』

ふう、とため息をついて、布団から顔を出す。

「じゃあ、先に寝てるね。おやすみなさい」

何でもないふうを装って、彼に声をかけてまた布団をかぶった。

「ん、おやすみ。俺ももう少ししたら寝るよ」
「ん・・・」
「あ、ゴメン、寝てた?」

自分では本当に寝るつもりじゃなかったのに、いつのまにか眠ってしまったらしい。
彼の顔が目の前にあってびっくりする。

「ん、ちょっとね」

部屋の明かりがまぶしくて、思わずぎゅっと目を閉じた。

「じゃ、俺、シャワー浴びてくるから。起こしてごめんな、おやすみ」

そういって、私の頬から首に唇を這わせ、最後に口にキスをした。

「おやすみ」

彼とこうやって、キスするの、好きだなあ。

何となく、目が冴えてしまった。彼が戻ってくるのを待ってよう。
彼にキスをされた余韻が何となく残っている。
いや、それ以上に、身体が火照っている事に気付いてしまった。

・・・バカな私。そんなにしたかったの?
あきれながらも、右手をそっと下腹部に忍ばせていった。

「ん・・・」

パンティーの上から、そっとクリトリスをなぞる。
それだけで、しびれるような快感が襲ってくる。

ーー彼に悪いと思わないの?
冷静な自分が、淫乱な私に語りかける。
それでも、指の動きはとまらない。そこは、もう蜜が溢れていた。

「ん・・・んふ・・・」

声を押し殺して、さらに指を動かし、快楽をむさぼる。

「ああ・・・」

ため息がもれる。イキそう・・・。

「ん・・・くぅ・・・」

目の前が真っ白になって、私はイッた。

脱衣所から物音が聞こえ、彼がもうすぐ戻ってくる事に気付く。
私は息を整え、寝てるふりをした。
彼はいつも通り、ベッドの端に腰掛け、スポーツドリンクを飲んでいる。
暫くして、部屋の明かりを消して、彼もベッドに入った。
私もいつも通り、彼にもたれ掛かるようにくっつく。
キスをして、そのまま眠りにつくはずだった。

「んっ」

彼がいきなり胸を触ってきた。
私はさっきイッたばかりで、まだ身体が敏感になっている。
しないって言ったから・・・!!

彼の手が優しく私の胸を包み、首筋にキスをしてくる。
私が首筋に弱い事を知っているから。

「んん・・・」
「してもいい?」

耳もとで彼が囁く。返事のかわりに甘い声が出た。
抵抗も出来ないまま、パジャマを脱がされ、下着だけの姿にされる。
身体が、溶けそうだ。
彼の手はやがて、いちばん敏感な部分へとのびてゆく。

「やぁ・・・だめぇ・・・」

その否定の声さえ、甘ったるい糸を引いているのが自分でも分かった。

「気持ちいいんでしょ?」

意地悪く聞いてくる彼。私は力なく首を横に振る事しか出来ない。
彼の指先がクリトリスに触れ、そっとなぞる。
爪でそこを弾くように触られ、私は悲鳴に近い声を上げる。
さっき自分でしたばかりなのに、全身を貫くような快感が走る。
私は、こんな淫乱な女だったんだ・・・。

「あっあっ・・・い・・・イクゥ・・・」

目の前がチカチカして、私は息をのんだ。

「どうしたの?そんなにしたかったの?」

さっき、自分でしながら、自分に聞いた言葉を彼が囁く。
頭に血が上って、うまく呼吸出来ない。
全身が性感帯になったみたいだ・・・。
抵抗も出来ないまま、パンティーも脱がされ、
蜜の溢れるそこに、彼の指が触れ、私の身体はびくりと震えた。

