シチュエーション
![]() 昔、一人の青年がいた。 下賤の生まれではあったが、彼は幼い頃から絵を描くことが好きだった。 また、その素養もあった。彼の描く絵画は美しく、生きているような迫力だった。 その彼が、恋をした。 相手は男爵の息女。身分違いと知りつつも彼女を想い、募る想いを彼は絵に籠めた。 彼が一月の間、心血を注ぎ寝食を忘れ描いたその絵は、恐ろしいまでの美しさであった。 しかし。 その男爵は、彼の目の前でその絵を引き裂かせた。 彼が下賤の生まれであったから。その一点が、男爵を激怒させた。 従者や母が止めなければ、彼を斬殺していただろう。 彼は住処を追われ、森に逃げた。 幸運にも古い小屋を見つけ、彼はそこで更に絵を描きはじめた。 男爵にあれだけの仕打ちを受けても、彼の女性への想いはなお募り続け、 彼に出来ることは絵を描くことしかなかったのだ。 描きはじめて二月。 体もやつれ、命の灯火も尽きようとしているとき、彼の最期の絵が、描きあがった。 見るものを畏怖させるほどに、妖艶と表現して何ら憚らない程に、美しかった。 彼は失いかけた意識の中、絵の中の女性と抱き合う夢を見ていた。 愛しい女性から初めて名を呼ばれた。 頬を撫でられ、美しく描いてくれてありがとうと口づけされた。 彼はそれだけで、生きる意味を得た。満足していた。 女性は彼の衣服を脱がせ、痩せ細った体を隅々まで、口付けていく。 自慰すらしたことのない彼は、それだけで射精しかけていた。 愛しい女性に己の体の総てを慈しまれている。 何日も満足に食事を摂っていなかったのに、口付けられた箇所に力が湧いてくる。 皮膚が赤子のように張りを帯びてくる。 そして彼の下腹が、激しく屹立した。 彼女が、愛おしく彼の屹立を撫でる。 今までに感じたことの無い、電撃のような刺激が彼を襲う。 しかし、彼女の白くしなやかな手が根元を押さえた途端、 駆け上ってきた精液が塞き止められてしまう。 行き場を無くした衝動が、彼を狂わせて行く。 彼は女性を押し倒し、荒々しく衣服を剥ぎ、美しい乳房に、鎖骨に、臀部に、下腹に。 貪る様に口付け、揉み、愛撫する。 その度に漏れる嬌声が、彼の獣欲を一層高めていく。 昂ぶり尽くした二人は。 屹立を、潤み尽くした秘所へと、自然に繋げた。 襞を掻き分け最奥まで入り込んだ屹立が、温かさと射精を促す襞の動きに抗えずに 白い情欲を吐き出した。 吐き出すたび、互いの口から快楽に喘ぐ吐息が漏れる。 愛しい異性と総てが繋ぎあったかのような至福。 女性の子宮に注ぎ込んでなお、彼の屹立は固く勃起していた。 襞は更に、彼の屹立を蕩かすように甘く律動を促す。 女性の両足が、彼の腰に巻きつく。 もっと、もっと貴方の精をください、と。 強く抱きしめてください、と。彼女が囁く。 その吐息のような声が彼の脳を更に狂わせて行く。 そして女性もまた、彼の注ぐ精の味に酔いしれ、満たされるのを感じていた。 何度も突き上げ、激しく動いても、女性の裸身は乱れるどころか、ますます妖艶になっていく。 固く尖った乳首が彼の肌に触れると、その箇所に射精したような快楽が走る。 女性の秘所は、彼の屹立をときにきつく絞め、ときに甘く撫でて。 亀頭と陰茎のくびれにぴたりと張り付き射精を促し、 奥まで入り込んだ屹立を入り口で絞め、射精させまいとする。 注ぐたびに、愛しさが増していく。 互いに与え合う快楽が、至極の愛情に感じるのだ。 だんだんと体が衰弱するも、女体に溺れた彼は気付かずに何度も精を吐き出して。 女性が気が付いたとき、彼は、こときれていた。 女性は、彼がもう二度と動かないことを悟った。そして、泣きながら口付けた。 口付け、抱きしめるうち。女性は自分の中に彼の存在を感じるようになっていった。 そして。彼の中の男爵への憎しみが、自分の憎しみのように感じるようになっていった。 *** 数日後、男爵が怪死した。 日頃から恨みを買っていた為、毒殺の類で疑われた。 森の中の古い小屋には、今もなお、真っ白なキャンバスが埃一つ被ることなく、 佇んでいるという… ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |