貝辺小学校の七不思議 その三
シチュエーション


貝辺小学校の七不思議 その三 場所……校舎内

学校の中には子供にとって恐ろしいものがたくさんあります。
その中で特にわかりやすいものといえば人体模型です。
筋肉や内臓や神経を剥きだしにして、無表情でつっ立っている姿は相当存在感がありますからね。直球の恐怖です。
大人の目からしても奇異に写るくらいですから、子供からすると化け物そのものでしょう。
その癖、妙に大事に保管されているものだから、気味が悪く思えてしまうものです。

人体模型というものは意外と値段が高く、だいたい十万円以上はします。
授業で必ず使うものでもないし、買い直すのは勿体ない。そういった大人の事情から人体模型は大事に扱われていくわけです。

ところで長年大事にされた人形には魂が宿るといった話を聞いたことはないですか?
人体模型なんてまさにぴったり当て嵌まるではありませんか。
その上長年子供たちの恐怖をたっぷり吸っている。
となれば、彼が歩きだすくらい不思議ではないのかもしれません。
いいえ、歩きだすくらいならばまだいいのですが……。

―――――

ある秋の日の事です。
逢魔が時になり、すっかり不気味な雰囲気の漂う貝辺小学校の各教室を、M先生は電気の確認をして回っていました。
つい先ほどから急に天気が崩れ、窓の外では風や雨の音がビュービューと鳴っていますし、学校の中は照明が点いていてさえ薄暗いような状態です。
M先生は一種免許を取ったばかりの新人教員ですので、雑務を任され、一番最後まで残るはめになってしまったのです。
若い女性であるM先生は半ば怯えながらの点検でした。

それもやっと終わり、後は警備システムを開始すれば帰れる。帰ってビールでも飲もう。そう肩の力を抜きかけた矢先、廊下の反対側で音がしました。
ガタン!

――M先生の背筋に冷たいものが走りました。なんだろう、今の音は……。
ここは南校舎三階の廊下、音は廊下を西に行った突き当たり、死角になっている階段の踊り場の方から聞こえます。

本当は今すぐ反対の東階段から下へ降りて逃げ出したいけど、そういうわけにもいきません。
M先生が恐る恐る西へ歩き始めたときです。

「あの……先生」

背後から急に声を掛けられたのです。M先生はその場でとび跳ねるほど驚いて変な声まで上げてしまいました。
その方向を見やると、そこにいたのは眼鏡をかけた可愛らしい男の子でした。M先生が副担任をしている六年一組のY君です。

「な、なんだY君か。……じゃなくて、なんでこんな時間まで学校にいるの!」

M先生はきつい口調で言いました。

「あ……、ごめんなさい。一人で本を読んでたら暗くなってて、帰ろうと思ったら大雨が降りだして、そしたら先生が歩いてきたから見つからない様に隠れてたんです。ごめんなさい!」

Y君は今にも泣きそうな様子です。
Y君は年の割に幼いようなところもありますが、素直な子です。M先生に懐いているのか仲は良い方なのでY君の性格くらいはわかります。おそらく本当のことなのでしょう。

「なるほどね。でもびっくりしたじゃない。まったく……」
「ごめんなさい……」
「……しょうがない。先生が車で送ってあげる。今度からは暗くなる前に帰るように気を付けるのよ」
「……はい」

Y君は安心したのか少し頬を緩めました。

ガタン!

その時、また大きな音がしました。
二人は西の方へ顔を向けます。
びっくりして忘れていたけど、向こうから固いものが階段にぶつかる様な音がしていたのです。
一体なんなのだろう、あの物音は。

「Y君、あの音何かわからない?」

Y君はぶるぶると首を振りますが、突然「……あ!」と声を上げ、それから顔を真っ青にしました。

「どうしたの。何か知ってるんでしょ。まさかとは思うけどイタズラ?」
「ち、違います……」
「じゃあ何よ。怒らないから正直に言いなさい!」と軽く怒気を含んだ口調で問い詰めます。
「……信じてもらえないと思いますけど、人体模型です」
「人体模型? それがどうしたの」
「クラスの友達が何人も窓越しに見たって言ってるんです。歩く人体模型を……」
「な、なに言ってるのよ……。そんなわけ……」

そんなわけない、と思っていても、心のどこかで信じてしまうような説得力が今この廊下の空気には満ちていました。

 歩く人体模型など、M先生が子供の時から存在したチープな怪談話です。しかしY君はそれを心から信じているような物言いですし、M先生自身、先ほどから背筋がゾクゾクし続けているのです。

 それに歩く人体模型なんて小学六年生が本気で信じる怪談ではないような気もします。ということはもしかすると誰かがこんな遅くに人体模型を運んでいる……? どうして?

