〜不器用な淫魔のお話3〜
シチュエーション


「陛下。」

「わかってる。」

ああ、おなかすいた。
すっごくおなかすいた。

「陛下っ。」

「焦るなって。」

早く。

「陛下ぁっ。」

「よしよし。」

はやく。

「へいかぁっ…。」

たべたい。

「とりあえず、こっち。な?」

「ん。」

一旦抱擁を解くけれど、手は繋いだまま、ベッドの縁まで移動する。

「…へいか。」

大きなベッドの側で立ったまま、陛下と向き合い、目を見つめ合う。

「へいか。」

わたしのおでこを、陛下のおでことくっつけ合う。

「…いい?」

最後の確認を、とって。

「…ああ。」

陛下の了承をもらったら。

「それじゃ…。」

一先ずおでこは離して。

ゆっくりと、陛下の上着を脱がす。すぐ側に適当に置いておく。

「…うん。」

ズボンを脱がす。上着の上に置く。

「……うん。」

インナーシャツを脱がす。ズボンのそのまた上に置く。

「…。」

一旦手を止めて、下半身の下着一丁になった陛下の全身をじっくり眺める。

細い首、はっきりとした鎖骨。
うっすらと肋骨が浮いた、厚みのない胸。
殆ど肉の無い両腕に、繊細な指先。
細いけど、ちょっとだけぽっこりと膨らんでて意外とやわらかいお腹。真ん中に可愛いおへそ。
太腿さえ肉付きが薄い、当然ふくらはぎも薄い、結局上から下まで全身が細いという結論を示す両脚。
色黒ってほどじゃないけど、少し色が濃い目の肌。
おまけに腋、胸、すね、どこにも体毛が生えてないから、全身つるっつるてかってか。

…ああ。

「陛下。」

陛下の身体って。

「どうした。」

いつ見ても。

「きれいだよね、陛下のからだ。」

綺麗。

「…男に言ってもな。」

すごく綺麗。

「だってきれいだもん。」

顔だって。

「未発達なだけだろ。」

子供らしい丸っこさもあるのに、しゅっ、としてて整った輪郭。

「ちがうよ。」

瞼が少し下がりがちだけど、よくよく見つめると、大きくてくりくりしてて可愛らしい目。
すっきりした鼻に、口。

「違うのか?」

所々癖もついてるけど、それが却って可愛くもある、量が多くて柔らかい髪。

「まだ大きくなってない男の子のからだだから、きれいなんだよ?」

…うん、綺麗。
陛下は頭のてっぺんから足の指先までぜーんぶ綺麗。

「オレがどういうガタイに憧れてるかは前に言ったと思うんだが。」

全身余す所無く綺麗。

「だめ。」

何一つ無駄が無い。

「何がだよ。」

完璧。

「陛下は小さいからきれいなの。大きくなっちゃだめ。」

陛下を表現するために完璧という単語が存在すると言ってもいい。

「…これから数年はまさしく成長期だと思うんだが。」

流石は陛下。

「ふぅん…じゃあ、陛下がそう言うんならさ。」

わたしの陛下。

「言うんなら?」

わたしの好きな陛下。
わたしの大事な陛下。

「もうこれ以上大きくなれなくなるぐらい、陛下をいっぱいたべちゃえばいいんだ。」

この世の何よりも、何よりも。

「…お手柔らかに頼む。」

わたしの大事な、大事な。

「ん。」

だぁいすきな、陛下。

「…ねぇ。」

「ああ。」

うん…陛下の「からだ」を見るのはとりあえずこれぐらいにして。
…そろそろ、いかなきゃね。

「じゃ、いきまーす…。」

腰を下ろし、床に膝立ちする。
陛下の最後の下着に手をかける。

「はいっ。」

最後だけは一気に。
ばっ、とずり下ろす。

「…ふふっ。」

拘束を脱して、ぶるんっ、と元気よく解放された、陛下のちんちん。
おちんちん。
いちもつ。
ペニス。
陰茎。


真下に向かって無為にぶら下がることもなく、既に床と平行線になるぐらいには勃ち上がり始めている。
中身が硬質化しかけている。

そして当然のように、お股にだって一本たりとも毛は生えてない。
…最後の最後まで綺麗な身体だねぇ、陛下は。

とりあえず、剥ぎ取った下着はさっき集めた衣類と一緒にしといて、っと。

全裸陛下降臨。

「こんばんはー。」

まずは陛下のちんちんにご挨拶。
右手人差し指で二、三回、かるーくつついたりして。

「キョウモヨロシクネー。」

「っ!?」

ちょっ!?
今の何!?
素でビビったんだけどっ!?
一瞬ぴくっと、ひとりでにちんちん持ち上がったし。

何なの?…え、本当に何?…今の裏返った声は?

