神経衰弱
シチュエーション


『レディースアーンドジェントルメーン!』

会場の四隅に設置されたスピーカーからの声。

『今宵も“ゲーム会場”にお集まり頂きありがとうございます』

媚を売るような口調が耳に鬱陶しく感じるが、周囲を埋め尽くす観客には好評のようで、
わあっと歓声が上がる。誰も彼もが仮面を被り、その素顔をうかがうことは出来ないが、
これから始まる“ゲーム”を想像し、口角を上げ、下卑た笑みでこちらを凝視している。
刺すような視線が私に何百も飛ばされているが、十字架に貼り付けられたような形で四
肢を拘束されている状態では、身をよじって隠すことも出来ない。見られていることに快
感を覚えるタチではないが、これから“見られる”ことを思うと、恥ずかしくもあり、い
らだたしくもなる。
もっとも、自分で望んだことなのだ。参加するだけで10万円。勝てばプラス90万円、つ
まりは100万円。どちらにせよ、高校生が簡単に手にすることはない額のお金がもらえる
のだ。“ウリ”とどっちが健全か。腰振られないだけ私はこちらの方がマシだと思う。
表向きは繁華街の雑居ビルの地下2階は、見た目以上の広さだった。明かりは薄暗く、
中心部に据えられたリング上だけが明るく照らされ、その回りをビデオカメラが、続いて
観客が取り囲む。
リング中央には私と、私と同じように十字架に貼り付けられているる、同じくらいの歳
の女の子。間には1m四方くらいのテーブル。十字架やテーブルには色々機械が設置されて
いて、事前に受けた説明の通りなら色々動いてくれるに違いない。

『お待たせいたしました。本日の第6ラウンド、間もなく開始です!』

大きな歓声の中、ため息を一つ。出来ることなら、“すみやかに”勝ちたい。

『勝負ゲームは……神経衰弱!』

神経衰弱。トランプゲームでやることが無くなった辺りで仕方なく始めるアレである。
基本ルールは一緒で、ようは札をそろえればいいのだが、勝敗条件は多く札を取った方
ではない。テーブル上の普段が無くなったら、再度札がシャッフルされ配られる。永遠と
続くようにみえて、負けとなる定義は“水位が目印に達したら”である。どういうことか
というと、私達の足下の床には漏斗みたいなものが設けられていて、私達が“溢した”液
体が一カ所に集められる。その先が透明な大きめのビーカーになっていて、目印はそのビ
ーカーに設定されている。じゃあ私達は何を溢すのか。最初に下卑ただのいってるだけあ
る。私達が感じてしまった“証”のことだ。端的に言うと、色々弄られて感じてしまって
愛液を垂れ流したり、絶頂を迎えて潮を吹いたりしたものがある程度までたまるとゲーム
オーバーなのだ。
机上に配られるカードには、色々なことが書いてあるらしく、それらは全て私達をイカ
せるために用意されている。それで、ペアを揃えると揃えた分だけ相手のターンの時に記
載事項が実行される。内容は大きく分けて「服を脱がせる」「弄られる」の2タイプ。服
の方は書かれてる部分の服を脱がされる。元々、今着てる服はこのゲームの“主催者”に
よって用意されたもので、たとえ上を着ている状態でも下着は脱げる、というか消える仕
様とのことである。無駄にハイテクだ。弄られるの方は、ターンの間ずっと指定された箇
所が弄られる。ディルド−やバイブの類は用意していない(という条件で参加している。
ヴァージン散らしてまでなんて冗談じゃない)が、ローターだとか、薬物だとかはあると
のことだった。

『それでは試合開始っ!』

コイントスで私が先行となる。机の上にはトランプ同様、52枚のカード。
実際同様、最初からそろう、なんてことはなく、お互い2ターンばかり消費して、3ター
ン目、私が失敗したのを見て、相手が1つ揃える。

『ショーツ一枚脱ぐ』

いきなりそれか、と言いたくなる。だが、文句を言ったところでどうしようもない。い
きなり下着姿とかになるよりかはましかと幾分だけ心を落ち着かせる。そもそも感じなけ
ればいいのだ。弄られるよりもさらにマシだ。
相手はこれ以上揃えることはなく、私のターンに移る。途端、十字架の下の方からマジ
ックハンドが伸びてきて、ずるっと黒いショーツが引き脱がされていく。腰の辺りの風通
しが良くなり、外気に触れる感触。そのままずるずると引き下られ、膝の辺りで中途半端
に止まりマジックハンドが格納される。お仕着せ状態だったミニスカートの下に、私は今
何も履いていない。効果音が鳴ったわけではないが、スカートの下側に現れたソレを見て、
どっと歓声が上がる。それを聞いて恥ずかしくなり、スカートを抑えようとするも、当然
腕は拘束されていてわずかにも動かせる気配がない。
身をよじらせてスカートがめくれても困るので、先ほどの相手の失敗で見つけたペアを
拾う。