「わ、わかったわ。それじゃ今から先生が確認してくるから。Y君はここにいて」

いい大人が子供の手前、本気で怖がるわけにもいかず、M先生はそう言いました。
へっぴり腰になりながらも、廊下に歩を進めていきます。

「待って、やっぱり一人にしないで!」

後ろからY君が走ってきて、M先生にくっ付きました。身長は155センチくらいで二人とも同じくらい。こんな状況においてはお互い心強いものがありました。

「わかった。ほら行くわよ」

M先生はY君の手を握って再び歩き始めます。Y君の手は汗ばんでいました。もちろんM先生も同じです。

ゆっくり、ゆっくり、西階段に向かってにじり寄って行きます。時折聞こえるガタッという音もだんだん近づいて来ます。
ついに死角を作っている壁の端までやってきました。音はもう目と鼻の先から聞こえます。

「じゃあ、ちょっと顔を出して覗いてみるわね」

M先生は小声で言い、Y君もそれ頷きます。
M先生は戦々恐々しつつ、わずかに頭をずらし、まずは屋上へ続く上の階段の方を見ました。

――なにもいない。

ということは……。
震えながら視線を少しずつずらせていきます。

――そして、焦点をそれに合わせた瞬間、M先生は目を見開き、声にならない悲鳴を喉から絞り出しました。

信じられないものがそこにはいたのです。

そこにいたのは、――四つん這いになって階段を這い上る皮膚の剥がれた人間の姿、人体模型でした!
それも誰が運んでいるでもなく、ひとりでに動いているではありませんか!
人体模型はやおら頭を上げ、光のない瞳孔で壁の端にいるM先生の姿を捉えます。

――そしてその瞬間、火がついたように人体模型が走りだしました!

蜘蛛のように手足を動かし、階段を駆け上って、M先生達の方へ向ってくるのです!

悲鳴を上げる暇もなく、M先生はUターンをし、Y君の手を引っ張って駆け出しました。

「先生?」
「いいから走りなさい!」

M先生はすごい剣幕でそう言います。
よくわからないまま、Y君も走ります。
背後からプラスチックが廊下を叩く音が響きます。カラッ、カラッ、カラッ。
その音を聞いたY君が後ろを振り返って小さく叫びました。

「人体模型が追いかけてきてる!」
「逃げるのよ!」

四足歩行で廊下を這い、迫りくる人体模型。そのスピードはM先生たちより早く、距離はだんだん詰まって行きます。

「先生! 追いつかれる!」
「Y君ごめん!」

M先生はそう言うとY君の手提げ鞄を引ったくり、人体模型に投げつけました!
それが正面からまともにぶつかり、ボウリングのピンのような音を立てて、人体模型の身体が瓦解しました。内臓類が四散して床に転がります。

「やった!」

――しかし、人体模型はむくむくと動きだし、手でパーツを掴んで身体にはめていきます。光のない目でM先生たちを睨んだまま……。

「先生、こっち!」

階段を駆け下り、もうひとつ駆け下り、そして一階の廊下に辿り着きました。階上からは大きな移動音が聞こえてきます。
二人は急いで下駄箱に出て、外へのガラス戸を開こうと力を込めます。しかし――びくともしないのです。

「なんで!」

近くに転がしてあった箒の柄でガラスの表面を叩きつけるのですが、箒の方が折れてしまいそうでした。

「先生、違う方向に逃げないと!」

ガラガラと音を立てて人体模型が階段を下りてくる音が聞こえます。
今からでは人体模型に退路を塞がれてしまう。M先生はすぐ横にあった掃除用具入れのロッカーにY君を押し込みました。