「凄い・・・もう溢れてきてるよ」
「や・・・言わないで・・・」

我はわざとぴちゃぴちゃと音を立てて、私に聞かせる。

「んん・・・」

私はもう波のように迫ってくる快楽に、抵抗する力もない。

「さわって」

彼が私の手を引っ張って、自分のものを握らせる。
私は何かに憑かれるように、彼のものを触った。
やがて、私の上にいた彼が、身体をずらし、それを私の顔の前に差し出した。
私は吸い込まれるように、何の抵抗も、ためらいもなくそれを口に含んだ。
いつもなら、こんな事はしないのに・・・。
竿の付け根から、先端に向かって、ゆっくりと舌を這わせ、また戻っていく。
何度か繰り返すと、彼の先端から、体液がにじみ出てきた。
それを舌ですくい、先をくわえ、絞り出すように吸い上げた。

「ああ・・・いいよ・・・」

普段、声を出さない彼から、ため息が漏れる。
私が感じさせたんだ、そう思うと、身体の芯がまた熱くなった。

「あん・・・」

口で続けていた私から、それを不意に離され、思わず声を上げた。
きっと今私は、ひどく淫らな顔をしているに違いない。

彼が、私の足を広げ、間に入ってくる。
私のひざに手をおいて、もうぐっしょりと濡れたそこに、彼の先端が触れる。
そして、入り口から、クリトリスに向かって擦り上げる。

「いやぁ・・・」

それだけでイッてしまいそう・・・。
いつもと違う快感に、戸惑いながらももう既に溺れかかっていた。
快楽を求めて、彼の足に自分の足をからめた。
彼が、それに気付いたのか、ゆっくりと挿入してくる。

「ああ・・・」

痺れるような快感に、深くため息をつく。

もっと・・・もっと深く・・・

でも・・・入れられたのは、ほんの先だけだった。
抜けるか抜けないか、そんな微妙な深さのところで、弄んでいる。
くちゅ、くちゅ、といやらしい水音が部屋に響いた。
まるでそこに心臓があるかのように、血液が集中するように、
熱くなっていくのが分かった。

「や・・・ぁ・・・」

もっと深く入れてほしくて、自分から腰を動かしてしまった。
それを、彼が見のがすはずもない。

「どうしてほしいの?」

分かりきっているのに、彼は本当にいじわるだ。
でも、それに感じてしまう自分がいる事も知っている。

「・・・ぃ・・・いれ・・・て・・・」

こんな状態でも、羞恥心は捨てきれず、消え入りそうな声で訴えた。

「入ってるよ」

そう言って、またわざと音を立てて動かす。

「いやぁ・・・」

私は激しく首を横に振った。
身体が溶けそう。どうかしちゃいそう。
入れて!入れて!もっと、もっと深く・・・!!

「どうして欲しいの?」

もう一度彼が聞く。

「言わなかったらこのままイッちゃうよ?」

その声さえ、甘く響いて、身体の芯を熱くする。
彼はにわかに動きを早めた。この状態で、彼がイかないことは分かっている。
でも、本当にこのまま終わってしまったら・・・?
息が乱れて、呼吸が出来ない。

「お願い・・・入れて・・・」

うまく声も出せなかった。泣きたいわけじゃないのに、目から涙がこぼれた。

「ダメ。ちゃんと言って」

彼が動きを止めて、それを抜こうとした。

「いやぁぁぁ・・・入れてぇ・・・もっと・・・もっと奥まで欲しいのぉ・・・!!」

無我夢中だった。快楽に支配され、がんじがらめにされ、
自分がどんな淫乱な台詞を吐いたのか、そんな事を考える余裕もなかった。

「あぁ・・・!!」

彼のものが一気に奥まで挿入された。
強い感覚に息が止まる。彼が私の上に覆いかぶさる。
さらに求めるように、私は彼の背中にまわした手に力を入れた。

「凄い・・・熱いよ・・・イッちゃいそうだ・・・」

いつも自分の快楽を表に出さない、彼の声が上ずっている。
私の身体で感じてくれている・・・。
そんな幸福感も、私の感覚を高めていた。

「あ・・・ん・・・気持・・・ちいいよ・・・」

彼に合わせて、腰を動かしている自分がいた。

彼が動きを止めて、ゆっくりと抜き取る。

「後ろ向いて」

優しい口調だけど、有無を言わせない、そんな口調。
私は機械のように彼に従って、うつ伏せになった。
熱く濡れそぼったそこに、彼のものが当てられる。
でも彼は、それ以上侵入してこない。
私は彼を求め、腰を浮かせ、彼のものを深く埋めようとした。
どんどん淫らな格好になっていくとも気付かずに・・・。

「は・・・ぁ・・・」

彼のものを全部くわえこんだときには、うつ伏せだったはずが、
四つん這いになって、獣のように腰を動かしていた。

「ああ!いい・・・!もっと・・・もっとぉ・・・!!」

頭の中が真っ白で、何も考えられなかった。
口の中に溜まっただ液が、飲み込む事も出来ず、口の端から流れ落ちる。
彼の手が腰から、太ももを撫で、ある部分へ、ゆっくりと近付いてくる。
その行き場を知って、私は声を上げた。

「いやぁ!!ダメぇ・・・!触らないで・・・」
「もう太ももまで流れてるよ、いやらしいなぁ・・・」

彼の一言一言が、快楽となって脳に響いていく。
さわさわと陰毛を撫でた後、ぎゅっとクリトリスに指を押し当てられ、私は悲鳴を上げた。
彼はかまわず、コリコリとそれを弄ぶ。
クリトリスへの刺激と膣への圧迫感で、いいようのない快楽の波に押し流され、
身体に力が入らず、私は肘をついて、シーツに頭をもたれかけた。

「は・・・ぁ・・・もぉダメ・・・イッちゃう・・!!」

熱い、熱い、熱い・・・。
登り詰めていくこの感覚。

「俺も駄目だ・・・いくよ・・・」

彼の声も上ずり、腰の動きが早まる。叩き付けるように押し当てた後、
彼の精液が、体内に注ぎこまれるのを感じてから、私も果てた。

「大丈夫?」
「ん・・・」

気を失っていたのか、眠ってしまったのか・・・。
多分、ほんの数分の事だったのだろう。
彼は、ベッドの端に腰掛け、ミネラルウォーターを飲んでいる。

「私にもちょうだい」

全身がだるい。重い身体をなんとか起こして、彼の隣に座る。

「はい」

彼からペットボトルを受け取り、一口飲む。
全身に染み渡るよう、とはこの事を言うんだろうなあ。

「今度見せてね」
「何を?」

急に言われて、何の事だか分からず、彼の方を見る。

「一人でヤッてる所」

思わずペットボトルを落としそうになる。
ばれてる?そんな馬鹿な・・・。

「やったことないから無理」

極めて冷静を装って切り返す。

「ふーん・・・脱衣所まで聞こえてたよ?」
「嘘・・・!!」

しまった!!慌てて手で口を押さえたけれど、もう遅い。
こんな簡単な誘導尋問に引っ掛かるなんて・・・。
私は耳まで赤くなってうつむいた。

「ホントにしてたんだ」

からかうような口調が腹ただしいような悔しいような、泣き出したい気分だった。

「してないって、バカッ!」

ぷいっと横を向いた。彼はにやにやしてるに違いない。

「こっち向いてよ〜」

楽しそうな彼の声を無視して、ベッドに横になり、乱暴に布団をかぶった。
彼が布団の中に入ってこないように、ぎゅっと布団を握る。

「怒るなよ〜」

彼が無理矢理布団を剥ぎ取って、私が怯んだ隙にキスをしてきた。
恥ずかしさと、自分の馬鹿さ加減に腹を立てて、彼を拒絶したい気分なのに、
優しいキスに、あっさりと彼に応えていた。

「・・・愛してるよ」

こんなときに、そんな台詞ってなんだか卑怯だ。
それなのに、私はフワフワと夢見心地で幸せだった。
彼の背中に手を回して、耳もとで囁いた。

「私も、愛してる」
「だから今度見せてね」

一瞬で現実に引き戻され、私は彼を突き飛ばした。






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