「…陛下?」

真上に視線を向けて、陛下の顔を確認する。

「…気のせいだ。」

陛下はわたしから顔を背けながら答えた。

…。

「…ぶッ。」

噴いた。
慌てて口は塞いだけど、ものっそい噴いた。

「ぷっ…ふふ…。」

下を向いて笑いをこらえる。
…あぶないあぶない、鼻水まで出る所だった。

「気のせいと言っとろうが。」

陛下の手の平が、頭頂部の髪をわさわさとかき乱してきた。

「だって…。」

普段からずーっと鉄面皮で真面目なことしか言わないくせに…。
ありゃ反則でしょ…。

「とにかく。」

改めて見上げてみたら、やたらと変化に乏しかったはずの陛下の表情がちょっぴり緩んでいた。
…可愛いなぁ。

「おふざけはこの辺にしといて、だ。」

…まぁ、すぐに元通りの無表情に戻っちゃったけど。

「…お腹空いてるんだろ?」

「ん。」

ああ、そうだったそうだった。
おなかぺこぺこなんだったよ、わたしときたら。
陛下の服脱がせるだけでも楽しすぎて。

…気を取り直して。
一先ず立ち上がるわたし。

「…ん。」

素っ裸になった陛下の両肩を掴んで、ベッドの真ん中に座らせて。
わたしもついていくように上がり込んで。
お互いベッドに腰を下ろして、向き合って。

「陛下。」

肩を掴んだまま、改めて視線を重ね合わせて。

「はやく。」

そうすると、陛下の両手がわたしの胸元に伸びてきて。
わたしのパジャマのボタンを、上から順に外していく。

「ん。」

すぐに全部外されて、裾を左右に引っ張られた。
わたしの胸からお腹までが解放される。
陛下のちんちんが解き放たれた時みたいに、二つの脂肪の塊がぶよんと震えた。

「…んふふ。」

…素肌が外気に晒されてすーすーする。
すーすーする、なぁ。

「へーいかっ。」

まぁ、まだ前を開いただけのわたしに対して、陛下なんてとっくの昔にすっぽんぽんなんだけどさ。

「ふふっ。」

つまりこの程度の露出で、こんなに肌が寂しくなるわたしと比べると、
陛下はその二倍とか三倍ぐらいは寂しい思いをしてる、ってことになるよね。

「食事の挨拶は?」

「うん、それじゃ。」

だったら早く、あっためてあげないと。
…ね。

「いただきまーす。」

わたしが一礼する、と。
陛下の両手が、わたしの両頬を捉えた。



「…おいで。」



その声がわたしの耳を突いた時。
いかなる時も変化の乏しさに定評のある陛下の顔が、いつの間にか優しい笑みを浮かべていたことに気付いた。

自分の目が大きく見開かれる感触を得る。
一瞬呆気にとられそうになったけど、すぐに気を取り直したわたしは。

陛下の綺麗な、きれいな、まん丸お月さまみたいな瞳に、誘われるまま。

お口にかぶりついた。

「ん。」

体格の差から、わたしの顔はやや下向きがち、陛下の顔はやや上向きがちの状態で、唇が重なる。

そして薄く開いておいた唇から、舌を突き出してみたら。
向こうの口の中に到達するよりも早く、丁度お互いの唇の境界線上で、陛下の舌と触れ合った。

「ん。」

そこから押し合い。
引っ張り合い。
絡め合い。
色んな形の取っ組み合いが広がる。

「んっ…。」

唾液を流し込んだり、飲み込ませたり。
逆に吸い寄せたり、飲み込んだり。
中継点でお互いの唾液をお互いの舌で一緒にかき混ぜて、二人で混合液に仕立てあげたり。

「ん、ぅ…。」

…ノってきた。
陛下の首裏に両腕を回す。
後頭部を押さえて、より強く陛下の顔を引き寄せる。

陛下もそれに応えるように、わたしの頬から頭の後ろにまで腕をやり、同じことをしてくれた。

唇同士の密着感が更に増す。
勿論舌同士の動きはさっきから一切休まってないし、むしろどんどん熾烈になっていく一方。

「ん…く…。」

…次第に、触れ合わせるのを頭の一部だけに留めていては物足りなくなってくる。

唇は離さないまま、わたしはお尻を浮かせて、自分の腰を前に進める。
まず胸からぶら下がった肉塊の先端が、陛下の首と胸の間ぐらいの位置に触れる。

「…む…。」

構わず更に前進。