『スカート脱ぐ』

続けてもう一つ、こちらはラッキーで拾う。

『ローターをクリトリスに当てる』

そこで私の番は終わりとなった。残念ながら、失敗ペアと過去の分で『胸を揉む』が完
成してしまったが、致し方ない。

相手のターンとなり、下から延びたマジックハンドがまずはスカートを脱がせる。絵的
によろしくなかったのか、私と同じく膝くらいまで引き下ろされた後にはさみがでてきて
輪を切り離す。ストンと床に落ちるミニスカート。続いて、ローターがういんういんと唸
りを上げて登場。下からゆっくりと上がり、

「ひゃああっ!!」

白いショーツ越しに、相手の突起に当てられる。

「い、いいっ!!?」

いきなりの刺激は、おそらく痛覚と認知されているのだろうか。顔は引きつり、その刺
激から逃れんと身体をくねらせるが、マジックハンドはしっかり追尾して離れない。
……そう、自分のターンが終わるまでは、機械の餌食と鳴り続けるのだ。
集中力をそがれたのか、相手は指定するカードを間違え、ペアを作ることなく終了とな
ってしまう。マジックハンドは床下へと消えていくが、彼女の息は乱れたままだ。
これはラッキーだと、おこぼれに預かる形で『胸を揉む』を完成させる。再度登場する
マジックハンドが2つ。そのまま胸の高さまで持ち上がり、ブラウス越しに豊満な(私の
数倍大きい。FとかGくらいじゃないだろうか)胸を下から救うようにむみょっともみ上げ
る。

「ひゃんっ」

もにゅもにゅ。

「い、いやあぁぁぁ……」

決して乱暴に扱うことなく、豊かなおっぱいをマジックハンドがもみほぐしていく。彼
女の上げる声も、先ほどのローターとは違い、少し色めいたものに変わる。

それでも彼女は頑張って、カードを二枚指定。

『ブラジャー脱ぐ』

一枚目にめくったのが既に出ていたカードだったのが、彼女にとってラッキーだった。
それにしても先に下着が消え去るとは思わなかった。そして、

『胸を揉む』

適当に選ばれたはずのペアが成立。私も、機械の手の餌食となることが確定する。そし
てさらなる“ラッキー”。

『ローターを乳首に当てる』

胸部への集中攻撃が確定。相手のターンが終わった瞬間に、私は耐える心づもりを行う。
延びてきたマジックハンドが、背中のホックを外し、それからストラップを外して黒い
ブラジャーを抜き取っていく。続けて現れた4本のマジックハンド。内2つには、やはりう
なるローター。余り豊かとは言えない私の胸に狙いは絞られて。

「あ、ああっ……ああああっ!?」

最初は揉まれた刺激で、後のはローターの刺激で追わず漏れてしまった声。なすすべも
なく、胸が揉みしだかれ、否応なしにふくれていく乳首にローターが当て続けられる。

「ああっ、ひゃあっ、あああっ!」

頭の中に星が飛んでいく。思考回路は急激に奪われて、身体が熱くなる。

『ブラウス越しにも乳首が勃ってるのがわかります』

冷静な実況。どこか遠い世界のようだが、あちらこちらから飛んでくる声に現実に引き
戻される。

「いいぞいいぞー!」

なにがいいもんか。そう思っても、ずっとローターを当てられながら揉まれたら、高ま
ってしまうのを抑えられない。逃れたい一心で当てずっぽうで2枚指定するが、当たるは
ずもなかった。
マジックハンドは消えていったものの、息は乱れ、私は悶えていた。

時間が空いて、幾分冷静さを取り戻したのだろうか。相手はここまでの失敗カードから
確実にペアを作ってくる。

『クリトリスを弄る』

出来たのはワンペアだけ。だが、彼女の時と違い、私の場合は既に“できあがり”はじ
めていて――
一本指の形をしたマジックハンドが下から上ってくる。まだ着用中のミニスカートの中
へと侵入し、指先がそっと、熟れているであろうクリトリスを擦る。