「先生?」

そしてM先生のY君を押しつぶすように、ロッカーに入り込みます。掃除用具がほとんどなく、二人の体型が痩せ型であったためぎりぎり収まることができたのです。苦肉の策には違いありませんが。
しかし人体模型は二人を見失ったのか、音が止まりました。M先生はロッカーの扉の窪んだ部分を掴んで、開かない様にしっかり力を込めます。

狭いロッカーの中では二人の呼吸音がよく伝わります。密着しているせいで身体の温もりや感触までもが。
そのせいか妙な緊張感が立ち込めました。

「先生……」

Y君が突然、小声で切ない声を上げました。

「え……?」

M先生は驚きました。お尻に固いものがぶつかっているのです。それはむくむくと膨らんで大きくなります。
M先生は自分の黒のフレアスカートがめくれあがって、下着にY君の股間が密着していることに気がつきました。Y君の腕も自分の身体に巻きつくような形になっていて、位置を正すことができないのです。

「Yくん、だめ……」

そんなことを言っても仕方ないのは分かっていましたが、教え子が自分の身体で性的興奮を感じていることに抵抗を持っているのです。

「ごめんなさい……」

その時外からコツコツと歩行音が聞こえました。ビクッっとM先生の身体が強張ります。

すると、身体の位置がずれて、お尻に当たっていたものが股間部分に滑りました。その上、Y君の短パンのボタンが外れ、脚にずりおちていきます。
つまり二人の性器はお互いの下着を挟んでくっ付いているわけです。
ますます硬さを増すY君の幼いペニスは、雄の機能としてM先生の秘部目がけて成長していきます。
ぶかぶかのトランクスの隙間から頭を出し、ついに障害はM先生のショーツ一枚だけです。
そうなるとY君にはM先生の秘裂の感触や温度まで明瞭に伝わり、こういった知識に乏しいY君にも激しい興奮をもたらします。

「先生、ごめんなさい……」

泣きそうな声になりながらも、それには熱い息が混じっていました。
その息がM先生の耳元や首をくすぐって、ロッカー内の温度を上げていきます。

「だめ、だめ……」

M先生の懇願する声は甘い響きを含んでいて、それは完全に逆効果となりました。
Y君の腰が微かに動き始めたのです。カクカクとM先生の大事な部分に自分のものを擦りつけ、快感を得ようとしているのでした。
勿論そこまでのことはY君だって考えているわけではないですが、下腹部の快感はY君の理性を越えて身体をそう動かさせるのです。

「先生っ、はぁはぁ、ごめんなさい……」

M先生の腰回り、柔らかいお尻、女性の部分そういったものに胸がときめき、Y君はM先生の頬に頭をくっ付けます。
綺麗な細い黒髪からは甘い匂いが漂います。そしてY君の両手はついにM先生の胸に吸い寄せられてしまいました。
Y君は前々から綺麗で優しいM先生に憧れていたのです。堰を切ったように情欲が溢れだしました。
Y君はM先生の小ぶりのバストを揉み始めます。ブラジャーが邪魔をして本来の柔らかさまではわかりませんが、女性の胸を揉んでいるという事実にY君の興奮は高まります。

「Y君、何してるの! やめなさい……やめて。あっ」

Y君のペニスの先端がM先生のクリトリスの位置を突いたのです。コツコツとそこばかりが刺激されます。

「あっ、あっ……、だめっ、ほんとにやめて……」

M先生の蜜壺が潤おいを帯び始めます。Y君の雄になりかけた逞しい突きによってしっとりと湿らされているのです。

「あっ、先生、僕、あ、なにこれ! ああっ……」

Y君はさらに激しく腰を突き動かしていきます。そして――

ビュルルル! 