脂肪しか詰まってない物体二つは、わたしの身体と陛下の身体の板挟みでぶにょっと圧迫されていく。

更にもっともっと前に行く。
途中で陛下の頭から一旦両腕を離して、一応わたしの身体の一部に当たるぶよぶよした物の配置を調整。
左右一つずつ、陛下の両肩にそれぞれ引っかけるように乗せる。

それができたら腕はまた陛下の頭を抱く状態に戻す。
…自然と二の腕がお肉を押して、陛下の首周りを柔らかく圧迫する形になった。
ま、息苦しくはないでしょ。やぁらかいし。

「…ぅ…。」

身体同士の距離も殆ど縮まった。
ほら、いつの間にか自分のお腹にくっつきそうなぐらい勃ち上がってた陛下のちんちんが、
わたしのお腹の底あたりに触れてる。

あとなんか気付いたら、陛下が両脚をわたしの背中側まで回してるし。
陛下もわたしともっとくっつきたいんだね。
こういう時になると、意外と積極的なんだから。

「ん、む。」

…ところでさっきからもう何分ぐらいキス続けてたんだっけ?
まぁいいや。
これだけでもいつまでだって遊べそうなぐらい楽しいもん。
口の中から直接頭の芯にまで響いてくるような、ぴちゃぴちゃとした水音が心地いい。

「…んー…。」

時にはあえて、陛下の舌をこっちの口の中にまで誘い込んだりもする。
伸びきって逆に行動の自由が狭まった向こうに対して、わたしは自分の領域内だから縦横無尽に動き放題。
下から持ち上げたり、上から被さったり、何でも思いのまま。
陛下をいじめ放題。

「…むー…。」

で、一先ずの満足が得られたら、今度はわたしが陛下の口の中にお邪魔する。
そしたら攻守交代、あとは陛下がわたしの望む通りのことをやってくれる。

ほらほら、わたしをいじめて、陛下。

「ん、ぷ…。」

ん、いい感じ。
もっと激しくいじめちゃってもいいよ。
わたしの舌引っこ抜くぐらいのつもりでお願い。
まぁ、本当に抜いちゃったら大変なことになるけどさ。

「…ぁ…ん…。」



…そんなこんなで、最後にお互いの唾液を交換し合って、飲み込み合ったら。

「…っぷは。」

はい、唇離してキスおしまい、っと。

「…ふぅ。」

お互いの頭を一旦離す。
つられて胸のアレが陛下の肩からずり落ちて、だぽんだぽん震動した。
…支えが無くなるとやっぱり重たいなこれ。

まぁそれはともかくとして…結局何分だろ?
確実に五分は続けてたよね。
あー…キス楽しかった。

「…へいか。」

「よしよし。」

陛下の手が、わたしの頭を優しく撫でてくれる。

「大好き。」

「そうか。」

向き合って、目を見つめ合う。

優しくて綺麗な瞳。
唾液でべっちゃべちゃになった跡を残しながらも、やっぱり綺麗な唇。
もうみんな綺麗。陛下きれい。
わたしのきれいな陛下。
もっともっと、その綺麗さと可愛さと優しさで、わたしをもーっと愛して欲しいな。

「だぁいすき。」

「そうか。」

「せかいいちすき。」

「そうだな。」

「いーっちばん、すき。へいかよりすきなものなんて、ありえない。」

「それ以外に何か言うことは?」

陛下を後ろに押し倒す。
それについていくようにして、仰向けにした陛下の上に覆いかぶさる。

「ないよ。なんかいでもいうから。すき、って。」

「ほお。」

わたしの胸にかかる重たさを、陛下の身体に直接味わわせる。
腕の支えも抜いていって、わたしの体重全てを陛下に預ける。



「すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。
 すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。すき。だいすき。
 だいすき。だいすき。だぁーいすきぃっ…!!」



さっきまでのキスはあくまでお遊び。せいぜい、乾杯の飲み物でしかない。
ここからがようやく前菜。メインディッシュなんてもっと先。まだまだ遠いんだから。

今のわたしは「まだ手もつけてない前菜の見た目に食欲をそそられてきた所」でしかないよ、陛下。






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