「っっっ!!?」

声にならない。すっすっと隠れて見えない中で指が動く度に、背骨を伝って快楽が頭に
たたき込まれてくる。

「いやっ、ひいっ、ああっ」

もがいてももがいても抜け出せるわけもなく、いいように指に嬲られていく。そして。

『おっと、耐えきれずに流れ出てきました』

言わずもがな、である。熱く滾ったアソコから、ゆっくりと、熱いモノが溢れ出す感覚が太もも、そして膝へと伝わる。

「おおおおおおおお!」

どよめく観客。中には鼻息を荒くし、やおら自分のモノを取り出すものもいた。異様な
空気、熱気。それらもが私に作用する。
伝っていったソレは、まだ脱がされていない靴下にしみこんでいって、床下に落ちるま
でには至っていない。でも、この状態が続けば時間の問題だ。

「ああぅ、ううっ……」

快楽に振り回される頭をどうにか働かせて、私はカードを指定した。

『媚薬をクリトリスに塗る』

まだ、神様は見放していなかった。当てずっぽうだった二枚組は果たして、そんなカー
ドペアを成立してくれた。
ごくっ、とつばが飲み込まれた音は、誰が発した音だったのか。
私のターンが終わり、下から現れたマジックハンド。突き立てられた人差し指には、小
さな穴が空いていた。野ざらし状態の白いショーツの前までせり上がり、指が、突起に触
れて。

「い、いやぁ」

液体がにじみ出てくる。そして指がソレを擦り、ショーツの染みを広げていく。

「あ、ああ、あああああぁぁぁ」

紅潮する頬。やがて指が離れても、染みの海は広がり続けていく。海面下には黒く蠢く
ものと、

『媚薬の効果で、クリトリスが勃起してきました』

せり上がる島。張り付いたショーツが、その存在を見せつける。

「吸い付きてぇ!」
「ああ、今弄ったらどうなるんだろう、弄らせてくれ!」

アップで写されたソレを見て、観客からのヤジはヒートアップしていく。

「い、いや、見ないでよぉ」

だが、カメラの目線から逃れる術はない。やがて、染みが広がりきったところで、下端
部から液体が、糸を引いて、床へと吸い込まれていく。

『ついに、一滴カウントが入りました』

床板を伝い、ビーカーへと落ちていく彼女が生み出した液。

「あ、ああ」

媚薬と熱い視線に我慢が出来なくなってきたのか、カードを指定することも出来ずに時
が過ぎ、ぴちょっ、ぴちょっと垂れ始めていく。
他の刺激は今はない。だが、媚薬が彼女の身体をゆっくりと上らせているのだろうか。

思考が飛び出した彼女が、ペアを揃えるのはどだい無理な話であった。何も成立せずに
私のターンに移る。

一ペア目。
『ブラウスを一枚脱ぐ』

二ペア目。
『電動マッサージ器を股間に当てる』

そのペアを完成させたとき、息を飲む音が聞こえた。無論、彼女のモノである。
ためらいも無く現れるマジックハンドはまず、彼女のブラウスをはぎ取った。

「おおおおおお!」

どよめく会場。まだ白いブラジャーに包まれているものの、豊満な胸は大きく自己主張
しており、谷間にはうっすらと赤みが走り、頻繁な呼吸と共に揺れる。
その揺れが激しくなったのは、続いて現れたマジックハンドが握っていたものが、唸り
を上げ始めたときだった。

「や、やめ、それは、あ」

ぶるぶると震える電動マッサージ器。身体は既に期待して始めているのか、一滴一滴糸
をひいては愛液が垂れていき、マッサージ器の先端を濡らす。やがて糸を引く距離も短く
なり、そして。

「ひゃぁぁぁぁぁぁあっ!!!」

マッサージ器が股間に吸い付いた

「あああああああああ!」

首を激しく振り、嬌声、というよりも叫び声を彼女は上げる。カードを指定することも
出来ず、なされるがままだ。

「あああいいいいいいいいっっ!」

瞬く間に垂れる感覚が短くなる。そして糸を引き続けるようになった瞬間。

「ああああっ!!」

彼女の身体は激しく痙攣し、股間からショーツ越しに潮を噴き上げた。瞬く間に辺りに
水たまりができ、それらが床下へと吸い込まれていく。ビーカーの水位はみるみるうちに
上がっていく。

『絶頂と潮吹きで、ビーカーにどんどんたまっていきます』

相変わらずの実況。電動マッサージ器は動きを止めない。

「や、も、や、やあああああああ!」

絶頂を迎えて敏感な性感帯を、暴力的に刺激していく。

「また、あああ、ああああああっ!」

次の頂は、すぐだった。またも割れ目から吹き出す中、彼女は朦朧としながらもカード
を二枚指定していた。
外れ。だけども、電動マッサージ器はようやく役目を終えた。

その次のターンで、私はカードを揃えることが出来なかった。
すぐに彼女のターンに移るが、肩で息をする状態で、しばらく動くことすら叶わないよ
うだった。
たっぷり時間が経過した後に彼女が選んだ二枚のカードは、ペアを形成した。