M先生の性器にY君の熱い精液が迸りました。亀頭を肉豆部分に押しつけて、その先から激しい射精がドクンドクンと続きます。
Y君の初めての射精はM先生の女の部分を汚していきます。M先生の方も強く噴出する精液や強く押し付けられた亀頭にクリトリスを押しつぶされて情けない声を上げてしまいました。
Y君はぐったりしてM先生の身体にもたれかかります。よほど射精の快感が大きかったのでしょう。
M先生は罪悪感のようなものを感じながらも、やっと終わったという安堵の念をも同時に抱きました。
こんな状況だからY君がHな事をしてしまったのは仕方ない。でもそれももう終わった。あとで叱らないと。
しかし、そうではありませんでした。
Y君のペニスは再び首をもたげていきます。

「え?」

むくむくと海綿体に血流を集め、再び腰をカクカクとM先生に押しつけ始めたのです。

「Y君、何考えてるの。だめよ!」
「止まらないんです。ごめんなさい……」

Y君はまた気持ちのいい女体を求めてM先生の身体を貪ります。
一突きする度、クリを擦られるものですからM先生も変な声を上げずにはいられません。
ロッカー内の暑さと相まって、思考がぼやけていきます。
雄によって求められる快楽、雌の本能が職業倫理を追い越し始めました。
気持ち良さそうに目を瞑って、Y君の突きを受け入れていきます。
Y君の肉棒で割れ目を擦られ、クリを揉みほぐされ、いつのまにかM先生のスリットはぐしょぐしょに濡れていました。

「んっ、んっ、あっ……」
「先生、これ気持ちいい……!」

二人の粘液は激しく混じり合います。挿入こそしていないものの二人は求めあう男女そのものでした。
いつのまにか下着は横にずれ、M先生とY先生の性器は直接擦り合わさっています。Y君の無知だけが挿入を妨げていました。

「先生、先生、また出るっ……!」
「ああん!」

Y君のペニスが偶然膣穴の入口にひっかかり、亀頭の先端だけが蜜穴に埋まります。その状態で、二度目の激しい射精!
Y君にしてみれば亀頭を膣壁に包まれ、融け合って、その状態で精を吐きだしているのですから腰が砕けるほどの快感です。
M先生は膣内に精子をたくさん注がれ、入口を擦られ、達してしまっていました。本人も気づかないうちに膣穴を脈動させ、Y君の精液を絞り取るポンプの働きをしているのでした。
その先はほぐれていなかったため、Y君はそのままペニスを抜きました。そして先生の首すじにキスをしました。先生が愛しくてたまりませんでした。
しかしM先生の膝が震えている状態で、そこにキスをしたものですから、力が緩んでロッカーの扉が緩みました。
二人の身体は外へ投げ出されます。
大きな金属音が響きます。
二人は余韻のせいで完全に油断していたため、戦慄し、心臓が大きく波打ち、時間が止まったようにさえ感じられましたが、いつまでたっても聞こえてくるのは校舎の外の雨の音ばかり。
人体模型の音も姿はもうどこにもないのです。

「あれ……?」
「もう……いないみたいね」

それでも慎重に辺りを警戒したり、聞き耳を立てながら歩いたりしましたが、まるで初めからいなかったのように消え失せてしまっているようでした。
嵐が去ると、家の状態が気になりだすもの。
M先生は顔を真っ赤にして、自分の太ももを見ました。Y君の精液がトロトロと伝って垂れています。それにショーツはぐしょぐしょです。しかも自分は今しがた幼い教え子にイかされたのです。

「先生、本当にごめんなさい」

Y君はその様子を見て、おろおろします。

「Y君、このことは後で話すとして、早くこの場を去りましょう」

そう言って二人は校舎を出てからM先生の車に乗りました。
身だしなみを整えて、発車し、運転しながらM先生はぽつりと言いました。

「Y君、今日の事黙っていられる?」
「え? は、はい。もちろん」

叱られると思っていたY君は拍子抜けしました。

「人体模型のこともよ」
「……はい」
「それから、ああいうエッチなことはまだ早いわよ。それに好きな人とだけしなさい」
「でも僕は先生好きだから……」

Y君は恥ずかしそうに頬を染めてぼそりと呟きます。
それに照れたのか、M先生はこほんと咳払いをします。

「ませてるわね、最近の子は、まったく……」

M先生の頬にも朱がさしていましたが、Y君に見られない様にぷいと横を向くのでした。
車のガラスに雨がぶつかる音が響きます。
ある秋の日のことでした。

―――――

貝辺小学校の人体模型は結構よく動くそうです。
人を追いかけて遊ぶのが趣味だそうで、はしゃぎすぎてセコムを鳴らしたこともあるとかないとか。

Y君とM先生はその後親密になっているそうです。


貝辺小学校七不思議 その三 「荒らぶる人体模型」






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