『利尿剤を飲む』

「うっ」

今度は私が息を曇らせる番だった。彼女はそのペアだけを完成させて、また沈黙する。
下からせり上がってくる機械はマジックハンド状ではなく、細いホースのようなものだ
った。顔の高さまで上がってきて、口の中にホースの先端が突っ込まれる。

「ううっ」

はき出そうとしても、口の中から追いやられることはない。先端から、少しずつ液体が
流れ込んでくる。無味無臭のそれは、頭を少し上に上げられた為に飲み干すしか無くなる。
一口飲み込んですぐに、その効果が私を襲う。
膀胱が熱くなり、急速に尿意におそわれる。
このままじゃまずいと、慌てて二枚のカードを指定し、ホースは取り除かれるが、二口
目として残っていた口の中の液体を飲み干すところが限界だった。

「い、いやあぁぁぁ」

耐えきれず、股間から熱い液体が流れていく感覚。ちょろちょろと溢れ出したソレは、
やがて大きな音へと変わっていく。

『失禁です。黄色い小水を停められません』

「み、見ないでよぉ……」

スカートのおかげで、流れ出ていくところそのものは見えていないのだが、足下へ落下
して床をたたく音、そして上ってくる臭気が恥辱となり私を震えさせる。

「漏らしてる漏らしてる!」
「スカートまくれよ!」

いくつかは足を伝い、生ぬるい不快な感触に変わる。気持ち悪くても、拭き去ることを
許されていない。
ビーカーの水位が半分どころか三分の二まで達した辺りで、ようやく私は停めることが出来た。
だけども、まだ私の不幸は終わっていなかった。慌てて開けた二枚の片方と、一度ひっ
くり返って伏せられたカードの組み合わせが、二つのペアを作っていたのだ。

パスした先、相手のターン。忘れててくれと祈ったのに、祈りなんて叶わないものなん
だと改めて思い知らされる。

『ブラウスを一枚脱ぐ』

私は今、着ているのはブラウスとスカートだけ。これで胸がさらけ出されるのが確定。

『乳首を弄る』

そしてさらけ出された乳房の中でもっとも敏感な部分を刺激されるのも確定する。
瞬く間に、マジックハンドにブラウスをはぎ取られる。

「おおおおおおお!」
「ちっちゃいけどいいぞぉ!」
「俺のこの手でもみ上げて大きくしてぇ!」

視線が、小さいながらも形成された丘、そしてその頂上に集中する。
そしてわき上がってくるマジックハンドもまた、そこに集う。

「ひゃあああっ」

衆目の下で、私は乳首を弄られる。

「あああっ」

まるで人の手のように、リズミカルに、だけども不規則に。私が喘ぐ様を見て、会場
には男の熱した空気、時には精液の臭いすらも漂いだす。
早く、選ばないと。でもまた間違えたら……
逡巡する間もずっと、弄られ続ける。股間からまた、液体が垂れ出すのを止められない。
どうしても逃れたくて、私はまた二枚を選んでは外してしまう。
そして、また絶望がやってくるのだ。

『膣内を指で弄る』

彼女が作成したたった一つのペアによって、マジックハンドが、私のスカートの中に潜
り込んでくる。

「だ、だめ、今これ以上は、あぁっ」

止めることを懇願しても止まらない。
機械の指が、苦もなく私の中に侵入する。

「ひっ」

少しだけ折り曲げられ、膨れたGスポットに触れる。刹那、ぷしゅっと軽く潮が噴き出てしまう。

「や、ああんっ、ああああっ」

擦るように、中を蹂躙されて、私は声を漏らすのを止められない。

「だ、あ、い、いやあああっ!」

そして、絶頂を迎える。身体が固まり、震え、言うことを効かない。そして吹き出す潮。

『絶頂を迎えて、激しく潮があふれ出てます』

「ああああああっ!」

それでも、指は止まらない。溢れ出す液体にくちゅくちゅと音を立ててかき分けながら、
なおも私の中をかき混ぜる。

「ああっっ!」

続けて、またも絶頂。意識が遠くなっていく。溢れ出すものは、何求められない。壊れ
た水道の蛇口の様に、ただなすがまま、なされるがままにかき回され、くみ出されていく。

「いやあああっ!」

三回目の絶頂。続けざまで意識を失った私が最後に聞いたのは、

『水位オーバーです。決着がつきました』

私の負けを告げる放送だった。






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